走狗   作:カストロ

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甘苦

 何はともあれまずはお買い物よ!

 

 カード集めが目的とはいえベースはMMORPG的なゲームらしいし、となれば何はともあれ買い物であり、武器防具は無用の長物になるだろうからポーションや毒消し的なものを見繕いたくなる。

 ただ、一般的なゲーム及びMMORPGの類ではチュートリアルを終えれば初期資金がある程度あるってのに、グリードアイランドにはそういった仕様はないようで、まずは金稼ぎからとなりそう。

 金稼ぎに関連して、この手のゲームでは定番のクエストやらの存在も確認しなくちゃなぁと考えていると課長さん(ミルキ)より指示が出る。

 

 とりあえずそこらの小石や草を拾ってカード化し、フリーポケットに入れておけというので意図を汲んで素直に従う。

 イルミも拾ったものがカード化していくのをマジマジと眺めつつも、黙々と言われたとおりしている。

 

『トクセーレー ガード?』

「ああ、金鉄(金太郎電鉄)でいうとこのアレだな。カード使ってプレイヤー同士でやり取り──攻撃や妨害系、カードそのものを奪うって手段はぜってーにあるだろうし、クズカードをデコイにしとく」

『ブツリ デ フウサツ スル ホウホー オオソー ダケドナ』

「そりゃーなあ……その手の物理的な手段やグリッチみてーなことメインにしてる輩も絶対に居るだろうな」

 

 カードゲーの醍醐味であるカードを使用してのプレイヤー同士のやり取りにおいて、すべてのカードが所持しているだけ、もしくは取り出すだけで何らかの効果が発動するとは思えない。

 おそらくほとんどのカードは『ブック』に『ゲイン』のように口頭で決まったワードを唱える必要あるだろうから、それより先にカードか命を奪われれば意味をなさなくなるはず。

 

 強制ターン制バトルじゃなきゃだが。

 

 とはいえカードの内容は大体別ゲーにもあるようなものばかりだろうから、一部特殊状況下でのみターン制採用の基本リアルタイム制だろうと予想する。

 加えてプレイ中の死やゲームから出て来れないって奴が多いみたいだし、きっとトレーナーも殴り合いながらポケモンしているんだろう。

 

「フーン。そういうのもアリなのか。じゃあそういう相手はヤるの?」

「チュートリアルのあの女は答えなかったけど、まだPKのペナの有無次第としか言えない。だから相手に殺意があったとしても軽くボコって拘束する程度に収める方が無難じゃねえかな。それに例えゲームの仕様的にノーペナだとしてもあまり推奨できねーとこあるんだよ。指定ポケットのカード100枚集めるってのが最終的なゴールってゲームだぜ? トレードも活発に行われてるだろーし、悪評が広まれば誰も相手にしてくれなくなって不利になる」

『マチ タチイリ キンシ トカ ダルソー』

「ああ、その手のペナが一番だりーな」

 

 ペナが無くともプレイヤー同士の交流をどうやって取っているか次第ってのもある。

 リタイア(死者)が多いとはいえ上限が800人ってなると新規なんて微々たるもんだろうから、お互い認知し合っているプレイヤーばかりになって噂はすぐ広まりそうに思えるが、チュートリアル中に一般的なネトゲーにあるような誰もが使える通話やメッセージといった基本機能の有無について聞いたらしいミルキ曰く、そういった便利機能のほぼすべてが実装されていないようなので、噂の広まり方自体は緩やかなものになると思われる。

 ゲームの外にてグリードアイランドの参加者が書き込み、閲覧するような掲示板やディスコのような存在があったりするとわからないが、そもそもプレイヤーは互いにクリア報酬を巡って競争するよう仕組まれている特性からして、やっぱり情報の広がりは遅い上に限定的なものになるはず。

 

「良し。デコイはこれくらいで十分だろうし町とか村探そうぜ──で、こっち見てる奴らの方に行きゃ何かしらあんだろうけど、どうする? あえて外すか?」

『ウゼーヤツ ノ ツラ オガモー』

「賛成」

 

 ぬりー初狩りクセー視線が擬態って可能性もちょい頭に過るけど、強者がそれをする理由ってのがあんまり思い浮かばない。

 

