聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第120話 外道になる覚悟と忠臣の覚悟

「この外道どもがあああああ!!」

 

 シャイタンの怒りの声に俺は動けなくなった。

 

 いくら人間の勝利のためとはいえ、こんな汚い手が許されるのか……? 

 

 自分より遥かに弱いナラッカを拉致して拷問。

 

 こんなの、絶対に正義じゃない。

 

 だけど……

 

 頭に、市子の顔が浮かぶ。

 メイコ食堂本社で俺の勝利を祈ってくれてる幼馴染。

 そして、守りたい人々──この国で安心して普通に暮らしてた人たちの笑顔。

 

 ……これは、大事の前の小事なのだろうか? 

 

 でも、そのときだった。

 脳裏で、別の声が響いたんだ。

 

『こんな卑怯で汚い手段で勝つなんて絶対におかしい! 聖戦士の取るべき道では無い!』

 

 ……タケルさんだ。

 

 思えばこの人は……

 

 ナラッカに家族を皆殺しにされて、その憎しみから聖戦士の道に入ったと言っていた。

 けれども、復讐に燃えてナラッカを殺すことを使命にして、正義を捨てる。

 それを結局できなかった人だ。

 

 そんな人が、この状況を認めていない……

 

 何故なのか、それはすごく分かる。

 

 目的が正しければ何をしてもいいなら、ナラッカがタケルさんの家族を殺したのだって多分肯定されるもんな。

 きっとナラッカなりに正しい理由があったはずなんだ。

 どうしようもなく腹が減っていた、とか。

 タケルさんの家族が自分の正体に気づいてしまった、とか。

 

 だから俺は、ガルザムとゼルノスのやり方は汚いし唾棄すべき行為だと思う。

 だけど……

 

 俺は絶対にシャイタンを倒さなければならない。

 

 でなければこの国が壊れる。

 この国が、俺たちの世界が、ナラッカに壊される。

 魔女狩りの地獄が、永遠に続くんだ。

 

 ……俺は拳を握り、覚悟を決めた。

 クズ野郎に身を堕とす覚悟を。

 

 この手を受け入れれば、シャイタンをほぼ確実に討ち取れる。

 

 こんなチャンスを、正義に拘ってフイにしたら、取り返しがつかないだろ……!

 まず、勝利を掴むのが何より大事……!

 この状況で一番悪いことは……負けることだ!

 

『ミ、ミユキ……? 君はまさかこのまま続けるつもりか……?』

 

 タケルさんの動揺した声が脳内に響く。

 俺はそれには応えない。

 

 俺はメギドセイバーを維持した右手を構えた。

 万物を切断する必殺の手刀を……!

 

『……見損なったぞミユキ! 恥を知れ!』

 

 タケルさんが俺を(なじ)った。

 最初に俺が聖戦士の使命を拒否したときすら、こんなことは言わなかったのに。

 

 正直、とても(こた)えた。

 

 だけど……

 

 シャイタンは地上の臣民への拷問に気を取られ、俺の動きに気づいていない。

 

 今だ!

 

 俺は念動力で一気に加速し、シャイタンに突っ込んだ。

 そして一瞬でメギドセイバーの貫手が、シャイタンの胸を貫く──そのはずだった。

 

 俺の時間が止まった。

 

「させんっ!」

 

 突然、横から白い影が割り込んできたんだ。

 

 本来シャイタンを貫くはずだった俺の貫手が、そいつの胴体を貫いた。

 

 そいつは……

 女のシルエットに白い鱗と純白の翼を持ち。

 竜の頭で、両肩から蛇の首を生やした姿のノーブルクラス──賢者アスタルだった。

 

 賢者アスタルが、身を挺して自分の主君を守った……!?

 

「……陛下。ご武運を」

 

 アスタルは俺に一瞥も向けないで。

 自分が守った主君にそう言葉を遺し。

 

 次の瞬間、爆散した。

 輝き、轟音。

 

 そして

 

「アスタルゥゥゥ!!」

 

 シャイタンの叫び。

 

 俺は一瞬、硬直した。

 アスタルの身体が光の粒子となって消えた後。

 

 あいつは全く躊躇わないで、シャイタンを庇って死んで行った。

 忠臣として完璧だ。

 

 その事実が、俺の手を鈍らせる。

 

 シャイタンの赤い瞳が、俺を射抜く。

 その目に、怒りと悲しみを渦巻かせて。

 

 6枚の翼で激しく羽ばたき、すさまじい怒りの覇気を発する。

 俺は歯を食いしばり、輝く右手を構える。

 

 ……気圧されるわけにはいかない。

 あらゆる覚悟を決めるんだ……!

 

 死の覚悟だけじゃない……!

 外道になる覚悟もだ……!

 

 俺は振り払うために、大声で宣言する。

 

「……悪いな、シャイタン。俺は絶対にお前を倒す!」

 

 改めて、そう言った。

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