ゴミ開拓者転生~スタレの主人公に成り代わったから全力で主人公を遂行する!~   作:ひまなめこ

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8話女郎蜘蛛の内側

エリオとのちょっとした会話を終えた後、俺は宇宙船の中に設けられた訓練所に来ていた。

目的は今の俺の能力を把握するため。

 

カフカに宇宙空間に放り出された時、俺の頭上に突然法陣が現れて宇宙空間への適応能力を俺にもたらした。

あれは紛れもなく摩虚羅の力だ。

もしかしたら、何らかのイレギュラーが起きて摩虚羅を調伏出来たのかも知れない。

 

そう言う思い俺は訓練所の中心に立って印を結び祓詞を唱える。

 

「布瑠部由良由良」

 

その瞬間、俺の影からぬるっと摩虚羅が出てきた。

 

「うお!本当に出た。しかも…襲ってこない。」

 

現れた摩虚羅は以前の調伏前とは異なり大人しく、まるで俺の指示を待っているかのようにその場に静かに佇む。

 

「よし、摩虚羅右手を上げろ。」

 

「…。」スッ

 

俺の指示に従い摩虚羅は右を上げた。

 

「右手下げて、左手上げろ。」

 

「…。」スッスッ

 

先程と同様に俺の指示に素直に従う摩虚羅。

…なんか楽しくなってきた。

 

「右手上げて。」

 

「…。」スッ

 

「左手あげないで右手下げる。」

 

「…。」スッ

 

「左手上げないで右手上げない。」

 

「…。」

 

「両腕上げて、両腕下げて右手上げながらI字開脚。」

 

「…。」スッ

 

…すげえ、全ての命令に対応しやがった。

 

「凄いぞ摩虚羅!」

 

「…。」ガコンッ!

 

…今何に適応したんだ?

 

それにしても、消費エネルギーがバカにできんなあ。

摩虚羅を顕現させるにはエネルギー消費が激しすぎて召還を5分程度しか維持できない。

暫くは召還せずに能力だけ引き出す形になりそうだな…。

 

まあ、気を取り直して十種影法術以外の術式も確かめてみよう。

先ずは赤血操術。

 

「【赤燐躍動】」

 

その瞬間、俺の体内の血液の流れが変わり身体能力が上昇したのを感じた。

 

「…うん、出力はまだかなり低いけど使えなくは無いな。やはり、死に際で反転術式を練習したお陰か呪術の核心に近付けた気がする。」

 

次は御厨子だ。

俺は訓練所にあるサンドバッグに触れて術式を発動する。

 

「【捌】」

 

その瞬間、俺が触れたサンドバッグが粉々に切り刻まれた。

 

「少し以前よりも威力が上がったな。なら次は…。」

 

俺は別のサンドバッグの前に行き、少し距離を取って狙いを定めるように手をかざす。

 

「【解】」

 

俺がその技を口にした瞬間、見えない斬撃がサンドバッグを襲った。

しかし、不可視の斬撃はサンドバッグの表面に切れ味の悪いカッターで付けたような浅い傷を付けるだけ終わってしまった。

 

「ふむ、【捌】の拡張術式【解】。本来触れた対象を細切れにする斬撃を単発にする縛りで、不可視の斬撃として飛ばせるように拡張した術式。ある程度呪術の核心に近付いた俺でもこの程度の出力が限界か…。ムズいな御厨子。」

 

そう誰に言うでもなく愚痴を溢しながら残りの術式も試してみる。

無為転変は相変わらず可もなく不可もなくって感じだ。

普通に使える。

無限の剣製は単純に武器のストックが足りない。

 

まあ、そんな感じで大体自分が何が出来るのか把握し終えた俺は片付けをして訓練所を後にするのだった。

____________________________________________________________

訓練所を出た後、俺はAR-26710の様子を確認するためにカフカの部屋に向かっていた。

あまりカフカとは顔を合わせたくは無いのだが、仕方ない。

AR-26710の事が気になるし、心配だ。

俺は基本的に箱推しだが、ホタルは特に好きなキャラだったから普通に会いたいって願望もある。

一応カフカへの抑止力としてエリオにも着いてきて貰っているから大丈夫だろ。

 

「僕はいい加減君たちには仲良くなって欲しいんだけどね…。」

 

「無理な話だ。」

 

前世ではカフカはかなり好きなキャラだったんだがな。

やはりゲームと現実は違うのだと身をもって実感させられるよ。

俺とあのカフカの性格は水と油だ。

絶望的に合わない。

 

「…穹、君はその成熟した身体に見合わずかなり童心的だね。」

 

「…どういう意味だ?」

 

突然かけられたエリオの言葉に俺は咄嗟に疑問を口にした。

 

「人は鏡だよ、君が嫌な態度を取れば相手も同じような態度で返す。逆に君が相手を信用すれば相手も君を信用する。」

 

「…道徳の授業でよく使われる在り来たりな言葉だな。」

 

人は鏡か…、確かにそうだろうな。

俺は俺を心から信用しないカフカに対して同じ態度で返しただけ、何も間違ってない。

 

