助けて!ケモナーが好きそうな獣人(ゾナウ族)に転生したけどなんにも覚えてないよぉ!   作:ハチリ

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ゾナウ族の主人公!記憶喪失(ということにすら気づいてない)!相棒には例のあのゴーレム!という役満
そのうち設定がもっといろいろ出てくるはず


これがゼルダの伝統的なスタートなんすか?

目が覚めると、獣人になっていた。目とか顔とか耳とかの形状的に、ライオンとか肉食動物じゃない、どちらかというとヤギやヒツジやウシや、あのあたりの草食動物っぽい顔だった。

 

意味がわからないにも程があって、私は薄暗く、冷たい場所で目を覚ました。斬新な異世界転生だと気づいたのは、自分が獣人っぽくなっているからだ。

鏡なんてないんだけど、体の感覚も違うし、触ったところ顔の形状もびっくりするほど変化していた。いつのまに。

 

導入を端折りすぎて随分雑になったラノベ感がある。普通に生きて死んだ記憶しかないけども。へんてこな場所でどう考えてもファンタジーの住人になっているということは、つまり異世界転生以外に何も考えられん。

 

となりにはゴーレムがいた。緑色っぽい、石のような……鉱石でできた自立式のからくりだ。彼だか彼女だか知らないけど、そいつは私とほぼ同時に目を覚ましたようで、それまで二人しておねんねしていたらしい。なんでかは知らん。わからないことしかない。

ツタや苔が這い回った、石造りの台に、私たちは寝ていたらしい。少し狭い、どちらかというと通路のような空間だった。どう考えても開けてくださいとアピる宝箱みたいなやつがあったので――開けてみると、中から布が出てきた。

 

しかし布というには肌面積が少なすぎる。胸とか腰回りは隠れるので、一応服として機能はしていそうだが、お腹とか背中とか全然隠せていない。足もショートパンツみたいなのに、ドレープのある白いスカート?的な布を巻いて帯で留めるスタイルだが、太ももからがっつり見えている。だが探し回ったところでこれ以上に服は見つかりそうになかった。痴女じゃないけど裸よりマシだと念じて着ることになる。

 

「なんだコレ、トライフォース?……まじ?」

 

服を着る過程で、衣装の帯部分や、装飾に聖なる三角形があしらわれているのに気づき、隣のゴーレムを見やる。彼は彼で別に服を着ていた。紺のマント付きの外套に、白い……ローマとかギリシャとかの人が着てそうな、古代の衣装。トーガというよりは兵士が着てそうな丈の服。

 

おい、もしかしてゼルダか?

ゼルダなのか?ここ?

 

 

しかしブレワイでゴーレムなんて見たことないし、過去作でもこんな奴が登場していた記憶がない。いや、ブレワイしかプレイしたことなかったけど。

ちまちま解説動画や実況プレイを見ていた時期もあったのに、このゴーレムのようなデザインの輩を見たことがなかった。

 

疑問は解決しないので、一度置いておくことにする。

この場所がどこなのかはわからないが、いったん出口を探し求めることにした。

 

「本当何だよ……こういう時ってアレじゃない、もっと幼児の時に思い出すとか、色々あるだろ」

 

ぶつぶつ文句を言いながら、張り巡らされたでっかい木の根のようなものの、隙間をくぐる。なかなか通路は長く、信じられないことに、途中で石をよじ登ったり、水に飛び込んだりしなければならなかった。異世界転生したおかげか身体能力は上がっており、初めはおっかなびっくりだったが、割とすいすい動けることに気づいてからはテンションが急上昇。

飛び込んでくださいと言わんばかりの飛び込み台や、登攀するしかない大岩は、この通路を設計した奴はフィールドアスレチックでも作ろうとしたのか?という疑問さえ湧かせてくる。でももともとはちゃんと移動できそうなところが壊れてこうなったっぽいし……服が濡れて気持ち悪いが仕方ない。

 

一番最後、切り立った崖のように通路が崩落してしまった場所では、壁伝いになんとか下まで降りることに成功した。ゴーレムはゆうゆうと飛び降りていたが、お前のような耐久力は私にはない。

 

明かりが漏れている入口から、外へと踏み出す。

 

「あっ……ヱ?」

 

