愛するNPCが現実化したら勝手にギスギスし始めた挙句バカ重い責任が生えてきた話 作:フォン・デ・ペギラパギラ
静謐とした空気。
会議室に、ノインの声だけが流れていた。
巨大な長机を囲む幹部たちはそれぞれ、威容のある椅子に収まって静かに耳を傾けている。
後列に立ち並ぶ副幹部たちも微動だにしない。
開け放たれた窓から午後の風がゆるく入り込み、机上に広げられた図面の端をかすかに揺らした。
「……この流れで、まずは……エイシム近郊の酒場から……会館に、立て直します。以上……です」
ノインがいつもの独特な口調で、ゆっくりと説明を終えた。
要は小さく頷く。
ノインの説明は穏やかで、どこか祈りに似ている気がした。
押しつけがましくなく、しかし揺るがない。
建物の用途。
改修の手順。
近隣への配慮。
必要な情報だけが、過不足なく目の前に並んだ。
(基本は切れ者なんだよな……)
たまに滅茶苦茶なことをしでかしそうになるが、確かに優秀な部下だった。
すると、クーが鈴の音のような声で告げる
「各員、質問はありませんね」
しん、と静まり返った。
その沈黙の中、ベルが「むにゃ……」と寝言を洩らした。
誰も反応しない。
彼女の態度はもはや織り込み済みだった。
「では……次に、決定事項の通達です」
クーがゆっくりと幹部たちを見回す。
その金色の犬耳が、ぴんと立っていた。
「現状は組織編成を生活班、情報班、警護班の三軸に分けていますが……これを、元の体系に戻します」
誰も、一言も漏らさない。
――なのに空気だけが、ざわりと重くなった。
言葉のない圧がクーへと一斉に向く。
幹部それぞれの目が、鋭く、あるいは静かに、容赦なく突き刺さる。
「つまりは――統合武力管理庁」
腕を組んでいたクルルが、ピクリと黒く大きな犬耳を揺らした。
漆黒の前髪の奥から赫い瞳がすっと細まる。
威圧と、滾るような矜持が、その沈黙に滲む。
一方で、グラが大きな黒巻角を揺らしてにこりと笑った。
ギザギザの歯が輝く。
艶やかな褐色の肌に陽光が跳ねて、さも得意げな顔で胸を反らした。
「社会福祉広報庁」
深く被った白いフードの奥で、ノインの薄黄緑色の眼光がわずかに強くなる。
燭台の炎がそっと大きくなるような、静かな変化だった。
他方では、セラは少し表情を強張らせている。
胸元をきゅっと押さえ、純白の大きな羽が内側へ折り畳まれるように小さくなる。
気負いとも緊張ともつかない顔だ。
「魔導科学総合研究院」
頭の後ろで腕を組んでいるラズは、さも胡散臭そうにスカイブルーの目を細めた。
鼻からふんと息を吐いて、紅いウルフカットが少し揺れる。
文句はないが手放しに迎合する気にもなれない、という顔だった。
「統合基盤維持庁」
ざわり、と黒い霧が揺れた。フェルマだ。
漆黒の髪の隙間から、銀色の瞳にノイズのようなざわめきが走る。
その隣で極薄のワンピースを着たイナが机に肘をついている。
唇を尖らせながら指先にパチリと静電気を集めて、退屈そうに遊んでいた。
早く遊んで欲しいと言わんばかりに、その碧眼は要から一切離れない。
「外界調停局」
ツァン。
翡翠に輝く爪を親指でゆっくりと撫で、眉をひそめて思考に耽る。
同じく翡翠の宝玉のような光沢を返す龍角が僅かに傾いて、何かを計算しているような沈黙が漂っている。
その隣でアティが腕を組み、目を伏せている。
軍服のような外交礼服の高襟で口元が隠れ、表情が読めない。
彼女の存在そのものが、ずしりと重い威圧を静かに放つ。
「……総帥付特別緩和室」
ベルが椅子の上で盛大に口を開けて眠っている。
真っ白でふわふわな毛髪をばさりと投げ出し、口の端によだれの痕跡がある。
立派な夢の国の住人である。彼女は次元が違った。
