愛するNPCが現実化したら勝手にギスギスし始めた挙句バカ重い責任が生えてきた話   作:フォン・デ・ペギラパギラ

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どうしても書きたかった話。


閑話①:うんうん、そうだよね

 泣き腫らした目を擦ろうとするリュネの手を、要がやんわりと掴んで止めた。

 小さな指先が、目尻に触れる寸前で宙に留まる。

 

「ばい菌が入って腫れちゃうよ」

「ばい菌……?」

 

 きょとん、と丸い瞳が瞬いた。

 

 ああ、そこからか。と要は微かに苦笑してみせた。

 衛生の概念ひとつでも、この世界との隔たりを思い知らされる。

 

 けれどその無垢な疑問が、重く沈んでいた胸をほんの少しだけ軽くしてくれた。

 

 ――ここは、総帥の屋敷に隣接する新築の食堂。

 

 要の住む屋敷の一階から、渡り廊下風の階段を下りてすぐのところだ。

 

 天井は高く、梁の木目が蜂蜜を塗ったような艶を放つ。

 

 そこで、長机を囲むように、クーとクルル。

 そしてノインと白コートの集団が、静かに食卓についていた。

 

 しめやかに葬儀を済ませた後、「全員で食事を」と要が提案したのだ。

 会食しないと供養した気になれない――という要の、現代日本から持ち込んだ宗教観が何となくそうさせた。

 

 夕刻が近づき始め、空の端がうっすらと茜色に滲んでいる窓の外をちらりと眺めてから、要は問いかけた。

 

「おいしいか?」

 

 声は穏やかで、まるで遠足で弟に話しかける兄のようだった。

 

「……うん」

 

 喉が少し枯れ、掠れている。

 泣き尽くした後の、乾いた声。

 

 でもリュネの右手は食器を握り込むようにしっかり持っており、匙を口へ運ぶ動作にはちゃんと食欲が宿っていた。

 

 眼前を見ると、長机を挟んでクーとクルルが対面に座っている。

 

 静かに、礼儀正しく食事を取る。

 あんなに反りが合わないのに、箸を持つ手の角度も、咀嚼の間合いも、背筋の伸ばし方もよく似ている。

 

「……」

 

 ふと、リュネに視線を戻す。

 

 どう話しかけていいものか、と唇を結んだり緩めたりを繰り返す。

 

 しばし考え、要はそっとしておこうと結論付けた。

 下手な言葉より、隣にいることの方がきっと正しい。

 

 いつもは黄色い歓声を上げて騒ぎ立てる職員たちも、経緯を知っているためか、今日は静かに掃除や調理などの職務を全うしている。

 

(助かるなあ、ほんとに……)

 

 もう何百回目になろうかというみんなへの感謝の気持ちが、胸の奥にじんわりと染み込むように広がった。

 

 ――そうして、食べ終わりに差し掛かる頃。

 

 窓の外はすっかり日が傾き、橙色の光が食堂の長机に落ち、伸びている。

 食器の縁がきらりと光り、誰かが片付け始める静かな音が遠くで響いた。

 

 さて、という風に要が口を開く。

 少しだけ姿勢を正して、隣の小さな少女に向き直った。

 

「それで、リュネ……君のことだけど」

 

 言葉を選ぶ僅かな間。

 

「君さえよければ、このままエイシムで暮らさないか」

 

 安心させるように、ゆっくりとほほ笑む。

 

 リュネはぱちり、と驚いたように瞳を見開いた。

 

「え、なんで……?」

 

 頬に少しだけ朱が差す――申し出は嬉しかった。

 けれどその疑問には、『なんで自分なんかが』という凝り固まった卑屈がぎゅうぎゅうに詰まっていた。

 

 要はその心の機微を読み違えて、大袈裟に両手を振った。

 

「ああ、いやいや! お家に帰りたいなら、俺たちが取り返してあげるよ。全然! どっちでも!」

 

