走狗   作:カストロ

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幽霊 墓地 除霊 方法

 グリードアイランドの真東に位置するここの海は変だ。

 天候や時間帯に関係なく沖へ沖へと持っていかれる。

 せっかく手頃なサイズの木を引き抜いて作ったイカダに乗って海を楽しもうとしてたってのに、定期的に脚で漕ぐはめになる。

 

 まあ、ヒトもどきにされて吐き散らしつつ頭がパーするのに比べれば天国だけど。

 

 今、浜辺で俺の身代わりとなってミルキの組手の相手を務めるカイトには感謝である。

 まだまだ駆け出し未満だと自認するカイトにワシ自ら鍛えてやる! と伝えたら、ホイホイと着いてきてくれたわけだけど、俺に乗れるというオプションが決め手になったっぽくもあるが……。

 それに反対するかと思われたイルミもミルキにとって丁度いいレベルの相手であると見做したのか、すんなり了承してくれたし、計画どおり過ぎていつ反動が来るのかと怖いくらいだったりする。

 

 でも今が良ければそれでいい派な俺は懸念事項なんて忘れて海で遊び続けている。

 当然、潜っている。すごくいっぱい深く深く。

 一向に現れてくれない水棲モンスターを探し求める日々は──しょっぱい。海水で毛並みがギッシギシだし。巨大クラゲにエイにタコ、変な角を生やしたサメといった柔らかいものばかりな食事は飽きるが。

 

 ミルキにはもう諦めろと言われているし、アプデ待ちが丸いのかもしれない。

 でもご要望ホームとかないし、ユーザーの声をどうやって吸い取っているのか謎。

 せめてGMコールはデフォで付けておいてほしい。あれば毎日コールしてやるのに……あのリストとかいう奴に。

 

『ミケ、戻って』

 

 波音と風に加えて海鳥の群れの鳴き声に掻き消されまくるので、大声で叫びでもしない限り、結構沖までイカダで流されている俺には声が届かない。

 それでもイルミの声はちゃんと聞こえる。

 奴はいつの間にやら俺の【シュリンクフレーション(カントリーマアム)】を真似たようなフィギュアサイズになるっていう省エネな【発】に続いて【念話】のようなことも出来るようになっている。

 ただし、今回のは単に言葉にオーラを【纏】わせずに乗せているだけっぽいし、【発】ではないので誰にでも伝わるようなものでもない模様。

 

 ミルキやカイトにはカタカタとした奇妙な音にしか聞こえないらしいし。

 

「買い物してくるから、ミルキのこと見ておいて」

 

 浜辺へと戻るとミルキがヒュコーヒュコーとお馴染みになりつつある限界呼吸音を出して倒れ伏し、カイトは全身汗だくとなり地面に座って太もものあたりをグニグニと揉んでいる。

 浜辺の砂に足を取られるのは念能力者であっても例外ではないようで、下半身に来ているようだ。

 

『ウイー ヴェンナラ?』

 

 NPCのほとんどが漁師な漁村。

 ここからわりと近い場所にあるヴェンナラは指定ポケットカードに繋がるような関連クエストも無ければ、まとまった現金や換金用となるようなレアリティの高いカードが入手できるクエストもない。

 プレイヤーの姿も当然見当たらず、交換(トレード)ショップとアイテムショップ以外に利用できる店舗といったら、宿兼酒場兼食堂とカイト曰く珍しいらしい品が置いてあるという釣り具店くらいの寂れた漁村だ。

 

 あとは夜になると墓地に幽霊が出るらしいが、興味ないね。

 

「ウン」

『ジャー アミ カッテキテ』

「? どうして?」

『ツリザオ ヨリ アミノガ ラク ナンダッテサ』

 

 生き物全般が好きだというカイトは海の生き物にも詳しく、釣りの話になると釣り好きのジジイ並みに話も長い。

 おもしれーから良いけど。他人が持つ好きについて聞くのって楽しいし。だからミルキのコアで意味不明な長文オタク詠唱もクセになる。

 でもここ最近のミルキはシゴかれて食って寝てを繰り返していてほとんど話せていないから、そろそろミルトークも摂取したい。

 

「む? また買い出しに行くのか? 世話になってるし今回はオレが行って来るぞ? それとさすがに金も出させてくれ」

『オマエ カネ アンノ?』

「ああ、アイテムショップにそれなりの額は預けてある」

『ヘー モンスター カッテタノ?』

 

 意外。文無しだとばかり思ってた。出会った当初、結構薄汚れてたし。

 

