愛するNPCが現実化したら勝手にギスギスし始めた挙句バカ重い責任が生えてきた話 作:フォン・デ・ペギラパギラ
STRICTLY CONFIDENTIAL / SPSB-0
取扱区分:極秘(STRICTLY CONFIDENTIAL)
開示制限:総帥、または総帥より明示的に権限付与された者に限定
文書状態:現行運用版(暫定)
【1.個体識別情報】
個体識別番号:ASIM-SRPRA-00-050
本個体は、超常統合管理機構(Authority for Supernatural Integration Management、以下ASIM)において登録された特別要員のうち、社会福祉広報庁(Social Relief & Public Relations Agency、以下SRPRA)に所属する幹部級個体である。
名称は「ノイン=エリス=アウクトリア」。通称「ノイン」。
なお、名称末尾の「アウクトリア」は出生時から付随するものではなく、本個体が自発的に選定し、自身に付与した称号である。*1
外見年齢は十代前半相当と推定される。ただし、本個体の肉体は細胞老化が完全に停止しており、この外見年齢は今後も変化しないものとされている。
実年齢、出生地、出自はいずれも不明である。生体的起源は人間種と推定されているが、現在の肉体構造は後述の変容を経て原種から大きく逸脱しており、生物分類上の帰属は未確定のまま据え置かれている。
性別は女性。身長は約150cm弱。
本個体の来歴について、判明している範囲で以下に概括する。
本個体は、時期・経緯ともに不明の段階において高致死性の自己増殖型因子(以下便宜上「ウイルス」と表記)に侵蝕された。当該ウイルスは宿主の肉体を反復的に崩壊させるが、同時に過剰な再生能力を付与するという特性を有しており、本個体は「死に至ることもできず、崩壊と再生を無限に繰り返す状態」に長期間置かれていた。
この状態からの解放は、ASIM総帥の直接介入によって実現されている。総帥がウイルスの制御機構を本個体自身の意思下に再統合したことにより、崩壊と再生の循環は本個体の随意制御下に移行した。
以降、本個体は総帥を「救世主」として位置づけ、ASIMへの帰属を自発的に選択し、現在に至っている。
【2.所属および役職】
本個体はASIM社会福祉広報庁(SRPRA)に所属し、生命倫理監督官の役職にある。
SRPRAの長官職は福祉広報長官兼対生存危機顧問セラフィエル(以下「セラ」、識別番号:ASIM-SRPRA-00-001)が務めている。しかしながら、本個体は同庁における宗教活動および医療倫理分野において独立的な権限運用を行っており、長官の直接指揮下にあるとは言い難い実態が認められる。
この独立性は、後述する本個体主導の宗教組織の存在に起因するところが大きい。
加えて、本個体はSRPRA内部において「聖護免疫向上学会」(通称「護疫学会」)なる宗教組織を独自に設立し、運営している。当該組織は総帥の承認を経て設立されたものであるものの、その運用と組織的正当性については議論の余地が残る。現時点では事後的に黙認されている状態にある。
護疫学会は総帥の前承認を経ずに以下五段階の階梯構造をノインの手によって後発的に付与された。
第一階梯「ケアラー(Care)」——初期信者および見習い。医療補助・患者対応を担う洗礼前段階。
第二階梯「レメディア(Remedia)」——治療担当。教義を医療倫理として理解する段階。
第三階梯「アービター(Arbiter)」——判断権保持者。救済対象の選定、すなわち「誰を救い、誰を切るか」を決定する権限を持つ。
第四階梯「アウクトリア(Auctoria)」——創始者にして教義の体現者。現在、ノイン本人のみが該当する。本個体の名称末尾はこの階梯名に由来する。
最高位「サルヴァトリア(Salvatoria)」——救済体系そのものを代表する称号。本個体はこの称号を総帥にのみ付与されるものと定義しており、他の何者にも授与されることはないとしている。
当該組織の実態については、医療支援機能としては一定の有効性を示す一方、その教義体系は本個体の個人的信仰に強く依存しており、組織としての安定性には懸念が指摘されている。*2
【3.外見的特徴】
本個体は、白色で短めの不揃いな毛髪および薄黄緑色に発光する虹彩を有する。
