聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~ 作:XX(旧山川海のすけ)
ミユキ、お別れだ。
俺は胸が締め付けられる思いを感じた。
タケルさん……。
ずっと俺の頭の中にいた相棒。
聖戦士として戦う俺を支えてくれた存在。
それが、今、消えようとしている。
「タケルさん……」
俺は小さく呟いた。
すると、タケルさんが苦笑いのような声で答えた。
『無理矢理この世界に引っ張り込んで悪かった。本当に』
その詫びる声に、俺は思わず笑みを浮かべた。
「……まぁ、あのときはムカついたけどさ」
思い返す。
善意で助けてやろうと思ったのに、わけわかんないもんを押し付けられて。
化け物と戦えとか。
冗談じゃない、ふざけてんのかと思ったさ。
……でも
「結果的に……まぁ良かった、って今は思ってるよ」
俺が戦わなかったら、色々終わってた場面、多かったし。
その俺の言葉にタケルさんが小さく笑う。
『正しい目的のために戦ってるんだから、理解さえしてもらえば必ず協力してくれるって……そんな幼稚なこと考えてた自分が、今となっては恥ずかしいよ』
その告白に、俺は思わずニヤリとした。
「他人には他人の理屈があるんだから、絶対なんて無いだろ。そこは大人になるまで学ぶもんだ。……どうせ修行修行で、ロクに赤の他人と関わらなかったんだろ?」
タケルさんが苦笑した気配がする。
『……その通りだ。恥ずかしいな』
そのやり取りに、俺の心が少し軽くなった。
タケルさんは、聖戦士として厳しい道を歩んできた人だ。
でも、そんな人とこうやって軽口を言い合える仲になった。
分かり合うことが出来たんだな……その実感。
タケルさんが静かに続けた。
『でも、君に任せて本当に良かった。全ての元凶を滅ぼすことに繋がるとは……。あのとき、ホテルの前で君に遭遇したのは、何かの運命だったのかもしれないな』
その言葉に、俺の頭にあの瞬間が蘇った。
浮気調査の仕事で、ホテルの前でブツクサ文句言いつつ仕事してた俺。
そこにタケルさんが現れて、勝手に戦いが始まって。
その後、何もしてないのに聖戦士の力を押し付けられた。
あの偶然がなければ、今の俺はなかった。
俺が浮気調査の仕事を中止していれば、俺は聖戦士の力の継承をされなかったし。
タケルさんがナラッカの襲撃場所をあそこに選ばなければ、やはり俺はただの探偵のままだっただろう。
その場合メギドは今も自分のために生き続け、ノーブルクラスのナラッカの陰謀は進み、ナラッカと人間の戦いはもっと悲惨なことになっていたかもしれない。
あのとき、偶然あの場に俺たちがいたから、こうなった。
「そうだな……。運命だったのかもしれないな」
俺はタケルさんの言葉に頷いた。
あの出会いが、全部を変えた。
シャイタンとの共闘も、メギドの1万年の楽園の終焉も、全部あの瞬間から始まったんだ。
タケルさんの声が、さらに弱々しくなった。
『……そろそろ時間切れだ。ありがとう、ミユキ。こんなに満足して消えられるとは、僕は幸せ者だと思う』
その言葉に、俺の目が熱くなった。
メギドを倒せばタケルさんが消えるって分かってたけど……こうやって本当に別れの瞬間が来ると、正直辛い。
熱いものが溢れる……
「こっちだって礼を言いたいことあるんだ」
これが最後だと思うと、胸が詰まる。
でも、言わないと……
「……タケルさん、ありがとう。聖戦士として戦えたこと、自分で道を切り拓けたこと、全部アンタのおかげだ」
俺は空を見上げ、涙を堪える。
「さようなら、タケルさん」
タケルさんの声は、もう聞こえなかった。
脳内で長く同居していた住人が、永遠に消え去った。
デジカメを握りしめ、俺は静かに目を閉じた。
戦いは終わった。
だが、問題が全て解決したわけじゃない。
……法王バイルが作り上げた宗教団体「マーシアハ教会」
天魔王降臨の事件で埋もれていたけど、色々酷かったらしい。
まず、バイル消滅で洗脳が解けた女性たちが、自分が受けた仕打ちを正しく理解し。
発狂し、教祖である天京《てんきょう》天満《てんま》を惨殺した。
その後、幹部たちも逮捕され、女性信者の産んだ子供の大量殺害に関与した疑いで死刑判決が出る見通しになってる。
その数は分かってる限りでも100人以上に上りそうだから、法的に正しいのかどうか、俺には分からないけど
流石に死刑にしないと、この国の正義を守れない。
そう、政府が思ったのかもしれない。
そして総理大臣がまた変わった。
緊急事態で副総理から繰り上がりで就任した垂井総理が、失踪したんだ。
何があったんだろうか……?
完全な行方知れずになったらしく、多分国家としては恥ずかしいことなんだろうけど……
また、副総理が繰り上がった。
今度の総理は
前は「狂犬」という異名を持っていたアグレッシブな男だったんだけどさ。
……総理になったら急に大人しくなった。
まぁ、堅実に仕事してくれるなら俺は別に良いわ。
そしてあと、もうひとつ。
……なんと、令和の世になって。
何百年ぶりか分からんけど
……国会議事堂の隣に
なんと、神宮が作られることになったんだ。