伯方ノ島天狗   作:タケニシ大佐

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第11話

「こちら叢雲、針路及び艦隊に問題なし。引き続き警戒を厳とし目的地に向かう。」

 「こちらCIC、了解。引き続き警戒せよ。」

 太平洋沖某所

 演習艦隊は豊後水道を南下し正午を過ぎようとしていた。各員は戦闘糧食で軽く済ませ警戒を厳としていた。

高雄「今のところ敵は居ないようね。漣、食事が終わったら見張りを交代してくれないかしら?」

漣「もち!」

 口がリスの様に膨らんで美味しそうに食いながら右手でgodサインを送った。

吹雪「皆さん、まもなく指定海域につきます。」

西部「よし、各員戦闘配備!対空・対潜を厳となせ!針路このまま単縦陣で突入する!」

 13:35、演習部隊は指定海域にとつにゅうした。

 

 少し前に遡る。村上と西部は艤装室で使えそうな予備艤装を手分けして探していた。型は緊急時にいつでも使えるように整備が施されていたが、殆どは何十年も使っていて、整備してもまともに使えないものが多くで処分待ちが半数であった。その中から体格とギリギリ使える艤装を見つけ出し、鎮守府内の整備工場に持っていった。

西部「細田整備長お疲れ様です。」

細田「お、どうした?そんな古いの持ってきて」

西部「いやぁ~ちょっと建造中の艤装が諸事情でえんきされてまして.....」

細田「ほーん、で、その艤装を整備してできるまでこれを使うと...」

西部「まぁ、そんな所です。」

細田「まぁ任せとけ。使えるように完璧に直してやる!」

西部「ありがとうございます。助かります!」

 細田に艤装を手渡し舐め回すように眺めた。村上が疑問に思い問いかけてみた。

村上「細田整備長、どこか不審な点でも?」

細田「いや、懐かしいなと思ってな。提督ハン、よう持ってきたな。」

 すると細田は艤装について語り始めた。

 「もう三十余年前の話になるが、この艤装は俺がまだ新米の時初めて整備を任されたものなんだ。この艤装を付けていた娘は今はやめて遠い所に行っちまったがねぇ。だけど今もよぉ覚えとる。お前みたいに優しくて元気でちぃとうるさいけど、誰よりも優れ正義感が強かった。」

 するとふっと顔を上げて西部の方を見つめた途端にその娘の幻覚が現れ、思わず涙をこぼした。二人はあたふためいていたが、涙を拭き取った細田はニッコリして「しっかり直して良い成果出せるようにしたるからなぁ!」と意気込んだ。二人も思わずニッコリした。

 その時、ふと艤装の左端に文字が書いているのを発見した。経年劣化で削れて消えかけていたが、「たかの」と書かれていた。細田に聞いてみた所「名の元は和歌山の高野山が由来らしい。噂だがこの名は彼女が直々にその時の司令官に提出した名前らしんだが詳細は謎だ。これに続いては何だがー」

西部「俺みたいに潜在能力の持ち主....かぁ~って言われてもなぁ〜、俺も無意識で発動してるもんなぁ〜。未だに教育隊のグラウンド穴空いてるらしいし....とりあえず【伝説の工作員】に検査してもらうかぁ〜

 すると突然今まで反応がなかったレーダーに影が映る。西部は早速CICに連絡する。

西部「こちら演習艦隊旗艦西部!十時の方向、距離5000、敵艦隊と思われる艦隊をレーダーに捕捉。戦闘配備につく!」

  「こちらCIC、了解各員戦闘配備!」

  各艦とCICに警戒アラートが鳴り響く。そんな中村上から一本の無線が入る。

  「村上より旗艦西部及び各艦へ。以後の通信でやり取りする場合の名は(たかの)とせよ。以上」

 西部は少しためらったが、了承した。

大淀「村上司令、どういうことでしょうか?」

村上「本名じゃ不格好でしょ?それに、司令官にはこの名にふさわしい理由が後々わかる。」 

 大淀は余り納得していなかったが、司令が言うのならと振りをした。

吹雪「たかの......さん?これからどうします?」

  一同が命令を待つ。一息ついた瞬間空気が変わった。どこか重く、熱く、殺意もありつつ清々しい空気だ。そこで一つの命が下った。

  「旗艦....最大。敵の射程範囲内になる前に漣・吹雪は別行動で左右から端の敵の横腹を突け。......俺含めた残りは真っ直ぐ突っ込み敵3隻を抹殺する。絶対深海に返すな。」

 一同は今までに味わったことのない恐怖に襲われ震えが止まらなかった。まるで天狗か鬼に初めてあった子供のようになっていた。(たかの)の低いゴーサインで全員が我に戻り漣・吹雪は早速取り掛かった。

吹雪「漣先輩!なんですか今の!?」

漣「分からない。何年も一緒に活動してきた仲だけど今まで味わったことのない御主人様のオーラ。あれは......

漣たちが知らない裏の姿.....!」

 吹雪は動揺を隠せず目ががん開きで中々閉じない。

 初陣は、まさに神がかっていた。吹雪も叢雲も口を揃えて「あの日のことは忘れたくても忘れられない時間だった」と後に語っているここに、後に伯方ノ島天狗と恐れられた艦の歴史が幕を開けた。

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