しかしどうだろう。そこには気持ちの良いくらい穏やかな風が吹き、陽が差し込んでいるのに、気分は恐ろしいほど凪いだ。

 

雲が、はるか下の方に存在している。

 

「うっっっっそ、うそ、え、うそうそうそうそ、冗談きっついって」

 

どんな原理でこの空に島が浮いているのかとかどうでもよくなるぐらい、すごい状況だった。

下の方にどうやらまだ島が浮かんでおり、飛び込めば着水する具合のようだ。けれど私は、高所から水に飛び込んだところで、それはもうコンクリートに叩きつけられるのとあまり変わりないと、なにかで読んだのを覚えている。高すぎてもはや地面とか水面とか関係ない。飛び込めば間違いなく体がぐちゃっと潰れる高度である。

 

「どうしよ、詰んだ」

 

ゴーレムが、きゅぃぃ、と独特の機械音のような音を発した。私には声のように聞こえた。彼はヒーローロボみたく部品を移動させ、変形すると、飛行機みたく浮き上がった。

 

「……」

「は?何その機能……えっ、乗れってこと?」

 

眼の前で自然に特撮もの的な現象が起こったので、この世界をファンタジーだと認識していた頭が混乱する。でもゼルダってこういうところ最近めちゃくちゃ顕著だからさ。仕方ないよね。三角形が3つ並んでいる紋様なんて割と汎用的だと思うのだが、頭は完全にゼルダと認識している。おそらくそこまで間違いではないはず。

 

その場で渋っているとゴーレムがぎゅいぎゅい言いながら抗議しだした。えっでも乗りたくない……乗りたく……とても落ちそう!

でもこのままこの場所にいたところで結局死ぬ運命には変わりなさそう。最悪の二択を突きつけられており、数秒の躊躇の末、ゴーレムの背に乗り込むことにした。しっかり捕まったが振り落とされる可能性は十分ある。

 

私の知ってる物理法則じゃ絶対飛べない構造のゴーレムが、飛び降り――翼に風を受けながら飛んだ。

 

「ひっ」

 

一瞬の浮遊感がめちゃくちゃ怖い。死がすぐそばに迫ってくる感じがする!

ゲームじゃゼルダに限らず空を飛ぶなんてよくあるが、こんなにも恐ろしい現象なのだと改めて気付かされた。ジェットコースターでさえ乗りたくない人種だしな。そりゃ命綱なしで飛んだら怖いに決まっている。

 

……と思っていたものの、すぐにネガティブな感情はしぼみ、あっという間に凪いだ気持ちになった。自分でもおかしいと思えるぐらい恐怖を感じない。どういうことだよ。思い当たる節といえば異世界転生特典的なものだけど。こんなところで恐怖を緩和する措置つけるぐらいなら最初から地面にスポーンさせてくれ。

 

飛んでいる最中、いくつか島を見かけた。大きな池が丸ごと浮かんだ島とか、明らか人工物だろって感じの円形の島とか。ゼルダで空に浮かぶ島といえば、スカウォとか?でもやったことないからあんま詳しくない私さえ、スカウォじゃないだろってわかる。ロフトバードいないし……なんかダチョウみたいな飛べなさそうな鳥はいるが……。

 

ゴーレムは着陸した。

 

「こんにちは、リゼル様。お目覚めになられたようでなにより」

「うわっ喋ったァァ!?いや喋れるんか!?!」

 

また違う形のゴーレムがいる!私にはわかる、なんでかわからんがこいつも絶対ゴーレムだろ!隣にいるのとはかなり異なる形状をしてるけど、材質全く同じそうだし!

 

「ねぇゴーレム……あ、ゴーレムが二人いるとわかりづらいか。じゃあゴーレムから取って『レム』って呼ぶね。他に名前があるかどうかしらんけど便宜上そう呼ばせてもらうわ」

 

たった今私が雑に名付けたからくりは頷いた。言葉は発さないみたいだけど知能はちゃんとしている。随分安直な名前だけどあまりひねる頭を持ってないので許して。

 

「てか、リゼルって……何?もしかして私の名前?」

「そうですが」

 

