走狗   作:カストロ

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映画 オススメ 笑える -下ネタ

 ミルキはアレで一応ゾルディックだし、麻酔も効かないだろう。

 手術の際に生じる痛みにもゾルディックゆえに耐えられるだろうけど、肉体が勝手に反応してしまうものまでは制御出来ないだろうから、当然の帰結としてイルミによる針を麻酔の代わりとするはず。

 

 したがってミルキの切り落とされた足は甘露化することになる。ぜってー美味い。

 

 だからこそ喰らいたかったってのに、要求が秒で拒まれたのにはミケ大変に遺憾。

 遺憾だけど、今はトポふんふんをヤれただろうし、プラマイゼロでもある。

 

 思い返すにむかついたからぶっ殺したのって初めてかもしれない。

 衝動的な殺意を解消した場合、終わってみるとこんなもんかよってくらいにわりとどうでもいい。

 でもぶっ殺すまで小さなイライラがずっと続くし、復讐する奴の気持ちがほんの少しは理解できた気がする。

 

 そんなこんなで小さな学びを得て浜辺へと帰ると、カイトが起きており、頭に針の刺さった猿と一緒に流木に座って焚火にあたって──妙に絵になるっていうか、なんだろうこれ……見たことあるような? まいっか。

 

 俺の頭の上に乗るイルミに目玉をぎょろっとさせ、合図する。

 意図を読み取ったんだろう。俺から音もなく飛び降り、イルミが猿の頭の針を引き抜く。

 ギャーと叫んで猿が森へと駆け出し逃げていく。

 

「戻ったか」

『オハスー』

 

 ねみ。

 でも腹の奥の方がポカポカして心地良い。

 甘露を一気に3つも喰ったからだろうか──ああ、この感じって酔ってんだったわ。

 

 なら気持ちよく寝落ちする前に気になることを聞いておこう。

 

『オメー コノアト ドースンノ?』

「そうだな……しばらくはこの森のモンスターを相手に鍛えるつもりだ」

『フーン シニソー』

「プッ……プハハハハハハッ! かもな!」

 

 ああ、こいつもだいぶ酔ってんな。酒くせーし。

 

「オレも死ぬと思う」

「イルミもそう思うか……まあ、そうだろうな。まともに何かに打ち込んだこともねえ、ただのクソガキが今こうしてハンターにまで成れたってことが出来過ぎだ……やってきたことの報いが巡ってくる頃かもな」

 

 報い? そんなもんがありゃ俺もイルミも今すぐ全身がパーンて弾け飛ぶことになる。

 カイトは迷信に惑わされる前に現実を見たほうがいい。

 

『オマエ キョウカケー ナラ Bヨユーダゾ タブン』

「だろうな……自分に配られた札に不満を持ちたくなくはないが……」

 

 操作系の俺らと同じで具現化系のカイトって六性図的に強化系から遠い上に、お隣が特質系とかいう罰ゲームを受けている。

 それに操作系はまだワンチャン狙いの逆転の一手が作りやすいけど、具現化系はそういう意味でもマジ不遇。

 せめて変化系と放出系の位置が逆だったらかなり違ったのに。

 遠隔から念由来のクセの強いモン出してちくちくしやすいだろうし──とはいえ操作も遠いから八方ふさがり。

 

 どうやって【発】作れっての?

 

 具現化で万能不変な物質を生み出すなんて不可能だから、六性図の位置が悪すぎて【発】を作るのにメモリーを大量に注ぎ込む必要があるし、おそらくほとんどの具現化系能力者はひとつきりの【発】に、効果もひとつに絞ったものしか持たないというか、持てない。

 

【発】を複数、もしくはたったひとつの【発】に複数の用途を持たせようとするアホは淘汰されるだろうし。

 

 そして、ひとつきりの【発】で鉄火場を行くような具現化系念能力者の場合、手札の少なさと強化系との相性の悪さからして長生きできない。

 実際、隠れ潜んでいるタイプや非戦闘員だとかは別にして、現役のジジイやババアの具現化系能力者が表にも裏にもほとんど居らんってスルメ(ゼノ)が言ってたし。

 

