愛するNPCが現実化したら勝手にギスギスし始めた挙句バカ重い責任が生えてきた話 作:フォン・デ・ペギラパギラ
STRICTLY CONFIDENTIAL / SPSB-0
取扱区分:極秘(STRICTLY CONFIDENTIAL)
開示制限:総帥、または総帥より明示的に権限付与された者に限定
文書状態:現行運用版(暫定)
【1.個体識別情報】
個体識別番号:ASIM-ECRO-00-001
本個体は、超常統合管理機構(Authority for Supernatural Integration Management、以下ASIM)において登録された特別要員のうち、総帥付特別緩和室(Executive Comforting Reserve Office、以下ECRO)管轄下で唯一正式登録された存在である。
識別番号末尾の連番「001」は、登録順序を示す管理番号であると同時に、同室における唯一の在籍個体であることを事実上意味する。
名称は「ベル=ベル」。通称「ベル」。
外見年齢は幼児期後半から児童期初頭相当と推定されるものの、実年齢、出生、発生経緯はいずれも不明である。
なお、伝承資料および概念解析班の暫定報告に基づき、本個体の存在年数は少なくとも数千年規模に及ぶものと推定されている。*1
性別は女性。身長は約120cm。
また、本個体の帰属経緯についても以下に概括する。
本個体が総帥の管轄下に入った契機は、天界軍および魔界軍の全面衝突に端を発する広域概念戦争(通称「天魔大戦」)にASIMが介入した際の事象に遡る。
当該戦役においてASIMは双方の戦力を制圧し事態を終息させたが、その過程において、総帥自身が魔界深層領域「メルギノーラ」の最奥部にて本個体を発見した。
発見時、本個体は自発的活動の兆候を一切示さず、長期にわたり静止状態にあったものと推定される。
総帥は討伐ではなく帰属を選択し、以降、本個体はASIMの管轄下に置かれている。
なお、本個体が発見された当該領域は、天界・魔界双方の正規軍が到達を回避していた区域であり、その理由について、回収された天界側の軍事記録には「あの奥には、触れてはならぬものが眠っている」とのみ記載されていた。
【2.所属および役職】
本個体はASIM直轄の特別単独機関である総帥付特別緩和室(ECRO)に所属し、現在は特別緩和官の職位にある。
ECRO自体が本個体の在籍を前提として設置された機関であり、他の配属人員は存在しない。
表向きの担当業務は、総帥の精神的負荷の緩和、休養環境の整備、およびヒューマンリソース管理の補助とされているが、実態としては総帥の傍らにおいて常時睡眠状態にあることがほぼ全てであり、規定上の業務遂行が確認された事例は極めて限定的である。
なお、本個体の処遇および当該機関の存続に関しては、他部局の幹部職員より継続的に異議が提出されているが、総帥裁可により全て却下されている。*2
【3.外見的特徴】
本個体は、白色の毛髪および灰色の虹彩を有する。
毛髪は緩やかな曲線を描く長髪形状を呈し、全体に嵩高い質感を持つ。遠距離からの視認時には毛玉状の塊として認識される場合がある。
体格は小柄かつ華奢であり、幼女と形容される外見的印象を有する。
なお、頭部には山羊に類似した一対の角状突起が確認されている。
常時着用する衣装は、ポンチョに類する毛質素材の装飾的衣服であり、睡眠を前提とした設計が施されている。当該衣装は総帥裁可特別支給装備として扱われている。*3
本個体の周囲には、恒常的に静謐かつ冷涼な気配が漂うことが複数の職員により報告されている。この現象について、当該気配に長時間曝露された職員が意識の鈍麻および一時的な睡眠誘発を経験した事例が記録されており、本個体に起因する受動的影響であると推定されている。*4
【4.性格および行動特性】
本個体の行動原理は極めて単純であり、かつ他のいかなる個体とも異質である。
すなわち、ASIM総帥個人を世界における唯一の有意な定数として認識し、それ以外のすべて(同僚、組織構造、外的脅威、自身の安全を含む)を本質的に無関心の対象としている。
この態度は、一般的な敵意や軽蔑とは根本的に異なる。本個体にとって総帥以外の存在は、評価以前の段階において認知の閾値を超えていない可能性が高い。同僚の名称・容貌・役職等を記憶していない事例が恒常的に確認されており、繰り返しの紹介にもかかわらず改善は見られない。
総帥に対しては「パパ」の呼称を用い、緩慢ながらも明確な親愛の情動を示す。自発的に総帥の身体に接触し、膝上、肩上、背部等の高所に登り睡眠しようとする行動が頻繁に観察されている。
