走狗   作:カストロ

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タコ

 はじめての彫刻(シルバ)との現場。

 お散歩ドッグスタイルのために全力気味の【シュリンクフレーション(カントリーマアム)】を発動しているのは、高層マンションが立ち並ぶデザインされた新興の高級住宅街の中にあるドッグランが現場となるから。

 車で乗り入れればいいものをと思うが、徒歩にも理由があるらしい。散歩出来っからいいけど。

 そんなわけで金属製の厳ついリードを握る飼い主役の彫刻は、外資系の企業に勤める妻子持ちってな装いで妙に様になっていて──こいつもイルミらのように家を継がなかった場合、普通にリーマンをしていたのかもしれない。

 

「もうすぐ到着するが、お前は別命があるまで待機だ。【円】もするなよ」

「ワフッ」

 

 今の俺は【円】どころか発である【シュリンクフレーション(カントリーマアム)】を発動しつつオーラを【纏】わず垂れ流すという念の高等技術を実践中のオーバードッグである。

 なので現場に到着する前に歩道の脇で少しだけウンコを垂れているのも演技である。

 さておき俺のウンコを処理する彫刻は顔色一つ変えない。甘栗(マハ)やイルミに処理されるのには慣れたけど、彫刻にされるとなんだかソワソワする。

 

「今回は急だったが、仕事の前は呑み過ぎるなよ?」

「ワフ……」

 

 酒のニオイがしたんだろう、苦言を呈してくる彫刻。

 せやけど彫刻、肉ばっかり食ったあとのウンコもクサいんやしワースやろ。

 

 せやけど? なんだか聞き覚えのある言い回しで……あっ! もしかして殺し屋がわりと大っぴらに営業しているこの世界って──コナン時空だったりする? アト曰くこの惑星は不思議の星らしいし、ワンチャンあり得る。

 日本が存在しないのは確認済みだが、未確認というより非公開の地域は多いし、確認が取れていないだけの可能性は高い。それにこいつら共通語という名の日本語口にしとるしイタリアやスペインは何故か普通にあるし。

 

 そんで確かあの時空での殺人多発地帯の町の名前は、えーっと……本家のベイカー・ストリートをもじった……なんだっけな、ガキの頃にコナンの映画観に行ったきりだし思い出せねえ。

 コナンくんの苗字も思い出せないし、とりあえず「コナン」って名前だけでも諜報・情報操作を担当してるっつー執事らに照会しておいてもらおう。

 

 もしコナン時空で、かのポンデリングみたいな髪型の博士が実在したなら拉致ろう。

 

 そんなわけで、コナンとあのファンキーな博士に思いを馳せつつ、現場へ。

 わりと気合いを入れてオーバードッグさせてたってのに、ドッグランで他の犬どもと一緒になってハッハ、ハッハと涎を垂らして走り回っているうちに彫刻は護衛を含め暗殺対象をいつの間にやら片付けていたようで、さっさと帰るという運びになり──ついでに寄り道という名の本題へ。

 

 今日は俺を正式に魔獣登録し、国際人民データ機構とやらにも登録するそうな。

 いつになるかはまだ未定ながら、婚姻を考えるメスも出来たことだし、金の管理やら各種契約を自己完結出来るようにしておいた方がいいということを、今日はパパみを出しまくっている彫刻より告げられ、それもそうかと納得してバカみたいな数の役所や窓口、その他関連施設を回り、最寄りのペット可のホテルに宿泊して早朝からまたいろんな場所へ出向いて手続きを終わらせた。

 彫刻が都度保証人や責任者という形で付き添ってくれ、魔獣登録の際は仕事帰りの甘栗までもが顔を出してくれた。

 

 なので当然、感謝の舐め回しを甘栗にし、彫刻にもしようとしたら遠慮されたが、甘栗から受け入れよという言葉もあって受け入れた彫刻をベロンベロンしてやった。感謝。

 