「……それで行くか。でもマジでいきなりヤったりすんなよ? 初狩り狙ってるよーなクソでも様子見してくれよ? まずは情報聞き出してーし」

『ハイー』

「ウン」

 

 ミルキの心配もごもっともだけど、俺ってわりと口だけなとこあるし。問答無用で首から下をモグモグするのってお手伝いの時に限られるし、それ以外ではたまにしかヤってないもん。

 最近はそうでもないけど、根っこの部分ではまだまだサイコしていて殺しを仕事って割り切れてなさそうなイルミの方が俺なんかよりよっぽど危険である。

 情報が欲しい。なら面倒なことすっ飛ばして針刺して吐かせて埋めて終いにしそうな──それはそれで甘露ゲットチャンスだしアリか? 埋める手間省けてエコいし。

 

 いやいや、まだ大人しくしておく方が無難。

 雑魚い念能力者をイルミに調理してもらって喰らっても甘露度はそこそこ止まりで、そこそこ以上に練られた念能力者はやっぱ甘露度が高い。

 低甘露でも喰えるなら喰いたいけど、現状それをするにはデメリットがある。同じリスクを取るならリターンをより大きなものにすべき。

 今は雌伏の時。あのチュートリアルのメスくらい練られているプレイヤーはきっと居るはず。

 

 もしも、仮にそんなプレイヤーが居なかったらあのメスを咥えてイルミの前に持っていこう。

 

 ᴥ

 

 開幕からハードの限界──てか現行最新機種でも再現がきつそーな精巧な住民っぽいNPCがうろうろする町に入った途端、お揃いの無精ヒゲな二人組が(バインダー)を開いた状態で路地裏よりお約束のように現れ、俺たちの進路を阻むよう立ちふさがる。

 すぐにミルキとイルミが『ブック』と唱えて(バインダー)を取り出す。

 歩幅を合わせるのも面倒だしで、今も【シュリンクフレーション(カントリーマアム)】を発動中な俺はあえて黙って犬のフリをしておく。

 

 まあ、サイズでバレなくても指輪してっからバレてるだろうけど、そもそも価値のあるカードや金すら持っていない上に、無駄に【念話】を見せる意味もないとの刹那の判断ゆえである。

 ゲームに不慣れなイルミですら即座に反応していたってのに、ゲーマーのくせして『ブック』と唱えるのが遅れた自分に言い訳しているわけじゃあない。決してな。

 

「ほー……キミたち、開始したばかりだろうにゲーム慣れしてる感じかな? (バインダー)の有用性を既に理解しているようだな」

「そう? ところでオレらに何の用?」

 

 ミルキと一緒にネトゲーする時もそうだけど、他のプレイヤーと接触する際、こいつは謎に社交性を発揮して率先して相手を務めてくれる。

 金貸しってたぶん勤勉かつ社交的じゃないと務まらない職だろうし、この前彫刻(シルバ)に適当に伝えたミルキの適性職予想もあながち間違っていないかもしれない。

 

「いやなに、ここ最近新顔が入ってくることも少なくなっててな──」

「──おいおい、ガキ相手になに畏まってんだよ。さっさとアドヒかトレースしろよ」

 

 無精ヒゲAの言葉をさえぎる形で無精ヒゲBがイラつきを声に乗せて被せる。

 

「スキル? 魔法か何かか? それをオレらに使おうってのか? 名前からして追尾するとか、相手に密着する? ああ、他のプレイヤーの(バインダー)の中身を盗み見ることでできるとかか? で、最終的には成果をかすめ盗ろうって腹か」

 

 へー、そうなんだー。てかやっぱ初狩りかよー、サイテーだな。

 

「ほら見ろ。オメーが余計なこと言うから警戒されちまったじゃねえかよ」

「知るか。さっさと片付けようぜ」

 

 むかつくし、もうヤっちゃう? ゴーしてもミルキ拗ねないよね? そういう意図を込めた視線をイルミに向けようとしたところ──ミルキに先回りされた模様。

 

「兄貴、手ェ出すなよ。ここはあえて食らってみる」

 

 なんか、このミルキがカッケー。ワイシャツだから? でもなんで俺の名前は省いて……ああ、一応犬のフリしてるのに合わせてくれたのか。

 んん? 無精ヒゲAがカードを取り出し、すぐに(バインダー)へ戻した? 今の不自然な動きには何か意味があるな。

 

「ほーう、随分と物分かりが良いな。とくにキミ──似た名前が二つあるし、ミルキ? もしくはイルミくんかな? それで、やっぱゲーム好きなのか?」

 

 この無精ヒゲA、俺らの名前をどうやって知った?