毛髪は光を通さない質感を呈し、整髪の意図が見られない粗雑な形状をなしている。虹彩の発光はウイルス因子の侵蝕に由来するものであり、感情の変動に応じて輝度が増し、強い感情下においては真緑色にまで変色することが確認されている。
体格は細く、健常な個体と比較して痩身である。肌は土気色を呈し、眼窩周囲には恒常的に濃い隈が認められる。これらの身体的特徴は、肉体が常時「微細崩壊と再生」を繰り返していることに起因すると推定されている。
常時着用する衣装は、白色の大型フード付きミリタリージャケット。当該ジャケットにはSRPRA聖疫救済官としての身分を示す金の刺繍が華美に施されており、本個体にとっては制服であると同時に信仰の象徴としての意味を持つ。
背部には荘厳な意匠の両手用メイスを常時装備している。当該装備は総帥より下賜されたものであり、本個体はこれをパラディンとしての信仰的行動の象徴として扱っている。*3
【4.性格および行動特性】
本個体の行動原理は、他の幹部級個体と比較して最も強固な信仰的構造に基づいている。
ASIM総帥個人に対しては、「ぬしさま」の呼称を用い、救世主としての絶対的な崇敬を示す。本個体にとって総帥は、永劫の苦痛からの解放を実現した唯一の存在であり、この認識は揺らぐことのない前提として行動の全域に影響を及ぼしている。
総帥の傍に控えることを最上とし、穏やかで従順な態度を保つ。口調は幼く、たどたどしく、特徴的な話し方である。
しかしながら、この穏やかさは条件付きのものである。総帥への罵倒、信仰の否定、あるいは総帥の安全を脅かす事象に対しては、即座に著しい攻撃衝動が発現し、暴走状態に移行する。この遷移は段階的ではなく、トリガーへの接触から暴走への移行がほぼ瞬時に生じる点が特に留意を要する。
本個体の内面には、以下の信仰的前提理論が確認されている。
一、総帥は救いそのものである。
二、救いは耐え抜いた者にのみ与えられる。
三、苦痛は通過儀礼であり、選別である。
四、自分はそれを耐えた。
五、ゆえに自分は「選ばれた」存在である。
上記の前提理論は本個体の行動の根幹をなしており、護疫学会の教義体系もこの構造から派生したものと評価されている。
なお、近時において当該前提に微小な変動が確認されている。総帥が特定の庇護対象個体に対し、苦痛の通過を経ずして救済を施した事例が発生したことにより、本個体の「苦痛なき者は選ばれ得ない」という前提が部分的に揺らぎを見せている。現時点では破綻には至っていないが、この揺らぎが護疫学会の教義運用に影響を及ぼしつつある兆候が認められる。*4
対外的な行動については、組織の方針決定過程を経ずに「好ましいと判断した行動」を独断で実行する傾向が顕著である。護疫学会の階梯設立(自身の階梯名の自己付与含む)から、庇護対象への独断的な「救済」行為の着手など、総帥の承認を得ない先行行動が複数確認されている。
これらの行動は悪意に基づくものではなく、本個体の信仰体系に照らして「善」であるとの確信のもとに遂行されている。しかし、その「善」の定義が人間一般の倫理基準から乖離しているため、結果として組織運営上の混乱を招く事例が発生している。
【5.能力・戦闘関連情報】
本個体の種族、能力、戦闘特性、装備、固有技能、ならびにそれらに付随するすべての情報は、軍事最高機密区分に指定されており、ASIM内部規定に基づき本プロファイルから除外されている。*5
ただし、組織安全上の観点から、以下の概括的記述のみ本書への記載が許可されている。
本個体は、ウイルス因子の完全制御により事実上の不死性を獲得している。肉体の崩壊と再生は随意に制御可能であり、致命的損傷を受けた場合であっても即座に復元される。この不死性は現在確認されている限り、無条件かつ無制限に機能する。
戦闘様式には二つの位相が存在する。
第一の位相は、総帥より下賜されたメイスによる近接戦闘である。本個体はこの様式をパラディンとしての信仰的行動として位置づけており、自発的にウイルス能力を封印した状態で戦闘を遂行する。技術的洗練度は低く、純粋な身体能力値に依存した運用がなされているが、不死性との組み合わせにより結果としての戦闘継続能力は極めて高い。