 それじゃあ今日は俺のお小遣いを使ってパーッと呑もうと提案をしたら、意外なことに彫刻も賛成してくれ甘栗や執事らも伴ってゾルディック家の元執事が経営しているというバーへ。

 執事らはOBの店に加えて上司との地獄の呑みであるからして店の出入り口付近の席で固まって呑んでもらうってことにして、彫刻と甘栗を店の奥にあるボックス席へ誘導する。

 俺は店の真ん中に寝そべり、顔だけボックス席に置いて呑む。

 

 つまみに出された風味が強い豆を舌の上で転がし、我慢できなくなって甘栗に頼んで鼻の穴に入れてもらって楽しんでいると、彫刻が言いにくそうに口を開きはじめた。

 

「あまりその手の欲求がないようだが、お前は子を作ろうと考えているのか?」

『ジブン ノ ガキナラ タブンスキ ダカラ ソノウチ』

「──坊よ。先走るでない」

「いや、ああ……そうだな」

 

 なんとも言えない空気となり、誰も口を開かず、彫刻が高そうな蒸留酒をパカパカと飲み干し、甘栗がちびちびやる。俺はどうせ酔えないしで、舌の上で酒と豆を転がし味を楽しむ。

 三者ともに言葉を発することがないからか、執事陣らの席も静かなもので、店内に流れるジャンルのよくわかんない落ち着いた音楽が謎に心地よくて、これはこれでアリだなぁっと思っていると──珍客が現れることでぶち壊された。

 

「やっぱこの店に居やがったか、マハにシル──デケェ! 犬ゥ!? 犬なのかよ、こいつ!」

「相変わらず騒々しい奴じゃのう」

「面倒なのが来たな……ミケ、暴れてくれるなよ」

「ワッフ」

 

 今は軽めに【シュリンクフレーション(カントリーマアム)】を発動して、ぐでーんと寝そべっているわけで、暴れる以前に立ち上がったり寝返りうつだけで店内の備品を壊す。

 殺し屋の執事なんてしてたのがウソだろってくらい人の良さそうなマスターに悪いから、言われなくても我慢するワン。

 

「……ひとまずこの犬は置いといてよー、知り合いがオメェらのこと見掛けたっつーから当たりつけてみりゃ、マジで居やがったぜ。こっち来てんなら連絡くらい寄越しやがれ」

 

 俺の対面、シルバの横にどかっと座るジジイはジジイなはずなのにジジイじゃなくて目がバグる。

 容姿だけなら確かにジジイで、頭髪は真っ白で、伸ばされたヒゲも同様だってのに服装が全盛期の志村けんくらい若作りで違和感がすごい。

 

「お前さんの周りは煩くてかなわん」

「ケッ……またその話かよ。あいつらはそういうのじゃねえって何度も言ってんだろ」

「悪癖じゃのう」

 

 話が読めないが甘栗の言葉は痛いところを突いたのだろう、シムケンが表情を曇らせる。

 

「そんなつまんねェ話よか、これ! この犬っころは何だァ? 使えるみてえだしよォ……どうなんだよ、ご当主様よ。立場上、流せねェぞ?」

 

 シムケンの声のトーンがマジな感じになったからだろう、空気がずーんと重くなった。

 そんな中、水を向けられたご当主様な彫刻は、組んでいた足の膝の上に手にしていたグラスを置くというトリッキーなスタイルで以って口を開く。

 

「ペットだ」

「ハッ! つまんねえ答えだなァ!」

「事実だ」

 

 話が長くなりそうだし寝とこ。

 

 ᴥ

 

 起きたらシムケンはだっふんだした後のようで、何事もなくそのままバーを後にする。

 帰り際、メールにて魔獣や国際人民データ機構への登録自慢をアトにしたら、アトは半年くらい前には両方とも申請・登録済みだったらしい。

 ふーん……俺より頭も要領も良さそうなのは薄々わかっちゃいたけど、はっきりと突きつけられるとヒモ魂的に喜ばしくなる。

 さすがアト。さす宙人。もう例の冒険者っぽいハンターライセンスなるものもしれっと取得していても驚かないが──さすがにそれはまだらしい。

 

