ゴミ開拓者転生~スタレの主人公に成り代わったから全力で主人公を遂行する!~ 作:ひまなめこ
翌日。
朝7:30。
俺達は朝食を済ませて、直ぐに列車の修理を再開した。
「姫子、少し来てくれ。ブレーカーから妙な液体が漏れているんだが、これは大丈夫なのか?」
「これは…かなり劣化しているわね。新しいのと交換しないと。」
「俺が新品を複製しようか?」
「いいえ、これを機に最新型に変えましょう。この列車の部品はどれも半琥珀紀以上も前の物ばかりだから、修理のついでにリフォームしたいの。」
こんな風に姫子の指示の元、順調に列車の修理を進めている。
俺の術式もフル活用して最大効率で行っているため、かなりのスピードで捗っている筈だ。
「穹~。」
「ん?何だサミュエル。」
突然サムが泣きなから俺に駆け寄ってきた。
その手には折れたペンチが握られていた。
「また折っちゃった…。新しいの作って~。」
「またかよ…。」
俺はサムに呆れながら新しいペンチを投影する。
実は昨日からサムが何度もペンチやドライバーを折っては俺が新しいのを作るのを繰り返している。
どうやら、サムは鉄騎を纏わなくても身体能力が高く設計されているようで、さっきのように力加減をミスって道具を壊す事がまちまちある。
「…もう少し、上手く力をコントロールしてくれ。」
「ごめん、気をつけるよ…。」
まあ、そんな感じでちょっとしたハプニングがありながらも楽しく列車修理をしている。
そして、時間にして5システム時間が経過した頃。
姫子から俺達にお声が掛かる。
「そろそろお昼時ね。一旦休憩にしましょう。」
「よっしゃ、昼休憩。」
「アタシちょうどお腹空いちゃった。」
俺達は全員一旦作業をきりの良いところで止める。
やっと、お昼か。
腹減ったぜ。
早く昼飯を…。
待てよ…今日の昼飯って誰が用意したんだ?
まさか…。
「姫子、昼飯は…。」
「ごめんなさい、昨日夜更かししてたせいで時間ギリギリに起きた物だから、お昼は用意できてないの。」
…助かった~!
昨日の料理は旨かったが、万が一ってこともあるからな。
「よーし、なら美味しい飯を食いにいこう!そうしよう!」
「ふふ、何だか嬉しそうね。」
「穹アタシ、クレープって言うのを食べてみたい。」
「それはデザートね。」
こうして俺達は昼飯を食べる為に街へ繰り出すのだった。
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俺達は姫子が昼飯を用意してないと聞いて、仕方な~く、もうホントに残念で不本意な事ながら外食する為に街へ来ていた。
のだが、
「なんか、昨日と全然街の雰囲気違くない?不気味なくらい静かって言うか…。」
街に来てそうそう、サムがその様な事を口にした。
確かに昨日サムと一緒に映画を見に行った時とはかなり雰囲気が違う。
街に人影が一つも見当たらない。
まるでゴーストタウンだ。
「…!ねえ、あそこ。人がいるわ。」
暫く辺りを見回すとこちらにのそのそと近付いてくる人影が現れた。
「あの人もアタシ達と同じで、この街の様子に困惑してるのかな?ちょっと話しかけてみよう。」
「あっおい!サミュエル待て!」
こう言う時は先走っちゃ駄目ってホラー映画の鉄則だろうが。
俺は慌ててサムの後ろに着いていく。
やがて、サムが件の人影に近付いて話し掛けようとした瞬間、人影の形が突然変容し、腕から刃のような物を生やしてサムに襲いかかった。
「サミュエル!危ない!」
「きゃ!」
俺は急いでサムの身体に飛び掛かり、その勢いを利用してサムを抱えた状態で謎の人影から距離を取った。
「大丈夫か?」
「う、うん。」
サムの身体に外傷は無い。
何とか間に合ったようだな。
しかし、あの人影…どこかで見たような…。
俺はサムのを抱えたまま、人影に視線を飛ばす。
肌は黒くて無機質。
まるで黒曜石のようだ。
身体の至るところに尖った部分があって、一番特徴的なのは両腕から生えている刃。
こいつは、
「ヴォイドレンジャー…。」
何でこんな奴がここに…?
いつから二相楽園を襲撃したんだ?
「◼️◼️◼️◼️◼️!!」
「よっと。」
俺はサムを抱えたまま、ヴォイドレンジャーの攻撃を難なく回避した。
「お前いつからこの星に来た?もしかしてこの街の住人全員お前が殺したのか?」
「◼️◼️◼️…。」
まあ、会話が通じる訳ないか。
さて、生存者を探すためにちゃっちゃか倒すか。
「悪いが、一瞬で蹴りを…。」
「ねえ、穹いい加減下ろしてくれなかな…。」
「ああ、ごめん忘れてた。」
俺は慌ててサムを下ろした後、再びヴォイドレンジャーに向き直る。
先ずは小手調べに…。
「【解】」
ヴォイドレンジャーに対して不可視の斬撃が飛び、奴の外格に深い傷がつく。
余り硬くは無いな。
これなら直ぐに決着をつけられそうだ。
「◼️◼️◼️!!」
「遅えんだよ!のろまが!」
俺はヴォイドレンジャーの攻撃を交わしながら奴との距離をゼロに詰めて、手で体に触れて術式を発動する。
「【無為転変】」
その瞬間、ヴォイドレンジャーの身体が四方八方に爆散し、絶命する。
しかし、奴の魂に触れた事で俺は妙な感覚を覚える。
この感覚、前にAR-214 の魂に触れた時と同じ…いや、似ているが違う。
あの時は2つの性質の異なる魂がせめぎ合っていたが、今回は数万、数億の魂が継ぎはぎにくっついている感触だった。
…一体こいつはなんだったんだ?
