ゴミ開拓者転生~スタレの主人公に成り代わったから全力で主人公を遂行する!~ 作:ひまなめこ
深夜。
皆が寝静まったであろう頃、私は未だに寝付けずにいた。
明日も朝早くから作業を開始しなくてはならないのに、私の頭は熱に浮かれたように冴えていて全く眠くならなかった。
「…少し外の空気でも吸おかしら。」
私は自室を出て玄関に向かう。
すると、偶然見覚えのある影に遭遇してしまう。
「あれ?姫子、どうしたこんな夜更けに。」
玄関に向かう途中でばったり穹と遭遇してしまったのだ。
「中々寝付けなくて…少し外の空気を吸いに行こうかなって。穹こそこんな夜遅くにどうしたのよ?」
「俺はちょっとトイレに…。」
穹は少し恥ずかしそうに、私の質問に答えた。
…ふふ、深夜にトイレで起きるなんておじいさんみたいね。
私は内心で笑いが込み上げてきた。
「ねぇ、穹。少し付き合ってくれないかしら?」
「外にか良いぞ。俺も目が覚めちまったからな。」
穹の了承を受けて私達は玄関から家を出る。
家を出た後、適当にブラブラ歩いて偶々視界の端に映ったベンチに座る。
ベンチに座った直後、深夜の静かな空気を破るように穹が口を開く。
「それにしても、寝られないなんて何か悩みでもあるのか?」
「え?…そうね、悩みと言うよりもただ興奮して眠れないだけって感じかしら。」
突然の穹の質問に戸惑いながらも何とか答えた。
「興奮して眠れないのか?何だか子供みたいだな。」
深夜だと言うのにまるで昼間の時のように眩しく笑いなからそう口にする穹。
そんな彼の言葉に私は少し恥ずかしさを覚えた。
子供だなんて…。
いや、実際そうなのかも知れないわ。
今まで私の手伝いをしようなんて人、一人もいなかったもの。
サミュエルと穹が私に協力してくれたのがとても嬉しくて、眠れないのだ。
「子供…確かにそうね、私は子供。子供のまま全く成長してない…。」
「…姫子?」
私の表情に陰りがさした事に気づいた穹は心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「…ねえ、穹。外まで付き合ってもらった手前申し訳ないのだけど、私の昔話に付き合ってくれないかしら?」
「…良いぞ、やってくれ必要だろ?今のお前には。」
今日初めて知り合ったけど、穹は一見鈍感そうに見えて実はかなり鋭い。
まるで別次元から私達を観測しているかのように察しが良いのだ。
でも、それを不気味には感じない。
寧ろ一緒にいて凄く安心する。
特に今は、私が彼に求めているのは察しの良さと共感だから。
…だから、私は彼に全てを打ち明ける。
私の過去と悩みを。
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私が物心ついた頃には既に両親は居なかった。
事故で亡くなったらしい。
私が生まれて直ぐに死んだらしいから、私は両親がどんな顔でどんな人でどんな仕事をしていたのかすらも知ることは出来なかった。
でも、私は別にそれを寂しいとは思わなかった。
両親がいない現実を寂しいと思うには私は両親を知らなさ過ぎた。
私にとっては両親がいないのが普通で正常で日常。
親がいる方が異常だった。
だからだろう、私が孤児院で孤立していたのは。
私以外は皆両親の顔を覚えている人ばかりだったから…。
同じ屋根の下で暮らす家族なのに…似た境遇の仲間なのに私には友達も味方もいなかった。
そんな私の心の拠り所だったのが、孤児院の書斎にあったナナシビトの本。
星穹列車の伝説が記された本が私の孤独を癒してくれた。
皆これをただのお伽噺だって馬鹿にしたけれど、それでも私はこの本を切っ掛けに銀河に憧れた。
そして、私はある日突然決意するでもなく、気付いたら銀河を旅したいと思うようになり、その為の行動も起こしてた。
星間航行動力学を必死に勉強して沢山の賞も取って、資格も取って、今では特許も獲得してる。
いつか銀河を旅するために必要な事、きっと役に立つことを片っ端から学んで手に入れて、今まで頑張ってきた。
誰かに褒められる訳でも無いのに、夢を肯定される訳でも無いのに、応援される訳でも無いのに一人で孤独で頑張ってきた。
笑われようとも、馬鹿されようとも、後ろ指をさされようとも、私は夢を諦めなかった。
そして、今日奇跡的に私の目の前に星穹列車が落ちてきたの。
そして、初めて私の夢を手伝ってくれる人達に出会えた。
それが余りにも嬉しくて。
だって、まともに人と話した事なんて一度もなくて、それなのに今日の私は沢山話しちゃって、夢見たいで…。
明日が楽しみなんて…初めてそんな事を思ったわ。
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「だから、ありがとう…。私の夢を手伝ってくれて、私の夢を否定しないでいてくれて。」
私は大粒の涙を流しながら穹にひたすら感謝を伝える。
「…それだけじゃあ、足りないだろ。」
「え?」
「お前の夢を否定しないで手伝うだけじゃ足りないって言ってんだよ!俺は!お前の夢を応援もするし、肯定もする!今までお前を馬鹿にしてきた奴らの百倍お前のこれまでの人生を肯定してやる。これまでの人生でお釣りがくるくらい肯定し殺してやる!」
「っ!…。」
その言葉に私の目頭は更に熱くなり、流す涙の量が増える。
「今まで誰にも褒めて貰えなかったのなら俺が沢山褒めてやる!今までのお前の全てが無駄じゃなかったて俺が全てを懸けて証明してやる!お前の夢が叶うまで手伝ってやる!お前の夢が叶う瞬間を一番側で見届けてやる!」
「っ!ありがとう…ありがとう!穹。」
嗚呼、彼はなんて眩しのだろう。
願わくば、その輝きを独占したいと思うのは余りにも我が儘だろうか?