 ゲームではよくあるような頭上にプレイヤーネームが出ているわけでもないってのに……ああ、さっきの不自然な動きにしろ、今もチラ見してる(バインダー)に名前が表示されてんのか。でも特定までは無理っぽいし、一定の範囲内にいるプレイヤー全員の名前が表示されてるとかか?

 

「……ウゼーな、やんならさっさとしろよ」

「ふっふっふ、ではお言葉に甘えて、【追跡(トレース)使用(オン)! イルミを攻撃!」

 

 おー、オーラの塊がイルミにしゅーんと飛んでいく。

 一瞬回避行動に出ようとしたイルミだったけど、ミルキの判断に従って受け止めることにしたようで──顏。おま、顏。

 

「……」

 

 イルミが絶対に殺すマンな顔になっちゃっててウケる。

 つーかミルキじゃなくてイルミを攻撃したの、ミスチョイス過ぎてウケる。

 やるならどう見ても雑に犬のフリしてる異物な俺か、リーダーっぽいミルキだろうに。イルミなんてどっからどう見ても腕っぷし要員のミイラじゃんか。

 

 あ、でも見た目と名前が一致してなかっただけか。

 

「チッ……兄貴、どう?」

「問題、ナさそう」

「そっか──なあ、この攻撃ってカードでやったんだろ? 入手するにはどうすりゃいいの? つーか金稼ぎのオススメとかある? やっぱお使いクエ探すとかか?」

「おい、もう行こうぜ。このガキたち気味悪ィ」

 

 てかお前も顏な。ミルキも目の前の無精ヒゲ絶対に殺すマンな顔になっちゃってるじゃんかー。

 

「おいおい、質問にくらい答えろよ──つーか、このまま逃がすとオモってんノか?」

 

 こいつ、話を主導してたから自分が攻撃食らうだろうって予想してたんだろうけど、当てが外れちゃったからってプリプリすんなよなー。

 てか俺らが手出しするの止めたのお前なのに、ヤる気まんまんになってどうすんのさー、もー。

 

「……あ、ああ、そうだな。【再来(リターン)使用(オン)! マサドラへ!」

「【再来(リターン)使用(オン)! マサドラへ!」

 

 とんでもねーオーラに包まれた無精ヒゲA、Bが飛んでいく。

 見た感じ高速機動甘栗や竜騎士形態のスルメ(ゼノ)、ましてや搭乗者のオーラを燃料にする上に燃費がクソなアメ車仕様な妖怪婆イクよりも遅い。

 なので今から【シュリンクフレーション(カントリーマアム)】を解除して全力で走れば追えそうだけど、追っかけるとイルミとミルキをほったらかすことになる。

 まだこの世界の仕様への理解度も低いうちに、それはさすがに拙い。俺に乗せて追うにしてもイルミなら大丈夫だけど、ミルキの場合は全力の半分くらいでも吐くし泣くしで無理だ。

 

「クソが……してやられたぜ」

「次、見掛けたらヤるよ?」

 

 そこははっきりしとくべき。

 まあ、二人の顔を見るに絶対に殺すマンなままだし、ヤった後の事後処理を考えるべきだ。

 

『カタヅケ チューイ ナ』

「ウン。オマエが居る時にする」

 

 ここには執事らが居ねーし、そんな時こそ清掃ドッグカタヅケンジャーの出番となる。

 

「待て待て! 待ってくれ! もうあいつらをヤんのはいい! でもカードな! カード! あいつらから奪うもん奪ってからだからな!」

「盗賊は趣味じゃない」

『オレモー アタマ ガ クロク ナッチマウ』

 

 ドロボーって苦手。神経すり減りそうだし。

 

「やれよ! これ、そういうゲームだから!」

「そ? じゃあ、してあげる」

 

 まあ、ドロボーってよりは実質ルート行為か?

