聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~ 作:XX(旧山川海のすけ)
俺たちは地下牢へと続く階段を駆け下りた。
俺が先頭で、ガルザムとゼルノスが後ろ。
全員鎧を着装しているので、恐れが無い。
足音が石の壁に反響し、心臓の鼓動が耳に響く。
待っててくれ、市子。
無事でいてくれ……!
階段を下り切ると、薄暗い地下室が広がっていた。
あまり湿っぽさは無い。
作られたのが何時かは分からないが、石で出来ていた。
電灯の光が弱々しく揺れてる。
この先に牢屋があるはず。
俺は先を急いだ。
そして見つける。
青いワンピースを着た、ショートボブの女。
膝を抱えて座ってる市子だ。
「市子!」
俺は叫んで、鉄格子に駆け寄った。
市子が顔を上げて、俺を見た。
少し疲れた顔だけど、その目はしっかりしてる。
俺を信じて待っててくれた目だ。
「御幸君……!」
市子の声が小さく震えた。
「待ってろ!」
聖戦士の鎧を着装した状態で、上がった身体能力。
それで鉄格子の破壊を試みる。
これでダメならメギドセイバーを使用するか。
頭の片隅でそんなことを考えながら
思い切りこじ開けようとすると
……いけた。
簡単じゃ無かったけどな。
ふんぬうう、と鉄格子を純粋腕力で捻じ曲げ、なんとかヒト1人が抜け出せる隙間を作る。
「よし!」
少し息が上がった。
そして市子に促すと
市子が立ち上がり、牢を抜け出す。
俺は玲瓏を解除して、思わず彼女を抱き締めていた。
心配だったからな
「5日も待たせて悪かった。ごめんな、本当に……」
俺は彼女に詫びた。
やむを得ないこととは言え、置き去りにしたこと。
そして修行に没頭してたとはいえ、5日間も市子を牢屋に入れたこと。
自分の力不足からの後悔が押し寄せる。
だけど俺の言葉に市子は目を丸くした。
そして
「え……5日? そんなに経ったの?」
その驚いた声に、俺は少し戸惑った。
確かに、手帳に記録してたみたいだけど、時間感覚が曖昧になってたのかもな。
地下で昼夜も分からない状況じゃ、そうなるのも無理ない。
「ああ、市子を攫ったヤツを倒す修行に5日かかった。気づかなかったのか?」
俺がそう言うと、市子は少し目を伏せて、苦笑いした。
「手帳に記録してたけど、食事の回数だけで数えてたから……最初は警戒して食べなかったし、よく分からなくなってた。5日も経ってたなんて、びっくりしたよ」
強いな……
俺は彼女を純粋に尊敬した。
潰れないで5日間を耐え抜いたばかりか、こんなふうに笑って話せるなんて……
ウチの事務所の助手様は、頼りになるな。
本当に……!
「ありがとう」
お礼しか言えなかった。
市子は「何が?」って言ってたけど。
俺はもう1回、ありがとうと言った。
するとそこに。
ガルザムとゼルノスが近づいてきた。
「瀬名さん、藍沢さんは無事だったようですね」
ガルザムが静かに言う。
「では、長居は無用です」
ゼルノスは優しい声でそう急がせる。
……基本的にこの2人は、物腰は丁寧だったり優し気だったりだけど。
言ってることは極めて冷徹。
修行の際も、俺を急がせるようなことは一切言わなかった。
中途半端で向かっても、ベルゼブを討伐出来ないことを分かってたからだ。
市子の状態はほっとくとヤバイことは、女の身なら理解できるはずなのに。
全く「頑張れ」だの「時間がありません」だのと言わなかったんだ。
……これがベテラン聖戦士、いや……近衛戦士というものなんだろうか?
「市子、歩けるか?」
「大丈夫。いけるよ御幸君」
俺は市子にそう訊ね、歩き出す。
……なんとか市子を助けることは出来た……
今回の件で、ノーブルクラスのナラッカ2体の正体が判明した。
そしてそのうちの1体・将軍ベルゼブは倒した。
あと、1体……
法王バイル……!
俺は怒りに支配されそうになる。
アイツだけは……絶対に許せない……!