「そして、特別近衛保全局」
クーが金の前髪の奥から、蒼い瞳を鋭く尖らせた。背筋は伸び、金の犬耳が絶えず空気を探っている。
その傍ら、ぷるぷると小さく震える少女がいた。
フリルのたっぷりついたワンピースが微かに揺れていて、頭上の天使の輪っかが輝きを放っている。
彼女は――ミリエルと呼ばれる。
「――これら既存の組織体系に戻し、各幹部は職責の元、通常業務に戻ってください」
しん、と静まり返る。
言葉はない。――が、しかし沈黙は雄弁だった。
幹部それぞれの思惑が、視線の向きに、指先の動きに、呼吸の間に、ありありと滲む。
「ただし統合基盤維持庁……つまり、フェルマ、イナ両名の情報収集機能は、一定の期間のみ特別近衛保全局の直轄として集約される形となることをご承知おきください」
鈴の音のように軽やかなクーの声。
しかし、事項を告げる度、空気はじっとりと湿るように重くなった。
「更に、これにより先日エイシムに総帥権限で加入したリュネ・フェルドマンについて……総帥直々の決定により正式に魔導科学総合研究院へと配属となります」
要が頷きながら、ラズへ視線を向ける。
事前に聞いていたのかラズは何も言わない。
口の端で笑みを作って要に送り、少しだけ眉を上げて見せる。
了解、とも、任せろ、ともとれる、彼女なりの返事だった。
「また職務について、現状行っている作業と照らし、各部門間で裁量を調整してください。持て余す場合は個別に――」
「――ちょいと良いかえ?」
遮る声が冷たく飛んだ。
ツァンだった。
視線は自身の爪へ向けたまま、発言だけをクーへ投げる。
翡翠色の爪を親指でゆっくりと撫でながら、まるで独り言のように口にした言葉。
視線を向けないことが、かえって言葉を重く沈ませる。
「……ようやく軌道に乗ってきたところじゃというのに、元に戻すのかえ?」
会議室の空気が、ぴんと張った。
クーはゆっくりとツァンを見た。
金の前髪の奥、蒼い瞳が静かに相手を捉える。
「そう、申し上げております」
短く、過不足なく。
ツァンがゆっくりと顔を上げた。
薄翡翠色のナチュラルボブが僅かに揺れ、橙色の煌びやかな瞳がクーを正面から見据える。
「現状で効率よく回せとるじゃろう。……何故元に戻す」
二人の視線がぶつかり、空気に亀裂が入るようであった。
他の幹部たちは口を開かない。
しかし誰もが、その均衡を静かに見守る。
クーが口を開けようとした、その瞬間。
「ごめんごめん……! 俺の決定だから」
要が、少し焦った声で割って入った。
突然の闖入にツァンが少し驚いたように目を開く。
しかし途端に表情が、ぱっと華やいだ。
「それに……ツァンには別のことに取り掛かかって欲しくてね」
ツァンは手指で軽く口元を隠すと、たおやかに流し目を送る。
目尻がゆるりと落ちる。
「なんぞ、宝主の肝入りかえ……! あいわかった。すまぬ、僭越じゃった」
あくまで優雅に、しかし即座に身を引く。
眉尻を落としてしおらしい様子で笑んだ。
しかし、ツァンの笑みはどこか少しだけ硬い。
仕事を取り上げられること。
別の仕事が与えられるということ。
その二つの事実を、さしものツァンもこの一瞬では飲み込みきれなかったようだった。
白い肌に貼り付いた笑顔の奥で、何かが素早く計算されていた。
クーは、その変わり身の早さに鼻白んだ様子。
視線を手元の資料へ一度落とした。
「……ご理解頂けて、幸いです」
静かに一言だけ添える。
声のトーンは平坦。ただ何かの含みがあるように、間が一拍だけ余分。
言葉にしなかった何かを、かえって皮肉に語っていた。
ツァンの瞳孔がすっと開く。
ふたたび視線がぶつかりそうになる二人――その空気を、呆れたような声が横から切り裂いた。