 なんなら一緒に取得を目指さないかとのお誘いを受けた。

 魔獣でも取得は一応可能ってか前例もあるそうで、犯罪歴があっても大丈夫だし、なんならゾルディック家の連中でさえ取得出来るらしい。

 でもゲーマー的にはハンターライセンスよりも希少価値が高くて入手するには100億──どころか調べてみたら物好きな富豪が170億ジェニーって価格で買い取ると公表しているっていうグリードアイランドっていうゲームが気になる。

 

 眉唾ではあるけど、現実並みに作り込まれているっていうゲームは欲しいというより、やってみたい。

 ただ、お小遣い帳を確認するまでもなく収支はマイナスで、借金を背負っている状態では夢のまた夢なので──現状、丸っこいの(ミルキ)と共に長財布(イルミ)に交渉中だったりする。

 

「オレもミケも兄貴が鍛える為に頑張ったんだしさぁ、カネ貸してくれよ」

『ソーダソーダ アニキ カネクレ』

「オマエの兄貴になった覚えはないし、金くらい自分で稼ぎなよ」

 

 イルミがまともなこと言っててウケる。

 

『ジャア カシテ 200オク イツカ カエス』

「じゃあ? いつか? ナニソレ……オマエは担保にナニか出せるの?」

『タンポ トカ シャラクセー コロシヤ ノ クセニ コマケーナ』

「オマエは契約したところで破りそうだし」

 

 イルミがまたまともなこと言っててウザい。

 

『ヤブラネーヨ ネンワ デ チカッテ ヤル』

「……ナルホド。やっぱりその【念話】はウソが吐けないのか」

「へェ……そうなのか。それでノンデリなことバンバン言ってたのかよ。合点がいったわ」

 

 ノンデリとウソはあんま関係ねえよ。性根の問題だ。

 

「金、ナニに使うの?」

『ゲーム』

「オマエたちがよく話してるグリードアイランドってやつ?」

「そうそれ! なんだよ、兄貴も興味あったりするのか?」

「少し」

 

 イルミと直接顔を合わせるのはわりと久しぶりな気がする。

 天空闘技場のある別邸では毎日顏を合わせていたし、ククルーマウンテンに帰って来てからもなんだかんだで絡みはあったが、ここ最近イルミは仕事に出ずっぱりで不在だった。

 

 男子三日会わ──ふんふんってやつか? それにしてもまともで不気味だけど。

 

『コロシ イガイ ニ キョウミ アンダ オマエ』

「殺しは別に好きでやってるわけじゃない。仕事だし」

 

 もしかして、こいつ……。

 

『コイツ ソウサ サレテネ?』

「マジ? 確かに今日の兄貴は変、かも?」

『オマエ ヒト ソウサ デキル?』

「オレ? いや、兄貴と被るしそんなの作ってねえし出来ねえよ」

 

 執事陣の中にヒトを操作、あるいは支配出来る系の能力者って居るかなぁ?

 操作系の王道の【発】だろうし、普通に居そうではあるけど……一応彫刻に報告しとくか。

 

「それで、担保は?」

 

 マイペースな部分は変わらずかよ。微妙な線だな。

 

『ナイ ケド アル』

「どっち?」

 

 説明ってやつは【念話】やメールを介すると面倒。

 なので、こういうのは秘書に任せるのが吉。

 

『セツメイ ヨロ』

「オレ? まあ、いいけど……。兄貴にもわかるように説明すっけど、とりあえずまずは聞いてくれ。疑問に思ったりしたことがあっても後でまとめて答えるから」

「ウン」

「まずグリードアイランドって定価からして58億もするゲームでさ、まずクリアデータへの懸賞金の高さや集めた証言からして確実に値段相応のリターンがあると見てる。伝え聞く話をまとめるとハードの限界を余裕で超えてるし、最新機種でも表現が不可能な事象が多過ぎる。だから仮想空間で行われるゲームってより現実の延長線上が舞台で──」