第二の位相は、ウイルス能力を全面的に解放した状態での戦闘である。この位相は本個体の真の戦闘能力を反映するものであるが、本個体自身の信仰的信条に反するため、自発的には発動しない。総帥への脅威が閾値を超えた場合、あるいは信仰を否定する事象に直面した場合にのみ、制御を離れて発現する。
本個体の潜在的脅威範囲は、暫定評価において市街規模から広域規模に及ぶものとされている。
詳細は、以下の文書群にて管理されている。
参照文書番号:ASIM-IACA-011-0001〜0018
文書区分:CLASSIFIED INFORMATION / IACA
管轄:統合武力管理庁 戦力評価統括課
【6.心理傾向・内部リスク評価】
当該情報は、組織運用上の重大なリスク情報であると同時に高度個人情報に該当するため、指定機密区分に分類されている。ただし、組織安全上の要請に基づき、以下の概括のみ本書への転記が認められている。*6
本個体の心理構造の根幹には、「世界は理由なく、前兆もなく、善悪も関係なく、突然人を永劫の苦痛に落とし得る」という確信が存在すると評価されている。
この確信は本個体自身の経験に由来する。本個体は、何の過失もなくウイルスに侵蝕され、死すら許されない無限の苦痛の中に長期間閉じ込められた。この経験から、本個体は未来に対する安全を根本的に信じることができず、「総帥が介入しない世界は、必ず永続的荒廃に至る」という予測を確信として保持している。
上記の心理構造から、本個体は「世界がそこへ至る前に、救済という名の選別を行う」ことを自身の使命として内面化している。すなわち、苦痛に耐え得る者を選び、耐え得ない者を切り捨てることで、来たるべき荒廃に備えるという行動原理である。
本個体はこの行動を「善」として遂行しているが、その構造は客観的には「理不尽な苦痛を恐れ、憎み、防ごうとした結果、自らが理由なき災厄となっている」状態にあると評価されている。
本個体の信仰は総帥個人と不可分に結合しており、総帥の生命を著しく害する障害もしくはその生命活動が不可逆的に停止した場合、信仰体系の全面的崩壊を意味する。その場合の行動予測は困難であり、最悪の場合、本個体が自身の「救済」を無差別に拡大する可能性が否定できない。その際の本個体の予測行動はウイルス因子の無制限散布への移行であり、被害範囲の予測と抑制が極めて困難となる。通常の戦闘序列による対処が適用しにくい特殊なリスク類型であり、個別の封じ込め計画の策定が勧告されている。
当該リスクの詳細評価および対応計画については、以下の参照先文書を確認のこと。
参照文書番号:ASIM-PSY-00-121
文書区分:EYES ONLY / SPSB-0
管轄:総帥付特別近衛保全局 内部評価班
【7.総合評価】
本個体は、ASIMの医療支援および福祉活動領域において独自の貢献を果たす存在である。
不死性に裏打ちされた無限の行動持続能力、信仰に基づく揺るぎない献身性、および護疫学会を通じた医療支援体制の構築は、いずれも組織にとって有意な資産と評価されている。
一方、本個体の行動原理は個人的信仰に全面的に依存しており、その信仰体系は人間一般の倫理基準とは根本的に異なる構造を有する。総帥との関係性が安定し、かつ信仰の前提が維持されている限りにおいて本個体は組織に対して正の機能を果たすが、いずれかの条件が崩れた場合、本個体自身が組織にとっての脅威に転じる可能性は他の幹部級個体と比較しても高い。
本個体の運用にあたっては、信仰体系を直接否定せず、かつ独断的行動の事前把握と制御を継続的に行うことが肝要である。特に護疫学会の活動範囲については、組織外部への影響を考慮した管理が必要不可欠であると評価されている。
なお、本個体に関する特記事項として、本個体の「救済」行為が総帥の意図と乖離した形で実行されることへの警戒は、現時点における組織内部の共通認識となっている。総帥自身が本個体の「救済」を即座に制止した事例は、当該認識の妥当性を裏付けるものである。
— End of Document —
ASIM-SPSB-CL-0666 / Rev.1.0
Document Status:Active
Managed by:Special Protective Security Bureau 0
改訂履歴:
Rev.1.0 新規作成(重要ステークホルダーからの情報開示要請対応 ※本書は外部開示資料作成のための内部参照文書である)