走狗 作:カストロ
別邸にある地下。床がカチコチでつるつるなドッジボールが捗りそうな場所や土が剥き出しだったり、あえて補修されずに亀裂や穴が開いたままのアスファルトだったりな文字どおり多目的な場所。
そこでヒトもどきにされ、念無しその他諸々を縛っているイルミを僅かに残った意思をフル稼働して殺してしまわないようボコす。
意思というか自我が10%ほどしかないので、上司や同僚の女性陣との呑みの席以上に己を殺すこと必至となる彼女の親御さんとの食事くらいには虚無る。
楽しむなんて感覚はないし爽快感なんてものはない。あと脳が揺れ揺れになるので吐き散らかすハメになるので、ストレス値が閾値をゆうに超えてくる。
必然、空きっ腹に甘栗お付きの執事お手製の酔える酒を流し込むことになる。
イルミお手製の甘露とは違い、健全な酔い方をすると──当然の帰結としてエロが一切出てこないドロドロの恋愛モノを摂取したくなる。
でもこちらではその手の作品に詳しくないので、通話アプリをを介して丸っこいのに相談したところ、母さんが詳しいと言うのでケミカルに繋いでもらおうとするも本人に拒否された。
帰ったら奴の私室にウンコするとして、ケミカルにまたイジメられていると甘栗にメールしておいた。
返信は「うむ」の一言だったが、まあいい。
そんなことより打ち上げ用に事前に別邸に搬入してもらっていた酒がなくなった。
こっちの世界でも酒税法ってあるのかしら? そもそもの話、俺はどうして操作系なの? 変化系なら酒作り放題じゃん? 変化って六性図的に操作系の対極なの罠過ぎない? お隣が特質とか世界をぶっ壊したくなるんだけど。
てかイルミってまだガキなんだし変化系になれないの? てか学校行けよ。青春しろよ。甘酸っぱい恋愛を──いや、イルミってサイコにサイコを掛けたようなサイコじゃん? 恋人どころか友達の一人も作れないような……。
ああ、でも感情を出すようになってきたとかスルメが言ってたような?
それにお勉強は水準以上に出来るようだし、フィジに関してはゾルディックさん家基準ではモヤシでも世間の中では超人の類だし、高収入だし、見てくれも……だぶん悪くはない。女に間違われることが多いっぽいが、そこはカバー出来る。
男を磨けばある。あるはず。ヒトの美醜がいまいちわかんなくなっちまってるけども、イルミならイケるはず。
回復優先のメニューらしく今目の前で朝食の代わりに輸血しているイルミに忘れてしまわないうちに伝えてやろう。
『オマエ カミ キレ カクガリ ニ シロ』
そもそも殺しに髪は邪魔だし髪を保護しようとオーラを無駄遣いしてるくさいし何より男前といえば角刈りだし何なら愛嬌も増すからこの際長髪の
「……」
ママ、ショック。俺のお気持ちは無視された。
仕方がない、せめて彫刻の方には執事を介して伝えてもらっておこう。
ᴥ
そういえば、スケボーは畜生フィジをもってすれば御することは簡単だった。
でも庭にトリック用のハーフパイプとスピーカーが設置されていないので、散歩ついでにスイスイする程度しか楽しめていないので念の系統別修行にしか活かせず、つまんないブー。
なので季節に合わせて庭でポップコーンでもしようぜと
ポンポン弾けるコーンのすべてを目で追うイルミが人殺しの目をしていて笑えた。
あとは天空闘技場にて試合中のイルミの私室から針を拝借してダーツ代わりにしていたら、夏の日差しが照りつける昼間に庭にて懸命に太陽を崇めるひまわりをぶっこぬき、オーラを【周】らせてぶっ刺そうとしてくるほどマジギレしてきた。
ひょいひょい避け続けていたら、寝ている間に体中にひまわりを刺されていた。人殺しめ。
そんなこんなで夏一杯は念の基礎をコツコツ積み上げつつ丸っこいのとネトゲーしたり、【
ああ、あとイルミは天空闘技場の200階にて決め手に欠ける戦い方を繰り返していたせいもあって3敗目を喫してしまい、4敗すると失格となるそうなのであとが無い模様。