 

 俺が10歳くらいのガキの時って、この丸っこいのほどゲームについてペラを回せただろうか? 思い返すにポケモンで厨パ作ったり、マイクラで意味もなく巨大なポコチン作って喜んでいた気がする。

 

「──手放しそうな持ち主はもう割れてる。国外の王族の一人で、そいつってプレイヤーでもないただのコレクターだから交渉次第で譲ってもらえるはず。うちに何度か依頼出してきてる奴だし、連絡取れるはずだぜ?」

「フーン」

 

 丸っこいのに説明させて正解だった。

 俺も一通りの情報の共有を受けているのに、「へーそうなんだー」って感想が出てくるもの。

 

「──で、あとは金。値段交渉もするつもりだけど、バッテラって富豪が懸けてる170億を超える200億積めば、たぶんイケる」

「その王族ってダレ?」

「ん? ああ、チョウライって奴。ほら、カキンの王子ですげー浪費家の奴いるじゃん。狙い目だと思わね?」

「そ。このこと親父は知ってる?」

「爺ちゃんは知ってる。親父には、まだ……でもママから頼んでもらえば、大丈夫……のはず。たぶん」

 

 さて、と。俺の出番かな。

 

『シルバ ニハ モウ ナシ ツケテル』

 

 犬フェイスでドヤるのにはもう慣れた。

 鼻の穴を膨らませるのがコツだ。

 

「マジ!? いつだよ?」

『キノウ』

「マジかよ……」

 

 条件付きだったけどな。こいつらには聞かれない限り言わないけど。

 

「親父が許可してるなら意味がありそう……イイヨ。担保もいらないし金出してあげる。その代わりオレが望むリターンがあったら貰うから」

「え? ちょっと待ってくれ。兄貴も一緒にプレイするのかよ」

「ウン。やってみないとリターンの有無、それに中身がナニかもわからないし。あと外部と連絡が取れないような環境なんだろ? ならミケ、オマエにはそのグリードアイランドをプレイする時、刺すから」

 

 あー、そうね。プレイヤーは念能力者に絞られるみたいだし。

 ヘルプが容易に出せない状況じゃ俺という存在が一番のジョーカーになってしまう。

 

『オケ ソウサ タイサク ダロ』

「そ。オマエに暴れられると面倒だし、奪えないだろうから」

『オマエ マダマダ ダシナ』

「安い挑発だね」

 

 イルミにもいつか序列というものを教えてあげなくちゃならない。

 宿主の甘栗以外は全員俺の下であるべきだし。

 

「あ、兄貴? ならオレにも刺さなくていいのか?」

「ミルキには必要ない」

『サシトケ』

「必要ないね」

 

 ありますよー。弟をナチュラルに舐めるの悪癖だからやめなー。

 

『コイツ オマエ ヨリ アタマ イイダロ』

「……」

『ソレニ オマエ ゲーム ウンコ ジャン』

「念能力者だけがプレイ出来るゲームだろ? なら──」

『ソリティア モ クリア デキネーノニ カタルナヨ』

 

 ぷー。

 

「もうデキるけど?」

『フッ デキル ダケ(・・) ナ』

「ソ、ソリティアは確かにムズイし初心者にとっては運ゲーみたいなとこあるしさ。オレも最初は……な? てかミケも兄貴を怒らせるようなこと言うなって」

『イマカラ マリパ デ イルミ ボコソーゼ』

「ボ、ボコさねえよ! それに兄貴はあの手のパーティーゲーやんねえって!」

 

 いつか、そう考えていたばかりだけど今すぐ教えてやろう──序列ってやつをな。

 

「ヤろ。そのマリパっての」

「ヤんのかよ!」

 

 バカめ。俺のテレベル攻勢で泣かせてやる。

 

 早速、丸っこいのの部屋にてマリパは行われた。

 イルミはアイテムの仕様やメタ的な部分に不慣れで、スコアをあまり伸ばすことが出来ずにいたが、パズル、記憶力、計算系のお題のミニゲームで丸っこいのに負けじと勝利を積み重ねていた。

