ゴミ開拓者転生~スタレの主人公に成り代わったから全力で主人公を遂行する!~ 作:ひまなめこ
私はロビン。
オーク家当主ゴフェルの義理の娘。
私は今日お兄ちゃんと一緒に大好きなアーティストの穹さんのライブに来ていた。
何百回も聞いた曲でも生で聞くと迫力が全然違くてとても新鮮だったわ。
私は昔から音楽をやっていて、いつか歌手になるのが夢なの。
いつもボイトレや音楽の勉強を頑張っているわ。
そんな私にとって穹さんはどんな山よりも高い目標で憧れなの。
スターチューブに上げた動画を切っ掛けにアーティストとしてデビューしてたった数ヶ月で頭角を現し、銀河中を虜にした大スター。
そんな銀河の星々よりも輝いている彼が何故あんなに輝けるのか知りたくなった。
何となく彼に会って話をしたかった。
プロ意識とかそんな大層な物では無いけれど、私は一人の音楽家の端くれとして彼と対談して見たかった。
そして、気付いたら私はお兄ちゃんを連れて穹さんの控室の前まで来ていた。
「ロビン…流石に駄目ですよ。僕達はファンで彼はスター。彼の前ではオーク家の嫡男と令嬢の立場なんて関係なく、僕達はただのファンになるんです。ただのファンがスターのプライベートに勝手に押し掛けるなんて…御法度ですよ。」
そんなのわざわざ言われなくても分かってる。
これが御法度だと言うことも。
でも、私は止まる気はない。
ずっと会いたかったんだもの。
会って話すまでは梃子でも動いてやらないんだから。
「お兄ちゃんは黙ってて!私はどうしても穹さんに聞きたいことがあるの。」
そして私は意を決して控室の扉をノックする。
すると、直ぐに控室の扉が開き、ずっと会いたかった穹さんが現れた。
「何か、俺に用ですか?」
…この人が穹さん…。
かっ格好良い…!
ライブの時よりもずっと間近で見る穹さんは正に魔性の男。
ライブ中遠目で見ていた時も格好良いと思っていたけど、目と鼻の先にまで接近して改めて見ると、その美貌は格好良いなんてちゃちな誉め言葉で言い表して良い代物じゃない。
彼の一挙手一投足が見る者を魅了する。
そんな穹さんを前にして私は緊張のあまり言葉を失ってしまう。
「あっえっと…。」
実物がこんなに格好いいなんて予想外だった。
彼から湧き出る色気が私の思考を惑わせる。
みっ見たら駄目!
平常心…平常心。
…頑張れ私、自分をしっかり保つのよ!
「ほら、ロビン。自己紹介しなさい。」
え?自己紹介?
いつの間にかお兄ちゃんは私の代わりに穹さんと話しており、その話しの流れで私にお鉢が回ってきたらしい。
そんな…自己紹介なんて…まだまともに顔も見れないのに…!
「むっ無理だよ~、お兄ちゃん…。」
私は急いでお兄ちゃんの背中に隠れて自己紹介を拒否する。
「穹さんに失礼だろう。お忙しい中わざわざお時間を取って貰っているのに。」
そんな事は分かってる…。
頭では分かってるけど…。
「でっでも~。」
こっ心の準備が…まだ…。
「ハハハ、ロビンちゃんは緊張しているのか?しょうがない、君達この後暇か?実はこの後初ライブの打ち上げに行こうとしていたんだ。良かったらそこで君たちの話を聞いて上げよう。」
「「え?」」
穹さんの言葉に私とお兄ちゃんは同時に声をあげて固まる。
まさか穹さんにお食事に誘われるなんて…。
嬉しい!
けど、心の準備が…。
鼓動がさっきからうるさい…。
毎秒毎秒どんどん早く大きくなっていく。
私の精神は果たして保つのかしら…。
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そして私達は穹さんによって個室のあるお店に連れてこられた。
そこでマネージャーのシルバーウルフさんと一緒にハイテンションで乾杯する穹さんとは対照的に私は緊張のあまり少しぎこちなく乾杯する。
そこからは緊張で全く話せない私を置いて、お兄ちゃんが穹さんと雑談を交わしていた。
私だって穹さんと話したいのに…。
お兄ちゃんばかりずるい…。
「あっあの…。」
お兄ちゃんと穹さんの間に割って入るように声を掛けた。
「ああ、そうだった。ロビンちゃんの話をゆっくり聞くって約束だったね。それで君は俺に何か言いたい事があるのかい?」
そう言って穹さんは優しい眼差しで私を見詰めて、聞く姿勢を整えた。
しかし、穹さんが私を見詰めてくると言うこの状況が私の緊張を悪化させた。
穹さんが私をマジマジと見てる…。
そんなに見詰められたら、私どうにかなっちゃいそうだよ…。
「あっええと…。」
駄目だ、緊張のあまり、言葉がつまって出て来ない。
早く何か言わないと…でも、見詰められると余計に緊張しちゃう。
どうしよう…。
「ロビンちゃん、落ち着いて。ゆっくりで良い。自分のペースで話してくれ。」
中々言葉が出なくて焦る私に穹さんはとても優しく声をかけてくれた。
嗚呼、この人はなんて優しいんだろう。
勝手に控室に押し掛けてきた私を追い返すことなく、寧ろこうして個室のお店に連れてってくれて、ゆっくり私の話を聞こうとしてくれる。
とても器が大きい人だ。
これがスターの器。
なら、私も彼に習っていつまでも緊張ばかりしてられない。
私は一度深呼吸をしてから意を決して今まで穹さんに聞きたかった事を口にする。
「……すう……ふう、あっあの!私実は音楽やってて、いつか歌手になるのが夢なんです!なので…その…どっどうしたらあなたみたいに輝けますか?」
言った!