「最初に俺達を信用しなかったのはカフカだ。」

 

「それでも、君はもう少し大人に成るべきだと言っているんだよ。以前カフカはカフカなりに変わろうとしていると言っただろう。彼女は自分の心の空洞に悩まされながら自分を変えようと努力している。カフカの表面だけじゃなく、内面にも視野を向けるべきなんだ。」

 

「…。」

 

エリオの言葉への反論が浮かばず、俺はぶうたれたように沈黙する。

そんな気まずい雰囲気の中俺達は廊下を歩いていき、カフカの部屋の扉の前にたどり着く。

 

「…はあ。」

 

憂鬱だ。

元から足取りは重かったが、さっきのエリオに言われた言葉で更に気分が落ち込んだ。

だが、せっかくここまで来たのだからせめてAR-26710の様子だけでも見たい。

 

そう思い、俺はカフカの部屋の扉をノックしようする。

しかし、その直前部屋の中からカフカとAR-26710の話声が聞こえてきた。

 

俺はノックするの止めて扉に耳を張り付けて会話を盗み聞きしようとする。

そんな俺に倣ってエリオも一緒に扉に耳を近付ける。

 

「つまりあなたはただの兵器でありながら人並みに生きることを望むのね?」

 

「うん、せっかくの命だもん。私のために使いたい。普通の人みたいに長生きして幸せを掴みたい。」

 

カフカの問いにAR-26710は囁くように弱々しくも強い決意を感じさせる声で答えた。

 

「長生きしたい…ね。ねえ、お嬢さんあなたは死ぬことは怖い事だと思う?」

 

「え?それは当然怖いよ。だって死んだら真っ暗なんだよ。」

 

カフカによる唐突な質問にAR-26710は戸惑いながらも真剣に答えた。

 

「ふーん、真っ暗なのがそんなに怖いのね。やっぱり()()()()()()。死ぬのが何で怖いのか。」

 

「え?」

 

カフカの言葉に困惑するAR-26710を無視してカフカは更に言葉を続ける。

 

「ねえ、お嬢さんここにあなたが大切にしているものがあるとするわ。それはペンダントでも指輪でも何でも良い。もしそれが誰かに奪われて壊すと脅されたらあなたはそれに恐怖を感じるかしら?」

 

「え?ええと、それは大切にしているものだから壊して欲しくはないけど、別に怖くは無いかな。」

 

「…そう()()()()そう答えるのね…。ねえ、命を落とすのと大切にしているものが壊れるのこの2つの違いって何?どう違うのかしら?物が壊れるのは怖く無いのに人が死ぬのは怖いの?何で?」

 

カフカはAR-26710が出した答えが気に入らなかったのか息つく暇もなく早口で捲し立てる。

 

「え?え?そんな事言われてもアタシには分からないかな…。そう言う哲学的な話ってあまりしたことも聞いたことも無かったから。」

 

「……そう、ごめんなさい。少し熱くなってしまったわ外で頭を冷やしてくるわね。」

 

「う、うん行ってらっしゃい…。」

 

会話を一旦切り上げたカフカは外に出るために扉を開く。

すると今まで二人の会話を扉に張り付いて聞いていた俺達はバランスを崩してカフカの前で倒れてしまう。

 

「「うわ!」」

 

「…あら、盗み聞きなんて相変わらず趣味が悪いわね。」

 

俺達が盗み聞きをしていた事を知ったカフカは今までに無い程に鋭い眼光で睨み付けてきた。

 

「…カフカ。」

 

「悪いけど今の私はすこぶる機嫌が悪いの。だから話掛けないでちょうだい。」

 

そう言ってカフカは部屋を出てどこかに消えていった。

そんなカフカの姿が俺には何かに焦っている子供のように見えた。

 

「エリオ、認めるよ。」

 

「ん?」

 

「俺はカフカを全く分かっていなかった…いや、分かろうとしなかった。」

 

さっきのカフカの様子を見て分かった。

あいつは葛藤しているんだ。

手探りで自分の心の空洞を埋めるピースを探すために。

 

ゲーム本編ではカフカが星核ハンターになったのは生まれつき恐怖を知らない自分に変革をもたらすためだと言われていた。

そしていつかカフカに変革をもたらす鍵と成ると言われているのが主人公だ。

だが、この世界では俺がこんなだから、カフカは本当に俺と言う主人公が自分に変革をもたらしてくれるのか信じられなくなったのだろう。

 

そうだ全て俺のせいだ。

俺の存在がカフカをあんなにしてしまったのだ。

だったら俺は自分が犯した責任を自分で取らないと行けない。

 

「エリオ、カフカが心から望む物はなんだ?」

 

「…生まれつき恐怖を知らない彼女自信が恐怖を知り、それを切っ掛けに己のアイデンティティに大きな変革をもたらすこと。」

 

「なあ、エリオ少し…いや、かなり脚本の内容を前倒しにしちまってもいいか?」

 

俺は新たな決意を胸にエリオに向かって不適に笑うのだった。

 

 

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