 そのたびに画面じゃなくてこちらを見てくるのがすげームカついたので、スターやコインはイルミを集中して狙って奪ってやったし、最終的には念を使用しての盤外戦術でプレイ妨害をしまくってやったら、1位がほぼ確していた丸っこいのが「最後までちゃんとやれよ」と目に涙を浮かべて訴えてきたので矛を収めて3位でフィニッシュしてやった。

 

 マリオパーティーではなく似て非なるマリオットパーティーでは序列は決まらないのでノーカン。

 

 ᴥ

 

 片付けておくべき諸々の殺しの手伝い、それにしばらく留守──グリードアイランドはMMOってよりデスゲームじみた側面があるらしく、プレイの中断が不可能になるプレイヤーも存在するらしい──にする可能性もあるので、アトに「直接会ってあーそぼ」と連絡して約束を取り付け、最近同行することが増えているメガネ執事にいろいろと手配してもらって殺しの現場で待ち合わせするという形で再会。

 

 再会のお喋りもそこそこに、磨き上げているというあやとりでアトと再戦した。

 まあ、ボコった。まだまだ研鑽が足りない。触手裁きは確かに上達していたが、あやとりの基礎にして神髄となる空間の掌握に意識が向いていない──ということを延々と口にしつつ、自作しておいた凧揚げもした。当然喧嘩凧であり、初狩りである。念なんて無粋なもん使わずに切り刻んでやった。

 

「敗北を認めます。ただし、努々お忘れなきよう……私たち種族は嫉妬深く、そして執念深くもありますので」

『ウイー マタ アソボー』

 

 早朝に再会し、別れ際には夜も更けていた。

 だからだろう、アトを強制的に連れ戻そうとしたのか、彼女を迎えに子宮のような形の小ぶりな宇宙船が来るしまつで、光の屈折があーだこーだで普段は見えなくしているとドヤ顔で親の車自慢してくるアトを丸呑みにして口の中で転がしてやった。

 

 そんなこんなで帰宅すると、既にからくり屋敷内に専用の部屋が用意されており、モニターに接続したジョイステにグリードアイランド及びセーブ用のメモリーカード、マルチタップ等が並び、人柱にされたであろうお取り置きされていた念能力者であった不法侵入者の簡略化されたステータスのようなものがモニターに映し出されていた。

 ちなみにあと4人プレイ出来る余裕はあるけど、他の誰かを誘う前にまずは3人でやろうってことになっている。

 甘栗も誘いたいところだったけど、甘栗曰くたまには子供だけ──俺も子供扱いされていることに後になって気付いた──で楽しんで来いとのことだしで、俺の世話係に執事の誰か、元スロカスなこともあってこの手のゲームでも戦力になりそうなメガネが欲しいところだったけど我慢する。

 

 我慢といえばイルミに事前にブッ刺された針は体の奥の方まで刺し込まれていてるし、針自体小さかったので違和感はほぼない。

 が、針による操作の効果が『強者と対峙した場合、逃げない』というもので、一部とはいえ自身の意思を捻じ曲げられていることにすごく遺憾。なんでこの効果にしたし。これ放置されたら、たまに行われる甘栗によるシゴキから逃げられないことになるんですけど。

 俺のもミルキに刺した針の効果『ゾルディック家の者を傷つけられない』にしとけよな。とも思ったけど、イルミが操作された場合の対応を俺に丸投げするつもりなんだろう。

 

「スタート地点が同じかもだし、30分くらいはその場で待機な。それ以上待って誰とも会えなかったら、目立つだろうミケに集合ってことで。そうなった場合、ミケはわかりやすい目印作ってくれよ。殺しはナシでな。わかったか? オイ、聞いてんのか?」

『バラケタラ デカイマチ カ プレイヤー ガ オオイバショ デ デカイクソ スル』

 

 丸っこいのの予想ではグリードアイランドってのはVR風生身デスゲームトレーディングMMOらしいし、ウンコも出来るはず。

 