 だから、たぶんカイトもすぐ死ぬ。具現化系は基本スペランカーだし。

 こいつはスゴ腕どうぶつガイドとしてタンク役や超火力を持つようなのをサポートするのが本領──だってのに性格が男前過ぎて相性最悪。

 

『オマエモ サイボーグカ シタラ?』

 

 俺目線になるけど、カイトってミルキと一緒になってモンスターと戦ってても、臆病さが致命的に足りてないと思うし。

 いずれ雑魚を庇ってアホみたいに前に出ちゃうのが目に見えてる。

 だからこそ作りにくい【発】に頼らない逃げ足を確保しとくってのが合理的な判断だと思う。

 

 そして、あくまでもついで、副次効果だけれども手術の際に麻酔医をイルミにしてもらえば切り落とした足は甘露化するはず。

 だったらその手術に立ち会えば、きっと喰える! カイトの足ならミルキ以上の美味になるだろうし。

 

「ミルキの足を切り落とすってことを前に言ってたが……アレ、本気だったりするのか?」

「ウン」

『アー デモ グゲンカケーッテ ビミョー?』

 

 自己完結しちゃったけど、具現化系は外部ツールとも相性が微妙。

 操作系の場合は義足なりサイバネ化した部位を文字どおり操作性の高さや親和性でブーストしたりってのがあるが、具現化系は操作とも遠いから結局ゴミ。ほんと具現化系ってつっかえ──。

 

 って思うじゃん? でも一番ヤベーのが具現化系かもしんねえ。

 

 頭の出来や生い立ち、趣向に倫理観次第だろうけど監視の目が厳しすぎて移動させるのすら困難で、持ち歩くなんて不可能ってな化学兵器や爆弾、対策自体が困難な独自のウイルスやらを具現化系で生み出せたら、キルレが凄まじいことになるし究極の初見殺しにもなる。

 お勉強ができるぶっ飛んだ奴ならトンでもなブツ作って使いこなしそうなヤバさを秘めているのが具現化系で──ぶっ飛んだ操作系と組んだら悪魔合体しそう。

 

 ということを語ってみたところ、カイトは「勉強、か」と呟いて一人の世界に入り込み、イルミはイルミでここ最近よくやるようになった謎に体を捩じったおかしな腕の組み方をして、カイトと同様思案モードに入ってしまった。

 

 ま、もしもカイトが生き永らえて、後年大量破壊兵器を使用したテロリストとして指名手配でもされたら……そん時は俺の助手兼ブラッシング係として雇ってやろう。

 つっても俺みたいに首輪に繋がれてもどうとも思わないような輩でも無さそうだし、有りもしない仮定の未来になりそうだけど。

 

 ᴥ

 

 マサドラの西。結構栄えている港町にて角の生えた所長を俺、イルミ、ミルキだけがちょい苦戦しつつもそれぞれが順当にぶっ飛ばして通行チケットを入手する。

 カードのままにしていても意味もないしで、各自すぐに『ゲイン』してチケットに記載されている案内に従い指定の場所へぞろぞろと移動する。

 

 カイトも同行しているけど、なんとなーく皆が黙ったままだ。

 最後までこれといった言葉を交わすこともなく、ついにはカイトと無言のうちに別れ、結構な距離が出来てしまったので、最大出力に近い【念話】でもって──。

 

バイバーイ! マタナ!

 

 と叫んでおく。合わせて棹立ちとなって両前脚を左右に振ってぴょこぴょこ飛び跳ねる。

 

ああッ! また会おうぜ! 

「……オマエってそんなキャラだっけ?」

 

 ミルキが嫌味っぽく水を差してくるけど、その声色には少し泣きが入っててウケる。

 チラりともう1人の存在を探れば、俺らのやり取りを無視して歩みを進めている。さすがイルミちゃん。

 

 来た時と同じく狭い出入り口がある幾何学模様のゲーム的な空間を経由すると、50以上もある港から好きな場所を選んで転送してやるとNPC風ヒトのメスに告げられるも、困る。

 こっちで学校行ってないし世界の国名や地名があやふやだし、パドキアの都市名くらいしか知らねえ……これは困った。

 頭を悩ませて狭い部屋の壁に体を擦り付けつつぐるぐると円を描いていたら──見かねたんだろう、円の中心に座るNPC風ヒトのメスが「どこか目的地となる国や地名をお伝えくだされば、最寄りの港をお教えいたしますよ」なんて言ってくれたので、元気よくワンと吠え、ククルーマウンテンの最寄りの港を教えてもらって転送してもらう。