でも俺がヒトもどき中にかけまくっているらしい寝技や投げという地味ながらも決定力のあるワザマエを見て盗み、会得しつつある上、肉体の分厚さが増したっぽく、念を縛っているくせに【纏】うオーラに粘りが出ていて面倒な奴感が増している。
ああ、それと次男坊な木偶の坊に向けて着々と進んでいたミルキは、出会った当初の丸い奴から丸っこいくらいにはなっていたりする。
裏方メインで甘い汁を啜るという将来設計を幼いながらに持ち合わせていたようだけど、俺というぽっと出のヒモに寄生枠を取られてしまうんじゃないかと考え、暴飲暴食は続けつつも彫刻やスルメのしごきから逃げないようになっているそうで──甘栗曰く化けそうとのこと。あと階段を使うようになったと本人から自慢された。
つーか俺も伸びてるし。出来なかったことが出来るようになってて、【
ᴥ
秋になって換毛期が訪れ、暇な時は大量にある自分の抜け毛であやとりしたり、オーラで繋ぎ合わせて縄跳びしたり、執事らを集めて大縄跳びさせたり、就寝中のイルミを簀巻きにしようとしたりとしている今日この頃。
最近、つくづく思うのがこの地もちゃんと治安が終わっているということ。
こっちのヒトは治安の前に司法に頼るって考えの持ち主が少ない気がする。国や地域によっては当然違うんだろうけど少なくともパドキアとそのお隣の国にある天空闘技場周辺に住まう人々は自力救済を基本に生きていると思われる。
それを証拠に警察の姿を滅多に見ないし、私兵めいた自警団らしき集団の方が見るほどで、高性能な畜生な耳は悲鳴に銃声をよく拾うのでオーラで耳栓しなきゃやかましくて寝られない──ので、イルミにひまわりの刑を受けたわけだが。
まあ引き籠っていれば実害はないんだけど、やっぱり己の中の野生がお外に出よお外に出よと訴えてくるので、困る。
日中は目立つのでしゃーなしで夜の公園を散歩すれば、イルミがしょっちゅう絡まれるし、俺やこれまたイルミを攫おうとする輩にもよくエンカウントするし、あと酔っ払い同士の殴り合いを超えて殺し合いなんかも見ることになる。
だからか、別邸のあるこの辺りの高級住宅街の庭には番犬代わりにハイエナやトラにライオンなんかが放たれていて──見るたびにマウントを取りに行きたくなってうずうずする。
でもまあ、機銃付きのゾウさんを置いているカッケー家もあったりと悪いことばかりでもない。
僕も本邸に帰ったら
そんなわけで、攫われた。
イルミを狙った、おそらく狙撃。
遠巻きにしていた執事陣らによる監視兼警護があだとなった形である。
この前の仕事の時の狙撃とは違って音を事前に察知出来たものの、射線が多すぎた。
手の届く範囲に居たのは俺のみだしで──スケボーにライドしたまま、しょうがないワンとモヤシの盾となってやったところ、着弾と同時にまったく知らない真っ黒な場所に転移させられていた。
イルミが俺を捜索する姿が想像出来ない。
執事らは職責上必死に動くだろうけども……警護も兼ねているとはいえメインは監視と連絡要員っぽいしなぁ。
てなことを考えつつ己が負ったダメージを確認しようとすると、オーラを【纏】えないこと、スケ散歩用に発動していた【
真っ暗ではなく真っ黒な空間。照明が放つ光まで黒に塗りつぶされそうな気がしてくる。
あとちょっと煙たかったけどすぐに気にならなくなったし、何なら俺の方が煙を出したい気分。
そんなこんなで不意に真っ黒な壁に、扉の形で白い縁がヌギュウっと浮かび上がってくる。
こちとら普段から念に頼らない、あるいはサボっているのでどこぞのモヤシのようにはならない。慌てる必要はない。体はやや重いが平気。問題ない。
スルメが飼っている竜モドキを酔った勢いで喰らったドラゴンドッグ様を舐めてもらっちゃ困る。俺は素の状態で強ェ! 捕食者! ドッグ!
とりま爪を立て──床がつるんつるんなので、肉球タイヤに切り替えてグリップ力を上げておく。ハッ! 気合い!
