昔々、あるところに一人の年老いた奴隷騎士がいました。画家のお嬢様も、この騎士をたいそう可愛がっておりました。名誉の品として与えられた赤い頭巾とりっぱな鎧は、たいそうよく似合いましたので、どこへ行っても「赤ずきん」と呼ばれるほどでありました。
ある日のこと、お嬢様は絵画世界を焼きながら、赤ずきんにこう言いました。
「話によると、小人の王はお加減がわるいそうだよ。ひとつ、暗い魂の血をとってきておくれ。絵画世界の切れっ端を持ってね」
そこで、赤ずきんは、輪の都に住んでいる小人の王のところに行くために、さっそく、家を出たのでありました。
吹き溜まりを通っていると、赤ずきんの目の前に、灰の人がひょっこり現れました。吹き溜まりの中には、幾人かの天使とハーラルド戦士が屯しておりましたので、おいそれとは襲えないのでありました。そこで赤ずきんに「どこへ行くのかね」と声をかけたのでありました。
吹き溜まりで灰の人なんかと話をしていては危険なのですけれども、赤ずきんは、そんなことには頓着しなかったので、こう答えました。
「飛び降りろ」
「輪の都は遠いのかい」
と、灰の人は聞きました。お互い亡者なので、会話は成立していませんでした。
「飛び降りろ。死にはしない」
と、赤ずきんは答えました。長い旅と戦いの果てに正気を失った赤ずきんは、
「わしは、こっちの道を通って行くとしよう。お前さんは、あっちの道を通って行くがよい。どっちが早く輪の都に着くか、まあ、やってみようじゃないか」
そう言うと、赤ずきんは、近い方の道を一目散に駆けていってしまいました。
灰の人は、遠い方の道をてくてく歩き出したのですけれども、途中で楔石の原盤を拾いに行ったり、セクシーな砂の呪術師に殺されたり、デーモンの王子に殺されたりして、散々道草を食って遊んでいたのでありました。
赤ずきんは、先に輪の都のフィリアノールの寝床に辿り着くと、彼女が抱きかかえている卵の殻をとん、とん、と叩きました。
「だれだい」
「赤ずきんです」
と、赤ずきんは、しわがれた声で言いました。
「お嬢様の言いつけで、暗い魂の血を受領しに来ました」
小人の王は、少し加減が悪くて、そこら辺を這いずり回っていたのですけれど、大きな声で、
「助けてくれ、フィリアノール!」
と言いました。
「お前の暗い魂をよこせ……」
赤ずきんは、小人の王に飛びかかって、あっという間に、もりもり食べてしまいました。赤ずきんは、他にもそれらしい小人を見つけては、お腹いっぱいになるまで、おかわりを食べました。
遅れて灰の人が輪の都にやってきました。
「だれだい」
「ロンドールの亡者王です。なんとなく暗い魂を受領しに来ました」
「それなら、フィリアノールの眠りを覚ましておくれ」
灰の人は、輪の都の騎士に言われるままに、フィリアノールの寝床まで辿り着き、彼女の抱いている卵を叩き割りました。
そして、赤ずきんの姿を認めると、特に意味もなく裸になって、道中で襲ってきた変な女から奪った狂王の磔を、自慢気に掲げました。
「まあ、おじいさん、なんて太い腕をしているの!」
「処刑人の大剣の必要筋力が19もあるからさ」
「まあ、おじいさん、なんて大きな脚をしているの!」
「捨て身の剣技で飛んだり跳ねたりするからさ」
「まあ、おじいさん、なんで白霊のときより大きいの?」
「それはね、お前を食べるためさ!」
こうして赤ずきんは灰の人に飛びかかったので、取っ組み合いの喧嘩になりましたとさ。