なんでこのゴーレム私の名前知ってるんだよ。そして誰がつけたんだよ名前。

と感じたがよく考えてみれば、転生したら水先案内人みたいなのつけてくれる特典があっても良いのでは?つまりこのゴーレムがチュートリアルね、理解した。

ネーミングはおそらく神とか私を転生させた上位存在的なアレがやったんだろう。不可解なことは多いけど多分そう。「あああ」とかいう小学生が5秒でつけた名前じゃないし、いっか。

 

「あのぉ、ここってどこですか?なんか地面がめちゃくちゃ空に浮いてるけど」

「ここは始まりの空島です。この場所は時の庭といい、はるか昔、王国の祭事を執り行っていました。今では訪れるものもいなくなってしまいましたが」

「王国?王国って……ハイラル王国?」

「いえ、それよりはるか昔のことですね。ちょうどあなたのようなゾナウ族が、この空で栄えていた時代のことです」

「ゾナウ族って何それ知らん」

 

ブレワイにそんな種族いなかったくないか?え?種族っていえば、ハイリア人に、ゲルドゾーラゴロンリトの5つじゃない?あれ、シーカー族ってあれ種族だっけ。種族か?ハイリア人とあんまり変わらないっぽいけどな。

 

「ゾナウ族ってなんすか」

「かつて空で栄え、高度な技術を持った種族です」

「ほぇぇ」

 

ブレワイじゃ全く明かされなかった話だ。裏設定とか?そういえばゾナウ遺跡群みたいなの、フィローネあたりにあったような。

いや、てか続編のティアキンでそんな感じのことがっつり色々描写されたじゃないか。

あれ?ティアキン?私の考えるゼルダって二連作じゃん、なんでブレワイだけで考えてたんだ……?

 

一瞬ひっかかりを覚えたものの、首を振った。

 

「こちらをどうぞ」

「なにこれ」

 

ゴーレムは2本の棒を差し出した。装飾がついているけれど何の用途かわからん。

 

「そちらはゾナニウムの剣と、光の剣でございます」

「ひかりのつるぎ」

 

私は光の剣、レムはゾナニウムの剣を受け取っていた。クソ重要アイテムそう。なんで私に渡すんだよ。まぁあっても損はないか。

ゾナニウムの剣や光の剣は、握ると光る刃が出てくる安心設計らしく、普段はちょっと変わったただの棒にしか見えない。持ち運びやすくて何より。腰のベルトに「差してくれ!」と言わんばかりのそれっぽいホルダーがあったので、固定することにした。

 

「なんかお腹空いたな。君ってなにか食べたりするの?」

 

ゴーレムは首を振る。どう考えても消化する器官なさそうだしそうか。

目を覚ましたばっかりで意識の範疇の外にあったけれど、腹が減った。胃のあたりが締め付けられるような空腹感がある。結構腹減ってない?どんだけ寝てたんだろ。

転生するならもっといい感じの場所にスポーンさせておいてほしかった、とは何回も思ったことだが、たぶんトライフォースに善悪区別機能をつけるアプデをしない女神なんてろくでもない。私を転生させた神が誰だかしらんものの、女神ハイリアはそこまで人間に寄り添ってくれるもんじゃないと、ストーリーを見るだけでわかるぜ。

 

周りを見る。

そのへんの樹木の根もとに生えてる空色のキノコは――確か、これ、ソラダケって言ったな。ティアキンはいつプレイしたか忘れたが、むしろブレワイのほうが覚えてるぐらい記憶が曖昧だった。ハイラルダケみたいにオーソドックスなキノコだけど、それよりハートの回復量少なかったんだっけ。

あ、こっちにはガンバリダケある。明らかに毒持ってそうな彩度の高い黄緑色してるのに、これで人間にはいい効果をもたらすんだから、毒と薬って紙一重。

しかし、火を起こせそうなものがなかった。

 

「鍋とか……贅沢言わないけど焚き火とか起こせるやつほしいよね」

 

するとゴーレムは無言でどこかの方向を指差す。そのうえ歩き出したので、ついてこいということだと解釈し、私も後をついていくことにした。

 

鍋の場所知ってるのかな?マップなんてないまま歩き回るのは随分こころもとないので、頼もしい限りだけども。途中またゴーレムに乗り、飛んで島を移動。

無事に調理鍋のある場所についた。周りに文明の跡を感じる建物らしい残骸があって、そこにもまたゴーレムがいる。

 

