ゴミ開拓者転生~スタレの主人公に成り代わったから全力で主人公を遂行する!~ 作:ひまなめこ
僕はサンデー。
オーク家当主ゴフェルの義理の息子であり、時期当主の嫡男。
今日は僕と妹のロビンが大好きな今銀河中の注目を浴びているアーティスト穹の初ライブに来ていた。
動画で何百回も聞いた曲でも生で聞くと迫力が全く違くて、圧倒された。
これが初ライブなんてとてもじゃないけど思えない。
そこら辺のベテランアーティストも目じゃないくらいに素晴らしい歌声とパフォーマンスだった。
僕も妹も彼の輝かしいその姿に魅力されてしまい、気付いたら彼の控室の前まで来ていた。
ただの一ファンがスターのプライベートに関わろうなんて浅ましいにも程がある。
それは頭では分かっていた。
でも、体が勝手に動いていた。
それでもまだ残っていた理性が自分と妹をこのまま何も余計な事をせず帰らせようと働きかけてきた。
「ロビン…流石に駄目ですよ。僕達はファンで彼はスター。彼の前ではオーク家の嫡男と令嬢の立場なんて関係なく、僕達はただのファンになるんです。ただのファンがスターのプライベートに勝手に押し掛けるなんて…御法度ですよ。」
「お兄ちゃんは黙ってて!私はどうしても穹さんに聞きたいことがあるの。」
そう言ってロビンは迷わず、控室の扉をノックした。
そして程無くして、星々の如く近付く事が出来ない別世界の住人だと思っていたあのスターが控室の扉を開けて現れた。
「何か、俺に用ですか?」
こっこの人が生の穹さん…。
ライブの時よりも遥かに近い距離で見る彼は正に銀河一の美青年と言っても過言では無い程の美貌を持っていた。
こっこれが、老若男女問わず万人を魅力する美貌。
生で見ると男の僕でもドキドキしてしまう。
「あっえっと…。」
あれだけ僕の前では大見得切っておいて、いざ穹さんを前にした途端に緊張で話せなくなってしまったロビン。
そんな彼女の代わりに僕が用件を穹さんに伝える。
「すみません、うちの妹がどうしてもあなたに会いたいと言って聞かなくて。」
「俺のファンか?」
「はい!僕も妹もあなたの大ファンなんです!」
あ…ああ…、今僕はあのスターと話してる…。
ファンって言ってしまった…。
穹さんの前で恥ずかしい!
あっそうだ…興奮のあまり名前を名乗っていなかった。
名乗らずにペラペラと喋るなんて礼儀知らずだと思われただろうか?
「あっ!すみません僕としたことが自己紹介がまだでした。僕はサンデーと言います以後お見知り置きの程よろしくの願いします。」
口調は変になって無いだろうか?
ちゃんと僕は自己紹介出来ているだろうか?
分からない…、穹さんを前にして緊張し過ぎて鼓動がさっきからうるさい。
…と言うか、ロビンも自己紹介してないではないか。
穹さんの前で失礼だ。
同じオーク家の者として彼女の兄としてちゃんと言ってやらねば。
「ほら、ロビン。自己紹介しなさい。」
「むっ無理だよ~、お兄ちゃん…。」
そう言ってロビンは僕の後ろに隠れて、頬を赤く染めながら穹さんを見つめる。
…全く、こうなるなら最初からこんな大胆事をしなければ良かったのに。
「穹さんに失礼だろう。お忙しい中わざわざお時間を取って貰っているのに。」
「でっでも~。」
でもでは無い。
スターとは僕達が想像するよりも遥かにタイトなスケジュールなのだ。
そんな中急に押し掛けてきた僕達を払い除ける事なく紳士に話を聞こうとしてくれている。
神対応とはこう言うことを言うのだろう。
「ハハハ、ロビンちゃんは緊張しているのか?しょうがない、君達この後暇か?実はこの後初ライブの打ち上げに行こうとしていたんだ。良かったらそこで君たちの話を聞いて上げよう。」
「「え?」」
穹さんは今なんと?
僕達を食事に誘ったのか?
