聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第121話 衝撃の事実

 国会議事堂の上空で、俺とシャイタンの戦いが続いていた。

 

 念動力で飛行する俺と、6枚の翼で宙を舞うシャイタン。

 

 戦いを続けながら、俺は捨てられない迷いを持っていた。

 さっきの光景が、どうしても頭から離れない。

 

 賢者アスタルが主君を命懸けで救った。

 シャイタンの盾に進んでなったんだ。

 

 そしてシャイタンはそのことを当然だとは思っていない。

 ショックを受けて、動揺している……!

 

 ナラッカたちがシャイタンに捧げる忠義はやっぱり、本物だと思う。

 人間の敵だけど、そこは尊敬すらしていた。

 

 ……シャイタンは忠臣を突然目の前で失ったショックと、地上でガルザムたちに嬲りものにされている臣民への思いからか、戦いに鋭さが無い。

 

 ガルザムとゼルノスの卑劣な手段──ナラッカを拉致して拷問するやり方。

 確実に効果を上げている……。

 

 だけど

 

 こんな汚ない手で勝つなんて、本当にいいのか? 

 その声が、どんどん強くなる。

 

 そこで脳裏に、諦めたようなタケルさんの声が響いた。

 

『……今の我々はナラッカより邪悪な存在だ』

 

 邪悪だとかそうでないとか、幼稚だという人間もいるだろうし。

 そんなことで、掴み取れる未来を逃すなど、馬鹿だとしか言えない。

 そういう奴もいるだろう。

 

 ……だけど

 

 俺は迷ってしまっていた。

 

 どうすればいいんだ? 

 このままシャイタンを倒していいのか? 

 

 それとも──

 そのとき、声が響いた。

 

「陛下!」

 

 下を見ると、黒い忍者みたいな姿のナラッカがいた。

 その姿は……闇闘士ゼイモンだ!

 

 アイツ、何でここに!? 

 アイツも、自分の主君の戦いを助けるために駆け付けたのか……?

 

 俺は色々考え、動けなくなる。

 そこに

 

 ゼイモンが叫んだんだ。

 

 とても重大な情報を言葉にして。

 

「我々ナラッカは、人間に神として扱われたとき、飢えから解放されます! 腹が減らなくなるんです!」

 

 ……は!?

 

 時間が停止した。

 考えもしなかったその言葉。

 

 ナラッカが人間に神扱いを受けると、飢えなくなる。

 

 それは本当なのか……?

 

 俺は思わず凍り付いていた。

 シャイタンも動きを止めていた。

 

 それぐらいの重大な情報。

 

 もしそれが本当なら……

 

 シャイタンを倒さなくても良くなる。

 

 シャイタンに「今後、全てのナラッカの人喰いを禁じる」って命令をさせて、その飢えをシャイタン自身が引き受けるシステムを作ればいいんだ。

 

 ……すでにシャイタン自身を崇めてる人間がいるんだから。

 

 シャイタンのアクスタ。

 シャイタンの団扇。

 シャイタンのキーホルダー。

 ぬいぐるみ、ステッカー、クリアファイル……

 

 そんなもんを作ってる奴が大量に居る。

 ここに来る前は、絶望的な気分になる事実だったけど……

 

 ゼイモンが言ったことが本当なら、最高の状況だ。 

 それで、全部解決してしまうだろ。

 

 俺の心が揺れる。

 シャイタンの赤い瞳も、動揺しているみたいだった。

 ということは、心当たりがあるんだろうか……?

 

 だけど……

 

 そのときだった。

 

「信じてはいけません! ナラッカの言うことは全部嘘です!」

 

 ガルザムの声だ。

 

「騙されてはいけませんよ、瀬名さん!」

 

 ゼルノスがそれに続く。

 

 俺は下を見た。

 ガルザムとゼルノスが、さっき拉致したナラッカをまだ拷問していた。

 拷問を続けながら、大声でゼイモンの言ったことを全否定した。

 

「ナラッカは悪魔の集団です! 本当のことは言いません!」

 

「巧妙な罠です! 騙されてはいけませんよ!」

 

 

 ……は?

 

 俺は疑問を持った。

 おかしい……

 

 俺たちの力の源泉・聖魔王メギドだってナラッカだろ?

 ナラッカだから信用するなが通るなら、俺たちの力だって信用してはいけないはずだ。

 

 彼らは、そんな幼稚な理屈を乗り越えて、メギドがナラッカであると知りつつも、メギドを神と決めて仕えて来た戦士じゃ無いのか……?

 

 だったら、ゼイモンの言うことを頭ごなしに否定するのは変だろ……?

 否定するなら、何かしら理屈を出すはずだ……

 

 ここがおかしい、矛盾してる、そういうの。

 他にも「その根拠を示せ」とかさ……

 

 ゼイモンの話が本当なら、人間にとってもナラッカにとっても朗報のはずなのに。

 なんでそんな大事な可能性を、頭ごなしに否定するんだ?

 そのとき、脳裏でタケルさんが呟いた。

 

『あいつら……本当に聖戦士なのか?』

 

 俺の背筋にゾッと寒気が走った。

 聖戦士じゃないなら……何なんだ?

 だから俺は……

 

「アンタら、まるでナラッカは絶対的に人喰いでないと困るみたいに見えるんだが……?」

 

 その瞬間だった。

 

「ちっ」

 

 舌打ちの音がやけに大きく響き。

 次の瞬間、ガルザムとゼルノスの姿が、輪郭がぼやけるように変わったんだ。

 

 青と赤の聖戦士の鎧姿から……金属質の皮膚と角が生えた骸骨みたいな顔、屈強な男の体、蛇の尻尾と巨大な蝙蝠の翼を持つ怪物の姿に。

 それぞれ青と赤の色合いで──どう見てもナラッカだった。

 

「な……!?」

 

『ナラッカだと……?』

 

 俺の声が震えた。

 タケルさんも驚愕していた。

 

 シャイタンも、ゼイモンも、動けなくなっていた。

 

 ガルザムとゼルノス……こいつら、いつ成り代わられたんだ?

 

「お前ら……一体何者だ!?」

 

 俺は混乱し、動揺し。

 それだけ問うのが精一杯だった。

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