ゴミ開拓者転生~スタレの主人公に成り代わったから全力で主人公を遂行する!~ 作:ひまなめこ
「自認禅院直哉?」
伏黒の言葉を復唱しながら俺は疑問符を浮かべる。
「あの雰囲気、態度、性格、間違い無い。真希さんから聞いた禅院直哉の特徴と合致する。」
「何でロビンが禅院直哉になってんだよ?」
「それは俺にもわからん。分裂した人格が穹の記憶に影響されてどんな性格になるのか…その過程に法則性があるのか、それとも不規則なのかまでは分らない。」
余計にややこしい事になったな。
ただでさえ皆の人格が分裂して一大事だってのに、俺の記憶のせいで、性格が別人になるなんて…。
「取りあえず、様子を見るぞ。今の自認直哉は脹相との会話に夢中で俺達に気付いてない。今のうちに奴の目的を聞き出して、交渉の余地がありそうだったら、あいつらの会話に介入するぞ。」
そう伏黒に言われて俺は物陰に隠れながら、自認直哉と脹相の会話に聞き耳を立てる。
「ロビン…いや、禅院と呼んだ方が良いか?…お前の目的は何だ?」
「そんなもん一つしか無いやろ。穹を殺して俺のもんにするんや。」
「…なんだと?」
自認直哉の口から出た衝撃の発言に脹相は怪訝な表情を浮かべた。
「ここだけの話、俺は穹の事が好きやねん。勿論俺以外のロビンの人格も皆穹の事を好いとる。やから、誰にも奪われたく無いんや。」
「だから殺すのか?俺の弟を…。」
「一番手っ取り早くて確実な方法やろ?あっ言っとくけど、お前は論外や。見てくれは穹と同じやけど、中身がアカンわ。」
…一通り、二人の会話を聞いて、自認直哉の目的を知ることが出来た。
要約すると、今の自認直哉と化したロビンは俺を殺して自分の物にしたい程俺の事が好きなヤンデレと言う物になってしまっているようだ。
奴の目的は俺。
しかも、殺すとはっきり口にしていた。
交渉の余地はなさそうだ。
「チッ性格が直哉になっている時点で嫌な予感はしていたが、まさか目的が穹を殺す事とはな…。おい穹、気付かれる前に一旦逃げるぞ。」
伏黒は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、そう言い放ち、この場から逃げる体制を取る。
しかし、俺達が逃げようとする直前にピヤノが後方から吹っ飛んできて俺達の行く手を阻んだ。
「さっきからこそこそと…。俺が気付いてないと思っとったんか?詰めが甘いな恵くん。」
「…穹と伏黒!?何故ここに?」
振り向けば、何かを投げた後のような体制でこちらを睨み付けるロビン…いや、自認直哉とこちらを見て驚きの表情を浮かべる脹相の姿があった。
あのピヤノを投げてきたのは直哉か…。
いつから気付かれてた?
「…いつから俺達がここにいるって気付いてたんだ?」
「『今のロビンは…自認禅院直哉だ。』の所からやな。」
最初からじゃねえか…。
「穹の方から俺の所に来てくれて嬉しいわ~♥️お陰で探す手間が省けたわ。」
自認直哉はそう言ってゆっくりと俺に近づく。
「動くな!分かってるのか?こっちは俺と穹と脹相の三人でお前は一人だ。これ以上怪しい動きをするなら容赦はしないぞ!」
俺にゆっくり近づく自認直哉を見て、伏黒は焦ったようにそう吐き捨てる。
「三対一…確かに俺が不利やね。でも、お前ら俺の術式がどんなだったか忘れてへんか?【♪】」
その瞬間、自認直哉は目にも止まらない速さで俺の背後に回り込む。
「なっ?!」
背後に自認直哉が現れた直後、急いで振り替えるが、こちらが反応する前に裏拳で顔面を殴られる。
「ぐは!?」
「「穹!」」
伏黒と脹相の絶叫が辺りに響き渡る。
…速い。
この俺が全く捉えられなかった。
もしや、こいつ…投射呪法を使えるのか?
