ゴミ開拓者転生~スタレの主人公に成り代わったから全力で主人公を遂行する!~   作:ひまなめこ

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10話芽生える心

『殺す』そう宣言した穹は私に接近し、拳を突き出す。

私は咄嗟に糸を使って死体を手繰り寄せて肉の壁を形成して穹の攻撃を防ぐ。

次の瞬間、穹の拳で死体の壁が粉々に散る。

 

「…本気で殺るつもりなの?」

 

「ああ、本気も本気大真面目だ!」

 

穹は確かな殺意を込めて私を睨みそう告げた。

 

穹に嫌われている自覚はあったけれど、まさか命を狙われるとは予想外ね。

エリオはこの事も予見していたのかしら?

それとも、これはエリオでさせも予見出来なかったイレギュラー?

 

この様なイレギュラーは初めてではない。

穹と言う存在を作り出した時も似たような事が起きた。

それは本来子供の姿で誕生する筈だった穹が何故か大人の姿で生まれた事。

それに加えて、生まれながらにしてアッハの一瞥を受けたらしい事。

 

どうやらこの穹と言う存在は終焉の力をもってしても予見出来ないイレギュラーを起こす天才…いや、天災のようね。

なら、私も少しイレギュラーを起こしても許されるわよね?

 

「死んでも後悔しないでよね穹。」

 

「誰に言ってんだよカフカ。」

 

そう言うや否や穹は再び私に向かって駆け出した。

私は周りの死体を糸で操ってゾンビのように穹に襲わせる。

 

「ゾンビ攻撃か…中々どうしてお前に似合う業だな。」

 

「そんな事言って、随分余裕そうね?」

 

「まあな、正直大規模な範囲攻撃がないお前は俺と絶望的に相性が悪い。」

 

 

そう言って穹は一瞬にして私の視界から消えた。

 

「っ!?消えた!」

 

これも穹が持ってる奇怪な術の効果かしら?

…いや、違う。

術ではなく目にも止まらない速さでこの空間内を縦横無尽に飛び回っているんだわ。

 

私は穹を完全に見失い唖然とする。

やがて、穹は音と気配を完全に消して私の後ろに回り込み、強烈な蹴りを私に繰り出した。

 

「ぐっ!?」

 

穹の蹴りを諸に食らった私は後方に勢いよくふっ飛び、壁に思い切りぶつかる。

全身を駆け巡る痛みになんとか耐えながら立ち直るも、私の視界から再び穹が消えていた。

 

…このままでは不味いわね。

 

私はさっきぶつかった壁に背中を密着させる。

こうすることで、穹が私に攻撃を仕掛ける際後ろからの攻撃の選択肢が消える。

これで、必ず私の前か頭上、横から攻撃してくる筈だ。

更に指に嵌めている7つの指輪から糸を出し、この空間内に張り巡らせて包囲網を形成する。

穹がいくら速かろうともこれだけ対策されれば私に攻撃を仕掛けるのはかなり難しいだろう。

 

私は穹の次の攻撃を警戒し、攻撃を完全に防いで穹を拘束するために全神経を集中させる。

しかし、そんな私の予想を裏切る形で穹は再び攻撃を仕掛けてくる。

 

何と私が背中を密着させている壁の向こう側から壁を突き破って私に殴り掛かってきたのだ。

 

「…ウソでしょ。」

 

私は予想外の穹の行動に驚愕しながら再び攻撃を諸に食らってしまう。

 

「ぐっ!?」

 

殴られた勢いのまま地面を転げ回る。

そんな私に穹は追撃のため再び迫ってくる。

 

…防戦一方ね。

私の戦術が効かない。

穹の言う通り私と穹は相性最悪みたい。

でも、忘れてないかしら?

私の奥の手を

 

《聞いて穹、止まりなさい。》

 

迫りくる穹に言霊の力を使用する事で遂に動きを止める事に成功した。

 

私はその事に安堵し、ゆっくりと立ち上がって穹に近付き銃口を向ける。

 

「本当に手こずらせてくれたわね、じゃじゃ馬さん。これで…終わりよ。」

 

そう言って私が銃の引き金を弾こうとした直前、私の背後に()()()()()()が音もなく現れた。

 

え?穹がもう一人?分身?偽物?穹の術式?

 

混乱して判断が鈍った私に穹の拳が容赦なく炸裂する。

その瞬間、穹が放った拳に込められた虚数エネルギーが()()()()()

 

「【黒閃】」

 

「ぐぅううう!?」

 

今ままでの攻撃とは比にならない威力。

こんな隠し球を持っていたのね。

私の身体は再び勢い良く吹っ飛んだ。

何枚もの壁を突き破って。

 

「くっ…ング!」

 

もうまともに身体が動かない。

言うことを聞いてくれない。

今こうして意識を保てているのが奇跡みたいなものだ。

 

「カフカ…俺の勝ちだ。」

 

いつの間にか吹き飛ばされた私に追い付いた穹がそう告げた。

 

「そうね…私の負けよ。それで…どうするの?私を本当に殺すの?」

 

「ああ、さっきから一貫してそう言ってるだろ。」

 

穹は私の問いに無表情のまま無慈悲にそう答えた。

 

「そう…エリオは私が殺される未来も可能性も無いと言っていたから本当は殺すつもりは無いかもと思ったのだけれど。」

 

「もう数ヶ月も経つのに俺の事を何も理解してないんだな。俺と言う存在はイレギュラーだ。俺がお前らと初めて会った時もイレギュラーだらけだっただろう。」

 

確かにそうね…。

穹はイレギュラーを起こせる存在。

そんな事分かっていたのに。

私はいつの間にかその事実から目を背けて脚本では私は死なないからと無意識の内に自分に言い聞かせていた。

 

何の為にそんな事をしたのか自分でも分からない。

自分がこれから殺されると言う事実から逃避しようとする理由があるのかしら?その必要があるのかしら?

