宵闇奇譚   作:シュウ2026

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第16話

東方Project二次創作

宵闇奇譚

「第16話 1八雲藍」

 

「ルーミア気がついていたのですね」

 

八雲藍

幻想郷の賢者八雲紫の式神であり、幻想郷の管理人の一人、九尾の狐の妖怪である

 

「あぁ気づいてたよ

久しぶりだな

珍しい動物」

 

「なっ!?その2つ名はやめてと言っているでしょう」

 

藍の取り乱し方を見て射命丸文は複雑な表情だ

文々。新聞で八雲藍を事を珍しい動物と書いたのは他ならぬ文だったのだ

 

「何を笑ってるんですか!

射命丸文!貴方のせいでしょう」

 

「まぁそう怒るな

珍しい動物、そんなに怒る事ではないだろう」

 

「ルーミア!」

 

分かった、分かったとジェスチャーで示すルーミア

 

「それでそいつらを引き取りに来たんだろう?

引き出した情報は霊夢達にも還元してくれるんだろうな?」

 

「それは大丈夫です

それに紅魔館にもうニ羽の夜雀が捕まっていますよ」

 

ルーミアは納得したように「仲間を連れ戻しに来たのか」と呟いた

 

「じゃあその2羽の引き渡し要請は何故しなかったんだ?」

 

魔理沙が藍に尋ねる

 

「こちらも忙しくて確認が遅れました」

 

「まぁ紫は結界の補修で忙しいのだろう」

 

藍は驚いてルーミアを見る

 

「気づいていたのですか?」

 

「まぁな

あの夜雀達を見て気づいたよ

あんな数の妖精やグレムリンは幻想郷にはいない

それにどちらも見た事の無い種類の妖精やグレムリンだ

グレムリンと言ったが、魔界では紅魔館の小悪魔達と同種の生き物だ

彼らは本来は精神生命体に近い生き物で、肉体を持たないんだ

召喚者のイメージでこちらに呼び出される時にその姿になる

パチュリーだから少女風の姿になったが、あんな性悪な悪魔然とした姿に召喚するとは、召喚者はかなり歪んでいるな

それに私は夜雀をミスティアしか知らない

ミスティアの話では、人間に関わりを持ちたくない夜雀達が少数、妖怪の山で暮らしているらしいが、夜雀達が幻想郷に反旗を翻すとは思えないし、メリットも無い

消去法で外の世界からやって来たと考える方が早い」

 

藍は溜息をつき「本当に敵に回したくないですね」と漏らす

 

「今の私なら倒すのは難しくないだろ?

藍には勝てる気がしない

まぁ負けるくらいならトンズラするから、負ける気もしないがな」

 

「そう言う所です!!」と藍が声を上げる

 

「いいですか!ルーミア

昔の貴方なら負けたら潔く死を受け入れる

全力を尽くして満足できるなら負けて命を失ってもしょうがない

そんな破滅願望的な思想がありました!」

 

「確かに・・・そうだったな・・・」

 

藍の迫力に押されて、冷や汗で引いているルーミア

 

「今の貴方は違います

確かに全盛期の貴方より実力的は弱いでしょう

でも負けるくらいなら逃げると言い切れる

無駄に高い戦闘IQを戦闘以外にも使えるようになっている

メンタル面は今の方が強いくらいです

どんな状況でものらりくらりと逃げられる相手と戦いたいですか?

私はごめんですよ

毎回あと一歩で煙に、いや貴方の場合は闇に巻かれて逃げられる相手と戦いなんて思わない」

 

「それは私の場合だろう?

チビなら倒すのは簡単だろうに」

 

「おチビちゃんを舐めてはダメです

あの子なら最初から逃げの一手で戦いにすらなりません

あの子は幼いですが、スペックは貴方と変わらない

本気で逃げたら誰にも捕まえられませんよ

あの子は考えるのが面倒なだけで、思考レベルも貴方と同じなのです」

 

ルーミア自身、確かに自分よりチビの方が思考が柔軟だと思う事がある

人間を襲うのより共存した方が楽だとか、自警団に協力する方が得がある

人を襲い怨みを買うより、受け入れて貰った方が何かと都合が良い

とにかく面倒事を避ける事に躊躇いは無い

チビルーミアは幼い面に騙されやすいが、確かに思考レベルは高いのだろう

 

「うーん

思うところはあるな」

 

「貴方はおチビちゃんを含めて自己評価が低いのが問題ですよ」

 

「ところで話は変わるが、そいつらを引き渡した事で例のお話とやらは回避可能だろうか?」

 

藍は弱々しく首を横に振ると「無理です」だけ答えた

ルーミアは黙って天を仰ぐ

八雲藍に夜雀達を引き渡し、ルーミア達は紅魔館に辿り着いた

 