「今のスピード…まさか投射呪法…。」
「いや、そんな筈はない。奴はあくまで穹の記憶に影響されて側だけ禅院直哉を再現しただけの存在だ。術式が刻まれている筈はない。」
自認直哉の動きを見て投射呪法だと当たりをつけるが、伏黒に否定される。
「恐らく、元々ロビンが持っていた能力が直哉仕様に変質したんだろう。その謎を紐解かない限り、奴の攻略は不可能…っうぐ!!」
冷静に自認直哉の能力を分析していた伏黒の腹に容赦なく自認直哉の蹴りが入った。
「【♪】ベラベラと御託並べてないで少しは反撃してみたらどうや恵みくん。…悪いけど俺は油断も容赦もせえへんで。それで生前は酷い目におうたからな。徹底的にてめえらをぶっ殺したる。【♪】」
自認直哉は蹴られた腹を抑えて蹲る伏黒を放置して次に脹相に狙いを定めて突貫する。
「【赫鱗躍動・載】」
襲いかかってくる自認直哉を前に脹相は【赫鱗躍動・載】を使い、応戦する。
しかし…。
「ぐは!?」
「【♪】鈍いわ!お兄ちゃん。そんなんで俺のスピードについてこられるとでも!」
【赫鱗躍動・載】を持ってしても、自認直哉のスピードにはかなわず、圧倒的な手数とスピードの暴力により、為す術なく圧倒されてしまう。
「【血星磊】」
「【♪】無駄や!」
【血星磊】を利用して凝固させた血液を全身に待とって防御を図ろうとするが、その直前に自認直哉に触れられてしまい、脹相の体が硝子板のような物に閉じ込められて、フリーズしてしまう。
「【♪】ウォラァ!」
バリン!
割れ物が割れる音と共に、脹相の体が後方に大きく吹っ飛んだ。
「脹相!…くそ!あいつ滅茶苦茶速い!…けど、伏黒の言う通り確かに投射呪法では無さそうだな。」
投射呪法とは一秒間に24回動きを作ってそれをトレースする術式だ。
つまり、24fpsで動いてる事になる。
自認直哉が本当に投射呪法を使っているのなら、動きがカクカクになる筈だ。
だか、奴の動きはカクつく所か滑らかで、速い。
投射呪法ではなく他の能力の応用である事がわかる。
「ああ、それに自認直哉が俺達に放った打撃。あれはただエネルギーで強化したにしてはあまりにも重過ぎる。投射呪法ではこんな威力は出せないだろう。」
未だに回復しない腹の痛みに耐えながら、俺の言葉に続くようにそう口にする伏黒。
「思ったりよりしぶといな。もう少し速くしてみるか!」
そう言って自認直哉は腰を低くして構える。
しかし、その直後。
この空間をヌルッとした妙な気配が支配する。
「何だ?この妙な気配は…?」
「この気配…間違いない!アイツや!」
「まさか…乙骨先輩?」
俺、自認直哉、伏黒の順に気配のした方に振り向けば、そこにはエクスカリバーを構えた状態で佇んでいるセイバーの姿があった。
「あれ?一人じゃないんだ。」
「セイバー?」
目の前にいるのは明らかに俺のサーヴァントセイバーだ。
しかし、身に纏う雰囲気が別人だ。
「アイツはセイバーじゃない。あの雰囲気、身に纏う底無しのエネルギー。恐らく自認乙骨先輩だ。」
「なんだと?」
あのセイバーまでもが俺の記憶の影響を受けているのか…。
「誰が穹君の何?」
「たんまや、君乙骨くんやろ?覚えとるか?俺は禅院直哉や真希ちゃんの従兄。」
突然の乱入者に混乱する俺と伏黒を置いて自認直哉が自認乙骨に話し掛けた。
「ああ、あの時の…。それで?貴女は僕の敵ですか?味方ですか?」
「それは君次第やな。乙骨くんの目的はなんや?」
「穹君を殺す事ですよ。ある人と縛りを結んでしまったので。」
つまり、こいつも敵か!
「なら、味方やな。協力する変わりに一つ約束してくれや。」
「何です?」
「穹くんの死体は俺によこせ。」
「良いですよ。」
そう言って、自認乙骨はエクスカリバーを構えた状態で俺に斬り掛かってくる。
俺はそれを何とか避けて奴から距離を取る。
「穹!お前は逃げろ!後は俺が何とかする。」
「っ!でも!」
「このままではお前が殺されて終わりだ。この固有結界から全員無事に出る為には今ここでお前を失う訳にはいかない!」
わかってる。
伏黒の言ってる事は理解出来る。
しかし、伏黒を一人置いて行くなんて俺には…!
「安心しろ穹。俺もいる。」
その時、自認直哉から受けたダメージから回復した脹相が現れて、そう俺に言い放った。
「俺が自認直哉を伏黒が自認乙骨を食い止める。その隙に逃げろ。」
「…分かった。死ぬなよ。」
そう言って俺は自認乙骨と自認直哉から逃げる為にこの場を走り去るのだった。