ゴミ開拓者転生~スタレの主人公に成り代わったから全力で主人公を遂行する!~ 作:ひまなめこ
あの後カフカと一旦別れて、急いで姫子の家に向かった。
目的は勿論…姫子に別れを言うために。
「姫子!」
「「穹!」」
姫子の家にたどり着き、土足で上がり込んでノックも無しに姫子の部屋に入ると、ベッドに横になっている姫子とそれを看病しているサムが俺を出迎えた。
「穹、無事だったのね。」
「ああ、帰寂は俺が倒した。この星の人達も俺の仲間が生き返らせたからもう大丈夫だ。」
「…そう、本当によかったわ。これでまた列車修理が再開出来るわね。」
「っ…。」
姫子のその言葉で俺の胸はかつて無い程締め付けられる。
ごめん、姫子。
昨日の夜約束したのに…。
お前の夢を最後まで見届けるって、最後まで手伝うって、約束したのに…。
「…すまない、俺とサミュエルはもう姫子の手伝いは出来ない。」
「…………え?」
俺の言葉に現実を受け入れられないような顔をして固まる姫子。
そんな顔をされると…余計に胸が苦しくなる。
「きっ急な用事が出来ちまったんだ。今すぐにこの星を出ないといけなくて…それで………本当に……ごめん。」
「嘘…よね?…ねえ、サミュエル。嘘って言って…。」
「ごめんね、姫子。アタシ達にはやるべき事があるの。…最後まで……付き合ってあげれなくて…ごめんなさい…。」
すがるような視線を向けてくる姫子にサムは辛そうに唇を噛み締めながら言葉を絞り出した。
サムも既に事情を知っているようだな、カフカに教えられたのか?
この中で姫子の次に苦しいのはサムだろう。
彼女は姫子の夢に直向きな姿を自分と重ねていた。
そんな彼女が姫子の手伝いを断念せざるを得ないなんて相当悔しいだろう。
「…そう、なら仕方無いわね。私達はこれでお別れよ。後は私一人で列車を直して見せるわ!」
吹っ切れたようにそう口にした姫子はいつもの明るい好奇心旺盛な夢見ガチな少女のような笑みを浮かべた。
「今に見てなさい!あんた達が腰を抜かすような立派な列車に改造して見せるわ!」
修理じゃなく改造か…。
変な事にならないと良いけど。
「だから…私の事…なんて…ほっといて、どっか行っちゃいなさいよ!馬鹿!」
そう吐き捨てながら、姫子は涙を流す。
吹っ切れてなんていなかった。
それは擬態だった。
俺達を心配させない為に、俺達に迷惑を掛けない為に。
彼女は己を擬態することで、無理やり感情に蓋をしようとしていた。
馬鹿か俺は!
まともに約束守れない上に女を泣かせるなんて、最低だ!
俺は泣きじゃくる姫子を優しく抱き締めて優しく声をかける。
「姫子我慢するな。無理しなくて良い。俺達に言いたい事を言いたいだけ言え。」
「…っ!約束…したく゛せ゛に゛…!勝手に居なくな゛ろ゛う゛と゛し゛て゛…最後まで…手伝うって…言った゛く゛せ゛に゛…!嘘つき!…馬鹿!……大っ嫌い!」
「…ごめん、本当に…最低でごめん…。」
俺はただ、謝るしかなかった。
それしか出来なかった。
無責任に約束なんてするもんじゃねえな…。
守られなかった側が何れだけ辛いか…もっと想像するべきだった。
「ごめん姫子…!」
「嫌い…嫌い…大っ嫌い!…………でも、大好き…。」
「……ありがとう、姫子。そしてごめん、お前の夢を側で見届けられなくて。俺達はこの星を出る。だが、一生の別れではない。いつか銀河を旅しているうちにお互いのレールが交わる時がきっと来る。その時は星屑の線路、『スターレイル』で会えなかった分積もった話に花を咲かせよう。」
「…うん!だったら、さよならは言わないから。」
「ああ、またな…。」
こうして俺とサムは姫子に別れを告げて二相楽園を後にするのだった。
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二相楽園から戻ってきた俺とサムはエリオとカフカも交えて会議室で説教&緊急会議を行っていた。
議題は勿論、姫子との接触の件と絶滅大君帰寂について。
「うーんまあ、姫子の件は逆にあれのお陰で帰寂といち早く接触して撃破まで出来たから特別にお咎め無しとして、問題はなんで二相楽園に絶滅大君が現れたかだよね。」
