聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第125話 ゼイモンの選択

 次はシャイタンの番だ。

 

 シャイタンが翼を収め、光に包まれる。

 

 光が消えて現れたのは、白髪の美少女。

 透き通るような肌に、赤い瞳。

 

 ……すげぇ目立つな、これ。

 

「シャイタン、せめて髪の色なんとかならないか? 目立ちすぎ。目はサングラスで隠せるけどさぁ」

 

 そう思わず言ってしまうと

 シャイタンが髪を触りつつ少し嫌そうに答えた。

 

「我とメギドだけは人間体が固定されておってな。……自在には変えられぬのだ」

 

 ……だったらしょうがないか。

 

「じゃあ、染めて貰おうか。……美容院行くぞ」

 

 近場の美容院をスマホで検索し、突撃した。

 

 突然の天魔王の来訪に店員がビビってたけどさ。

 気の毒だけどしょうがない。

 

「シャイタン様をお待たせはできない!」

 

 店員が最優先で対応してくれた。

 即施術だ。

 俺とゼイモンは、待合でソファに座って待つことになった。

 

 

 

『分かった。私はなんとか逃げ出してみるから、御幸君は絶対に勝って、そして生きて帰って来てね』

 

 市子にメールを送った。

 すると彼女から即座に返事が返って来た。

 

 そして最後に『帰って来てくれたら伝えたいことがある』と。

 

 ……市子。

 分かった。

 

 必ず生きて帰って来る……!

 

 そう心で思い。

 俺はスマホを仕舞った。

 

 それを見ていたのか

 

「……市子さんにメールしていたのか?」

 

 ゼイモンが訊いてきた。

 

「……ああ。一応伝えておかないと」

 

 そうゼイモンに返す。

 出来れば事前にメイコ食堂本社から離れていて欲しいし。

 

 ……メギドが彼女を拘束しないのは、部下2名が倒されたことに気づいていないか……

 俺たち相手に人質が不要だからだろうな。

 

 俺は心で市子が無事に安全圏まで逃げられることを願った。

 

 

 

 待合室は静かで、壁の時計がカチカチと秒を刻む。

 ゼイモン──黒岡弁護士の姿のナラッカが、隣で腕時計を見ていた。

 そろそろ1時間経つかもしれない。

 

 まさかこの人がナラッカだったなんて……

 まだその実感が無かった。

 

 沈黙が重く感じて、俺は口を開いた。

 

「なあ、黒岡さん……いや、ゼイモン。なんで弁護士になったんだ? ナラッカがそんななり難くて面倒な仕事選ぶなんて、なんか意外なんだけど」

 

 するとゼイモンが腕時計から目を離し、静かに笑う。

 

「いい質問だ、瀬名さん。話すには少し時間がかかるが……まあ、陛下の施術はあと1時間はかかるらしいからな」

 

 ゼイモンは遠くを見るような目で話し始めた。

 

「僕はこっちにやって来て、ある引きこもりの少年と成り代わったんだ」

 

 語るゼイモンの表情は、真顔だった。

 

「社会的に死んでるような、誰にも気づかれない存在が都合よかったから探していたんだよね……」

 

 別に懐かしくも無いし、嬉しくもない。

 ただの事実を語る。

 

 そんな様子で

 

「彼は部屋に閉じこもり『生まれて来るんじゃなかった』って呟いてた。『死にたい』とも言っていたな。僕が彼の部屋に忍び込み、君の立場が欲しいというと、彼は全てを理解した上で僕にお礼を言ってきたよ。そして自分の身の上を語った後『こんな腐った世の中から解放される。やっと楽になれる』と」

 

 少年は気の弱さでやってもいないことをやったと冤罪を被せられ、そのせいで壊れてしまった過去があったらしい。

 そのせいで、どうせ誰も自分の味方にはならないと社会を呪いながら生きて来たそうだ。

 そして馬鹿なこと、弱いことが罪であるなら、生まれたくなかったと。

 

 その言葉に、俺の胸がズキッと痛んだ。

 

 ……そんな少年がいたのか。

 生きる意味を見つけられず、ナラッカに成り代わられることが「救い」になるなんて。

 

 ゼイモンは続けた。

 

「そこから、僕はどう生きるべきか考えた。立場を譲ってくれた少年に恩を返したかったのもあったが、他にも色々あって……まず僕は人間を無差別に襲うのは止めようと思った」

 

 人間の俺には到底肯定はできないけど。

 

 確かに言っていたな。

 自分は「生きているだけで他人を苦しめる不要な人間しか襲っていない」って。

 

 だから

 

「……そして次に弁護士なら、消していい人間──悪人を簡単に見つけられると思ったんだ。それに、僕は困難な目標を達成することに燃えるんだ。勉強は楽じゃなかったが、司法試験を突破したときは、嬉しかったよ」

 

 ゼイモンの話を聞いて俺は少年のことを思った。

 ゼイモンとの遭遇が彼にとって「幸運」だったなんて、絶対に正しく無い。

 

 無くさなきゃいけないことだよな……

 

「……結果としては最良の選択だったと思っているよ。弁護士になったお陰で三波さんに会えたしね」

 

 そのことを口にしたゼイモンは少し嬉しそうだったよ。

 

 ……三波さん。

 ゼイモンの秘書をしていた女性だな。

 

「三波さんが居てくれたから、僕はナラッカの重大な秘密に気づくことが出来たんだ」

 

 ……なるほど。

 あの人、ゼイモンの人間体の黒岡弁護士を神様のように思っていたしな。

 

 ゼイモンが弁護士を目指し。

 弁護士になったゼイモンのところに、三波さんのような女性が秘書になりに来た。

 

 俺はそこに何者かの意志を感じたよ。

 

 そしてそのとき、施術室のドアが開いた。

 ここに髪染めの終了したシャイタンが現れたんだ。

 

「待たせたの」

 

 にこやかに手を上げて再登場したナラッカの帝王。

 それは……

 

 ……金髪だった。

 

 ついでにどこから貰ったのか、白いセーラー服に着替えて来ていた。

 誰だよこんなもん渡したの。

 

 金髪のヤンキー美少女。

 

 帝王、なんでこうなった!? 

 

 ゼイモンが呆れた声で呟く。

 

「陛下……何をなさっておいでですか……」

 

 まぁ、嫌かもしれんな。

 自分たちの王様が、こんな格好をしていたら。

 

「何を言う。金髪良いでは無いか。黒髪の方が今は珍しいと聞くぞ?」

 

 ピンクと金、どちらに染めるか迷って、金を選んだのじゃ。

 なかなか良い選択だったと我は思う。

 

 ……本人は気にいってるらしいけど。

 クルクル回りつつそんなことを言っている。

 

 俺はゼイモンに少し同情し……

 気を取り直して

 

「……まあ、いいだろ。準備は整ったわけだし。メイコ食堂の本社ビルへ行こう!」

 

 そう、強く宣言した。

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