「多少はな。だがほとんど採取系のクエスト報酬で稼いだ」

『ホー キノコ トカ ヤクソー クワシーケイ?』

「専門家ほどではないが、それなりには知ってるな」

『ジャ イルミト カイダシ イッテキテ ツイデニ ドクキノコ トカ ドクソーモ ヨロ』

 

 毒キノコや毒草を食うのは別にクセにはなってないけど、お土産用に採っておきたい。

 クリア報酬となる指定ポケットカードから3枚しか持ち帰れないというのは表向きの話で、カード化せずに『ゲイン』された状態の石や植物なんかのカード化限度枚数が無限に設定されているものは、現実と地続きなわけだから持ち出せて当然。

 てか持ち出せなきゃ無限に近い数が存在する物質を常に管理し続けることになるわけで、念の域を超えているし国家単位で取り組んでいたとしても不可能。

 

 って予想をミルキがしているので、ククルーマウンテンや本邸の厨房で見ないような毒物は一応集めている。植生調べりゃここが現実世界のどこにあるかのヒントにもなるだろうし。

 

「毒キノコに毒草を、か? 何に使うのかはわからないが、わかった。それなら──」

「オマエ、ナニ言ってるの? オレ一人で行ってくる。見ない毒は幾つか見つけてもう採ってある」

『イクツカ ダロ ソレニ カイト ノメル ダロ?』

「まあ……それなりには」

 

 酒場には一般的な酒各種が置いてあったし、NPCが営業する酒場ってこともあって在庫は現実以上にあるだろう。

 イルミはまだ酒呑まないから変なのチョイスしそうだし、なので酒の味を知っている奴に買って来てもらうのが無難だ。

 こちらに来る際に寄った時は海で頭がいっぱいで忘れていたけど、そろそろ酔えなくても酒を口にしたい気分。

 

 そんなわけでフリーポケットに入れると枠を圧迫する上に、腐るもんでもないからカード化せずに現物の酒を買えるだけ買って来てほしいと頼むと──荷物持ちにされていると気付いたイルミと押し問答が発生した。

 

 仕方がないので折れる形で提案をする。

 

『ドッチガ カイダシ イクカ ショウブ スッカ』

「自分で買いに行きなよ」

『イワセンナヨ カネ カセイダノ オレッテコト』

「グリードアイランドの代金はオレが出したけど?」

 

 それを言っちゃう? さすがにそれは大人げなくない?

 

『ソレハ アリガトウ ゴザイマス サケ カッテコイヨ』

「……」

「そうお互いイガみ合うなよ。イルミも買いたい物があるようだし、それもオレが買って来るさ」

 

 荷物持ちが一人分減っちゃうだろ!

 

『ダマッテロヨ カイト オレハ イルミニモ カッテキテ モライテーノ』

「ハ? またバカみたいなこと言い始めたね、オマエ。たまには買い物のついでに数を数えたら?」

『ア? タワゴト ハクナヨ クソロンゲ カミキレ クソガ』

「またよくわからないこと言って誤魔化そうとしてる」

 

 くっそー。反論に嫌味まで入れてきやがって、くっそー。

 

「──待ってくれ。ミケはよくオレにも髪の話をするが、イルミの場合髪を伸ばしているのは急所になる首や頭部を保護するっていう合理的な目的があるからだろ?」

 

 そうなの?

 

『ソーナノ?』

「ウン。親父もそうだし」

『エエ ソーナノ?』

「ウン」

 

 確かに髪の毛って鋼鉄並みの強度があるって何かで見た気がする。

 バリスタの弦に代用されていたほどだし、ヒトの分際でチート素材生み出してんだよな。

 それにこいつらって純粋なヒトじゃないだろうから、髪の毛に人外の血が色濃く反映されてるってパターンもあるか。

 そして、そのパターンに彫刻(シルバ)とイルミが当てはまるから、人外特性を最大限活かすべく髪を伸ばしていると──殺しの現場に髪の毛を遺すリスクを無視してでも。

 

 それにしてもさすがはスゴ腕どうぶつガイドカイトである。

 このミケにして見抜けなかった毛並み考察を既に構築していたとは、な。

 

 さておき──。

 

『ッパ ショウブ シテ キメルシカ ネーダロ』

「ナニで勝負するか次第だね。オマエ、初狩りってのをするつもりだろ」

『……』

 

 チッ……。口下手で自信家のきらいがあった以前のこいつであれば騙せたってのに。

 イルミちゃんがイルミちゃんじゃなくなっていくようで、ミケ少し悲しい。

 騙され上手なお人形さんのままでいてほしかった。こんな風にした奴、誰だよ……。

 