 死んじゃうとセーブ用の指輪と(バインダー)が破壊されて中身のカードも消滅する仕様ってチュートリアルで言ってたし、死体からルートできないがゆえの苦肉のドロボーか。

 しゃーねー、一時的にドロボーにジョブチェンしてやるか。

 

 ふう。ちょい頭使い過ぎた。

 

『ツーカ メシ クワネ? ハラヘッタ』

 

 頭使うと腹減る。それは熱くなっていたミルキも同様のようで、はっとしたような表情を浮かべている。

 

「それはそう! オレも腹減った! よし……メシ屋探すか」

「金は?」

『オレラ ドロボー クイニゲ スルニ キマテル』

「そっか」

 

 食い逃げにも何かしらペナルティーがあるんだろうか。

 あったらあったでそれもまた情報だし、その時はついでにNPCを喰えるかどうかも試そう。

 

「あっちだな。あっちにある! 行こうぜ!」

 

 ヘェ、やるじゃん。ミルキが指さし、足を向けた方向にはここから一番近いメシ屋が確かにある。

 

 ᴥ

 

 スタート地点からほど近いここアントキバは懸賞の町を謳っており、壁には報酬にゲーム的なものが明記された依頼表が貼り出されまくっていたり、広場の目立った場所に立てつけられた大きな掲示板には毎月の目玉となる懸賞大会が貼り出されていたりしていて──それらすべてをスルーして、ミルキがどしんどしんと殺し屋にあるまじき大きな足音を立ててメシ屋へ突入する。

 入店したのは庶民的なイタリアンレストランで、どうやらこの店は大食いクエストがあるらしい。

 

 マジで? ミルキ、ヤバくね。

 

 この天が下に恐れるもの一切無しなミケを以ってしても見抜けぬうちにミルキめはクエスト情報を仕入れていた……ッ!? フッ、ついついミルキの下色ばかりを見ようとしたのやもしれない。

 さておき、この大食いなるクエストに成功するとガルガイダーなるアイテムが貰える上に、食事代が無料になるようだし──ってコラ! 流れるようにコーラを頼むなクソガキめ! この店は珍しいことに水が無料で提供されているんだからお冷にしろ。

 

 一時は見直したが、まだまだ詰めが甘い。

 誰でもいい。ミルキに言っておけ、一番うまい水は、やはり水なんだ。

 

「おっ! 来た来た! ハッ! 30分でこの程度の量なら楽勝だな。デイリーで八食分これで稼がせてもらうぜ」

『ヘッ』

 

 ミルキめ、このミケの胃袋を知らぬはずがなかろう。

 それに、たとえ【シュリンクフレーション(カントリーマアム)】中で体躯が縮まっていようとも念の不思議パワーで関係なく入るし──元に戻った際、反動で胃もたれするけども。

 

「おい、ミケてめぇ……ここはオレの見せ場なんだよ! 確かにオマエのが食えっけどさあ……」

「オレはパス」

『ジョシ カナ?』

 

 イルミってチンコのついた女子だよね。ロンゲだし。カクガリにしねーし。

 

「おい」

「やっぱり食べる」

『ムリスンナ ジョシ ナンダシ』

「うるさいよ、オマエ」

 

 最近のイルミって煽り耐性が無さ過ぎてちょっと心配。

 んでしれっと、いかちー名前の炭酸水を頼もうとするなこの野郎オシャレか。

 別途料金が発生しそうなモン頼むな! 食い逃げは無しの方向なの! バカー!