 苦々しげに笑う要。

 良かれと思って選択肢を広げたつもりが、どこかぎこちない。

 

 リュネは、しゅんと肩を落とし目を伏せた。

 まつ毛の影が頬に落ちて、小さな顔に翳りを作る。

 

「家には、帰りたくない……」

 

 ぽつりと零した言葉。

 

「あそこに一人は……ヤダ……」

 

 思い出すから。

 

 姉と笑い合った台所の匂い。

 母と分け合った硬いパン。

 冬の夜に身を寄せ合った中で聞いた寝息。

 

 楽しかった日々と、今の自分を対比してしまうから。

 その落差に、きっと押し潰されてしまうから。

 

 うるり、とリュネの強気な瞳が濡れた。

 涙腺の堤防がぎりぎりのところで揺れる。

 

「じゃあ、ここで暮らそう?」

 

 そっと、要はリュネの肩に手を置いた。

 

「……いいの?」

「もちろん」

 

 にこり。

 

 その要の笑みに迷いはなかった。

 

 リュネは今度は嬉しさと気恥ずかしさが同時に込み上げてきて、堪え切れず顔を伏せた。

 視線の先で、自分の膝に載せた手がきゅっと握られていた。

 

 ……クーとクルルは以前やらかした失態を思い出したのだろう。

 二人とも口を噤み、静かに食卓の上の何もない一点を見つめていた。

 

 リュネは、掠れた声で吐露する。

 唇が小さく震えていたが、その瞳には芯のある光が灯っていた。

 

「あのね……、カナメ兄ちゃんの役に立ちたい」

「え?」

 

 要は意表を突かれ、少し固まった。

 けれどすぐに柔らかく言葉を返す。

 

「いいんだよ、リュネはずっと辛い思いをしてきたんだから。ゆっくり暮らして」

 

 ぶんぶん、と幼い仕草で風を切るように首を振る。

 ばたばたと茶色い髪がはためく。

 

「ううん……みんな、お仕事してるんでしょ?」

 

 そういって辺りを見渡す。

 忙しそうに動く職員たちの背中を、リュネの猫のような目がひとつひとつ追いかけた。

 

「リュネもお仕事したい」

 

 要への献身欲もある。

 けれどそれ以上に、何かをしていたいという強迫的な衝動が見え隠れしている。

 きっと、複雑な感情をひと時でも拭い去りたいのだろう。

 

 要はその深いところにある本当の願望を察して――でも気づかぬふりで通した。

 

「ううん、そうだな……」

 

 要の頭の中であまたの可能性が巡る。

 

 軍部……ダメ、危ない。というか論外。

 暗部……もっとダメ。

 インフラ系……専門的すぎる。イナに電気の概念を習うリュネの姿が浮かんで、すぐに消えた。

 庶務系……うーん。これかな。でも、それでいいのか。

 

 悩んでいるそのとき。

 

 対面のクルルから、少しだけ言いづらそうに小さな声が飛んだ。

 黒い犬耳がほんの少し倒れている。

 

「その、リュネですが……以前の確認の折、魔法適正があると診断されています」

「え、そうなんだ……すごいね」

 

 そう言ってリュネを見る。

 当の本人は、何のことか分からないとばかりにかくんと首を傾げた。

 

「……じゃあ、ラズのところ?」

 

 クーが重ねて聞く。

 

「魔導科学総合研究院の院生扱い、でしょうか?」

「うん、それがいいんじゃないかな……、いや、かなりいいかも」

 

 ただの思いつきだったが、要は口にした瞬間から、徐々にそのアイデアに確信が生まれてきた。

 

 この世界において魔法の重要度こそよく知らないが、きっと潰しが効くだろう。

 将来リュネに何か別の目標や夢ができたときに、その土台は大いに助けになるに違いない。

 

 子供は勉強だな、と胸の中で頷いた。

 