やっと、ずっと言いたかった事が…。
私は内心跳び跳ねる勢いで喜びながら、穹さんの答えを待つ。
しかし、彼から出た答えは私の予想してた物とは違うものだった。
「うん、分からん」
「え?」
分からないって…え?
そんな…なら、あなたはなんでそんなに輝けてるの?
同じ人間なのに…あなたには出来て私には無理なの?
「俺からは正直何も言えない。君のこれからの人生を左右するかもしれない事は俺には言えないよ。確かに誰かに憧れたり、誰かを参考にする事は悪い事ではない。でも、ロビンちゃんはロビンちゃんだ。他の誰でもない。君が歌手になる事を一番望んでいるのは君自身だろ?なら君を輝かせるのも君自身だ。人が変われるのは何時だって自分のお陰。何れだけ手助けされてもアドバイスを貰っても結局自分を変えられるのは自分だけなんだ。」
自分を変えられるのは自分だけ…。
私が歌手になるのを望んでいるのは私自身…。
あなたでは私を変えられないの?
スターなら、スターの言葉なら私は新しい私になっていつか穹さんと同じ輝きを手に入れられると思ったのに…。
「なんと言うか意外です。銀河を虜にする歌プリンスがこんな現実主義者なんて。」
お兄ちゃんの言う通りだと思う。
穹さんは私が思っていた以上のリアリストだわ。
「…サンデー君、それとロビンちゃんも。もし目の前に翼を怪我した小鳥がいたら君たちはどうする?」
「「え?」」
その質問を聞いて私とお兄ちゃんは絶句した。
何故ならつい先日、家の庭に翼を怪我した小鳥が倒れていて、それを手当てして保護したばかりだったのだから。
「俺ならその小鳥の翼の手当てをした後直ぐに野に放つ。」
「っ!そんな!手当てした直後ではまともに飛べませんよ!」
穹さんの発言にお兄ちゃんが反論した。
まだ飛べないのに野に放つなんて小鳥がかわいそうよ。
「だが、翼が完全に直るまで鳥籠に閉じ込めていれば小鳥は野生を忘れる。その前に野に放った方が小鳥が生き残る確率は僅かでも上がるだろう。野生の動物とは常に天敵や厳しい環境と隣り合わせだ。当然そう言う生活に少なからず適応している。野生動物の適応力を侮ってはいけない。」
侮る…。
確かに私達は小鳥の力を侮っていたかもしれない。
私達よりも小さいから、弱いと決めつけていた。
本当はあの小鳥は私達よりも何倍も厳しい環境を生きてきた逞しい小鳥なのに。
弱そうな見た目だけであの小鳥の可能性を見限ってた。
「良いかい?サンデー君。小鳥に限らずこの話は人に置き換えることが出来る。人が困っている時その悩みを全て解決するのではなく、解決する切っ掛けを与えるんだ。人が人に施す事を許されているのは悩み解決の結果ではなく過程。我々人は人の可能性を信じて人が変わる切っ掛けを与えて突き放す事しか許されていないんだよ。」
人の可能性を信じる…。
まさか、穹さんは私の可能性を信じてあんなに事を…?
「まあ、つまり何が言いたいかって言うとだな…。俺はロビンちゃんの可能性を信じている。いつか俺を超える輝きを魅せてくれる大スターに成れると心の底から信じてる。だから、俺が君にあげられるのはいい加減なアドバイスでは無く、ちょっと説教臭い教訓だ。どうかこの教訓が君が輝ける切っ掛けになる事を祈ってるよ。」
…そう言う事だったのね。
いい加減なアドバイスをして私があなたと言う憧れに依存し過ぎる事を防ぐ為に…。
私の人生は私の物。
私自身が私を変えて、私自身が私の道を切り開くもの。
その舵取りを穹さんに握らせようとしていた。
私はなんて愚かなのかしら!
それでは私の人生ではなく、第二の穹さんの人生だわ!
私の人生に私が無くなってしまう。
そんなの駄目よ!
穹さんはそれを憂いてあんな事を言ったのね。
なんて素敵なのかしら。
私の未来を憂いて正しい道を指し示してくれる。
しかし、それを強制するのではなく、あくまで私の判断に委ねる。
彼が私にもたらすのは切っ掛けのみ。
後の事は全て私次第。
私が後悔しないように…、正しい方法で導いてくれる。
正に私とお兄ちゃんのさらに上のお兄ちゃんみたい。
っ!?
その時私の脳内に流れ込んだ
『穹お兄ちゃん!』
『なんだ?ロビン。ロビンは相変わらず甘えん坊だな。』
『えへへ!』
『なあ、ロビン。お前はお前の道を行け。失敗しても良い、逃げたって良い。ただ自分が思うがままに突き進め。』
そうだわ、穹さんは穹お兄ちゃんなのよ(※違います。)
ふふっ!穹お兄ちゃん…。
流石穹お兄ちゃんね。
お兄ちゃんのお陰で大切な事に気付けたわ。
「とても勉強に成りました!ありがとうございます穹さん。」
「あっありがとうございます…!」
「フッああ、どういたしまして。どうだ?シメにデザートでも食うか?」
「「いただきます!」」
デザートまでくれるなんて流石穹お兄ちゃん。
甘やかし上手なんだから…。