 

 転送先は磯と尿臭い裏路地で、イルミとミルキがおっせーよという顔して立っていた。

 また【シュリンクフレーション(カントリーマアム)】して長時間の移動かぁ、だっりー。最近ほとんど素の状態だったから、マジストレス。

 

 もう移動系の【発】にすっかなぁ。

 でも俺って放出系じゃないし、コスト高くなりそうブー。

 やっぱ先送り。未来の自分に任せよう。

 意外だろうけど、俺って夏休みの宿題を一切やらずに母ちゃんに詰問されてもやったと嘘を吐いて最終日まで満喫できるタイプだし。

 

 ᴥ

 

 ククルーマウンテンに帰ってきた。

 主に飛行船での移動だったけど、最後はククルーマウンテン行きなる観光バスにも「ノリタイノリタイ」と駄々をこねて乗ってみた。

 一番の目玉となるゾルディック家前にて下車しようとしたら、ガイドのおばさんが必死になって止めてきてほっこりした。

 ひと悶着あったけど、ここでちょっと写真撮ってタクシーで帰るとミルキが誤魔化し、下車してバスが見えなくなってから試しの門をミルキに開けさせる。

 

 うーん、念有りで4かぁ。

 

『イルミ イクツ?』

「今はもう6まで開く」

『フーン』

 

 俺はずっと前から念無しで7なんですけどね! へっ!

 

 おっ! おお!?

 

 この駆けてくるヤツはポチか!? おま、またデカくなりやがったなぁ! ほら、さっさと仰向けになれ! よしよし、股ぐら嗅いでやっからな。へへへ。

 

「腹見せてっけど、ポチってあんなだっけ?」

「ミケの前だけでしょ、ああなるの」

 

 おーおー、やっとヒトの美味さがわかってきたか、お前も。

 そうそう、でも当たり外れ多いよなー。つってもそのうち舌がバカになってきてわりと何でもイケるようになんだ。これ豆な。うん、そうね、毛深いのはダメね。うん、わかってあげられるよー。

 

「行くよ」

『ワッフ』

 

 またあとで遊んでやるから、ほら離れなさい。首に纏わりつくな。

 最後に股ぐらを鼻先でワシャワシャしてやっから、ほれほれ、またな。

 

「おかえりなさいませ。イルミ様、ミルキ様、ミケ様」

「ウン」

「お、ゴトーじゃん。オレの部屋誰もいれてねえだろうな?」

 

 メガネ執事が他の若手や初めて見る顏の初々しくビビリ散らかしている執事の少し前に立ち、頭を下げ出迎えてくれる。

 あとでメガネにこってり絞られるか、見なくなるんだろうなぁ……今ビビリ散らかしてる奴らは。

 

「はい。誰も立ち入っておりません」

『ミヤゲ ワタシトケバ?』

「あ! だな。今済ましちまうか」

 

 イルミは基本手ぶらだけど、ミルキはハンドストラップもしっかり使いこなしつつ、小脇に挟んだカバンを持っている。

 もうほぼ肉体と一体化しているそのカバンは、グリードアイランドにて購入した集金用の大きめのセカンドバッグで、ワイシャツにスラックススタイルのミルキとの親和性が極めて高い。

 その中にはグリードアイランドにて採取した毒キノコや毒草が入っていて、セカンドバッグごとゴトーに手渡している。

 

「お預かり致します。適切に保管する必要がございますので、内容物を伺ってもよろしいですか?」

「うちで取り扱ってねえような毒。適当に採取しただけだし、既知のが多そうだけどママに渡しといて」

「承りました」

 

 どうやらカード化限度枚数が無限に設定されている物質は持ち出せるようだ。

 でもせっかく俺の首輪にある物入れに入れて持ち出そうとした龍鱗装みたいな古書は、限度枚数設定されてたから消えちゃったけど。

 この前喰らおうとしたワビにスルメへのお土産にしようとしたってのに。

 

 ᴥ

 