分からない、ここまで追い詰められたのは初めてだもの。

 

もしかして私は焦っているのかしら?

追い詰められたのは初めてでも命を掛けるのは初めてでは無いわ。

今ここで死を目前にして焦る必要なんて何処にあるの?

私が死んでもそれは物が壊れる事と差程違いはない。

私の自我が消失しようともそれは機械の電源が切れる事と大差無い。

 

私が死んでもきっとエリオは私の代わりを見付けて最善の未来を実現させる。

私の代わりは幾らでもいる。

私が死んだ所で差程不都合など無い。

焦る必要なんて無いじゃない。

…。

…。

…。

…。

…。

…。

…。

 

 

…本当にそうかしら?

私がここで死んだら不都合は無い?

何を言っているの!

私が死ねば私はこの心の空洞を埋める事も出来ずに志し半ばで終わってしまう。

私の今までの人生が今までの行動が努力が全て徒労になってしまう。

 

そんなの嫌よ…。

何も成し得ず、何も叶えられず、死ぬなんて。

私の代わりは幾らでもいる?

馬鹿じゃないの!

私を変えられるのは私だけ。

私に変革をもたらす切っ掛けを見付けられるのは私だけ。

私が死ねば私は変われなくなる。

私の故郷のイカれ野郎達と同じ最後を迎えてしまう。

そんなの嫌よ!!

 

《何を怖がっているの?エリオの脚本にはあなたの死は存在しないわ。》

 

…黙りなさい、穹はイレギュラーな存在。

エリオが見ることが出来なかった予想外の未来を引き当てる可能性がある。

 

《死ぬのは怖くないわ、物が壊れるのと一緒よ。》

 

うるさい!私は人よ!物なんかと一緒にしないで!

 

《あなたの代わりは幾らでもいるわ。》

 

違う!私の代わりなんていない。

私を変えられるのは、私を変えることを諦めないでいられるのは私だけ。

 

《そんなに死ぬのが怖いの?》

 

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ええ、怖いわ。

死にたくない。

真っ暗なのが嫌なんじゃなくて、私が変われずに死ぬのが怖い!

 

…嗚呼これがそうなのね…、この感覚、この感情、この焦燥感、この早まる鼓動、これが…………………恐怖。

 

「…やよ。」

 

「あ?なんか言ったか?」

 

「嫌よ!死にたくない!」

 

私は今初めて恐怖を知った。

死を前に恐怖する自分の心を自覚した。

 

 

「そうか、ならじっとしていろ。一瞬で終わらせてやるから。」

 

そう言って穹は手からグローブを外して私にゆっくりと近付いてくる。

 

「やめて…来ないで…。」

 

恐怖のあまり言霊を使うことも忘れて私はただゆっくりと近付いてくる穹に情けなく懇願する。

 

やがて、穹と私の距離がゼロになり、穹は私に止めをさす為に手をあげる。

 

「っ!」

 

私はいずれ来るであろう痛みに備えて目を瞑った。

その直後穹の手が私の首筋に当たり、軽い衝撃と共にペチンッ!と言う軽い音が辺りに響いた。

 

「え?…私生きて…。」

 

「蚊がいたんだよ。この星意外と虫多いんだな~。」

 

「え?え?」

 

何が何だか分からず私の頭は混乱してしまう。

 

「ハハハ何て顔してんだよ。俺が本当にお前を殺すと思ったのか?」

 

穹は困惑する私の顔を見て無邪気に笑う。

 

これはどういう事?

本当に穹は私を殺すつもりは無かったと言うの?

 

「今までのカフカに生意気な態度を取ったお詫びとしてお前の願いを叶える手助けをしようと思ってな。」

 

「手助け?」

 

未だに情報を理解出来ない私は穹の言葉を聞き返した。

 

「お前の心に恐怖心を芽生えさせる手助けだ。」

 

「な!?」

 

「お前のその顔を見るにどうやら成功したようだな。」

 

穹が私の為に、私の恐怖心を呼び覚ますためにこんな事をしたと言うの?

一体何の為に?何が目的なの?

 

「…どんな風の吹き回しかしら?」

 

「そんなに警戒すんなよ。まあ、何だ…お前とは色々あったし、前まで俺はお前を信用出来てなかったけど………。」

 

そこで穹は気恥ずかしそうに言葉を区切ってこう告げる。

 

「俺は実は()()からお前の事結構好きだったんだよ。」

 

「へ!?」

 

穹の口から飛び出てきた告白に私は驚きのあまり固まってしまった。

 

ききき穹が私の事がすすすす好き!?

 

「ハハハ、なんかお前恐怖を知ってから表情が豊かに成ったな。うん、そっちの方が人間らしくて良いよ。めっちゃ可愛い。」

 

穹は私の顔を鼻と鼻がぶつかりそうな程の至近距離で覗き込み、そんな事を口にした。

 

『可愛い』『可愛い』『可愛い』『可愛い』『可愛い』『可愛い』

 

穹の言われた言葉が脳にこびりついて離れない。

鼓動が急に早まる。

何で?

今は恐怖を感じてないのに…。

何で鼓動が早まるのよ…。

 

「はっ離れなさい!」

 

私は慌て穹の肩を押して距離を取った。

 

「まだ、任務は終わってないのよ。ふざけるのも大概にしなさい!」

 

そう吐き捨てて私は今回の任務の本来の目的を完遂するために、穹を置いてそそくさと歩き出すのだった。

 

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