聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「何ッ! 聖戦士!?」
俺に現場に踏み込まれ、いきなり戦闘を挑まれて。
ザントルマは必死で応戦する。
だけど……
(弱いな、こいつ)
弱い。
触手で俺の突きや蹴りを防ごうとするけど、まるで防げてない。
追いついて無いんだ。
特殊能力が厄介だけど、玲瓏で聖戦士の鎧を着装している俺には通じないし。
こいつとしては詰んでるのか。
何発も胴体や頭に打撃を喰らい、フラフラ状態になる。
こんなに弱いなんて。
運が良かった。
出先で遭遇したナラッカが強敵じゃ無くて。
そろそろ頃合いだな。
(メギドブラストで終わらせる)
『……ああ、そうするがいい。戦いは速やかに終わらせる。それが常識だ』
タケルさんのGOサイン。
俺は胸にエネルギーチャージを開始して……
そのときだった。
いきなり衝撃で吹き飛ばされたんだ。
吹き飛ばされ、壁に叩きつけられて。
混乱した。
何なんだ、と。
だけど……
顔を上げて、何が起きたのかを理解できたとき。
俺は信じられない思いを抱いていた。
「……まさかここに聖戦士が踏み込んでくるとは」
そこには鈴木社長が居た。
市子を抱えて、その状態で回し蹴りを繰り出した姿勢をとったまま。
それで俺の胴体が蹴り飛ばされた……!?
まず鈴木社長がそれをしてきたのが分からなくて。
ついでに言うと、鎧を着ている人間をぶっ飛ばす高威力の蹴り……
ハッキリ言おう。
人間じゃ無いだろ、これ。
……まさか……
『そんな馬鹿な。ナラッカが……』
脳内に響くタケルさんの動揺の声。
そう、常識外れだ。
……社長業をしてる人間が、ナラッカだなんて!
しかも、大企業の……!
俺の、いや俺たちの動揺が鈴木社長の姿をしたナラッカにも伝わったのか。
そいつは嗤った。
「……まさか大企業の社長業を、ナラッカがこなすことはできるはずがない……そう思ったか? それは決めつけであるな」
酷く恐ろしい笑みだった。
「何にでも例外がある。当然のことであるぞ。人間の戦士。聖戦士よ……」
そして市子を自分の後ろに下ろし。
こちらに向かって仁王立ち。
そのまま両腕を大きく広げて
「お見せしよう……! 吾輩の正体をッ!」
宣言。
それに
『わ、吾輩だとッ!?』
タケルさんの緊張感のある声が脳内に響き。
それで俺は、まさか……と思った。
脳裏に呼び起こされる、最初の光景……
不倫した女を人質にして現れ、タケルさんの弱点を突き。
タケルさんを容易く倒すに至った、上位のナラッカ……俺が最初に出会ったノーブルクラス……
鈴木社長の身体が真っ黒な闇色に染まり、その輪郭が爆発するように別の形に変わって行く。
それは……
暗黒色の鎧のような甲殻で全身を覆われた、蠅の怪人……
こいつの名は……
「吾輩は将軍ベルゼブ! ノーブルクラスの1人ッ!」
将軍ベルゼブ……
目立った特殊能力は持たないが、ナラッカ基準でもフィジカルモンスターという恐るべき相手……!
そんな奴が、鈴木社長の正体……!
名乗りを上げた将軍ベルゼブは声高く俺に宣言して来た。
「聖戦士よ! この女は貰い受けるぞッ!」
そんな、絶対に見過ごせないことを……!