~さくら第二中学校~
一日の終わりを告げるチャイムが鳴り響くと同時に、各々のクラスから生徒が飛び出す。ある者は他の予定に間に合わせるためにいそいそと、ある者は友達と駄喋るためにそろそろと教室を去っていく。それは彼女がいるクラス・2年B組でも同じこと。
「ナツメ!今日空いてる?」
おさげの少女に声を掛けたのは、親友の早希。ボブカットの髪を揺らしながら、そう問いかけてくる。彼女は頭の中で予定を確認して承諾しようとしたが、珍しい来客がいた。
「ナツメ」
「えっ!トウマ!どうしたの、こっちまで来て。」
そこにいたのは、隣のクラスにいるナツメの幼馴染みだった。とはいっても、今のような距離に戻ったのは、ほんの一年前のことなのだが。
「ちょっと伝えたいことがあって。邪魔してない?」
「ううん、全然!……ごめんね早希、そういう事だから..。」
彼女は申し訳なさそうに親友の誘いを断る。早希は二人の様子を見てニヤッと笑うと、ナツメの耳元でささやいた。
「彼といい感じじゃん!付き合っちゃえば?」
「な、何馬鹿な事を言ってるの?!トウマとはそういう関係じゃないから!」
彼女は想定もしていなかったことを言われ、思わず顔を赤くしてしまった。そのせいで、事実なのに説得力がない。
「いいじゃん!トウマ君、イケメンだし」
「揶揄わないでよ!…行くよ!トウマ!」
机の上に置かれていた学校指定のバックをひっつかみ、もう片方の腕でトウマの腕を掴んで、足早に彼女は教室を去っていった。
「ナツメ、最近付き合い悪いなぁ。」
生徒の数が減った教室で、早希は空を見つつそう呟いた。
~桜元町第一小学校~
「なぁ、知ってるか?隣町の廃病院で”出る”ってハ・ナ・シ。」
「ひぃ!」
”普通の少年”である彼は”嫌いなもの”の雰囲気を感じ取って、本題に入っていないのにビビっていた。彼の友達のタンクはそんな彼を呆れたように見ながら、コージに続きを求めた。
「もう、相変わらずだなぁ。で?噂ってどんなのなんだ?」
コージも彼には呆れるが、話が進まないので本題に入ることにした。
「それがさ……。」
「……ぎゃぁぁぁ~!お、俺もう帰るから!」
本題に入りかけたところで、彼は悲鳴を上げて教室から走り去った。教室に残されたタンクとコージは、お互いに顔を見合わせて、
「ソレがケースケだよね。」
と笑っていた。
「ちょっと酷すぎるって。ケースケ君、ああいう話苦手って知ってるのに。」
二人の様子を外から見ていたマナミは、二人に聞こえないと分かっていながら苦言を呈した。
~霧立神社~
「おばば~!」
学校が終わり早くも袴に着替えた少年は、母屋の襖を思いっきり開けた。儀式をするためのものが綺麗に配置されていた。
「おぬしは落ち着け、それだから半人前なのじゃ。」
「痛っ!」
ペチンとアキノリを叩いたのは、ここ・霧立神社を切り盛りする巫女で、有星家随一の妖術師とも謳われる光江。両親を亡くしている彼を女手一つで育ててきたのだから、若干厳しいのは愛情ということだ。彼は叩かれた頭をさすりながら、光江の隣に座る。二人が定期的に行う占いの儀式だ。
「で、結果は?」
如何にもな大きな水晶を覗き込んだ光江は、中々に残酷でそして美しい風景を見た。
「これは!……困難に直面するが、最終的には安泰じゃな。」
「なんだよ、それ~!!」
曖昧な結果しか教えてもらえなかった彼は、不貞腐れて母屋から離れる。探偵団の活動もないため、恐らく妖術の練習をしに行ったのだろう。
「水滴が水紋を作るように、彼の存在は大きな波乱を巻き起こすことになるじゃろう。」
光江は誰にも聞こえない声で呟いた。