ウルク産地のアルトリア顔の女神様 作:へっぽこ女神
「あ、あの。マスター? 何故私の名前を──あっ、いえ、今記録が飛んできました大丈夫です」
システムを弄っている片手間に、私はきちんと本気を出せていたようだ。
きちんとウルクでの役割を成し遂げてギルガメッシュ王の最後を見届けてから死ぬことを選び。
カルデアを守るためゲーティアとの戦いに参加したという、記録が。
その時の記憶があるため、再び召喚された私はもはやいらない存在なのでは?
──ようやく気づいたの? と言わんばかりの顔をした子ギルが私の膝から降りて、五体投地で号泣し続けるマスターをよしよしと撫でている。
「ちなみにあと一週間でこのカルデアから退去だよ」
「そんなに時間が経っていたのですか?」
子ギルに指摘され、呑気に目を瞬いてしまった。
あれ、マジで私ここに必要ないのでは?
「あらあらあら! 慣れた気配がするかと思えばウルクのお人好しじゃない!」
「むっ、何故ここにいるのですかイシュタル……その依代、ちゃんとお話をしてから借りましたか? 無理やり強奪してないですよね?」
「ポンコツにもセイバーを依代にしてたアンタに言われたくないわ!!」
思わず子ギルより前へ出て、彼を守るように片手を伸ばしイシュタルを睨み付ける。
当然ながらも泣いているマスターもイシュタルの餌食にならないために。
「ハッ、アンタくらいなものよねぇ。ギルガメッシュなんかを守ろうとするの。女神のくせにこいつに一途に尽くして全部与えたから消えるしポンコツなのよ貴女は」
「そういうお前はうっかり度合いが増えたのでは? 記録にありますよ。ギルガメッシュ王の前でグガランナを出せませんと愚かにも泣いたうっかり女神」
「そんな前の話しないでくれる!?」
「過去の話をし始めたのはお前だろうイシュタル」
「上等よ!! このイシュタルに喧嘩を売るだなんて──いえ、アンタはいつものごとく売ってきてたわね。とにかくその喧嘩、買ったわ!」
宝石を手に浮かせてみせたその姿。
マアンナに乗るイシュタルに、子ギルはため息を吐いた。
そんな子ギルを見て、なんかまだ泣いてるマスターを見て私は心に決める。
「一週間でカルデアから消えるしかないとはいえ、私にやれるべき役割は残っていたようだ。……お前という強欲女神を退去させ、カルデアからギルガメッシュの不快なものを全て消し去るという役目が!」
「そういう過保護な所が金ピカを傲慢にさせたのよ!!」
「だれが過保護ですか!」
部屋の中で攻撃し始めたイシュタル。
閃光が瞬き、天舟の側面から光の矢を複数同時に曲射されたため、子ギルとマスターの身を守るために炎の壁を展開させる。
「シャマシュ、あまり熱くしないでくださいね。不快なので」
「分かりました。では物理的にいきましょうか」
「上等よ! その余裕そうな顔を剥がしてあげ──」
天井に金星を召喚し宝具展開してこようとしたイシュタル──その背後の扉が勢いよく開かれ、無理やり入ろうとしたせいでイシュタルが吹き飛んだ。
「失礼します! カルデアで火事発生と連絡が来たので様子を──先輩!? 何故五体投地で泣いているのですか!?」
マシュが惨状を見ることなくマスターに近づいたので、とりあえず床に倒れるイシュタルの足を掴んで逆エビ固め。
子ギルが「わーん、つー」とカウントしてくれたので喜んでそのまま力を強める。
「いっっ! アンタそんな下品な攻撃しないはずでしょどこでそれ習ったのよ!!」
「ウルクで起きたことは全て私の中にある。つまりケツァルコアトルから習ったこともな! 全部お前達のような害悪神を潰すために会得した力だ!」
「そんなことのために召喚し直しすんじゃないわよ!!」
「そんなことより先輩がレムレムし始めたのですが原因は分かりますか!!?」
騒動よりもマスターを優先するマシュにより、一度手を止めると、冷めた目で子ギルが顔を上げた。
「ただの泣き疲れでは?」
「あっ」
マシュがきちんと確認して、マスターの健やかな眠りにホッと安堵した。
「ちょっと! 足から退きなさいよシャマシュ!」
「煩いですね。もう少し強めにやりますか」
「なるべく長くお願いしますね!」
「はい。ギルガメッシュが望むなら」
「金ピカが言ったからって素直に応じるんじゃないわよこのウルクのポンコツ!!」