『ナラ オマエガ キメロヨ』

「わかった──『ブック』」

 

 イルミが(バインダー)を取り出し、カードを1枚こちらへ投げてよこすので毛をうにょらせて受け止める。

 

宝籤(ロトリー)でどちらがランクの高いアイテムを出せるかで決める」

『フーン ランク オナジ ダッタ バアイハ?』

「カード化限度枚数が少ない方が勝ち」

『オッケ』

 

 呪文(スペル)カードを後生大事に持っていても意味がないし、機会があれば試しに使おうってのは話していた。

 こういう使い方になるとは思っていなかったが、名前のとおり運試しには持って来いだろうから使い時かもしれない。

 

『ロトリー オン!! ミケ』

 

 毛で持っていた宝籤(ロトリー)がピカーっとしてモワーっと煙が立ち上る。

 煙が消えると宝籤(ロトリー)が変化して別のカードとなった。

 

「オレも使った」

 

 ん? ああ、(バインダー)の最後のページに宝籤(ロトリー)をはめこんで使用したのか。

 いや、呪文唱えろよ。カッケーだろ、これ。

 

「オレのはこれ──ランクGのタマゴ」

 

 プッー。Gな上にカード化限度枚数無限じゃん。プッー。

 イルミが投げてよこしたタマゴのカードを一応フリーポケットに入れておく。

 

『オレノ コレ』

 

 こちらの変化したカードを毛をくねらせイルミの方へとトランプ投げの要領で飛ばす。

 カードを人差し指と中指で挟み込む形で受け止め、カードを確認したイルミの眉間にちょい皺ができる。プッー。

 ランクG以上のカードを宝籤(ロトリー)で入れ替えたカードと偽ったかもしれないってな疑いが生じる余地はない。

 

 だって──。

 

「スケルトンメガネ……ランクB」

 

 俺らにとっては初となる指定ポケットカード引いちゃったんだもの。

 それにこのスケルトンメガネが持つ効果が物を透かすことができるっていう、シンプルにチートな機能。

 これを持ち帰れたらイルミやミルキの仕事が捗りそう。つーか、まんまウォールハックだし。

 暗殺対象や敵を音やニオイ、【円】で探る分のリソースを他に割くか同時に使用して索敵能力を向上させることも可能。これひとつで強力なアドになる。

 

「おお! すごいなミケ!」

『シテイ ポケットカード ダシ イルミ モッテロヨ』

 

 ちなみにイルミの(バインダー)に収めるのには理由がある。

 俺らも入手したし世紀末な男から聞いてタネが割れたし──何なら交換(トレード)ショップのNPCから呪文(スペル)カードの詳細聞けること知ってすべて把握してるから、イルミは初狩りのあのヒゲに追跡(トレース)っていう常にプレイヤーの現在位置を確認できるという攻撃を食らっていることが確定した。

 そのうち投資した分を回収するべく盗視(スティール)透視(フルラスコピー)を使用してイルミのフリーポケットや指定ポケットの中身を確認して、投資に見合ったものがあれば奴らは仕掛けてくるはず。

 

 なら、あえて使う予定のない交信(コンタクト)以外の呪文(スペル)カードや指定ポケットカードを入手したそばからイルミに集めてエサにして、奴らが掛かるのを待つ。

 当然こちらがカモにされる可能性もあるが、現状奴らの居場所の情報を入手するか、奴らの現在地に飛んでいけるような磁力(マグネティックフォース)同行(アカンパニー)を入手するまでは、このエサでいく。

 

 PKのペナ無いみたいだから、心置きなくヤれるってのも大きいし。

 

 まあでも俺らにとっては好都合だけど……普通にペナはあれよ。

 運営の奴らワイン片手にバスローブ姿でプレイヤーのこと観て楽しんでるだろ。

 という運営批判も含んだ見解をこの前カイトに話したら、すんごい複雑な顔をしていたのが印象的だった。

 

 もしかするとカイトは……茅場かもしれない。

 ミルキはキリトくんポジだし、イルミは閃光ポジだし、俺はキバ──ユージオだし。

 偶然にしては一致する符号が多すぎる……。

 

 ᴥ

 

「ヒュコ……兄貴、ドコ行った?」

『カイダシ』

「マ、ジか……ヒュホ、助かった」

 

 しんどそーなところ悪いけど、時間も出来たことだしまた例の魔法少女の話、お前の独自解釈付きでいちから聞かせろよ。

 

「オマエ、イマは……マジで、ヤメロ。すぞ……」

 

 これもシゴきの一貫だから話せ。お前の好きってのはそんなものか?