「魔法を勉強してみようか」

 

 そう言ってリュネを見る。

 

 リュネは小さく、「勉強……」と口の中で声を転がした。

 視線が落ちる。

 

 自分にできるのか、という不安。

 目の前に、すっと道が敷かれた希望。

 

 その両方が混じった複雑な感情を映していた。

 

「……といっても、まずはラズも含めて、組織を元の体系に戻してからだな……」

 

 小さく息を吐き、苦い顔を作る要。

 やるべきことが、ふいに視界の端に積み上がる。

 

「しばらくは俺の手伝いをしてもらおうかな」

 

 リュネは少し目を見開くと、ほんのちょっとだけはにかんだ。

 花の蕾のような微笑みだった。

 

 要は柔らかに微笑みながら、胸の内でこっそり付け足す。

 

(とはいえ、俺も大体は暇なんだけど……)

 

 少しの間、リュネと見つめ合う。

 それから要は思い出したように付け加えた。

 

「他に困ったこととか、気になるところとかない?」

 

 リュネは、うーんと小さく唸って頭を悩ませる。

 特に無いなら無いでいいのに、実直にも一生懸命考えている。

 

 その生真面目さが微笑ましくて、要は口元を緩めた。

 

 あ、と一つ思い出したようにリュネが顔を上げた。

 

「……お風呂」

 

 そう呟いた瞬間、リュネの眉根がきゅっと寄った。

 

 そもそも入浴という習慣すら希薄だったのに、寄ってたかって職員に洗濯物みたいに押し洗いされた記憶。

 泡だらけにされ、何人もの手で頭からつま先まで磨き上げられた、ちょっとした恐怖。

 

 苦手。そう、ただそれだけ。

 

 しかし要は、リュネの一言から、あろうことかとんでもない方向に想像を飛躍させていた。

 

 情景が浮かぶ。

 

 共同風呂。

 湯気の向こうに、ずらりと並ぶ女性職員たちの肢体。

 その真ん中にぽつんと放り込まれた小さな子供。

 

 リュネにとってはさぞ居心地が悪かろう、と。

 

「ああ~、まあそうだよね。お姉さんに囲まれると、恥ずかしいよな」

「?」

 

 リュネはそのままの無表情で、首を小さく傾げた。

 話が噛み合っていない。

 

 けれど要はもう自分の解釈に深く頷いてしまっている。

 

 ぽん、と思いついたように膝を叩いた。

 

「よしわかった――じゃあ今日は俺と一緒に入ろうか」

 

 しん、と。

 

 沈黙が降りた。

 

 食堂の空気が一瞬にして凍りつく。

 

 匙を持つ手が止まる。

 食器の触れ合う音が途絶える。

 

 たっぷり三秒。

 永遠にも似たその静寂の後。

 

 クーとクルルが揃って、けたたましく机を鳴らしながら立ち上がった。

 がたんッ、と椅子が膝裏に押されて、ずしゃあと石畳の上を滑る。

 金の犬耳と黒の犬耳が、同時にぴんと逆立っていた。

 

 ノインや白コートの職員たちも目を真ん丸に見開いている。

 ノインの薄黄緑色に光る瞳が、真ん丸に、常時よりも一際強く輝いていた。

 

「ご、ご主人さま……!?」

「あ、あ、主……その、それは……」

 

 二人の声が重なり、見事にハモる。

 仲が悪いのにこういう時だけ息が合うのだから不思議なものである。

 

「どうしたの?」

 

 何でもないように問いかける。

 きょとんとした顔が、かえって二人の焦燥を煽った。

 

 クルルが目を左右にしきりに泳がせながら、しどろもどろに答える。

 普段の凛然とした態度が嘘のように崩れている。

 

「いえ……その、問題が……あるというか、その」

 

 言葉を探す少女の頬が、微かに赤い。

 

 クーも同様だった。

 いつもは完璧に制御された表情が、今は薄氷の上でぐらぐらと揺れている。

 