「仲が良いこったな……」
ラズだ。
頭の後ろで手を組みながら、半眼で白けた目を送っている。
椅子の背にだらりと体重を預けたまま、ため息をひとつ落とした。
「……情報収集をクー局長直轄に移すってのも、兄貴の決定って理解で合ってる?」
身を乗り出して、要に直接問いかける。
クーを経由するつもりなど端からない、という角度だった。
しかし、それを遮るようにクーが答えた。
「はい……先日、総帥閣下と協議しています」
柔らかい声だが、芯は硬い。
己が側近であるという矜持が、その一言の裏に静かに透けていた。
横では要がうんうんと頷いている。
「ふーん……、ならいい」
ラズはクーの態度に一瞬だけ頬を歪めたが、溜飲を下げて元の姿勢に戻った。
しかし次の瞬間、別の声が場を割った。
「――待て」
低く、静かで、それでいて刃物のような声。
クルルだった。
腕を組んだまま、これでもかと眉を顰めている。
漆黒の前髪の奥で赫い瞳が真っ直ぐクーを捉えていた。
「貴様、個人的に主に稟議を通したのか?」
一拍の沈黙。
「……武管には話が来ていない。そういった変更はこの幹部総会で
クーは静かに、しかし一切引かずに答えた。
「情報の精度に関わる判断です。迅速に動く必要がありました」
返答は簡潔で、隙は無い。
だからこそクルルの癪に障った。
赫い瞳がぎらりと燃え上がり、口が開く。
「貴様、それを――」
「ああ、もう……うっぜぇ!」
クルルの声を、ラズが真横から食い破った。
椅子を鳴らして身を起こし、テーブルを叩きながら歯を剥き出す。
スカイブルーの瞳が、クルルとクーを交互に射抜いた。
「兄貴の決定だっつってんだろ……! 個人だろうが稟議会だろうが関係ねえッ! テメェ耳付いてんのか!?」
声が会議室の壁を叩き、びりびりと反響する。
立ち並ぶ副幹部たちがびくりとわずかに肩をすくめた。
しかしクルルは動じない。
むしろ赫い瞳がかっと見開き、鋭利に研がれた言葉を刺す。
「では、何故この会議がある……!」
クルルは指で机を叩いた。
短く、しかし重い。
ラズとクルルの視線が交差する。
クーの蒼い瞳が、その両方を静かに見据えたまま動かない。
三者の間に、音のない火花が連続して散る。
その中心で、要がわざとらしくオホンと咳き込んだ。
「――ごめんクルル、俺の配慮が足らなかった」
たったそれだけで、クルルの表情が一転した。
「違うのです、主」
さっきまでの怒気が、まるで蝋燭の火を吹いたように消える。
漆黒の犬耳がぺたりと伏せた。
「決して主の決定を遮るつもりではありません。ただ……」
言いながら、視線をちらりと流す。
その先はクーだった。
「――幹部筆頭という立場を不当に濫用していないか、という……率直な懸念があるだけです」
睨んだ。
静かな怒りの残り火が、その一瞥に凝縮されている。
クーはそれを正面から受け、あえて薄ら笑いを浮かべ視線を返した。
互いに引かない。
引く気もない。
要は頬を引きつらせながら、腹に力を入れた。
「これはでも、もう決めたことだから……! ごめんね。次行こう、次」
変に明るい声と乾いた笑い声が会議室に虚しく響く。
誰も笑わなかった。
「うん、うん……続きは俺から説明するよ」
頭を掻きながら、苦々しく笑う。
要の額に冷たい汗がひと筋滲んでいた。
「元に戻したのには俺なりの理由があって……外界調停局の対外交渉を、本格的に動かしたいんだ」
ゆらりと、要は幹部を見回した。
「そして商業地区との交渉窓口の代表は――ツァンにやってもらおうと思う」
一瞬の間。
ツァンが、わずかに呆けた。
しかし瞬時に引き締まる。
机の下で指先がわずかに握られる。
口角がぴくりと上がりかけて、寸前で制御される。
