聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第30話 1000倍

「到底無理だッ!」

 

 人としての意地で俺は吠える。

 だが、勝ち筋なんてまるで見えない。

 

 ……どうすれば良いのか……?

 

 ゼイモンはそんな俺の言葉に嘆息する。

 

「まだ分からないのか……これは僕の善意であって、懇願じゃ無いんだよ?」

 

 やれやれと手を広げ、肩を竦める。

 

「まるで駄々っ子だね。まったくもう、しょうがないな……」

 

 骨折程度は覚悟するんだね!

 聖戦士業界のヤバイ薬を使えば、後遺症もなく治るだろうしさぁ!

 

 そう言い放ち

 

 ゼイモンの姿が突如目の前に……

 

 同時に

 

 激しい衝撃を俺は感じた。

 そして吹っ飛ばされた。

 

 そのまま壁に背中から叩きつけられ、壁にめり込む。

 

 まるで胸から腹にかけて、何百発ものパンチを受けたような衝撃……!

 

 いや……

 

 受けたんだ!

 

 ゼイモンは拳を突き出した姿勢で停止していて。

 

 そのまま

 

「どうだい僕のサウザントブロウ……すごいだろう?」

 

 勝ち誇った声。

 

 全く……見えなかった……!

 俺のスロウの目で捉えられない動きだと……?

 

「くっ……クソッ……!」

 

 めり込まされた壁から這い出し、闘志を示すが

 

 続いたゼイモンの言葉に

 

「見えるわけ無いよね……何せ僕の動きの速度を1000倍に上げているんだし!」

 

 俺は戦慄した。

 

 ……なんだって!?

 

 

 

「せ、1000倍……?」

 

「そう、1000倍」

 

 俺を絶望させるためか。

 愉しそうにそう返して来るゼイモン。

 

 1000倍ってことは……

 

 時速10キロが、時速1万キロになるってことだろ……?

 

 ええと、音の速度が秒速340メートルだから……

 60を掛けるのは大変だから、ざっくりと100ずつ掛けていって……

 

 分速で34000メートル、キロに直すと34キロ。

 さらに時速に直すと3400キロ……!

 

 この計算はざっくりというか、本当のところよりかなり多めに見積もった計算だから。

 

 つまりそれよりも、まだ速いんだ……!

 

 時速10キロって、大体走る速さくらいだぞ……?

 それをこいつは、音速よりずっと速い速度に……!

 

 勝ち目……ねえだろ……!

 

 絶望……

 

 しそうになったが

 

(ちょっと待て)

 

 そこで気づいた。

 

 音速超えているのに、何故衝撃波が発生しない……?

 衝撃波が発生したら、絶対この辺メチャクチャになってるはず……

 

 そして

 

 そんな速い拳で殴られて、何故俺は死んでないんだ……?

 物体同士の衝突速度が上がれば破壊力が高くなるはずだから。

 そんな拳で殴られれば、ただで済むわけがない。

 鎧を着装してても耐えられるとは……

 

 様々な疑問が浮かぶ。

 

 これは勘だが、ゼイモンは嘘は言ってない。

 1000倍は本当なんだろう。

 

 ただ、俺が思うような、単純な加速じゃ無いハズ。

 おそらく色々不都合なルールを持つ、特殊な加速だ。

 

 ……例えば……

 

 速度が上昇しても破壊エネルギーはそのまま。

 そんな感じの……!

 

 他には……

 

 色々な仮説が、頭に浮かんだ。

 確かめている暇は無いけど……

 

 今はもう、賭けるしか無い……!

 

 俺は構えた。

 

 そして

 

「……もう1回、やってみろ。もう1回、アンタが俺たち人間の上位者であることを証明してみろ!」

 

 ……俺は言い放った!

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