 要は笑った。

 何を大げさな、という屈託のない笑顔。

 

「あはは、何が問題なんだよ……なあ」

 

 そう言ってリュネに同意を求める。

 

 リュネはそう問いかけられて、一瞬目を白黒させた。

 

 頬が薄く染まる。

 唇がわずかに開き、何か言いかけて、閉じた。

 

 その猫のような目に、色々な思考の渦が一瞬にして流れる。

 

 恩義。

 返礼。

 そして、一握りの打算。

 

 何かを決めたように、小さな顎がきゅっと引かれる。

 

「うん――わかった」

 

 そう言って、きゅっと唇を結んだ。

 その横顔に宿った決意の色は、とても風呂に入るだけの覚悟には見えなかった。

 

 にこやかに笑う要に、もう誰も何も言えなくなった。

 

 クーとクルルは互いに視線を交わし――おそらく転移以来はじめて、利害の完全なる一致を見た。

 

 

 ***

 

 

 大量の湯気が舞っている。

 ここは総帥用の浴室。

 

 当初は狭い部屋に、大きな木の掛け湯があるのみだった。

 しかし今では、木と石をふんだんに使った素朴かつ優雅な浴槽となっている。

 

 湯の香りに混じって、どこからか檜に似た芳香。

 要が浸かってもまだ五、六人分はゆうに余るほどの広さがある浴槽。

 

 湯面から立ち昇る蒸気が、天井の梁のあたりでゆるやかに渦を巻く。

 

 ――はあ、と要は深く息をついた。

 

 浴槽の縁にもたれかかり、湯の中でゆったりと四肢を伸ばす。

 総帥という重い荷を、その衣服ごと脱ぎ捨てたかのような解放感が全身を包む。

 湯の温もりが凝り固まった筋肉を緩ませ、肩の力が抜けていく。

 

 要にとってこの浴場は、わずかに許された聖域のような場所だった。

 

 目を瞑りながら、ふっと笑みを浮かべる。

 

 今日はリュネも入ってくる。

 少しだけ心が跳ねた。

 

 何故か、()()()()()()()と言われたのが気にかかるが、まあ子供なりの準備があるのだろう。

 

 きっと――()()()語らい合えることも多いはずだ。

 

 まるで、年の離れた()と接するように、と要はそう思っていた。

 

 湯の中で指を組み、天井をぼんやりと見上げる。

 

 将来の夢の話でもしようか。

 ゲームの話は通じないだろうが、好きな食べ物の話くらいならできるはずだ。

 

 もしかしたら気の置けない仲にでもなるかもしれない。

 ちょっとした冗談でも交わす関係性にでもなれたら――と、要は純粋に夢想した。

 

 ……要は、知らず同性に飢えていた。

 贅沢なことだ。

 

 そうしていると、がたん、と脱衣所の扉が開く音がした。

 

 要が視線をやると、濃い湯気の向こうに小さな人影があった。

 

 白い靄のヴェールの奥で、するする、と足音もなく近づいてくる。

 湯気が薄い衣のようにその輪郭を包み、隠し、ゆっくりと解いていく。

 

「ああ、いらっしゃ――」

 

 優しい笑みを作った要。迎え入れるように片手を上げかけて。

 その笑みが、一瞬で凍った。

 

「カナメ、兄ちゃん……」

 

 リュネだ。

 浴槽のすぐ横に立っている。

 

 一糸纏わぬ、生まれたままの姿。

 

 湯気の合間から現れたその肢体は、細く、けれどそこまで痩せさばらえているというほどではなかった。

 

 薄い肩から腕へ流れる線は華奢。

 僅かに上気した肌は滑らかで、ほんのりと蜜色に艶めいていた。

 

 均整が取れているという訳でもない。

 まだ幼さの残る、どこか未完成な輪郭線。

 