「こんなデカブツ送り込みやがって……役得だって期待して損したぜ」
問答は無用な状況だし、知らん顔だし、よくわからんことをほざく防護服姿の青ヒゲ──顔部分は透明のシールドで視界が確保されていて青ヒゲがよく映える──のカエル面へと躍りかかると見せかけて、ライドしていたので付いてきたスケボーをデコイとして爪で弾いて射出するのと同時、自身も肉球がもげるほどに床を蹴る。
動いたからなのか、ややどころか結構な強さの眩暈としびれが襲ってくる。
眼前に迫る青ヒゲは肩にかけた筒を構えようと動き出し、動作がおっせーし結構雑魚っぽいし手加減しなきゃ──って青ヒゲの下半身にスケボーが激突しちゃった。で、下半身がぐちゃぐちゃになっちゃってる。避けるか耐えろよ……脆いッ!
一応、即死ではない。でも若干息がある程度と正しく虫の息で、それにしてもヒゲが青い。限りなく透明な汗が青ヒゲに浮かんでいる。
丸呑みしたら情報を聞き出せないしと、普段使わない頭を使って工夫したら、これだ。つーか、こいつが雑魚すぎ。
俺の爪や牙ならまだしも、スケボーは市販されている普通の木製だし、打撲とか骨折くらいで済ませろよ。
この俺を攫ったんなら──むむむ? ここってたぶん誰もが念を使えない縛り空間だよな? 甘栗が言ってた狩場とかテリトリーとかいう寸法の例のアレっぽいから、この青も念が使えなくって……それでショットガンが転がってるわけ?
そもそも天井やら壁をよくよく見てみれば文字が刻まれていて、確か、えーっと……別棟建設現場にてスルメが教えてくれた、確か特殊な、あのー、うん! 文字!
てかショットガンって実物を初めて見たな。
俺もあの武装ゾウさんのように装備出来るかなぁ? 伸縮することも多いから指の間に突っ込んでおいて毛と引き金を繋いでおいて……いや、普通に面倒。爆弾でも首輪にぶら下げとく方が手っ取り早そう。
でもこういう念を封じられているような特殊な環境だと武装はアリか?
なら銃火器を搭載するよりサイボーグ化したほうが……ううん、やるならドリルだな。
牙を全部ドリルにする。これだ。腕の良い獣医か歯医者を探そう。
おや? 天井から文字が剥がれ落ちてきた。壁に床の文字もポロポロと剥離して、消えていく。
空間そのものが消え去り、お外──ってか室内? ふきっさらしに近い廃墟の中へ。
とりあえずブーと大きな屁をこいておく。
密室での戦闘が発生することを想定して我慢してたからか、ブーがやけに長ェ。
んでもって廃墟の中にて、顔中刺青だらけの女の頭部に針をぶっ刺しているイルミと目が合った。
とりま会釈して、手を合わせる──が、口から出てくるのは『オセー ソレ ヨコセ』という思ったことそのままの【念話】。
ここは感謝を込めてイタダキマスというべき場面だってのに、だりー。
「待て。説明が先」
それはそう。
『コイツ ノ タブン ネン デ トジコメラレタ』
「そ。じゃあやっぱりこいつが飛ばして……オマエ、こいつ以外は丸呑みしたの?」
顔面刺青だらけの針が刺さった女を雑に手放し、息絶えた模様の青ヒゲの防護服をがさごそするイルミ。飯は大事にして?
『コイツ ダケ ダッタ』
「オマエ用にナニか対策してきた?」
『ノープラン ノ クソザコ』
「ふーん。意味わかんないね、こいつら」
それはそうだし、青ヒゲの防護服の下がセクシーが過ぎるブラとパンツだけで、所持品の類も無さそう。
それはそうと下着の下まで丁寧に調べるイルミは、この年代のガキにしては出来た奴である。針もしっかり刺してるし偉い、針偉い。
『モウ オケ?』
「うん。この女には雇い主も吐かせたし」
『? アタマ モ?』
「アタマ? ああ、仕事じゃないし食べていいよ」
ワン!
『ワン!』
イルミくん! ナイスコック!
