助けて!ケモナーが好きそうな獣人(ゾナウ族)に転生したけどなんにも覚えてないよぉ! 作:ハチリ
「な、何だよぉ、全く」
レムは死んだというか、倒した同胞?の部品を回収している。同じゴーレムのくせに容赦ねぇじゃん。角とかコアとか、彼らの遺品といって差し支えないのに素材にする気しかないだろ。あと武器も回収していた。連れ回された挙げ句、私も戦う羽目になったので、こいつの肩に一発ぐらい食らわせようと思ったが、殴った拳のほうが痛くなりそうなのでやめた。
「私が戦えなかったらさぁ、今頃は新鮮な死体がここに転がってたんだけど?!わかるか!?!」
彼は不思議そうに首をかしげた。こっこいつ……!
一応は都合のいいことに、転生特典的なもので身体能力が強化されているのか、不思議と戦えたわけである。手続き記憶とでもいうべきか、いざその時になるとどう体を動かすべきかわかるアレだ。こんなわかりづらく特典つけなくてもいいんだけどな。やったのが女神ハイリア(暫定)だしな。
連れ回されるまま、ゾナウギア製造機のある場所にやってきた。彼が持ってきた素材を入れると、ゾナウギアがゴロゴロ出てきた。これランダムだったよな?内訳は火龍の頭、翼、扇風機、携帯鍋。素材をたくさん入れるとアイテムがより多めに出てくるシステムを採用しているらしい。
「ソシャゲのガチャじゃん」
ランダム要素満載なのはシステム的にやばくね?と思うが、ゾナウ人って実際このゾナウギア製造機を使ってゾナウギア作ってたんじゃなくて、あくまでこれは娯楽的なガチャガチャみたいな扱いだったのでは?生活に使うゾナウギアはまた別に作るところがあったんじゃ?
って誰かが言ってたのを覚えてる。なんだっけ、そういうティアキンの考察記事だか、なんだか。忘れたけど。
ゾナウギア……そうだ、だんだん思い出してきた。異世界転生を雑にかまされたせいか、それともプレイしたのが昔だからか、ティアキンの記憶はかなり曖昧だ。言われれば「あーそういうのあったあった!」ってなることが多々存在する。
ゾナウギアを使うにはバッテリーが必要で、バッテリーは……
「コレかよ!?」
私が前衛的な装飾の一部かなにかと勘違いしていた、腰につけたやつ。どう見ても重要そうだったし、邪魔だからといって置いていくわけにもいかず、渋々身につけていたわけだが。
ゾナウギアを使うためのバッテリーじゃん!しかも最大まで拡張されてる。これも特典なのか?異世界転生あるあるの説明がなかったからわかんないよ!
レムの方はバッテリーが内蔵されているのか、バッテリーはつけていない。
空島の兵隊ゴーレムを(ゴーレムにも色々あって、確か友好的なNPCみたいなのは執事ゴーレム、敵対するやつは兵隊ゴーレムだったはず)倒し、ひとしきり武器を剥ぎ取ったレム。どう見ても多分一番強い段階の武器だ。ゾナニウムの剛大剣、剛槍……にゴーレムの剛弓。剛剣はゴーレムからもらったやつだった。
確かに私たちの戦った兵隊ゴーレムはどれもあからさまに強そうで装飾がいっぱいあった。道理でだいぶ疲れるわけだ。
あと、いくぶんか、りんごやケモノ肉などの食料を回収し、携帯してたバッグに入れる。ちなみに基本は四次元ポケット仕様で、ちまっこいポーチに無限の空間にすべてが入り込んでいくスタイルだ。これが文明の叡智なのかゲームの仕様なのかはわからない。
途中で宝箱をいくつか見つけたが、その中に古ぼけているものの全然使えそうな外套が入っていた。これももちろん持っていく。誰の所有物だろうと宝箱に入ってる時点で、開けたやつのモンでいいだろ。2つ分あったが、レムと私の身丈にちょうど合うし。
