聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~ 作:XX(旧山川海のすけ)
俺は仕事だから調査して、その調査結果を依頼人に提出した。
結果、あの女は間違いなく離婚されるし、高確率で親権も持てず、財産分与も最小限で家を叩き出される。
破滅だ。
俺は仕事をしただけで、悪いことなんかしていない。
だけど……
間男はナラッカで、あの女を標的に積極的に誘惑したんだ。
しかもタケルさんの言葉で考えると、バレなきゃいい、じゃない。
最終的にバラすことを視野に入れてやったんだよ。
これは普通の不倫とは違うだろ。
誘惑に負けた女に責任が無いわけじゃないけど、間男の目的が普通と違ったんだから……
俺はどうすればいいんだろうか……?
いや、どうしたら良かったんだろうか……?
「御幸君、どうしたの?」
俺が事務所で事件を振り返りながら、依頼について記録する文書を自分のノーパソで書いていると。
市子に訊かれた。
えっ、と顔を上げると
「御幸君、ふさぎ込んでるように見えるんだけど」
図星で。
……言えないよ。
ナラッカのことを喋っても、信じて貰えるわけ無いし。
それにさ
『ナラッカのことは話さないでくれ。知らない方が良い事実だ』
……タケルさんに言われるまでも無いけど。
人を喰らう化け物が実在しているなんて、知りたくない事実だろ。
ただでさえ、生きている人間が恐ろしいのに。
そこに化け物だなんて。
知ったところでどうしようもないし。
不安が増えるだけだ。
人に化けているから誰がそうだか分かんないし。
目の前で正体を現されたら、逃げようがない。
……そういえば
(オイ、タケルさんよ。ナラッカの正体を暴くあの鈴って、無いの?)
呼びかける。
俺とタケルさんは、双方の思考は読めず、呼びかけようと思った思念だけが伝わる仕組みになってて。
最初は声を出して呼び掛けていたけど、今は何とかこういう風に静かに対話できるようになっていた。
タケルさんと出会ったとき。
タケルさんは多分鈴を使ってナラッカの正体を暴いていた。
それに対し
『魔鈴か。あれは確実に効果が出るものでは無いし、今は手元にないな』
えっ、鈴だろ?
アンタが死んだ場所に戻ればあるのでは?
そう思ったので訊くと
『使い捨てなんだ。傍にナラッカが要る状態で鳴らすと、崩壊する。そして鈴の音を聞いたナラッカが油断していれば、正体を現してしまう』
……ああ、そうなのか。
でも、ナラッカが近くに居るかどうかは分かるんだろ?
それだけでも有用アイテムだよな。
どこに行けば手に入るんだ……?
そう、訊こうと思ったが。
あ、聖戦士の使命を果たす気が無い奴が、メリットだけ享受しようって。
そりゃちょっと、ムシがいいな。
そう思ったので、その先は言えなかった。
だから
「間男がさ、破滅思考の奴で、人を不幸にするために不倫したとしたら、今回の事件、思うつぼなんだな、って」
市子の言葉に、もしもの話で返した。
事実は言えないからな。
「そう思える何かがあったの?」
それを受けての彼女の言葉に
「いや、そう思っただけ」
そう返した。
すると彼女は
「……仮にそうでも、御幸君が悪事に加担したことにはならないよ。探偵の仕事をしただけなんだから」
そう言ってくれた。
そして
「でも、もしそうなら……」
彼女は、パソコンで自分の仕事をしながら
「思い知らせてやりたいよね。法で守られて、合法的に他人を巻き込んだそいつにさ」
そう、言ったんだ。