「久しぶりね

宵闇ルーミア、さっきの戦いは正攻法ながら見どころの多い戦いで中々面白かったわ」

 

レミリアがルーミア達を労う

確かに正攻法と言うか、集団戦法のお手本のような戦いだった

奇襲によって敵の隊列を崩し、その混乱に乗じてフランの乗せた魔理沙の高火力高機動で一点集中の中央突破、突破後に分身フランで包囲して広範囲に弾幕をばら撒き雑魚を一気に殲滅、その後に後方指揮をしていた夜雀達を撃破している

中央突破からの包囲殲滅と分断による各個撃破を同時にやってのけた稀有な事例だろう

これはルーミアと言うより、魔理沙とフランの戦術理解度が高かったからの戦果だろう

ルーミアの指示は確かに的確だが、どこを狙えなどの指示はしていない

つまり端的なルーミアの指示の意味を的確に理解し、もっとも効果的な行動している魔理沙とフランのお手柄である

では逆に夜雀達はどうすれば良かったのか?

理想は奇襲を受けない事だが、奇襲を予想していない状況だった

正解は一つ

奇襲を受けた時点で一時撤退しかない

紅魔館から距離を取り、後方で部隊を再編して体制を立て直す、撤退中に追撃を受けるが半分は生き残れただろう

そこで飯綱丸達予備戦力が効いてくる

撤退している敵を飯綱丸は見逃さない

文、椛、美鈴で撤退中の敵に奇襲攻撃仕掛けるだろう

そうしたら夜雀達は撤退ではなく敗走になるが、全滅だけはしなかった

飯綱丸なら全滅を狙わないからだ

椛の能力、千里先を見通す程度の能力があるから全滅させずに、敢えて逃がす事を選ぶだろう

敵がどこに逃げたかを椛に監視させ、可能ならば敵の居場所を見つけようとする

ルーミアは犬走椛を知らなかった

千里先を見通す程度の能力を知っていれば全滅を狙わなかった

知らない以上後腐れないように全滅させる方が、相手の戦力を削る意味で優れているのだ

本来戦術を選択する場合、ベストよりベター、ベターよりモアベターを目指す事が理想である

理想的な戦果より、もっともマシな戦果を選択する方が戦果は安定する

ベストな戦果、つまり理想的な戦果にはどこかでギャンブル的な不確定要素が発生する

ハズレを引いたら元も子もない

モアベター、つまりもっともマシな戦果なら当たり前に戦い、当たり前に得られる戦果である

戦術的勝利とは積み重ねて意味を持つ

積み重ねる為にはギャンブル的要因は排除しなければならない

戦略とは当たり前に勝てる状況を作る事であり、戦術とは当たり前に勝てる時に当たり前に勝つ事である

 

「藍にも言ったが私よりも二人を褒めるんだな

2人の戦術眼は確かだよ」

 

「当たり前じゃない

紅霧異変の時、私は霊夢の事を警戒してたけど魔理沙はノーマークだったわ

だけどパチェを撃破しフランを取り込んだのは魔理沙だった

計算外もいいとこ

霊夢ならパチェと咲夜の援護ありで戦えば勝てる算段だったのよ

咲夜の時止めの謎解きをしたのも、パチェを撃破して霊夢の援護に駆けつけた魔理沙だった

何もかにもが計算外、極めつけは紅霧異変解決後から何かと紅魔館に忍び込み、フランを無断であちこち連れ回すわ

美鈴や咲夜に見つからず地下図書館に忍び込み、本を黙って持っていくわ

しくじって見つかった魔理沙とパチェの魔法合戦は今や紅魔館メイド達の娯楽と化してる有様よ

どこかのネズミと猫みたく仲良く喧嘩してるわ

何から何まで予想の斜め上を軽々飛び越えて行くのが魔理沙よ」

 

溜息をつくレミリア

 

「でも魔理沙は死ぬまで借りると言う割には読み終わった本はちゃんと返すし、  持ち出し禁止の本は持って帰らないし、持ち出し禁止でも図書館で読むのは良いと言えば、大人しく図書館で読んでるわよ?

私達に見つからず本を持って帰ると言う遊びしているだけだわ」

 

パチュリーが魔理沙をフォローすると、レミリアはまた溜息をつく

 

「分かってるわ

パチェが本気で怒ってないからね

貴方寧ろ楽しんでるでしょ?

だから大目に見てるのよ」

 

「それにフランが優秀なのも当たり前じゃない

この私!レミリア・スカーレットの妹なのだから!」

 

高笑いをするレミリアを横目にフランは「これがなきゃ良いお姉様なのに」と呟くのだった




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