ウルク産地のアルトリア顔の女神様 作:へっぽこ女神
何度か行ってきたカルデアでの召喚。
ジャンヌを要求され、セイバー特攻に襲われて、英雄王に急かされ──。
まあいろいろあったが、藤丸立香はようやく一つの夢が叶った。
「よかった! 騎士王だよね! アルトリアなんだよね!!」
「は、はい。そうですが……いかがされましたか、マスター?」
「ギルガメッシュ王にセイバーはまだかと怒られまくってたんです!」
「あのっ……とても、なんというか。難儀でしたねマスター。それにしても、英雄王とまで契約するとは大したものです」
「えへへ、ありがとうアルトリア! じゃあギルガメッシュ王呼ぶね!」
「それはっ──」
「ギルガメッシュ王! おうさまー!!」
「止めてくださいマスター! 英雄王には会えません!」
「えっ、そうなの?」
「はい。その、なんと言いますか……彼の言動は慣れないもので……」
とても気まずそうに言うアルトリアに、藤丸立香は既視感を覚えた。
そういえばと、思い返すはプリテンダーのこと。
種火とフォウ君を部屋に大量に送ったけれど食べてくれたかなと、再臨により本来の力を取り戻して欲しいと願う一人。
彼女もまたギルガメッシュ王には会いたくないと言っていた。
ついでにマーリンにも会いたくないらしいが、ブリテンの関係者だろうかと。
「ねえアルトリア、君に似たサーヴァントについて知ってることはないかな?」
「私に似たサーヴァントですか。その者の名は?」
「まだ教えてくれるタイミングじゃないみたいで……」
「なるほど」
「騎士にも似てるけど、どことなく違うような気もするし──あっ、肩に炎がぶわって出てたよ!」
「私の知らない方ですね……」
「そっかぁ、じゃあマーリンを召喚したら何か分かるかな……ちょっと待っててね!」
藤丸立香が召喚したのは、アルトリアの見知った騎士達で。
モードレッドは反抗期か来てくれなくて、マーリンも流石に召喚されなかったが、それでも立香は喜んだ顔で「よろしくね!」と言っていた。
──余談だが、ダヴィンチちゃんに用があって不在であったマシュが勝手に召喚していた立香を見て「石を浪費し過ぎです先輩! あとそこで変な顔しないでくださいお父さん!!」と叫んでいた。
・・・・
「プリテンダー、か」
「どうかしましたか、我が王よ」
「いえ、私に似た者がいるとマスターから聞きましたが……複数の私がいるというのも驚きです。それと、プリテンダーという全く同一にしか見えない私もいると言っていたのが少し……」
ギルガメッシュとマーリンを毛嫌いする同一存在。
このカルデアであればアルトリアがオルタやら別クラスのサーヴァントやらと増えるのは仕方ないことかもしれないが、何か異なる事情があるのではと直感が囁いていた。
「会えるのであれば話がしたいですね」
アルトリアが呟きながらも歩いた先。
曲がり角にて見えた、あり得ざる光景。
明らかに騎士王と全く似た──しかし、若干幼い顔をした少女が、ジル・ド・レェに襲われかけている。
背後にいるガウェイン達も含めて、アルトリアが思わず剣を手に守ろうとしたが、それより先に彼女は動く。
「ぐはぁ!?」
彼女はまるで抜刀された剣のように、鋭い殺意を向けていた。
足元へ崩れ落ちたジル・ド・レェの頭を軽く足で踏み、冷めた目を向ける。
「一部の力であれば差し上げられるが、私の全てを望むのは傲慢すぎる」
「じ、ジャンヌ……」
まるでその目はアルトリア・オルタのように冷たくて。
騎士にしては少しばかり傲慢で、興奮したジル・ド・レェを見下ろすその表情はどこかで見た記憶のあるもの。
金色の、あまりにも会いたくない存在に似た眼差し。でもやはりアルトリアにも似た清楚かつ高貴な雰囲気。
「権能が欲しければあげましょう。私の力が必要であれば、望みを叶えましょう。ですがこの身体だけはあげられない」
ジル・ド・レェを踏んでいた足を下げて、一歩後ろへ下がった彼女はその小さな胸をはって言うのだ。
「この身は全てギルガメッシュのものです」
「えっ」
何故その名前が出てくるのかとアルトリアは驚愕する。
おそらくは彼女こそがプリテンダー。私に似た名前を明かせぬサーヴァント。
「何故、英雄王のものだと──」
何故か焦った様子をしたプリテンダーは、何かを考えて、視線をさ迷わせてから諦めたように口を開いた。
「……昔の話です」
「昔?」
「ええそう。もう終わったこと。私の身はギルガメッシュのものであることは変わりありません。これから先もずっと彼のためだけに存在する」
「なぜ────」
「結末が決まっているからです」
思い出すように懐かしむプリテンダー。
その目は──悲嘆、楽観、覚悟。全てを含んだもの。
「私は過去に英雄王と共に過ごしたことがあり、そうしてギルガメッシュと決別を果たして、消滅を待つだけの身体となった」
「消滅だと?」
眉をひそめたアルトリア達に、それは当然だと話す。
「貴女なら私の正体が分かるはずだ。私は王にならない者。神に至るもの」
思い返すは第六特異点で見てきた記録。神霊化した獅子王たる存在。
彼女のその断言は、同一存在にしかあり得ない。
私ではないが、私かもしれない。
ギルガメッシュに何をされた。このプリテンダーに、何が起きているのか。
謎を多く含ませた彼女の言動を問いただそうとして、マスターの悲鳴が響いたことで中断へ至る。
「マスターが呼んでいるみたいですね、騎士王」
「そうみたいですね、異なる私」
「プリテンダーと呼んでください。私は貴女とは違う。アルトリアにはならない」
「……また後で話をしましょう」
「やはり名乗れば良かったでしょうか……」
いやでも、シャマシュだと明かしたら消滅へ至る道が遠くなるだけでは?
人々の記憶や記録から自分という存在を──できればイシュタルとかドゥムジが先に消えてくれたら助かるが、神々の影響を受けない人類史を歩んでもらうために消滅しなくてはと焦る。
まさか召喚されるとは思わなかったもの。
召喚されたからには短い間でも楽しむかと思ったけど、五感を奪われたままだからなにも出来ないんだもの。おのれドゥムジめ。
「はやく強くならなくては……」
やるべきことはやって、消滅しよう。
そう思いつつ部屋へ入ったら、私室のベッドにちょこんと座る見慣れた小さな金色がいた。
「お帰りなさいシャマシュ」
「うわっ」
「久しぶりに会ったのにその反応はどうなんですか」
ぷんすか可愛らしく怒る金髪の少年、ギルガメッシュの幼い姿がそこにあったのだ。