「お、おう……それならランドマークになるか……? 兄貴もそれでいい?」

「ウン」

 

 そんじゃまあ、一番槍は一番強ェ奴が担当するってことで早速ジョイステの前でそいやっさとオーラを【練】る──と、しゅぽんと吸い込まれた。一瞬だけ感じた他者のオーラに包まれるような感覚がすぐさま消え去る。

 十中八九、念による仕込みなんだろうけど凄まじい技量だわ、これ。

 このゲームの中身はほぼほぼ知らないけど、これが最も優れたワザマエじゃなかろうかってくらいこの念は洗練されている気がする。

 

 だってのに、おそらく転移させられた場所にある出入り口が小さい。

 このゲームのデザイナーは畜生に優しくない。洗練されているのはデザインだけの模様。

 

 さておき、そんなデザイナーが創ったであろう空間は一定の規則性を持つ幾何学模様でデザインされており、床に壁は黒地に青の線が走り、いかにもゲーム空間ってな感じ。

 チュートリアル用の独立した専用空間っぽく、小さな出入り口をわりと強引に通ろうとするもどんな建材を設定しているのやら、簡単には壊れそうにないのでしゃーなしで【シュリンクフレーション(カントリーマアム)】を発動して、通り抜ける。

 出入り口同様にほっそい通路を通っていくと──おお! 早速プレイヤー? こいつ生きてるしNPCではないよな?

 

「……G・I(グリードアイランド)へようこそ」

 

 ああ、この文言(テキスト)的にチュートリアル係とかか? プレイヤー数の上限って理論上800人だし、可能か。

 でもクソヒマそうだし、チュートリアルは兼任してるってだけで、このメスはGMとか運営側の業務が本命でこっちは片手間でやってるってパターンと見た。

 

 なので媚びを売っておこう。

 しっかりお座りして、元気よくワンとひと鳴きしてから耳を立てて拝聴モードで待機する。

 

 ᴥ

 

 専用の魔法『ブック』と『ゲイン』が使えるようになるっていう指輪が邪魔過ぎる。

 伸縮性がそこまで無いようで、【シュリンクフレーション(カントリーマアム)】を解除するとぶっ壊れそう。

 チュートリアル担当のメスにどうにかならないかと訴えたら、対応を検討すると言われ、それまではご不便かと云々と定型のお詫びをされて終わった。

 そんなこんなでチュートリアルを終わらせ、これまたセマセマな高床式のコテージみたいな場所から見渡す限りの平原に出てお座りして待機すること数分──G・Iの入手という功績大により丸っこいのを卒業したミルキくんがポッケに両手を突っ込んで出てくる。それから待つこと数分後、ぽけっとしたままテクテク歩いてくるイルミとも無事合流。

 

「とりあえず夜になったら星の位置確認するわ。予想していたとおり、ここは念由来の仮想空間じゃなくて現実世界だって可能性のが高ェ。時計も持ち込めたから時差も割り出せるし、一応現在位置出しとくぜ──まあ、運営がよっぽどのバカじゃなきゃ天体の見え方弄ってそうだけど」

『アイアイ サー』

 

 船乗りかな?

 

「見てるヤツ、ヤっておく?」

 

 殺し屋かな?

 

「あー……初動から目立つのはなぁ……つーかプレイヤーキルにどんなペナルティがあるかわかんねえうちは止めとこーぜ」

『デモ シセン ウザクネ?』

 

 この視線には覚えがある。初狩りのニオイがする。その手のクズはヤってもいい。

 

「オイ! オマエまで兄貴に同調するなよ! ここは慎重に行こうぜ、な!?」

『ダッテ サ』

「オッケ」

 

 ここ最近、ミルキが熱血上司みたいになっている。

 今もそうだけど、いつもワイシャツにスラックススタイルだから余計に係長とか課長感が強い。

 あと、どうでもいいけど包帯みたいな柄のタンクトップを着用しているイルミのセンスがマジミイラ。

 

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