聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第86話 たったひとつの勝ち筋

 俺の叫びが廊下に響き渡った。

 ガルザムは俺の言葉に一瞬だけ動きを止めたが、すぐに平静な声で

 

「感情的になるのは分かります。でも、今はそんな個人的な怒りに振り回されている場合じゃないでしょう?」

 

 彼女の声は冷静で、まるで俺を諭すような調子だった。

 それが余計に俺の神経を逆なでする。

 

「……個人的な怒りだと!? 市子があんな目に遭ってるのに、それを『小事』呼ばわりすることへの怒りが!? 聖戦士なら何でも許されるのかよ!?」

 

 俺は拳を握りしめ、ガルザムに一歩近づいた。

 彼女は動じることなく、ただ静かに俺を見据えている。

 

 そして俺を嘲るでもなく、呆れるでもなく。

 淡々と、諭す口調で

 

「あなたがどれだけ怒ろうと、現実は変わりません。ナラッカの帝王シャイタンが召喚されれば、市子さんだけでなく、この世界全てが終わりを迎えるんです」

 

 あくまで冷静に

 

「そしてそれを阻止できるのがあなただけだと、メギド様がそう告げたのです。個人的な感情を優先するのか、それとも大局を見て動くのか。それを選ぶのはあなた自身ですよ、瀬名さん」

 

 そう言って来た。

 俺は

 

「ふざけるなよ……」

 

 俺は歯を食いしばりながら呟く。

 

 確かに、天魔王シャイタンが召喚されたら終わりだ。

 それは分かってる。でも、市子を見捨てろって言うのか?

 

 あいつがナラッカのための道具にされる状況を考えるだけで、俺は怒りでどうにかなりそうになる。

 俺にはそんな選択認められない……

 

 けれども

 

 天魔王シャイタン召喚阻止の仕事を拒否して、将軍ベルゼブを討伐に向かっても。

 間違いなく返り討ちに遭う。

 

 あいつには何もかも負けている。

 

 格闘能力も……

 

 必殺技も。

 

 ……魔光壁。

 

 あれは俺の全開全力のメギドブラストでも撃ち抜けなかった。

 ということは、ナラッカ討伐の決め技が、あいつには使えないってことだ。

 

 ……無理だ。

 どうしようもない……

 

 だけど

 

 俺はそのとき

 

 アイツが言った言葉を思い出した。

 

 

 ――吾輩は芸の無いナラッカであるから、修行を重ね、体得したのだよ

 

 

 アイツの魔光壁は、先天的なものじゃないんだ。

 努力の結果、獲得した能力なんだ。

 

 だったら……

 

 俺だって、できるはず。

 

 何故って……

 

 メギドブラストは、魔光波と本質的に同じもの。

 

 ……なんだろ?

 

 だったら……

 

 ……やってやる!

 

『……ミユキ。落ち着いてくれ』

 

 俺が近衛戦士のガルザムに逆らって、事態が悪化することを恐れたのか。

 タケルさんが俺に宥める口調でそう言った。

 

 俺は

 

(悪い。心配しないでくれ)

 

 そう短く返して

 

 さらにガルザムに

 

「言われた仕事は必ずやる。やるから……」

 

 拒否を許さない強い口調で要求した。

 

「……俺の修行を手伝ってくれ。先に将軍ベルゼブを討伐出来るだけの必殺技を身に着けるんだ」

 

 将軍ベルゼブができたのだから、俺も同じことをする。

 それしか手が無いのだから、やるしかない。

 

 俺のそんな決意の籠った声にガルザムは

 

「……分かりました。ではその通りに」

 

 しょうがないな、という口調で認め

 

「……まずは急ぎましょう。全てはそれからです」

 

 そう言って、また走り出した。

 そして俺はその後ろに付き従っていく。

 

 走りながら、誓う。

 必ず将軍ベルゼブを倒すと

 

 ……だから待っていてくれ。市子。

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