 甘栗(マハ)と再会を果たした。当然甘栗を乗せて3日ほど掛けてククルーマウンテ内にあるランドマークのすべてにマーキングをした。

 んでもって今日は最近甘栗の中で日向ぼっこが熱いらしいので、一緒になって実践中である。

 

 だってのにイルミってば無粋である。

 

「ミケ」

 

 首輪に再び取り付けた端末をわざわざミュートにしてあったのに、直接来られたら意味がない。

 

『アー? ナニー?』

 

 この甘栗の【絶】を超えた領域の凄まじさを見ろ。

 すぐにでも天もしくは土に還っていく寸前の【無】の境地を見ろよ。

 もうこれって植物を超えて石とかの領域だぞ。

 

「親父がミルキの件で来いってさ」

『ホーン アトデイクー』

 

 超絶の領域の前では彫刻(シルバ)の要件とやらは後回しでいい。

 

「ワシはもうしばらくここにおる。行ってこい」

『…… ハーイ ドコ?』

 

 しょうがないワン。甘栗が行けというなら行くしかない。

 

「親父の部屋。オレも行くから乗せて」

『ウイー』

 

 イルミを頭の上に乗せ、屋敷へ向かう。

 道中、ククルーマウンテンにある湖を一足で飛び越え──られず、水没しかける。

 でも俺ってば覚醒オーバードッグだから、4つの肉球にオーラを集めに集めて、湖面を掻いて難を逃れることもギリギリ可能だったりする。あぶねぇ、頭上のイルミが向けてくる視線がうぜぇ。

 

 そんなこんなで山中を進んでいると、非常に私的な場所付近に居るっぽい三男坊の後継くんを連れたケミカル(キキョウ)を補足したので、ビタっと脚を止める。

 俺の頭の上に立つイルミが慣性の法則に従って前方にぴょーんと射出──されず、寸前で真上に飛ぶことで慣性を上手く殺した模様。

 俺の頭の上に戻ってくる際に爪先にオーラを集めたのか、爪先立ちの要領で刺してきやがる。全然、痛くない。全然、な!

 

「急に止まって、ナニがしたいの?」

『イヤー? ナンツーカ ンー?』

 

 英才教育の一環なんだろうけど、あそこって俺用かつポチ用に新設された肉の加工場兼生け簀だろうに……また変なモン混入してないだろうな。

 うーん、でも観に行って何もしてなかったらキーキーとヒステリックに怒りそうだし、入れてないと今回は信じてやろう。

 

『ナンデモネー』

「そ」

 

 後ろヒゲはやや引かれるけど、さっさと屋敷へ向かう。

 屋敷は今もちょこちょこ手が入っていて、まだ大きくなりつつある俺の肉体の成長に合わせて通路の幅や天井が拡張されているので、【シュリンクフレーション(カントリーマアム)】は使わない。

 たまに調度品を破壊するくらいで、人身事故などたまにしか起きないし、ドドドドドと気兼ねなく駆けられる。

 そうこうするうちに勝手知ったる屋敷の最奥付近、巨大な扉に施行し直された彫刻の部屋の扉をバーンと開けて入室する。

 

 彫刻への挨拶の前に部屋の中で大人しくしている犬っころどもが順次仰向けになっていくので、股ぐらをぐにぐにと鼻で突いて嗅いでいってやる。うむうむ。次は尻をこっちに向けなさい。確認してやろう。つんつん。すんすん。うむうむ。

 

「ミケ」

『ン? アア ミルキノ ケン ドウナンノ?』

「確認したが、アレも少しはやれるようになった。年齢も考慮して今すぐに手は加えない」

 

 あいつってもうすぐ11歳とか言ってたような。念も覚えてるし、早いうちからやって損はなくね?

 

『アン? ドユコト?』

「背も体重もまだまだ増えるだろ。ミルキの場合はトクに」

『アー ソレモソッカ』

「もう少し様子を見るつもりだが、このことは本人には伝えるな。しばらくお前はイルミと共にミルキを追い詰めておけ」

 

 追い詰めてたつもりないんだけどな。

 グリードアイランドの攻略進まねえから効率化をはかろうって提案しただけだし。

 でもこれだとミルキの成長率が鈍化したり、サボり出した場合、次グリードアイランド行くのがすげー延長されそうでモヤる。

 

『コヅカイ シダイ ツーカ シャッキン チャラデ』

「良いだろう。取引成立だ」

『ウイー』

 

 チャラになったとはいえ、畜生に10億ジェニー近くも負債を抱えさせていたこいつが本当の畜生だと思う。犬派だから許すけど。

 

「それともうひとつ、イルミが請け負う護衛依頼にお前も同行しろ」

 

 はい?