ゾナウ文明製の意匠らしい仮面もあったけど、とにかく持っていけるものは持って行こう。なんかの役に立つかも、最悪売ってもいいし。
それから、電気の実やカガヤキの実、炎の実や氷の実など、属性攻撃ができるアイテムもレムは抜かりなく採集する。それにしてもこれだけ集めて何をする気なんだ。
「……君、まさか地上に降りる気?」
ちょーっと、推論でしかないと捨てたかった感じの考えが当たりそう。
彼は頷いた。
「早くね?もうちょっとゆっくりしてこうよ。地上って絶対人いっぱいいるじゃん、絶対!君も私も目立ちまくって最悪村八分というか……だいぶ良くないことになるって」
ゾナウ族はすでに私が最後だし、レムはもちろん強くて空も飛べる感情豊かな二足歩行人型ゴーレムなので、――
ん?あ、私ゾナウ族……ゾナウ族なんだっけ!?しかも最後の。
よく考えたらそうか、よく考えなくても、そうだったんだけど、いや、そっか。起きてからしばらくは自分がケモナーの好きそうな獣人に転生したことしか知らなかったけど。何?一体どうして突然知識が生えてくるんだ。そういえばそうだけど、やはり寝起きで色々忘れてるタイプなのか。ソフトな回生したてリンク状態なのか。一切の前触れなく思い出し始めるんだから困る。
とっ散らかる思考は強制的に遮断された。何故って?レムがまたあの姿に変形し始めたから!飛行形態と呼ぶべきなのか、鳥のようなスタイリッシュでありながら、もとのデザインを色濃く残したやつ。グッドデザイン賞あげたい。
「ちょ、本当、勘弁してほしいんだけど……」
ぎゅるる、と機械音で返答のように、レムが言った。また乗るのかよ。ここまでに散々乗ったじゃん。しかも今もうそろそろ日が傾き始めてるし、ちょっと勘弁してほしい。
でも今のところ、こいつに置いていかれたら私は生活できる気もしない。何なら空島の移動とか完全に詰みだと思う。だから渋々乗るしかないわけだ。
という感じで乗り込んだは良い。
最初の方はもちろんのこと順調だった。風を切る感覚は気持ちよくて、飛行に対する恐怖はほとんどなくなっていたと断言できる。
だが途中から雲行きが怪しくなる。それはもちろん、レムの挙動が変、という意味で。
「ねぇ大丈夫?!なんかちょっと高度落ちてってるよ!?!待って待って待ってこれ落ちる、墜落する、ほんとに大丈夫じゃないが!?!」
彼の体は徐々に高度を落としていき、それはまるで不具合らしく見えた。実際そうだろう。体のパーツ同士を繋いでいるような、金色の光が、時折弱まるそぶりを見せる。ウッソ、マジでか?!
――結論として墜落まではしなかった。
なんとか地上に不時着できたのが不幸中の幸いといえる。
人のいない森だったことも良かった。周りには多少の小動物の気配ぐらいで、あとは何もない。思い出したように、彼に外套を被せた。鬱陶しそうにするが、我慢しろ。
「流石に髪の毛が光ってるのは言い逃れできないから!私もなんだけど」
ウサギみたいに耳が垂れてて良かったと心底思う。外套を被ってしまえば、他の種族とかけ離れた外見をあまり晒さなくて済むし、なんなら売ればちょっとぐらいお金になるかなって思った仮面も顔を隠すのに役立つ。私もこいつも完全にハイラルに存在しない外見の、なおかつ知性を兼ね備えた存在なので、このまま行軍したら確実にまずい。捕まえられて見世物ルートとか絶対無理。とにかく、どうにか隠せるだけ体を隠したい。
もう一度飛ぼうとする素振りをみせた彼にストップを出す。また墜落されたらたまったもんじゃないって!勘弁して。
彼はどこかへ行きたがっているようだが、それはもう陸路で行くしかない。空を飛ぶより時間はかかるけどたどり着けるよ、きっと。
しかし、まだ問題は存在する。
素足は、まずいのでは……?