 ちゃんとしたオタクを自称するなら、どんな時だって好きを語れよ。詠唱はよ。

 

「ム、リ……オーラがもー、全然、残ってねえ」

『ソッチカヨ ソソイデ ヤル』

 

 体力の限界じゃなくてそっちかーい。

 ここ最近いつもカッスカスのオーラだし見分けつかんわ。

 

「たの、む」

 

 海に来てからというもの、毛ヒトとポーンで初めてイルミと手合わせした際にやったミルキに俺のオーラを流し込んでゴリ押しブーストする手法をオーラの回復目的でやらされることになった。

 でもこれって穴の開いたヤクルトの容器にポリバケツで水を注ぎ込むくらい効率悪いし、疲れる。

 つーかイルミとミルキのが血の繋がりがあるんだしってことでやらしてみたけど、イルミのオーラをミルキに注ごうとしてもまったく注げないという謎。

 

 てか俺のオーラをミルキのみならずカイトに、さらにはイルミにも注がされている日々も謎。

 俺はユージオであってヒーラーじゃないからね? つーかそろそろバトルヒーリング使えるようになってくんない?

 

『サア ハナシテ ミルキ』

 

 ほらオーラ注いでやったんだ、きりきり話せ。僕の英雄。

 

 ᴥ

 

 秋が暮れ、冬がログインしてきて海水浴というより寒中水泳になってきた今日この頃。

 ワシが鍛えてやると言って同行させたものの、俺はほとんどカイトに何も教えていないし何なら生き物全般の話を寝物語に毎晩語ってもらってアニマルチャンネルにしているほど。

 

 ぶっちゃけ鍛えていたのはイルミの手と目と針に拠るところが大きく、ミルキの弱点を的確に突くようにすると言っていたが、カイト自身の肉体とオーラのわかりやすい動きのクセを矯正したりしていたし、念の系統別修行を効率的に行うべくミルキのついでにカイトにも負荷を掛けたり、時には妨害して瞬時の判断が出来るようになるために択を選ばせていた。

 

 ま、まあ俺も回復役のhimechanとしてケアルガ(ケアル)連打してたし、間接的に鍛えてやったはず。だからイルミにばっかり感謝の意を伝えないで、俺にももっと長文で感謝の意を伝えてほしい。なんでや。

 himechan的にはその手の言葉が不足すると心がざわつくし。ユ、ユージオでもあるからギリ耐えれてるけどさ。

 

 さておき、今日はイルミとミルキが森へと採集に出掛けており、俺とカイトだけで浜辺のテント付近にて昼飯の用意をしていると、カイトに他のプレイヤーから交信(コンタクト)が入った。

 最近ちょこちょこ交信(コンタクト)が入るみたいだけど、気まずいんだよなぁ。ギスってるっぽくて。

 だから近くに居ちゃ悪いしってんでおかずをもう一品増やすべく海に潜るも、浅瀬にて食事中の巨大ダコを見つけてしまい、早くなり過ぎたかと思いつつも浜辺へと戻ると──。

 

「あ? またその話かよ! ダチを売るような真似を俺にさせようってのか!? もう連絡してくるんじゃねえぞ!」

 

 交信(コンタクト)を終えたようだけど、まだぷりぷりしてる様子。

 それなりの期間行動を共にしていてわかったけど、初対面の時の印象どおりカイトって殺し屋より殺し屋な顔に似つかわしくない温厚な奴だし、これはよっぽどか?

 

『カイトー?』

「……すまん。大声出しちまって」

『ドッタノ?』

 

 ふーっと大きく息を吐き、己を落ち着かせるよう頭を掻くカイトがゆっくりと口を開く。

 

「……こっちで知り合った連中が居てな。最初は右も左もわかんねえ俺を世話してくれた奴らで……それには今も感謝してんだが。ただ、最近になってお前らのことを教えろってバカなこと言い出しやがってな」

『ホーン』

 

 ちょい前にたまには場所を変えて呑もうとカイトと漁村の酒場で呑んでいた時、男女の集団が何をトチ狂ったのか墓地にて幽霊関連のクエストをするべく漁村に訪れていた。

 グリードアイランドってプレイヤー数が少ない村社会だし、あの時、宿も食堂も兼ねる酒場にて鉢合わせた集団の中にカイトの知り合いの知り合いでも居たのかもしれない。

 

 でも俺らの情報を求める理由が思いつかない。

 

『ナンデ オレラノ コト サグッテンノ? ソイツラ』

「俺の予想になるが、お前の存在が大きいんだろうな。定期的にマサドラまで呪文(スペル)カードを買いに行っていただろ? マサドラでミケのことを見たプレイヤーが噂を広めているんじゃないか?」

 

 確かにカイトも居ることだし、単独でマサドラの呪文(スペル)カードショップには何度か赴いた。

 でも間の悪いことに毎度売り切れ状態のため1袋も買えず、運営への当てつけに帰り際にショップ前にデケークソを置き土産にしていたのが拙かったか……? にしても噂になるほどか?