 

『イルミガ ゴエー? ムリジャネ?』

 

 横でぽけーっと突っ立っているイルミをチラ見して、彫刻をチラ見して、イルミをまたチラ見する。うん、無理そ。

 依頼期間中、護衛対象に針刺して俺の口の中に放り込んでおくとかやりそうだし、こいつ。

 

「失敗したとしてもそれも糧になる。詳細は執事らに聞け。もう行っていいぞ」

 

 それもそっか。でも──。

 

『イカネー コイツラト アソンデク』

「好きにしろ……ああ、キキョウがお前にミルキの件で礼を言っていたぞ」

『ヘー』

 

 イルミ、ほら見てみろ。こいつのこの牙のギザギザカッケーだろ? ちょいドリルっぽくね? ほら、こいつも。な? カッケーだろ? 彫刻はきっとこいつらの牙に合わせてこのネジ付いた首輪にしてんだぜ? こういう趣味をもっと真似しろな?

 

「……ウン? そうなの?」

 

 まだお前にはわかんないか。

 でも宣言しておいてやろう。

 将来、お前は針をドリルに持ち替えているってな。

 

 ᴥ

 

 護衛のお手伝いをするため、のろのろと進む飛行船に乗って現場となるスワルダニシティーとやらへ向かう。

 事前に執事らに護衛対象、場所、環境に期間、報酬に注意事項等の説明は受けているけど、護衛には必須と言える想定される脅威に関する情報は具体性ゼロ!

 

 つーか、護衛対象からしてわりとふざけたものだ。

 あんな地位にあるの者を護衛しろとか、よくもこのぽけっとした息子に託したな。

 彫刻もよくよく考えるとイルミをあと20年くらい熟成したぽけっとしたところあるからか?

 

 ま、いいや。

 今はアトから秒で返信が来る長文のメッセージを読み解くのに忙しいし、返信への返信を考えるのに頭のリソースを割くべき。

 どんな映画やドラマが好きかって話なのにストーリー展開の妙だとかはわかるけど、製作陣のバックグラウンドを延々と語ってくるのは……俺もついつい知ってる風の内容返してるから助長させてるのかもしれないけどさあ。

 

 オタクってよりタイプジジイの長文詠唱だから内容が難しすぎる。

 

「オマエ、さっきから唸ってナニしてるの?」

『アトガ ジジイニ ナッテル』

「は?」

 

 まあ、ミルキやカイトみたいにアトの好きを延々と聞く──てか、今は読むだけど、それはそれで楽しいんだけど……限度というものもある。

 ああ、アト相手に変に格好をつけようとするからこうなっているのか。

 

『ほんとは映画全然詳しくねえ! 今度お互いのおすすめの映画交互に一緒に鑑賞しよー』

 

 なので早めにすれ違いを解消すべく、正直にメッセージで伝えておく。

 直接会って話すなら【念話】になるから、こういったことにはならないし。

 よし、予定は合わせられそう。護衛もそこまで長い期間じゃないし、会う場所もアトがいつの間にか用意してくれていた巨大な犬小屋がメインな邸宅がククルーマウンテンの傍にあるそうで……問題ないだろう。

 

 土地代や建築費用に税金諸々を俺もちゃんと出したいところだけど、ここはグッとこらえてヒモに徹する。

 決して負債を抱えていたから、魔獣登録もして自分の意思で動かせる口座ができたからって一発逆転狙いでミルキと一緒にFXに手を出して溶かしたからではない。

 

『イルミクン コノシゴト ガンバローナ!』

「ナニ? 急に」

『ナ!』

 

 今回は殺しじゃないけど、護衛の対象が大物だってのもあって報酬も桁違い!

 これはイルミをしっかりとキャリーして満額で報酬を頂戴しなければ!

 

 もしもの時は口の中に放り込んでやるからな、シムケン。

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