聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第40話 弁護士の悩みは

 タケルさん曰く、ナラッカは誰にでも成り代わろうとはしないらしい。

 よく狙われるのは……

 

 社会性の無い奴。

 

 自分のことばかり考えている我儘な奴。

 

 ……そういう、人間のクズに分類される奴ら。

 

 理由は簡単だ。

 社会性の無い奴は友人が居ないから、自分が本人でないことを見破られる危険性が低いからで。

 我儘な奴が狙われるのは、成り代わった後に真人間のムーブをしておけば、不審がられることが無いからだ。

 

 ……昨日まで悪の限りを尽くしていた奴が、いきなり悪い仲間と絶縁し、真っ当に生きようとし始めたら……

 

 普通、コイツ何かが変だとは思わない。

 コイツ、何かで目覚めたんだと思われる。

 それまでの生き方の方がよっぽど異常だから。

 不審に思う前に、感動される。

 

 逆に狙われにくいのは、交友関係が広い人間。

 あと……学者や医師のような、知の分野で働いている人間。

 それは、成り代わるためにクリアしないといけない仕事のレベルが高すぎるせいらしい。

 ナラッカも、成り代わるために相当勉強しなきゃいけない相手は避けるんだな。

 気持ちは分かる。

 

 

 

 その観点で行くと……

 

 黒岡さんの話で、非常に怪しい奴が1人いた。

 数年前に黒岡さんが弁護を担当した男で。

 

 罪状は政治家へのテロ。

 自暴自棄になり、かねてから反感を持ってた政治家に火炎瓶を投げたらしいんだ。

 

 それで捕まり、裁判になり。

 黒岡さんの弁護で、何とか懲役2年の実刑で済んだそうだ。

 

 政治家襲撃なんて民主主義への挑戦だから、もっと重くてもいいはずなのに。

 運の良い奴。

 

 実際、そいつは泣いて反省して「必ず立ち直ります!」と言ったらしい。

 でも……その後。

 そいつ、いきなりこの事務所に乗り込んで来たそうだ。

 

「無罪にできなかったのは弁護士の怠慢だ、慰謝料寄越せ、と」

 

「裁判ってそういうものでは無いのに、どうしても理解して下さらないんです」

 

 この話をしたとき。

 黒岡さんも三波さんも困り果てたような顔をしていた。

 

 ……だいたいさ、裁判で勝ち負けって言うこと自体変だよなぁ。

 裁判で追うのは被告の罪状の真実だろ?

 違うのか?

 

 その真実を追った結果が、懲役8年だったり、執行猶予つきの有罪だったりするんだろ?

 

 ガリレオは天動説が主流の中で地動説を唱えた。

 そして実際は、地動説が正しかった。

 

 ……これを「ガリレオが勝ったんだ」っていう奴がいたとしたら、俺はそいつに違和感がある。

 この場合は「ガリレオが正しかった」って言うべきだろ。

 

 なんでこう、裁判を口喧嘩か何かだとアホな解釈する馬鹿が多いんだ……。

 俺には、2人の苦悩が少しだけ理解できた。

 

 まぁ……

 

 俺がナラッカの存在を知らない一般人なら

 

 大変ですね。心中お察しします。

 

 ……これで終わりな話なんだけどな。

 今の俺は、そいつがただの馬鹿野郎である以外の可能性について知っている。

 

 なので、こう切り出した。

 

「……訴えたりはしないんですか?」

 

 俺の言葉に

 

「それはちょっとしたくないんですよね。……仮にも依頼人だった男性なので」

 

 黒岡さん、少し渋い顔。

 多分、元依頼人でなければ即訴えていたんだろうなと思う。

 

 だから多分、黒岡さん的には説得で決着したいんだろう。

 

 なので

 

「……説得材料を集めましょうか? 今日の相談のお礼に、格安で引き受けますよ?」

 

 俺は、その男の素行調査依頼を提案したんだ。

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