 

「いや……クソは、関係ない、いやあるかのか? まあ、それよりもある程度の使い手なら、小さくなったお前であっても一目見れば遥か高みに居る強者だってことはわかるからな。俺に探りを入れて来た連中も厄介なモンスターを討伐する必要があるっていうクエストに、お前を駆り出そうって考えが透けていたからな」

 

 カイトきゅん! よーし、そいつらの名前と居場所とあと容姿も教えろ。今からぶっ殺してきてやるよ──無料(タダ)で。

 

「やめろ! むかつく相手は俺自身でぶっ飛ばすさ」

 

 おおー、カッケーな。でも無理すんなよ。ちょい分厚くはなったけど、まだまだほっせーし。

 

「それはそうと、まだ話のわかる相手に心当たりがあるから、もし厄介なモンスターの討伐に興味があるなら、オレから連絡できるぞ?」

『キョウミ ナイネ』

 

 どうせモンスターの強さの上限なんてたかが知れてるし。幽霊くらい興味がないね。

 

「そ、そうか」

 

 厄介な『モンスター』って言ってる時点でボスでもないだろうしなぁ。

 そもそも念獣にボス役とか荷が重すぎるし、ボス枠は雇われた念能力者とか運営自らが担う可能性が高そう。

 てかそうじゃなかったらわりと興醒め──強者であろう念能力者の甘露を喰えるチャンスが減るわけだし。

 

 ᴥ

 

 マサドラより東、海に近い森は漁村と同名のヴェンナラの森という名称らしい。

 ヴェンナラの森には海とは違ってモンスターが跋扈する地帯があり、岩石地帯同様に下はHランクから上は確認できた限りではBまでポップする。

 

 そして、岩石地帯の時とは違い、イルミはミルキの索敵能力の向上も図る模様。

 これで何度目かになる森の中を駆けるミルキには慣れが見受けられるし、索敵しながらの移動速度も……まあ、うん。

 ミルキに伴走する形でカイトもいるが、スゴ腕どうぶつガイドはプロハンターでもあるし、索敵にはあえて協力せず、ランクC以上のモンスターと遭遇した場合のお助け要員を務めている。

 

 もう初見でもないモンスターばかりだし、ミルキには他者の戦闘を至近から見ることで学びを得させようってことらしい。

 俺とイルミがやってもいいけど、手加減しないと大体ワンパンしちゃうし、たるい。カイトの場合ほどほどに雑魚いから戦闘長引くし。

 

『マダマダ オセー?』

「ウン」

 

 ミルキとカイトからちょい離れた位置。

 ここらのモンスターは【纏】っているオーラ量が少ないプレイヤーを積極的に狙っていく特性があるので、俺らが気配を【絶】つと逆効果となるので、自然体のままついていくし、声も前の二人に聞こえるくらいの距離だ。

 

『ダメソウナラ モウ アシ キリオトシテ サイボークカ スル?』

「……アリかも」

「おい……急にヤベーこと言うなよ!」

 

 ミルキがずばっと音が出そうなくらいの勢いで振り返り、俺の提案を一蹴する──が、そんなのものはイルミは無視する。

 

「義手や義足って操作系と相性良いって聞いたことあるな」

『ヘー マー ソレモソッカ』

「おい……ウソ、だよな?」

 

 残念、イルミは基本嘘吐かないし、【念話】を介すると俺も嘘吐けないって知ってるだろ。

 真面目な話、死亡率高めな家業の手伝いしてるんだし、リムワールドみたいに肉体の強化を目的としたサイボーグ化や義手や義足に換装するのってアリだと思う。

 たぶん念があるようなこの世界ならアルコテックのような超科学的なモノもあるだろうし。

 

 まあ、超科学を持つであろう宇宙人なアトに頼めばさくっとその手のモノを出してくれるだろうけど、そのラインは絶対に超えちゃいけない。

 アトはアトで俺が欲しない限り超常の科学で知り得たことや、モノそのものを施すような言動を取らないよう気を遣ってるっぽいし。

 そういう相手の配慮を無視して一度でもラインを超えたら、俺は堕ちるところまでマッハで堕ちる自信がある。

 

 

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