ハイラルにはこんな足の種族なんてどこにもいない。足を見られて正体を看破されるなんて日本昔話の狐みたいなことになりそう。これもなんとかしなきゃいけないのか。素手もよくないし、手袋もほしい。絶対人が見る箇所だからな。
……ポーチの中を漁るとルピーがあった。え、結構ある。
「多少ならごまかせるかな」
どう考えてもいい策があまり思いつかないが、仕方ない。
この森には人通りがないけど、手袋とか靴とかを買うには、確実にこの装備で、人と接触しなきゃいけない。
空の上から見てわかったことだが、今のハイラル100年前時空だわ。少なくともハイラル城は健在らしいし、集落や町と呼べるような大きなコミュニティも、ハイラル平原を中心に沢山広がっている。びっくりだよね。ブレワイというか、もしくは厄災の黙示録?世界観がどれなのかわかんないけど、普通に英傑とか生きてそう。
町が滅びてる方が良かったかと言われればなんとも言えない。町がたくさんあるならそれだけ人目も多くなり、私たちが異端扱いされる可能性もデカくなるわけであり。ただ、普通に生きていく分ならこっちのハイラルのほうが便利そうではある。
幸運なことに、この場所は宿場町の近くらしい。そろそろ陽が沈みかけており、ネオン灯なんて存在しない暗がりなら、多少手足が見えていても押し切れそう。
歩いて何十分か、町につく頃には完全に日が落ちていた。好都合。
舞台が舞台だし、夜になったらあまり火を掲げることはしないから、本当に暗い。いい感じに姿が見えなくって結構だ。宿場町といっても中心部より少し外れた、より人気のない場所だから、もう人通りなんてないに等しかった。
実際の中世ではおそらくそんなことなかったはずだけど、ここはハイラル。ちゃんと店に何を売ってるかが外から見てわかる。店先に看板も掲げられてるし。ちょうど、靴と帽子のマークを見つけた。店にはぼんやり明かりが灯っている。まだ中に人がいそうだった。
「あの~、ごめんください」
何度か、木製の古びた扉をノックすると、ドアノブがきしみながら回る。
中から一般的なハイリア人の、中年男性が顔を出した。顔つきは明らかに怪訝である。当然だね。
「なんか、用か」
「ブーツと手袋が欲しいんです。売ってますか?」
「……中入れよ」
そのまま、多分奇妙極まりないように見えているふたり組だろうが、店内に通してくれた。彼がおそらく店主なのだろうが。
「ホントはもう店じまいするような時間だからな、さっさとしてくれや」
狭めの店内には、いくつもの帽子や靴が売っていた。被服全般は売っているらしく、暗い店内で目を凝らすと、靴下らしいものや革の胸当てのようなものも陳列されているのがわかった。
とりあえず、早く出たかった。ちなみに、ポシェットの中には最初からルピーが入っていた。数えてみたら1500ちょっとで、そこに関してはかなり富豪である。ただ物価が中世だから、衣服なんて基本一点ものでめちゃくちゃ高いハズ。できるだけ節約していきたい。
とりあえず、サイズが合いそうな手袋と、靴。それぞれ一人一組ずつを選んだ。多分問題なく入ると思いたい。靴擦れとか怖いけど、試着できそうな雰囲気ではないし。
「これでお願いします」
「合計520ルピーだ」
予想通りこれだけで全財産の3分の1以上は吹っ飛んでいった。
怪しむ視線を背後に感じながらも、店を出る。本当は夜に行動するなんて魔物も出るし良くないのはわかっているけど、まず人目につきたくないよな。靴と手袋を素早くつけると、あっという間に不審者ルックの完成。レムも仕方無くといった体でつけてくれた。どっからどう見ても怪しい風貌の二人組になったけど、珍獣として捕まえられてサーカスに行くよりはマシだからね。仕方ないね。