上手く隠したそれに気づいたものは一人もいない。
他の幹部たちは揃ってきまりの悪そうな顔をしている。
『出し抜かれた』、という空気が静かに広がる。
セラに至っては分かりやすく、しゅんと項垂れるように俯いた。
「その、外界調停局の局長はアティだけど……ツァンは特に対話に長けていると思っているんだ。今回は先方と協力関係を構築したい思惑がある」
自然と視線がアティへ集まった。
当のアティは薄く目を開けたまま、腕を組んでいる。
礼服の高い襟で口元が隠れて、表情が読めない。
「……左様ですか」
それだけだった。
棘もなく、問いもない。
ただその声が、会議室の空気を一瞬冷たくした。
後列の副幹部が思わず肩をすくめるほどの重さがあった。
「それで、ツァンに加えて一緒に付き添ってもらう人も必要だと思ってて……」
要が言い淀む。
まだ決めかねているような間がある。
「ご主人さま、外出の際は、近衛から最低六名を同行させたいです……」
クーが心配そうに告げた。
するとツァンが、微笑んだまま滑らかに口を挟んだ。
「――外交の場に近衛を大勢連れていくのは、相手に圧をかけすぎることになりはしないかえ?」
こてん、と首を傾げる。
白いかんばせに湛えられた笑みは、どこか作り物めいた完成度。
「わらわが傍におれば、それで十分じゃろうて」
「外交の場でも閣下の安全が最優先です」
一も二もなくクーが切り捨てる。
「安全と威圧は別の話じゃがのう……」
二人とも笑顔だった。
静かで、可憐で……それなのに暖かさなど微塵もない。
要が二人を交互に見る。
(……怖)
誤魔化すように声を張り上げた。
「
「……はい」
クーはツァンから遠慮なく視線を外すと、いつもの総帥用の笑みを要へ向けた。
しかし眉だけがきゅっと落ちて、憂いを帯びる。
「そっか……そのあたりの情報共有も含めて、体制については追々詰めようよ」
要が二人を交互に見る。
二人同時に「……はい」「……うむ」と返事。
声が重なった二人だったが、今度は一切互いを見ない。
「この件に関しては、クーが少し考えてくれるかな。……クルルも手伝ってくれる?」
クーの顔にぱあっと笑みが咲く。
クルルも神妙にこうべを垂れた。
二人の尾が、ぱたぱたと同じリズムで揺れた。
「勿論です!」
「御意」
要はにこりと穏やかに笑うと、何でもないように付け足した。
「そうそう、それで付き添いだけど――セラ、君にお願いしたいんだ」
……。
しん、と。
一瞬の静寂が会議室に横たわった。
たっぷり数秒置いてから。
「……セラ長官を、外交の場に?」
クルルが思わずといった様子で洩らす。
他の幹部たちも似たような顔だった。
ラズは「え?」と無意識に言ったきり固まった。
当の本人――セラですら、驚きで口をぽかんと開けている。
戸惑うように、薄桃色の瞳が要を見つめた。
じっくりと時間を空けてから、ツァンがゆるりと自身の顎を撫でる。
美しい龍尾が、思索を刻むようにゆっくりと揺れる。
「ふぅむ……、セラよ。おぬし、外交の経験は?」
声は静かだった。
しかしその一言で、空気がわずかに澄んで張り詰める。
橙色の宝石のような瞳がセラをまっすぐに捉えた。
「え、えと……」
クリームベージュの長髪がふわりと揺れる。
答えを探してあらゆる所に視線が泳いだが、生憎と助けてくれる者は誰もいない。
天使の羽が、ぱたぱたと所在なさげに小さく動いた。
「まあ……、護衛としては申し分は無いが……」
クルルが独りごちるように、素直に評価した。
ラズは固まったまま、要をじっと見た。
そして何かを言おうとして――やめた。手のひらで顎を支え、小さく鼻からため息をつく。
セラが口ごもっている間に、幹部たちの声がぽつぽつと零れ始める。
――あるじ、正気……?