ᴥ
コックイルミお手製のミートはやっぱり大変に甘露で大変に美味だった。
以前のものと比べて味が少し上がっているような気がしたが、俺が求めていた分、そう感じただけかもしれない。
それとあの誘拐未遂? の一件の後、甘栗が別邸へと滞在するようになった。
件のことと関連するかは不明だけど、甘栗はいつものシワシワなほんわか雰囲気を消し去りピリピリしている。
その理由ってのが甘栗でさえ特定不能な何者かの視線がちょくちょく発生するようになっているそうで──ちなみに俺やイルミはその視線すらまったく感知出来ずにいる。
甘栗曰く悪意は感じられないそうなので、監視とかそっち系に特化した黄色い歓声を浴びまくっている闘士イルミきゅんの拗らせたファンの念能力者か何かが視線の主だろう。絶対にそう。
ただ、甘栗が滞在するより前に俺専用の特大ブラシが何度か盗まれていることはシンプル怖い。
俺に熱視線を向けてくる奴らって珍しい動物に向けるそれであって、一部のイルミきゅんファンのような輩が存在するはずもないので大丈夫。きっと。そう自分に言い聞かせている。今はガードマン甘栗きゅんがいるし平気平気。
ま、そんなわけで別邸でも肉壁要員となることも視野に入れた執事らが近くで侍ってくれるようになった。
おかげでイルミにお買い物をおねだりする機会もなくなり、快適なぐーたら生活を送れるようになった──が、単独で殺しの仕事をやってこいという催促が彫刻本人がしたためたお手紙を携えたババア執事によってされてしまい、しょうがないワンと重い腰をあげてバイク形態のババアにライドオンして現場へ。
現場は普通に遠かった。
騒ぎにならないようわりと全力の【
で、ババアに針を抜いてもらい【
本日の対象は傭兵上がりの犯罪者集団──殺人の様子を撮影する等のスナッフ系の動画を撮るために誘拐から監禁、撮影に流通までするっていう手広く悪事に手を染める集団であるらしい。
資産家が所有していたらしい郊外にあるシェルターは、今やこいつらのスタジオ兼アジトと化しているようで、そのわりには歩哨の一人も立てておらず警戒心は薄い模様。
傭兵上がりだって話なのに、よっぽど自分たちのやり口や腕に自信があるのか……十中八九、後者だろう。
十数名の集団のうち念能力者は二人らしいが、その一人はハンターとかいう資格保有者でもある。
社会的信用度が高く、ほとんどの国と地域へ立ち入ることが可能だとか、特権的権利の保有者かつ厄介な相手の割合が高い──ってスルメが言ってたし、そのハンターの裏の顔がこの集団の頭目であるらしい。
彫刻より頂戴したお手紙にはお相手の一番の脅威と予想される念の系統や【発】と思わしきモノまで記載れており、こいつを宛がってきたことにちょいイラつく。
ぶっぱ系の放出って俺苦手。嗅ぎ慣れているオーラならわかりやすいけど、未知の相手のオーラってニオイ自体知らないし、狙撃をはじめとする攻撃ってどうしても後手に回るしかないし。んだから小細工なしの強化とか、イルミに事前にワザップしてもらってりゃ余裕な操作にしてほしい。
脳内で愚痴っていてもはじまらないし、とりま事前に知らされているシェルター内部のサイズに合わせて【
火薬と血、あと強烈な体液のニオイが占める場所──前の現場以上に鼻が使えそうにない上にシェルターだけあって音も拾いにくそうで、これは耳鼻に頼れないと判断。
あえて小さ目の【円】によって周囲を把握しつつ、頭に叩き込んである内部構造を参照しながら進み、角待ちショットガンしてそうな場所に入る前は都度、体を【堅】くする。
監視カメラはあるにはあるが、誰かが監視しているわけでも警報装置の機能を兼ねているわけでもなさそうだし、録画データを随時転送され続けて現場の外に残されないよう、その手の仕事に特化したゾルさん家の執事らが事前もしくは事後に処理しているらしい。
そんなわけで、こちらの存在が露見したら一気に【円】を広げて突貫するつもりだったけど、これなら最優先で仕留めるべき暗殺対象までストレートに──おう、五人、いや四人とひとつが【円】に引っ掛かった。
オーラの漏れ方的に念能力者はおらず、さっさと片付けてしまおう。
死姦中らしく、下半身丸出しの奴らに爪を立てて手早くバラす。
最初から動かなくなっていた死体はそのままにして、トロフィーが血やモツで汚れるのを避けるべく4つの頭部を部屋の隅の方へと転がしておく。
その後、もう寄り道しちゃったし、最終的には皆殺し予定だしと各部屋で横になっていたり呑気に寛いでいる奴らを仕留めていると、他者が放つ【円】を感知。
スニークはここまでにして、こちらも全力で【円】を展開。
シェルター内の生きている者の位置を拾い上げ、爪を立てて走る。
互いのオーラが交わることで大体の力量が掴めた。
こいつ、強くね?
