田舎地方のカフェマスター   作:梅雨空 蒼穹

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第1話 お急ぎはおやめ下さい

(どうして……こんな事になってしまったのでしょうか)

 

笑顔を貼り付けたまま缶コーヒーに口を付けるカオル。

 

隣には目の前にあるPCに流れる文章に笑いながら雑談をしているサロッサ。

 

こうなってしまったのは、およそ数時間前に遡る……

 

 


 

 

やすらぎカフェの店内には穏やかなジャズが流れ、カウンター席にサロッサが座り、カウンターの向こうから珈琲を淹れたカップを提供するカオル、そしてサロッサの隣に浮かぶシャンデラ。

 

何時もどうりの2人と1匹しか居ない店内、最早貸し切り状態である。

 

カップに口を付けながら店内を見渡すサロッサ。

 

カップをソーサーへと静かに置くと、サロッサは口を開く。

 

「ますたーってさ、もっとお客さん来て欲しいとか思わないの?」

 

「思いますよ、繁盛させたいですから」

 

「広告とか出してるの?ますたー」

 

「やすらぎタウンとサレットタウンに広告は出してますが……中々来てくれる人は居ませんね」

 

「ますたーのコーヒー美味しいのにね、シャンデラ」

 

「デラ(ね)」

 

「まぁサレット地方の人達は基本甘党ですし、大人数で色々やってる方が楽しい人が多いですからね、それに観光客の人達もやすらぎ温泉や、やすらぎスポーツセンターが目的で来ますから」

 

「じゃあSNS使って告知していけばいいんじゃない?」

 

「……SNSってどう使えばいいか分からないんですよね、ネットの方々に悪い印象を与えてしまうと一瞬で炎上まっしぐららしいじゃないですか」

 

「まぁ……うん」

 

「デラッシャ(SNSってそんな怖いんだ)」

 

「だからSNSには手を出していないんですよねぇ……シャンデラ、そろそろメガストーン汚れてきたので少し貸してください」

 

「デラ(はい)」

 

シャンデラからメガストーンを受け取り、ウールーの羊毛で出来た上質な布を使って磨いていく。

 

サロッサはうんうん唸り、何かを考えているが、カオルはそんな事を気にすること無く、眼鏡を掛けてしっかりと磨いている。

 

サロッサは何かを思い付き、ハッとした顔になる。

 

「ねぇますたー思い付いた……あ、駄目だ聞こえないモードに入っちゃった」

 

「……ねぇシャンデラ、ますたーってああなっちゃったらどんぐらい掛かるの?」

 

「デラッシャ(今回は20分位かな)」

 

「今回は?じゃぁ前はどうだったの?」

 

「デラ(前は2〜3時間位)」

 

「なっが、よくそんなに集中力続くね」

 

「デラ(トレーナーなりたての時から凄い集中力だったから余計ね)」

 

「へぇ〜」

 


20分後

 

メガストーンを回して確認し、眼鏡を取り外す。

 

「シャンデラ、磨き終わりましたよ」

 

「デラッシャ(ありがと〜)」

 

「ますたーますたー」

 

「どうしました?」

 

「私の配信に出ない?」

 

 

……

 

………

 

「はぁ?(はぁ?)」

 

「うわすっごいマヌケな顔してる」

 

「配……いや、え……何故そげな事を」

 

「ますたーはカフェを繁盛させたいでしょ」

 

「えぇまぁ……そうですけど」

 

「だから私の配信に出て告知しちゃえばいいんだよ!」

 

「……いや私馴染める気がしな「それじゃあ家で待ってるから!」人の話聞きなさ……行っちゃった」

 

サロッサが通った後にゆっくりとドアが閉まり、ドアベルを静かに鳴らす。

 

会話が無くなった店内には、先程とはジャンルが変わったジャズが流れ始め、グランドファーザー・クロックの秒針が細かな音を奏でる。

 

「デラ(どうする?)」

 

「どうする……と言われても、正直断れる理由言っても強行されるでしょうし……行くしかないですかね」

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