――その、対外的な印象として……。
――わっはっは、ぶつかってみればよい。
肯定も否定もあった。
しかしそのどれもがセラの能力を軽視している、という点においては一致していた。
セラは小さく縮こまる。
背中の羽がぎゅう、と内側へ折り畳まれていく。
針のむしろに座るように、しゅんと顔を伏せた。
反発心を抱かなかった。抱けなかった。
……なぜなら、セラ自身が一番強くそう思っていたから。
「セラは福祉広報長官だ」
要がゆっくりと言った。
それだけで、零れかけていた声たちが止まった。
「外の人間に組織の顔を見せる仕事は、セラの役割でもある。それにセラの外見や仕草は、人の警戒心を解いてくれると思うんだ」
事実を述べた。
ただ要の胸中には、もう一つの事実もあった。
(外交に連れていけそうな見た目の子が……セラ以外にあんまり……)
ずらりと座る幹部たちを、改めて眺める。
そこには要の趣味で揃えられた、どこか幼い見た目の少女たちが並んでいた。
セラも顔立ちは幼い。
しかし体つきは健康的でメリハリがある。外交の場に立たせても絵になる。
――その事実は、さすがに言えないと悟り直した。
「――ダメか?」
静かな声。
要は単に問いかけただけだ。
しかしその一言で、自分たちが総帥の決定に異議を唱えていたという構図を、全員がふいに思い出した。
場が、すっと引き締まる。
ただセラだけが難しい顔を崩さない。
指名された理由を、自分でもまだ整理できていないようだ。
嬉しいのか。
不安なのか。
その両方が混ざり合って、その心の持ち様を自分でも定められないでいた。
何かを確かめるように、自分の手を一度だけ見る。
――次の瞬間、ぶんぶんとかぶりを振った。
「わたし、頑張るね……!」
むっ、と力を込めた表情で、要に向かって可愛くファイティングポーズ。
要は柔らかな笑みで頷く。
その中で、ツァンがさりげなく落とす。
「セラ長官、外交の場では立ち振る舞いが全てじゃ……できるんじゃろうな?」
ツァンがそっと髪の先を撫でた。
無意識の動作。
声は優しい。
しかし橙色の瞳だけは、鋭く細められたままだった。
セラはぐっと頬に力を入れる。
真っ直ぐ見返して、言った。
「……やるわ」
ツァンはゆるりと微笑む。
「そうかえ」
それ以上は何も言わなかった。
「ツァン、セラ……まずは商業地区の下見をしようと思う。また後で一緒に計画を考えてほしい」
「承ったのじゃ」
「はい!」
るんるんと弾むようなツァンの声に対し、セラは眉をきゅっと上げて応じた。
その対比を満足気に見てから、要は締める。
「よし。じゃあ特に外調局のみんな、頼んだよ。他のみんなも大変だけど、よろしく」
要が立つと幹部たちもまた立ち上がる。
ガラリと椅子を引く音が重なり、控えていた副幹部たちが慌ただしく動き始める。
……ベルは椅子で爆睡している。
ツァンはすでに頭の中で段取りを組んでいる顔で、無意識に毛先をくるくると指で回している。
慌ただしくどよめく会場の中で、セラはしばらく席に座ったままだった。
じっと机の木目を眺めている。
直属の部下だろうか、背後の副幹部が「長官?」と声をかけながら肩を軽く叩く。
ようやくハッと立ち上がった。
要がクーにそっと促されながら退出する間際、その様子がふと目に過る。
要の視線に気づき、セラは慌てて笑顔を作った。
ぴっ、と敬礼してみせる。
要は苦笑して、前を向いた。
――深く考えなかった。
シン・ゴジラがめっちゃ好きです。
でも、ポリティカル・フィクションが好きじゃない人にも楽しんで貰えるようにしたい。