 しかし、素朴な野の花が、何の飾りもなく蕾を揺らしていた。

 

「……」

「?」

 

 固まった表情で押し黙る要。思考が停止している。

 

 リュネは、何かを待っている顔。

 

 俯きがちに、けれど上目遣いに要を見上げる。

 まつ毛の影が頬に落ち、潤んだ瞳がちらちらと揺れる。

 

 きゅっと、白い指先が胸元の翡翠色のネックレスを握った。

 

 何かを祈ったのか。

 それとも、願を掛けたのか。

 

 そして。

 

 隠すように前にやっていた細い腕を、するり、と背中に回した。

 灯りが湿った肌の上をなぞり、陰影が柔らかな起伏を描き出す。

 

 もじもじ、と腰が揺れる。

 つま先が内股に寄り、膝が僅かに触れ合った。

 

「あの、ね……」

 

 ぽつり、と。

 濡れた石畳に落とすような、小さな声。

 

()、頑張る……」

 

 紅潮した頬。

 耳の先まで朱に染まる。

 

 しかしその瞳には、薄紅色の覚悟がしっかりと色づいていた。

 

 震える体とは裏腹に、視線だけは真っ直ぐに要を射抜いている。

 

 ――あなたになら、いいよ。

 そう言わんばかりの。

 

 沈黙が、水面を伝う波紋のように広がった。

 

 ……ようやく時が動いたかのように。

 

 唖然と口を開いた要の瞳が、意志とは無関係に――湯気の隙間から覗くリュネの姿を、何度もぐるりと往復した。

 

 そして最後――ある一点に視線が注がれた。

 

 その露骨な視線に気づいたリュネが、ちょっとだけ怖気るように揺らいだ。

 腕が反射的に体の前に戻りかけて、けれど途中で止めた。

 

 その仕草がまた、痛いほど健気で。

 

 ――そして。

 

 要の脳内で、全てのピースが音を立てて嵌まった。

 

 全部が全部、一本の線で繋がった。

 

 理解が回った瞬間。

 

「――女の子やないかい!!!!!」

 

 ばしゃーーーん!!!!

 

 要は浴槽の湯の中に倒れ込んだ。

 盛大な水柱が天井に届かんばかりに跳ね上がる。

 

 ぶくぶくぶくぶく、と肺から漏れる空気が水泡と成す。

 

 その叫び声は屋敷中に響き渡ったに違いない。

 浴室の扉がけたたましく蹴り開けられた。

 

「ご主人さまッ!! いかがされましたか!!」

「主!! どうしたのですか!?」

 

 湯気を切り裂いて、金と黒の少女が滑り込んできた。

 

 クーの手には日本刀が煌めき、クルルの赫い瞳は臨戦態勢の鋭さで室内を走査している。

 途端に脱衣所から冷たい外気が流れ込んで、もうもうと漂う湯気を渦巻かせた。

 

 ……何故、この速度で駆け付けられたのか。疑問である。

 

 異常を察知した職員たちも、どたどたと足音を響かせて集結しはじめる。

 浴場の入口に人だかりができ、覗き込む顔、顔、顔。

 

 リュネもあわあわと慌てふためき、湯桶を掴んで胸元を隠した。

 この展開は想定外だったようで、猫のような瞳がきょろきょろと救いを求め泳いでいる。

 

(もう死にたい)

 

 ――その騒然とした声、飛沫、駆け寄る足音。

 

 全ては湯の膜一枚の向こう側で鳴っていて、ぼんやりと遠い。

 

 要は水中で目を開けた。ゆらゆらと水面が揺れる。

 

 もうしばらく、このままでいよう。

 

 浮上したら最後、あの目が待っている。

 蒼い瞳と赫い瞳のあの尋問にも似た視線が。

 

 要は静かに胸の内で泣き言を洩らす。

 

 できることなら、このまま水底で暮らしたい、と。

 




……何すか。いいじゃないすか別に。
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