聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「……そうですね。そこに気づいてしまった人には言うことにしてます」
隠すと良く無いですからね。
そう、メギドは前置きをし。
こんなことを言った。
「私もナラッカです」
……え?
『そんな……!』
タケルさんの驚愕と、動揺の声。
俺は反射的に魔鈴を出して鳴らしてしまった。
だけど……
「ああ、魔鈴は私には反応しませんよ。当たり前じゃ無いですか。自分に反応するように作りませんよ」
余裕の笑みでコーヒーを飲むメギド。
「……本当なのか?」
「ええ」
……正直、これまで内心胡散臭いというか、訳が分からなかったよ。
何でメギドはナラッカに対抗する手段を、無償でポンポン人間に与えてくれたんだ、と。
話が旨すぎる。
変だろ。
……世の中、旨い話は無いのが基本だ。
だからなんとなく、変だと思ってたんだ。
根拠としては薄いかもしれないけどな。
だから
「……何で?」
わりと俺はスッと受け入れた。
タケルさんは動揺してるのか、ダンマリだったけど。
するとメギドは
「……あなたは今、コーヒーを飲みましたけど」
俺のカップを目線で示しつつ
「……もしコーヒーが、生きて会話していたら、あなたは平気で飲めますか?」
……そんなことを言い出した。
「えっと……」
俺は想像する。
コーヒーが
今日いい天気ですね!
とか
お兄さん、元気!?
なんて言ってたら……
……それは
「飲みにくいと思う……」
「でしょう?」
メギドは微笑んだ。
美味しそうにコーヒーを飲みながら。
でもさ……
「喰わないと腹が減るんだろ!?」
「ええ。減りますね……でも、耐えれば済む話です」
簡単に言うメギド。
俺はそれが信じられなかった。
「そんな簡単に言うけどなぁ、餓死するレベルの空腹が耐えず襲ってくるって、耐えられるもんじゃないだろ!?」
……思わず声が荒くなる。
それに対し
「……ええ。ですからほとんどのナラッカは、ヒトが自分と同等の存在であることを忘れて、食べ物の一種と認識しています。……嘆かわしいことですが」
そう、悲しそうに言うメギド。
彼女は
「私の正式な名前は……」
彼女は名乗った。
「……聖魔王メギドといい……天魔王シャイタンは、私の双子の妹です」
え……?
さすがに絶句した。
この目の前の女の子が、ナラッカの帝王の双子の姉……?
でも、それなら理解はできる。
そんな存在なら、ナラッカを人間でも討伐できるような武装を作ったり、ナラッカを追い立てる道具類をポンポン作れても全然変じゃない。
筋は通ってる……!
「私はヒトは価値のある存在だと思っています……我々ナラッカの空腹を誤魔化すために命を奪っていい存在ではない……」
そう、厳かに言い。
そして
「……こういうことは、私に直接出会った聖戦士にだけ明かす事実です。そうでないと、要らぬ疑念を抱く聖戦士が現れて、聖戦士の覚悟が揺らいでしまうので」
だから、他言無用でお願いしますね。
そう、ニッコリ微笑みながら。
……ああ、そっか。
だったら何でナラッカたちは、メギドがナラッカであることを主張しないんだと思ったけど。
多分、こういう風に限定的ではあるけどキッチリ明かして来たから、言っても無駄だから主張して来ないのか。
……なるほどな。
色々腑に落ちた。
しかし……
この子が会社経営し、箸袋を集めまくってるのも。
空腹を誤魔化すためなのかな……?
「会社社長してるのも、箸袋集めも、空腹のせいか?」
なんだか気の毒になって、俺はそう訊ねる。
だけど……
「会社経営は、美味しいものに出会うためと、趣味のためですよ?」
彼女から。
小首を傾げるかたちで。
……なんか、トンチンカンな答えが返って来た。