急に押し掛けて来た僕達に紳士的な対応をしただけでなく、食事にまで連れてってくれるなんて何れだけ器が広いのだろうか。
そうして僕達は穹さんとそのマネージャー、シルバーウルフさんと共に初ライブの祝勝会に招かれたのだった。
____________________________________________________________
穹さんに連れてこられたお店は個室がある芸能人御用達のお店だった。
ここはピノコニーでもかなり上位のグレードのお店で僕達でもこのお店に来たのは初めてだった。
わざわざ僕達とゆっくり話す為にこんなお店に連れてきてくれるなんて、ありがたいを越えて最早申し訳ない。
僕は少し緊張しながら穹さんと乾杯をしてちょっとした雑談をかわす。
暫くすると、突然ロビンが意を決した顔で穹さんに話しかけた。
「あっあの…。」
「ああ、そうだった。ロビンちゃんの話をゆっくり聞くって約束だったね。それで君は俺に何か言いたい事があるのかい?」
緊張するロビンを前に穹さんは優しくロビンを見詰めて聞く姿勢を取った。
「あっええと…。」
だが、それでもロビンは緊張して上手く話せないでいた。
「ロビンちゃん、落ち着いて。ゆっくりで良い。自分のペースで話してくれ。」
緊張するロビンを優しく諭して会話を促す…その姿は正に妹をあやす兄のようだった。
そして、ロビンは深呼吸して遂に口にする。
彼女が穹さんに聞きたかった事を。
「……すう……ふう、あっあの!私実は音楽やってて、いつか歌手になるのが夢なんです!なので…その…どっどうしたらあなたみたいに輝けますか?」
意を決して放った言葉。
穹さんの音楽に憧れて、歌手を目指した彼女が遂にその本懐を遂げた。
「うん、分からん」
「え?」
しかし、返ってきた答えはとてもあっけらかんとしたものだった。
「俺からは正直何も言えない。君のこれからの人生を左右するかもしれない事は俺には言えないよ。確かに誰かに憧れたり、誰かを参考にする事は悪い事ではない。でも、ロビンちゃんはロビンちゃんだ。他の誰でもない。君が歌手になる事を一番望んでいるのは君自身だろ?なら君を輝かせるのも君自身だ。人が変われるのは何時だって自分のお陰。何れだけ手助けされてもアドバイスを貰っても結局自分を変えられるのは自分だけなんだ。」
「「…。」」
穹さんに憧れたロビンに取ってその言葉は彼女を突き放す残酷な言葉だった。
しかし、僕にはわかる。
これは彼なりの優しさなのだ。
適当でいい加減なアドバイスをするのではなく。
あくまで、自分を変えられるのは自分だと言うことで自発性を促し、自ら自分の道を見つけられるようにする。
彼は僕が今まで会ってきた人の中で最も優しい現実主義者だ。
「なんと言うか意外です。銀河を虜にする歌プリンスがこんな現実主義者なんて。」
「…サンデー君、それとロビンちゃんも。もし目の前に翼を怪我した小鳥がいたら君たちはどうする?」
「「え?」」
僕の口をついて出た現実主義者と言う言葉に穹さんは突然小鳥の話を持ちかけてきた。
その質問を聞いて僕とロビンは絶句した。
何故ならつい先日、家の庭に翼を怪我した小鳥が倒れていて、それを手当てして保護したばかりだったのだから。
「俺ならその小鳥の翼の手当てをした後直ぐに野に放つ。」
「っ!そんな!手当てした直後ではまともに飛べませんよ!」
僕は穹さんの発言に大いに反論した。
残酷な野生の世界では怪我して飛べない小鳥は天敵に取っては格好の餌食。
だから、手当てした後は飛べる様になるまで安全な鳥籠にて保護するのが一番なのだ。
「だが、翼が完全に直るまで鳥籠に閉じ込めていれば小鳥は野生を忘れる。その前に野に放った方が小鳥が生き残る確率は僅かでも上がるだろう。野生の動物とは常に天敵や厳しい環境と隣り合わせだ。当然そう言う生活に少なからず適応している。野生動物の適応力を侮ってはいけない。」
「っ…。」
その言葉に僕は全く反論出来なかった。
穹さんの言う通りだからだ。
小鳥の可能性を勝手に見限って自由を奪ってしまった。
僕はなんて浅はかな事をしてしまったんだ…。
「良いかい?サンデー君。小鳥に限らずこの話は人に置き換えることが出来る。人が困っている時その悩みを全て解決するのではなく、解決する切っ掛けを与えるんだ。人が人に施す事を許されているのは悩み解決の結果ではなく過程。我々人は人の可能性を信じて人が変わる切っ掛けを与えて突き放す事しか許されていないんだよ。」
分かります。
いえ、たった今分かりました。
あなたがロビンを突き放した理由。
ロビンの可能性を信じているから、あなたはロビンがあなたに依存し過ぎてしまう事を憂いてあんな事を言ったのですね。
「人の弱さは誰かの干渉でどうこう出来る物ではないし、誰かが過度に干渉して良いものじゃない。人が変わり、弱さを克服出来るかはその人次第だ。部外者に許されているのは人の可能性を信じてその切っ掛けを与える事だけだ。」
「っ!…。」
全くのその通りだ。
彼の言葉は僕に良く刺さる。
僕はオーク家時期当主だ。
故に、当主の仕事をたまに手伝う事がある。
その内の一つに神父として懺悔を求める人々の声を聞くと言うものがある。
でも、それだけでは行けないのですね。
私がするべきだったのは私が罪人全てを簡単に赦してしまうのでは無く、懺悔を求める罪人に自らの行動で罪を償う切っ掛けを与えるべきだったのです。
かつてこう言う人がいました。
妻も子供も奴隷として売りさばいて、自分はピノコニーに密航して出稼ぎに来たと。
私は彼の罪を赦し密航の件を秘密にしました。
けど、それが行けなかった!
彼は程無くしてバウンド家に密航の事がバレて捕まりました。
私が彼にするべきだったのは…。
すぐにでも密航を止めさせ故郷に戻し、真っ当に働いて妻も子供も買い戻させる事。
例えお金持ちになれなくてももう一度幸せな家庭を取り戻せる切っ掛けを与えるべきだったのです。
…目が覚めました。
穹さんの言葉は私の価値観を根底から覆す物でした。
このような教訓ゴフェルさんでも教えてはくれませんでした。
穹さんはまるでお兄さんの様ですね。
っ?!
その時私の脳内に流れ込んだ
『サンデー!』
『兄さん…。』
『サンデーは高尚な人間だからな…一人で抱え込まずにお兄ちゃんに相談しろよ!』
そうか、穹さんはお兄さんでしたか(※違います。)
穹お兄さん…ふふ…。
流石お兄さんです。
あなたのお陰で大変重要な事に気付けました。
「とても勉強に成りました!ありがとうございます穹さん。」
「あっありがとうございます…!」
「フッああ、どういたしまして。どうだ?シメにデザートでも食うか?」
「「いただきます!」」
私が甘いものが好きだと知っているなんてやはり穹さんはお兄さんだ。