 

「んぐっ、あんま美味くねえなコレ……そういや、チョウライが言ってたクリア報酬が指定ポケットカードから3枚っての、兄貴的にどうなの?」

「ウソかもだし、ホントだとしても内容次第」

「そりゃそーだけど、こんなのが欲しいとか、そういうのはあるだろ?」

「そうだな……仕事に役立ちそうなモノ?」

 

 やっぱ殺し好きじゃん、こいつ。

 俺も同じような考えだからヒトのこと言えねーけど。

 

「ハんか……夢がねえな」

「そ? ミルキならナニが欲しいの?」

「モレ? オレならホリゃ……んぐ、二次元のキャラを現実に引っ張り出せるようなの?」

 

 ミートソースをほっぺにつけたミルキが年相応にワンパクデブしているが、発言内容までもがワンパクでちょっと引く。

 

「そんなのが欲しいの?」

「ああ、精度次第だけど」

『イルミ モ ソレニ シトク?』

「しない」

 

 ミルキのようにワンパクな使い方を想定せず、別アプローチで使えば殺しに役立ちそうだけどなぁ。

 

「そういうミケは? どんなのが欲しいんだよ」

 

 そんなものは決まっている。

 

『ジカン テイシ モノ』

「ええ……ガチじゃん、オマエ」

『シゴト ニ ヤクダツ』

「いや、それ無理あっから。ちげー目的があんだろ、どう考えても」

『ンナコト ネーシ』

 

 んなことねーし。【念話】だから冗談くらいならギリ言えても、ウソだって自覚してるもんは吐き出せねーよ。吐き出したら終わるし。

 

「確かに役立ちそう。一瞬でも止められるならラクになる」

『ナ』

「兄貴はぜってーわかってねーわ」

「ナニを?」

 

 ぼくもわかんないなぁ。

 

「いや……兄弟でこういう話すんのきちーからもういい……ハァ、にしても不味ィな、これ」

 

 わりと近くにいて、ミルキの発言も聞こえてるはずだってのに店員のネコっぽい顔のNPCは笑顔を張り付けたまま無言なのが不気味すぎる。

 フルダイブ式のVRMMOとかが将来実現したら、こういう不気味の谷? ちょい違うかもだけど、モニター越しだと違和感を覚えなかったこういう現象が問題になるんだろうなぁ。

 

 ᴥ

 

 大食いクエストの賞品はガルガイダーっていう美味らしい魚のカードであった。

 すぐにでも『ゲイン』して実食したいと宣うミルキに『ゲーム』の世界で負けてもいいんだオマエって囁いてやったら、自重してくれた。

 傍で見ていたイルミが「おー」と口を開いて学びを得ましたってな顔をしていたのが印象的で、そんな感情持ち合わせていたんだってな考えが頭に過った。

 

 ともかくガルガイダーのカードのランクは下から3つ目のFランクであり、カード化限度枚数は185枚。と、カードに表記されたものを店員の不気味NPCが詳しく教えてくれた。

 ちなみに女子のイルミは1皿でも十分頑張ったからいいけど、ミルキなんて口に合わないとか言って3皿しか食わないというわがままっぷりを発揮した上、そこまでして今は価値不明のガルガイダーはいらねーよと言い出すしまつ。

 こちとらカード化限度枚数まで食ってやろうと思ってたのに、都度賞品の受け渡しイベとクエ再受注に若干のクールタイムが設けられていたから結構な時間をロスったこともあって20皿しか食えなかった。

 

 まあ、ミルキが言うように確かにFランクの食材系カードの価値が不明だし、そもそもフリーポケットの枠は2人と1匹で合わせて135枚だしで、他にもっと価値のあるカードが貰えるようなクエストがあるかもしれない。

 あと入手したガルガイダーは8枚ずつ各々のフリーポケットに入れようとかミルキが言い出したけど、それはさすがに止めた。

 ついさっきイルミは追跡(トレース)とかいうカードで攻撃された状態だし、名前からして(バインダー)の中に価値が付きそうなモノを入れるのは控えるべきだろう。

 俺はシンプルに(バインダー)にちまちまカードを入れるのが面倒だし、ミルキに全部預けるってことにした。

 

 そんなこんなでメシ屋を出て、町をぷらぷら歩きつつ駄弁る。

 

「さっき初狩り仕掛けてきたあいつら、確かマサドラとか言ってたろ?」

『タブン? サラダ テキナ?』

「マサドラだろ。フツー忘れる?」

 

 イルミがこいつマジで頭悪いなみたいな視線を向けてくる。

 久しぶりに食らうそれはなんだか懐かしいもので、ほっこりする。

 今夜、寝静まった頃合いを見計らってお前の部屋でほっこり置き屁してやるからな。

 