なお、この行動は本個体の本来の性質を鑑みれば極めて異例であり、本個体が自発的に移動すること自体が、機構内部において「稀有な事象」として認識されている。
対外的な言動は緩慢であり、発話は短く途切れがちで、常時強い眠気を帯びた語調を用いる。意思伝達の即時性は著しく低い。
総帥が直接的に指示を発した場合に限り、極めて緩慢ではあるが確実に実行へ移行する傾向がある。その実行精度のみでは、覚醒時において他の幹部級個体と同等もしくは上回ると評価されている。ただし、本個体が当該状態を維持可能な時間は著しく短く、特性上の制約から長時間の集中的行動は期待できない。
【5.能力・戦闘関連情報】
本個体の種族、能力、戦闘特性、装備、固有技能、ならびにそれらに付随するすべての情報は、軍事最高機密区分に指定されており、ASIM内部規定に基づき本プロファイルから除外されている。*5
ただし、組織安全上の観点から、以下の概括的記述のみ本書への記載が許可されている。
本個体は、伝承上「怠惰の邪神」として参照される存在と高い一致率を示す。
古来より『最も禍々しく、最も静かなる終焉』と伝えられ、その身じろぎ一つで数多の文明が凍土に沈み、ただ"在る"だけで世界が脅威に晒されたとする記録が複数の文明圏の遺構から確認されている。*6
よって本個体の潜在的影響範囲は、暫定評価において大陸規模に及ぶものとされている。
上記の性質上、本個体は原則として平常時の戦闘運用を想定されておらず、その必要が生じた場合は総帥の直接裁可を絶対条件とする。
また、本個体の覚醒状態における周囲への非意図的影響については、統合武力管理庁 戦力評価統括課が継続的に監視を行っている。
詳細は、以下の文書群にて管理されている。
参照文書番号:ASIM-IACA-005-0001〜0016
文書区分:CLASSIFIED INFORMATION / IACA
管轄:統合武力管理庁 戦力評価統括課
【6.心理傾向・内部リスク評価】
当該情報は、組織運用上の重大なリスク情報であると同時に高度個人情報に該当するため、指定機密区分に分類されている。*7
ただし、組織安全上の要請に基づき、以下の概括のみ本書への転記が認められている。
本個体は、総帥の存在を"世界に先立つ前提条件"として処理しており、これは忠誠や依存とは異なる構造を有する。
すなわち、本個体の認知体系において総帥は「変数」ではなく「定数」として固定されており、その存在の有限性や可変性に対する認識が欠落している可能性が指摘されている。
この認知構造は現時点では安定しているが、何らかの契機により当該前提が崩壊した場合、本個体の行動予測は極めて困難となる。
当該リスクの詳細評価および対応計画については、以下の参照先文書を確認のこと。
参照文書番号:ASIM-PSY-00-048
文書区分:EYES ONLY / SPSB-0
管轄:総帥付特別近衛保全局 内部評価班
【7.総合評価】
本個体は、ASIM内において最も特異な位置づけにある存在である。
組織的貢献は通常の評価基準においては測定困難であるが、総帥の精神的安定に対して不可代替の機能を果たしていると評価されている。
一方、本個体の潜在的戦力は大陸規模の脅威排除を単独で実行し得る水準にあり、その運用判断は組織全体の存亡に直結する。
本個体の運用にあたっては、総帥との関係性の恒常的維持、および本個体の認知体系に対する変動要因の管理に最大限の注意を払う必要がある。
本個体が自発的に行動すること自体が、現行の安全管理上、注視すべき事象であることを付記する。
補遺:伝承整合性に関する注記
本個体の名称および属性について、複数の文明圏より伝承・碑文・封印記録が回収されており、魔導科学総合研究院(IAAS)概念解析班が照合作業を継続中である。現時点で一致率の高い伝承名は以下のとおりである。
——『怠惰の邪神』
——『静寂なる終焉』
——『眠りて世を閉ざす者』
いずれの伝承においても、本個体に相当する存在は「意図的行動を取らない」ことが共通して記述されており、現在の行動特性との整合性は極めて高い。
なお、本個体が総帥に対してのみ自発的行動を示す現象は、いかなる伝承にも先例が確認されていない。
— End of Document —
ASIM-SPSB-CL-0312 / Rev.1.0
Document Status:Active
Managed by:Special Protective Security Bureau 0
改訂履歴:
Rev.1.0 新規作成(重要ステークホルダーからの情報開示要請対応 ※本書は外部開示資料作成のための内部参照文書である)