「二人共大丈夫?」
「ああ、問題ない。」
「アタシも穹が助けてくれたから。」
ヴォイドレンジャーを倒し終えると同時に姫子が駆け付けてきた。
姫子なら、この状況に何か心当たりがあるだろうか?
「姫子、今までヴォイドレンジャーが、壊滅が襲撃してくる兆候みたいな物は無かったか?」
「いいえ、そんな物は無かったか筈よ。もしあったのなら、今日この日まで気付かない筈無いもの。」
だよな…。
なら、一体どうやってこいつは現れたんだ?
「俺が説明してやろうか?」
「「「っ!?」」」
突然気配も無く現れた見知らぬ人物にこの場にいた全員が驚きで固まる。
その人物は帽子を目深に被って顔を隠しており、紳士の様な服装をした男性だった。
「そんなに驚くなよ。つっても無理か。」
こいついつの間に。
音も気配もしなかった。
近付くまで、こいつの存在に全く気付かなかった。
「俺の名前は帰寂。人読んで愉悦を壊滅する絶滅大君だ。」
名乗ると同時に帰寂は帽子を取って、その異形の頭を顕にする。
手が巨大なサイコロを支えているかの様な奇妙奇天烈な形の頭を。
帰寂だと…。
何でこんなところに絶滅大君が?
一体が何が目的なんだ?
「何で俺がここにいるんだって顔だな。」
「っ!」
「良いぜ、教えてやるよ。俺の目的を。冥土の土産ってやつだ。」
そう言って帰寂は語り出す。
己の目的を。
「俺はな、かなり前からこの星に目え付けてたんだよ。」
「目を着けてた?」
「ああ、そうだ。そしてその原因はズバリお前だ。アッハの申し子。」
そう言って帰寂は俺に指を指してきた。
俺がアッハの申し子?
いや、そんな事よりも俺が原因ってどういう事だ?
「俺は愉悦の壊滅を目論む者。当然アッハの命も狙ってる。そんな折りに偶然見付けちまったんだよ。アッハが大切そうに別次元から持ち出した魂をよ。」
「っ!まさか…。」
「ああ、そのまさかだ。アッハによってこの世界に連れてこられたお前の魂に興味が湧いてな。少しお前の記憶を覗いてみたら、よもやこの世界の未来を知っているなんてな。驚いたよ。しかも、その記憶の中には数琥珀紀も前に大破して表舞台から消えた星穹列車の墜落場所もあったのだからもう仰天だよ。」
まさか…そんな。
じゃあこの星にこいつが来た原因は全て…。
「この星に星穹列車が墜落するって知った俺はこの星を少しずつ壊滅に染める計画を企てた。この星の住人は皆元々普通の人間だったが、本人達が気付かない内に静かにジワジワと壊滅のエネルギーに侵食されてゆっくりとヴォイドレンジャーになった。つまり、俺の駒に成ったんだ。」
「そんな…。」
「駒になったらもうこっちのモンよ。駒は主人の命令を聞く。どんな命令でもな。なあ、そこの赤毛の女。疑問に思わなかったのか?」
「……何をよ?」
「星穹列車の物語をお前以外全員信じなかったことだよ。可笑しいと思わねえか?この星は決して田舎と言うわけでもねえ、宇宙開発もそれなりに進んでいる。なのに誰もナナシビトの事を信じない。」
「まさか…。」
「そう、俺が洗脳した。お前が物心着く頃には既にこの星の大半が俺の駒だったんだよ。」
ずっと前から、姫子が物心着く前…いや、姫子が生まれる前からずっと、こいつは星穹列車がこの星に墜落すると知ってずっとこの星を侵食していた。
俺が…この世界に来たから。
こんな事に成ったんだ。
全て、俺のせいだ!
俺のせいでこの星の人達は…。
人?
この星の人達は今どこにいる?
「この星の住人はどこへやった!」
「何分かりきった事言ってんだよ。お前が
「………は?」
俺が殺した?
何を?
この星の人達を?
いつ?
さっき?
…………まさか!
「正直、今回の目的は墜落してきた星穹列車を見付けて壊す事であって戦争する事ではない。だから、一体一体処分するのも面倒だから、全部
「ハアハアハア…。」
俺は嫌な予感がして過呼吸になる。
嫌だ、そんな筈無い。
俺がこの星の人達を…。
何万、何億の命を…。
「お前がさっき殺したヴォイドレンジャーはこの星の住人全員を一つに合体させた個体だ。」
「ハアハアハア……うお゛え゛え゛!!」
遂に俺の中で何かが限界に達し、嘔吐してしまった。
「お前は…なんなんだ!帰寂ぅ!」