「まあまあ、落ち着いてくれよ二人とも……お、おそらくアレって町の名前だろうしさ、さっそくそこ目指すか? それともこのアントキバで一旦腰落ち着かせるか。あとは町の外に出てモブ探すっつー択があっけど、どれにする?」

『カンケー ネーケド ウミステージ アンノカナ?』

 

 あの無精ヒゲの初狩りの顔を思い浮かべたら、どういう訳だけ海が連想されてしまって泳ぎたい気持ちがもりもり湧いてきた。

 つーかゾルディックん家のプールって狭いし、浅くてしゃらくさいんだもの。

 山の中に幾つかある湖にしたってどれもこれも浅いし。俺、泳ぐ時は潜水もしたい派だし。っぱ海がいい。

 

「全然関係ねーな。……まあ、あるんじゃねえかな? 海エリアがなくても湖とか、この手の設定の世界って水棲モンスターとか関連ストーリーにクエは定番だし──って脱線させんじゃねーよ、これからどうするよ」

 

 もう頭の中が海でいっぱいだし考えがまとまらない。

 そんな時はテキトーに丸投げするのが最善である。

 

『マズハ オニーチャン ノ イケン キコ』

「オマエの兄貴になった覚えはないよ」

『ウルセー オニーチャン イエ!』

 

 なんだかんだ言いつつ、お兄ちゃんが顎に手をあててポクポクと考え始める。

 置き屁は勘弁してやろう。

 

「……マサドラについてココで情報集める?」

『オレモ ソレデー』

「ま、そうなるよな。あとは手分けして調べるかどうかだな」

 

 そこは、悩ましい。

 まずミルキは単独行動させるには危うい。年齢のわりには貫禄はあるけど、とはいえガキはガキだ。

 んでもってイルミにしても多少分厚くなったとはいえ、ほっせーし。パスタ1皿程度でふうって息吐いてるくらい女子だし。

 

 なので結論はおのずと──。

 

『オレイガイ ソロ ムリジャネ』

 

 となる。

 

「いや、オマエもソロ無理よりだろ。てかこの中じゃオレが一番ソロ向きだろ」

「ミルキ、また生意気なこと言うね。殺しもまだ一人でやってないだろ」

 

 それは、そ。

 

「……殺しとココはちげーじゃん」

 

 ほぼ同じ……いや現場のが頭使わずに済む分、楽まである。

 

「いつも言ってるだろ。オマエは遅いんだから一人になるなって」

「そ、そうだけど……でもやらせてもらえねーし……だから一人でもやれるってこと、いつまでも証明できねーじゃん」

『マー マー ザコドウシ デ ケンカ スンナヨ』

「ミケ、テメー……フォローしてんのか煽ってんのか、わかりにきーよ」

 

 どっちもだ。

 

「ケンカなんてしてない。それにミルキは遅いだけでそれほど弱くない」

「兄貴まで……じゃあもう全員で動こうぜ」

 

 それが丸い。

 

『ウイー ジャー ホンヤ カ トショカン サガソーゼ』

 

 今月号の『なかよし』はこのゲーム内ってテイくせーココにも置いてっかなー。

 

 仲の良かった年の離れた親戚の姉ちゃんがセーラームーンが好きすぎて、いい歳になっても将来の夢が美少女戦士のままだったヒトだった。

 その縁で、同作が連載されていたらしい雑誌の存在も知っていたし、それがこっちにもあって驚いた。

 存在を知ったきっかけ、というか酒の肴に俺がそれ系を欲しているのを知っているミルキを経由した上でだけど、オススメしてくれたのがケミカル(キキョウ)というのが何とも言えないところではある。

 

 さておき、セーラームーンが連載中とかいうこの世界ってマジまもうさ。

 

「お、おう。まあ定番か」

「定番? そうなの?」

「うん。作り込みとか設計次第だけどNPCに聞いて回るより、まとまった情報仕入れるならこれ系のが近道ってことはある」

「フーン」

 

 それにしても、あ──……ハラ、へったな。

 アトと遊ぶのに夢中になって忘れてたし、帰宅してすぐにこっちに来たからもう1日以上ヒト喰ってねーや。

 

 

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