エリオの言葉で緊急会議が開始され、各々の面持ちが何時もよりも固くなる。
「帰寂は穹がアッハの申し子とか、穹の記憶を見て列車が二相楽園に墜落するのを知ったとか言っていたよ。」
エリオに続きサムが現状自分が知っている事の全てを話した。
「…どういう事かな?穹。君は何を隠してるのかな?」
流石にこれ以上は誤魔化せないか。
まあ、元々誤魔化す気は無かったのだが。
「実はな、俺はこの世界がゲームとして、プレイされている世界から来たんだ。アッハから魂だけ連れ去られてな。」
「「「!?」」」
俺が語った衝撃の事実に全員驚愕の表情で固まる。
まあ、そう言う反応になるよな。
「と言うわけで、ある程度未来に何が起きるか把握しているんだ。そんな俺の記憶を帰寂は一部だけ覗いたらしくて、それで二相楽園に目をつけたらしい。」
「成る程、にわかには信じられないけど辻褄は合うね。大まかな原因が分かれば対処は簡単だよ。穹、君には成るべくメモキーパーから接触に警戒して貰いたい。」
「わかった。」
「後は、君の持つ記憶とすり合わせをして脚本の修正をすれば良い。帰寂に記憶を見られた原因は、その時の君がアッハによって魂だけの状態でこの世界に連れてこられたばかりだったからだ。今の君の記憶をもう一度覗く力はメモキーパー以外には無い。だから、メモキーパーを常に警戒していれば君の記憶が外部に漏れる心配は無い。」
「安心して穹、アタシが穹を守ってあげるから。」
「あら、サム。私を差し置いて穹を守ろうなんて良い度胸じゃない。」
今後の方針も具体的に決まり、サムとカフカがそれぞれ意気込みを口にする。
…なんか二人の雰囲気が一触即発な気がする。
「それじゃあ、会議はこれで終わり。今日の所は解散。」
エリオの言葉で解散となり、サムとカフカが会議室を後にするのを見送ったあと、俺はまだ会議室に残っているエリオに話し掛ける。
「なあ、エリオ一つだけ頼みがあるんだが。」
「ん?なんだい?」
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エリオとの話を終えて俺は会議室を出てサムを探しに行く。
しばらく探していると、ラウンジの窓から星々を眺めているサムを見つける。
「サム、ちょっといいか?」
「あ、穹。どうしたの?」
俺が声をかけるとサムはパアッと明るい表情を見せながら小首を傾げてくる。
「お前、この前ロストエントロピー症候群を治したいって言っていたよな?」
「えっあっうん。その病気を治して普通の女の子として生きるのがアタシの夢なんだ。それがどうしたの?」
「ちょっと、こっちに頭寄越してくれねえか?」
「えっこう?」
サムは俺に言われた通りに頭の天辺を俺に向けてくる。
そんな彼女の頭を撫でるように手を起き術式を発動する。
「【無為転変】」
「え?」
「これで治ったぞ。お前はもう普通の女の子だ。思う存分長生き出来る。」
先程、カフカとサムが会議室から出た後に、エリオから許可をもらったのだ。
エリオはかなり渋々な様子だったけど…。
「もう、短い寿命に悩まされる必要はない。お前は自由に生を謳歌して良いんだ。」
「っ!ありがとう…穹…!」
涙を流しながら、サムは俺に抱きついてくる。
「ありがとう…私の夢を叶えてくれて…!感謝してもしれないよ!」
「…どうしたしまして、お前が望むなら出来る限りの事をしてお前の願いを叶えてやる。今までの人生にお釣りが来るくらいの幸せをお前にやるよ。」
「なら、一つだけアタシの願いを聞いて。」
そう言ってサムは俺から離れて上目遣いでお願いを口にしてきた。
「なんだ?」
「アタシに新しい名前を付けて。サムの方は星核ハンターとして活動する時に使うけど。普通の女の子として過ごす時はもっと可愛い名前が良いの。」
「わかった。飛びっきりの名前をやろう!」
お前の名前はもう既に決まってる。
「お前は今日から"ホタル"だ。」
「…ホタル。うん!アタシは今日からホタル!ありがとう穹。」
儚げな少女ホタルはぼう劫火の如く眩しく笑うのだった。