ゴミ開拓者転生~スタレの主人公に成り代わったから全力で主人公を遂行する!~ 作:ひまなめこ
6mを越える人型の式神摩虎羅は右手に備え付けてある退魔の剣をAR-214に向かって叩き付ける。
その直後AR-214の身体は近くの小惑星まで勢いよく吹き飛ばされた。
「ぐっ!?装甲の更なる損傷を確認…安全モードへ移行。…これ以上の戦闘は危険です。直ちに撤退を…。」
摩虎羅の攻撃を受けて大ダメージを食らったAR-214は逃亡を図ろうとするが、さっきまでいた小惑星から宇宙空間をひとっ飛びで越えてAR-214に一瞬で追い付いた摩虎羅により敢えなく阻止されてしまった。
「くっ逃走不可。戦闘の継続。掃滅開始。」
AR-214は全身から炎を噴射し、炎の推進力で摩虎羅との距離を一瞬で詰めて、炎を纏った蹴りや拳を繰り出す。
摩虎羅はその巨体に見合わず防御力が低いためAR-214の攻撃によりいとも簡単に上半身を吹き飛ばされてしまった。
「掃滅完了。再び蝗害殲滅の任務に戻ります。」
そう言ってAR-214が摩虎羅との戦闘の跡地を後にしようとした刹那、奇妙な音が突然辺りに響いた。
ガコンッ!
何かが回転する音。
その音が鳴り響いたと同時に上半身が吹き飛ばされた筈の摩虎羅がいつの間にかAR-214の目の前に迫り、退魔の剣から莫大なエネルギーを放出してAR-214の身体を吹き飛ばした。
摩虎羅から放たれた莫大なエネルギーの奔流に呑み込まれたAR-214は身に纏う鋼鉄の装甲を全て破壊されて生身の肉体…鋼鉄の装甲を操縦していた本体が顕になってしまった。
「何で?上半身を吹き飛ばしたのに…、どうして。」
AR-214の装甲から出てきた白髪長髪の少女は倒した筈の摩虎羅を見て唖然とする。
AR-214はさっきの一撃で満身創痍なのに対して摩虎羅はピンピンしていた。
先程AR-214が吹き飛ばした筈の上半身は何事も無かったかのように元通りに再生している。
その光景を見てAR-214は酷く絶望する。
「どうして?何で邪魔するの!私が生きようとするのってそんなに悪いこと?グラモスの鉄騎兵だから、兵器が幸せを望んだら行けないの?」
ただ無言で無情に直立する摩虎羅に対してAR-214は癇癪を起こしたように叫び散らす。
「こんな世界おかしいよ!グラモスの皆も守るべき女皇陛下も共和国も無いのに…!何であんな簡単に命を散らせるの!私には無理だよ!死にたくない…死にたくない!!」
今際の際で摩虎羅を前にして、AR-214は自身の思いの丈をさらけ出した。
彼女が叫ぶ度に、彼女の生への執着が増し、【繁殖】の力が増大していく。
彼女はそれを自覚すること無く、ただ生にしがみつく。
定められた死を拒むために。
自分の命に兵器以外の意味を見出だすために。
彼女はこの世界の無情に抗う。
《焦土の夢境を蝕んだ。》
《新たに芽を出す莟は蝗害に食い荒らされ遺言を残す。》
《鉄道虫よ、自らの生のため全てを滅ぼせ。》
その瞬間、AR-214を赤紫色の怪しげな光が包みスウォームとSUMが合体したような異様な雰囲気を纏う赤紫色の鉄騎の姿へと変貌を遂げた。
「協定採択…蝕生蛮行遂行!!」
驚きの変貌を遂げたAR-214は一瞬で摩虎羅に迫り、渾身の一撃を繰り出す。
その瞬間、摩虎羅の上半身が再び跡形もなく吹き飛んだ。
しかし、ガコンッ!と言う音と共に摩虎羅は何事も無かったかのように上半身を再生させた。
「やはり再生しますか…。カラクリは分かりませんが、再生するのなら再生出来ないように塵残さず消し飛ばすのみ!」
AR-214は両腕両足を使って摩虎羅の身体に抱きつき、自身が内包する虚数エネルギーをありったけ放出する。
「蝕生蛮行遂行!!!」
そんな叫び声と共にAR-214は自分ごと小惑星を巻き込んだ爆発を起こして摩虎羅を完全破壊するのだった。
____________________________________________________________
数十分前。
摩虎羅によって仮死状態になった俺は生死の境を彷徨っていた。
生死の境とはこんな感じなのか…。
現実味があまり無い体験のため、場違いな感想が溢れた。
それにしても、奇妙だ。
仮死状態と言うからには意識が完全に無いと思ったのだが、こうして朧気ながら思考を回せるくらいの余裕はある。
もしかして、仮死状態ではなくただ気絶してるだけなんじゃないか?