幸い念能力者は二人で固まっておらず、力量の低そうな方へと先に足を向ける。
食料保管庫っぽい場所にて弱そうな方が抜き身の剣を構えてぼっ立ちしているようなので、気配を【絶】って至近まで接近して背後より頭部を掴んで丁寧に千切った瞬間──膨大なオーラの塊がこちらへと向かってくる。
回避は無理くさいので、頭部を失った肉体にオーラを【周】らせて簡易的な盾にし、急所となる自身の頭部を中心にかばいつつ姿勢を下げ、体を【堅】くして気合いで受け止める。
オーラの奔流に全身が包まれ──フンッ、スルメのマジギレドラゴンレーザーよりマシ!
──ぽよん。
大きくて、ぽよんとしたのが保管庫っぽい部屋にぽよぽよと入ってくる。
内包されているであろうオーラはえぐそうで、スライムっぽい見た目のぽよんとしたそれが、こちらへと向かって跳ねてきて──同時にその後ろに立つ人影を認め、右はダメそうなので左前脚を上げ、爪の先を人影へと向ける。
メリメリと音を立てる肉体は痛くて痛くてのたうち回りたくなるが、オーラで【硬】めた爪そのものを射出し、揺らす。
目で追えても軌道までは読めないウルトラパワーナックルは避けられた──が、盛大に抜け落ちていた毛を【隠】して飛ばした方は人影に着弾、したが目立ったダメージは無さげだし、ぽよんはその見た目に反していきなり急加速してきて、回避しきれずこちらに着弾。
しんど。
ぽよんとしたのは爆発物か何かと予想していたが、こちらに触れた瞬間消失。
物理的な攻撃は行ってこなかったが、こちらのオーラをかなり持っていかれた。
もう次で決めねぇと、逃げに出るしかない。
再びぽよんを生み出しこちらへと差し向けつつ、咥えていたタバコを捨てオーラを練り練りして溜めに入るイモ顔タンクトップ。
写真のイモ顔と現物が一致するし、こいつが頭目の念能力者で間違いないだろう。
再びオーラの塊が生じた瞬間、ブブッと音を置き去りにして迫ってくる──さすがに二回目、かつ発生源を見ているなら合わせるのは余裕。
動く方の左前脚を軸に、体をくるりんと回転させて右後ろ脚をオーラで【硬】めてコンパクト重視で振り抜く。
上手に蹴り返せたオーラの塊がイモタンクトップを飲み込み──またミスった!
首置いてけハゲ!
ᴥ
結果的に右前脚がぷらんぷらんになり、右後ろ脚もぷらんぷらん及びほぼほぼ爪が消失するっていう代償を支払ったものの仕事は完遂出来そうにない。
とはいえ暗殺対象はまだ居るので、けんけんぱしつつ処理していき、首輪に組み込まれたばかりのワンワンフォンを介してババアに終了したことを報告しておく。
彫刻にどうやってごめんなさいしよう。
現場にてそんなことを考えていると、どこからともなく現れた存在に驚きのあまりキャンッと鳴いてしまう。
キャンッと同時、クセになっちまってる垂直ジャンプを繰り出し、シェルターの天井にまた埋まってしまった──が、理性と本能が今はカッコつけろと煩い。
俺もそれには大賛成であるので、流れるように【
穿った穴を大きくし、再び【
「結婚してください」
雑にヒトの姿に変装したメスが祈るように手を合わせてそんなことを口にする。
ニオイからしてたぶん純粋なヒトではなくて……良き隣人であったあのポッポ蜂の女王に近いメス。
所属不明、敵であるかも不明。オーラは垂れ流しだってのにどちゃくそに恐ろしい。
でもこのメスを見ていると無性にうろうろしたくなる。
『ハイ』
初対面のメスからのプロポーズに即座に了承する己にビックリするけど、【念話】から発せられた言葉に嘘はない。