ゴミ開拓者転生~スタレの主人公に成り代わったから全力で主人公を遂行する!~ 作:ひまなめこ
俺の部屋でカフカと一悶着あった後、俺は宇宙船のラウンジの窓から巨大な巣から湧いてくるスウォームと体長3mを越える鉄の巨人達が繰り広げている戦争をただ呆然を眺めいていた。
この光景は見たことがある。
確か星核ハンターの1人ホタルのショートアニメに出てきた戦場だ。
つまり今ホタル(今はAR-26710)は大量のスウォームとその巣を相手に決戦をしているのだ。
この戦いはAR-26710がホタルとなる切っ掛けの戦いにして、彼女がティタニアの夢から醒めて生への執着に目覚める切っ掛けでもある。
今回の任務は基本手出し厳禁だとエリオから忠告を受けた。
まあ、それに関しては納得だ。
ショートアニメでもカフカとエリオはホタルが覚醒してスウォームを星ごと爆発するまで登場せず、ずっと静観を貫いていた。
俺と言う謎に術式5個持ち主人公とか言うイレギュラーがいるのでもう手遅れかもしれないが、成るべく原作開始前は本来の歴史とエリオの脚本から逸脱しないようにしたい。
どんな不測の事態が起きるか分からないからな。
こういう転生成り代わり物はバタフライエフェクトとか馬鹿に出来ないからな。
そんな風に物思いに耽りながらこの悲惨な戦争を眺めていると、後ろから現れた見覚えのある猫に話し掛けられる。
「そんなに食い入るように見て、面白いかい?僕はこんな血生臭い戦いは苦手だね。」
未来を見通す星核ハンターのリーダーエリオは気だるげにあくびをしてそんな言葉を吐き捨てた。
「俺だってこんな光景好きで見てるわけじゃねえよ。ただ何となくしっかり見なくちゃ行けない気がしてな。この光景も音も匂いもそれを感じて恐怖している自分も紛れもなく現実で、てめえも選ばれる運命が違えばこんな感じになっていたかも知れないんだぞって言う自分自身への戒めみたいな物だ。」
この世界は確かにゲームで遊んだ世界と同じだ。
でもゲームではなく現実なんだ。
今の俺にとっては、この世界での死は紛れもない俺の人生からの永遠のログアウトなんだ。
この数週間で何となく理解した。
ゲーム感覚で生きていたらいつか死ぬと。
だから、どこか浮かれている俺自身の熱を覚ます為に俺はこの目の前の戦いから目を離せないでいた。
この戦いは前世でも割りとトラウマだった。
それが今現実となって俺の目の前で繰り広げられている。
冷たい金属音と共に鉄騎兵の装甲が剥がれ、生身の人の形をした中身が飛び出てその瞳から光を失う。
徐々にスウォームの物量に押し切られている状況に焦って、今はもう存在しないグラモス共和国の本部に支援要請を必死に呼び掛ける声がまるで前世の地震速報やJアラートのように聞く人間の深層心理に潜む危機感を過剰に煽って、焦りの感情を増幅させてくる。
当事者ではない俺でさえも息がつまる程に肉体と精神が恐怖と焦りと絶望に支配されて、苦しくなる。
「はあ……はあ…はあはあはあ。」
「大丈夫…じゃなさそうだね。この光景は今の君には刺激が強過ぎるんじゃないかい?一旦休んだ方が良いよ。」
「…いや、今の俺にはこのくらいの刺激の方が丁度良い。」
目の前の戦場を見ている内に酷く息苦しくなって過呼吸になってしまった。
そんな俺を心配してエリオが休むように提案するが、俺はそれを拒否した。
「…そうかい、辛くなったら言うんだよ。今回の我々の任務は静観。特に大きな仕事も無いから休みたい時に休みなよ。」
そう言ってエリオは俺に背を向けてこの場を後にしようとする。
しかし、その刹那突然ボロボロな装甲を身に纏った鉄騎兵が俺達が乗っている宇宙船に飛来してきて、そのまま衝突してきた。
「何だ?スウォームに吹き飛ばされてきたのか?」
「いや、スウォームにそんなパワーは無いよ。恐らく意図的に僕達を敵と認識して襲って来たんだ。」
俺達を敵と認識?