そう思い、何とかして意識を戻して身体を動かそうと頑張るが、上手く行かない。
…術式の効果か?
意識を身体に戻そうとすると俺の意識を拒む壁みたいなものがある。
摩虎羅とAR-214の戦いが終わるまで俺の意識が戻ることはないっぽいな…。
もしAR-214が摩虎羅に負けたら俺はこのまま死ぬのかな?
まあ、そうなったらなったでしゃーないか。
元々覚悟の上で摩虎羅を召還したしな。
そんな事より、問題は今どうやって暇を潰すかだ。
身体は動かせないし、スマホも見れない。
物凄く暇だ。
そんな風に暇をもて余していると。
俺の頭にふと天啓が降りる。
そう言えば、今の俺って仮死状態…つまり死にかけなんだよな?
もしかして今なら五条悟みたいに死に際で反転術式を習得出来るんじゃないか?
まあ、反転術式がこの世界にあると言う保証は無いのだが、徒労になっても良いからやるだけやってみても良いだろう。
俺に五つも術式があるんだから、きっと反転術式もある筈だ。
そう言って俺は仮死状態を利用して反転術式の習得に勤しむ。
それから、数十分が経ち摩虎羅とAR-214の戦いの終わりを告げるように俺の意識が浮上する。
「痛ってー!摩虎羅の奴少しは加減しろよ…。」
俺は意識の回復と共に全身に迸る激痛に悶える。
今更だが、俺は真人のように常に物理攻撃を無効する事が出来ない。
俺が呪霊ではなく人だからなのか、それとも術式を五つも持っている事による弊害なのか。
【無為転変】を使用している間のみ物理攻撃を無効化出来るだけで、他の術式を使用している時は普通の攻撃でもダメージを食らってしまうのだ。
故に、適応前の摩虎羅の雑な攻撃でも仮死状態になってしまうのだ。
「それにしても痛ってえな…。
そう言って俺は自分の身体に手をかざして、掴んだ感覚を頼りに虚数エネルギーを操作する。
「ひゅーとやってひょい。」
その瞬間、摩虎羅によってつけられた傷が元通りに再生した。
「さてと…俺が無事に目覚めたと言うことはAR-214が勝ったと言うことか。」
…本当ならこのまま彼女を殺して安らかに眠って欲しかった。
ロストエントロピー症候群なら俺の【無為転変】で直せると思うが、【繁殖】の運命は無理だ。
例え行人が歩む程度の運命であってもそれを治す事は出来ない。
人の運命を変えるなんて【星神】にしか無理だろう。
魂に干渉出来る俺でも運命からの脱却は専門外だ。
…だから、彼女がこれ以上苦しまないために早く殺してやりたかった。
その感情は俺の独りよがりな偽善で、生への執着が強い彼女ならきっと全力で拒むだろう。
それでも、運命のせいで、誰かが苦しむのは嫌だった。
それが例え初対面の相手でも、敵であっても。
俺はやるせない気持ちになりながら、AR-214の姿を探すために摩虎羅とAR-214の戦いが繰り広げられたであろうこことは別の小惑星だった物に視線を飛ばす。
視線を飛ばした先には小惑星があった筈の場所に粉々になった隕石の欠片のようなものが宇宙空間に散らばっていた。
そこにはAR-214の姿は見当たらなかった。
「逃げられちまったか…。」
酸素の薄い小惑星の大地で俺の独り言がただ静かに木霊するのだった。