「おや、リゼル様。調理鍋をお使いになりますか?」

「あ、ハイ。使わせてもらいます」

 

こいつも私の名前知ってるんだ。へぇ。私は目覚めたときに知らなかったのに。

 

しかしキノコってあんまりカロリーないよな。食べてもお腹すぐに減りそう。そう思ったものの、近くにあった池に魚が泳いでいた!魚がいる。ブレワイじゃ出てこなかったけど、ハイラルアロワナだっけ。栄養満点な魚だ。

 

でも釣り竿もないし、そもそこ割と底が見えるような浅めの池だから、これは素潜りして取ったほうが早いはずだ。

私は池のそばで恥もへったくれもなく服を一旦脱いだ。この場所には私以外に誰もいないし、そもそもリト族とかゾーラ族とか服を着る文化がないので、ゾナウ族が裸でも多分大丈夫……だと思いたい。私の着てた服は誰が用意したかしらんけど、布面積だいぶ少なかったし。

 

「よっと」

 

足先に触れる水はあまり冷たくなかった。気候は寒冷じゃないのがよかったな。

 

そのまま泳いでいって、以前じゃ考えられない身体能力で魚を掴む。とったど~!尖った爪が魚に食い込んでガッチリ掴める。水揚げされたハイラルアロワナはぐねぐねと身をよじったが、全く脱出することは敵わなかった。

 

3匹ぐらいハイラルアロワナを取ったら、肌が多少湿っているまま服を着た。この魚とキノコを料理する。とはいえ、そのあたりにある木の枝で刺して、火の周りに並べただけなので、ほぼ丸焼きと相違ない。考えたけど直火のほうが火が早く通りそうだったから。仕方ないよね。鍋は結局使わなかった。

 

魚ときのこに火が通ったので、そのまま豪快にかじりつく。うん、素!素材の味がする……ってやつ。腹が減ってるからこれでも結構美味しいかな。欲を言えば塩がほしかったが、仕方がない。空腹だったせいか、わりとすぐに食べ終わってしまった。

 

私が空腹を満たすための行動をしている間、レムはいちいち私にくっついてきてじっと私の方を見ていた。なんか見られているとやりづらい。今更だけど。裸を見られたことさえあんまり気にしないけど。

 

「なんでそんなに私の方を見てくるの?」

「……」

 

レムは木の枝で、地面になにかガリガリと描き出した。

少し堅めの土がえぐれて、線ができあがっていく。その線は意味のある象形をなした。

 

「なにこれ。エジプトの壁画みたいな……え?何これ。人物?人?」

「……」

 

彼は器用に、地面へいくつかの絵を描いていた。大雑把な線だったが、耳が長いことはわかる。明らかハイリア人ではなく、獣っぽい。

 

「あ、これってもしかしてゾナウ族?へぇ。……で誰?君の知り合い?」

「……」

 

機械的な手でその絵を、レムは一旦消した。そして、また何か描く。今度は先程のよりだいぶ邪悪そうだ。

 

「これ、魔物?こんなのいたっけ。人型の魔物ってあんまいなかった気がするけど」

「…………」

 

すると彼はとたんに、身振り手振りで何かを伝えようとしてくる。でもわからんものはわからん。だいたい、画のタッチがあまりにも壁画だし。2次元アニメみたいな作画だったらわかったかもしれないけど、残念なことに「悪そう」「怖そう」「壁画にありそう」以外にわかる要素はない。

 

しばらくすると諦めが勝ったのか、じつに人らしい仕草でうなだれた。君、表情が変わらん割に感情の表現豊かな方だよな。

ちょっと怒っているのか小突かれた。いてっ。

 

「いやごめんて」

 

彼は文字が書けないように作られているので、文章で伝えてもらうことはできない。やれる範囲でなんとか頑張った様子は見て取れる。でもどうしようもないんだ。

 

レムはすっくと立ち上がった。私の手を強く引っ張り始める。

 

「え?ちょ、何?レム?おい、レム?」

「……」

「え、ねぇちょっとアレすごいエネミーぽい感じの……ゴーレムだけど……敵じゃない?!敵だよなぁ!?!おい!!!」

 

こいつ力つよ!!!!

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