俺達はスウォームじゃねえぞ。
「どうする?エリオ。」
「問題ない。このパターンも予め見ていたから対策はバッチリだよ。」
突然の鉄騎兵による襲撃に混乱しながらエリオに指示を仰ぐと、エリオは問題ないと豪語し、更に言葉を続ける。
「この不足の事態を終息させる対策はズバリ君だ。僕が見た未来では君がこの状況を打破してくれる。」
「お前…それは対策じゃなくて他力本願だろうが!」
俺はエリオの言葉を聞いて、怒りを露にして詰め寄る。
この猫本当に何なの?
未来見えるのならもうちょい良い感じの対策あっただろ。
「ちょっと穹落ち着いて、文句なら後で聞くから今は早くこの状況をどうにかするのが最優先でしょ。」
「…どうにかするったって一体何をすれば良いのか分からないぞ。」
「はあ、しょうがないなあ。今回は特別にこれから起きる未来の詳細を教えて上げよう。ただし教えるのは君とさっき襲ってきたグラモス鉄騎兵に関する数システム時間先の未来だけだ。」
この状況の打開策が思い付かずに困惑している俺に対して、エリオがそのような提案をしてきた。
エリオがヒントではなく未来の詳細を教えるなんて珍しいな。
いつもはなんかポエムみたいな痛々しくて回りくどい言い回ししかしないのに。
「先ず君にはこの宇宙船内部に停船してある小型宇宙船にのってあのグラモス鉄騎兵をこの宇宙船から離れるように誘導してほしい。ある程度この宇宙船から離れたら僅かに酸素が残っている小惑星がいくつかある筈だからそこにグラモス鉄騎兵と共に着陸して戦闘を行い何とか撃退してほしい。」
「簡単に言ってくれるな。万が一死んだらどうするんだよ?」
「死なないよ君は。」
「あ?」
「君が死ぬ可能性も未来も僕は見たことがない。君はそう言う運命に選ばんれて生まれたんだよ。こう言うのを主人公って言うのかな?」
猫の表情を見分ける術を俺は持ち合わせてないから分からないが、もし仮にエリオが人だったなら今俺の目の前でイタズラっぽく笑っているのだろう。
そういう雰囲気がエリオから感じた。
「…主人公ね~。」
俺は確かにスタレの主人公の肉体に転生した。
だが、この身体が主人公なのはゲームの話だ。
現実の世界となったこの世界で俺は本当に主人公に成れるのだろうか?
「なあ、エリオ。」
「なんだい?」
「俺は本物の主人公に成れると思うか?物語の勇者とか英雄のようなお伽噺上の存在のような人間に。」
「…どうだろうね。君が望む主人公が一体誰が紡ぐ物語の中の登場人物かによるね。少なくとも僕の脚本の中では君はいつだって主人公だ。」
…相変わらず、ポエムな言い回しが好きだなこの猫は。
俺はため息をついて、頭をがしがしと掻きながらエリオに背を向ける。
「しゃーない、一肌脱いでやりますよ。主人公らしく脚本家の言いなりになってやるよ。」
「ありがとう。最後に僕からヒントをあげよう。」
「なんだ?」
「グラモス鉄騎兵の生涯には人としてではなく道具として、兵器としての意味しか見出だされていない。故に鉄騎兵の人生にも命にも価値など無く、場合によっては
「それがヒントか?」
「うん、僕から言えるのはこれくらい。まあ精々頑張ってよ主人公君。」
「ふんっ刮目してろポエム猫。」
そう吐き捨てて俺はその場を後にし、小型宇宙船に乗り込んでグラモス鉄騎兵共に出来るだけ遠くまで飛んでいくのだった。