密かに動き出す
~No side~
「来たよ、アキノリ・トウマ。」
そう言って、大きな神社の小さなプレハブ小屋に入ってきたのは天野ナツメ。エルダ
「おっ、来たな!」
「遅かったね。」
快活な物言いの有星アキノリと、物静かな月浪トウマ。
アキノリはアニマス
「ちょっと準備に手間取ってね……。この二人が。」
そう言ってナツメは揉めている如何にもお化けっぽい姿の妖怪と、やけに筋肉質な妖怪をにらみつける。ナツメの執事妖怪のウィスパーと、ナツメのナイトを自称するストーカー妖怪・ミッチーことミツマタノヅチだ。
「朝から揉めてたんだよ………。父さん達には見えてないから、収めるのに苦労してさ………。」
そう呟くのは、ナツメの弟・ケースケ。人一倍怖がりなところはあるが、妖怪たちと関わるようになり少しづつ耐性を付けてきた。今ではウィスパーとミッチーの争いに呆れることができるくらいにはなっていた。彼もまた、エルダ魔導鏡を使うことができる人物だ。
「そう言えば、最近怪奇案件少ないよな。」
この四人のリーダー的立場にいるアキノリは、”うすらぬら”を眺めてそう言った。前世から繋がる因縁を解決してから、街で暴れる妖怪の数は減っていた。空亡に対する恐怖が、沁みついたからだろうか。
「まぁそれだけ平和ってことでいいんじゃないかな?」
「へいわ、いちばん!みんな、しあわせ、だぜ!」
トウマがそういうと、赤い小さい妖怪は片言ながらトウマに同意した。この小さい赤い妖怪は、ジュニア。ジバニャンの肉体の一部から生まれた妖怪で、どんな姿にもなれる変身能力を持っている。
閑話休題。いつも通りの光景になっていると、アキノリが使っているパソコンに反応があった。
「ん?”暗闇に紛れるバケモノ”に”時間移動する少年”?」
投稿されたタイトルを読み上げるアキノリ。
「なんか久々に如何にもオカルトっぽい話が来た気がする。」
「それは確かに。」
ソレに乗るように、ナツメとトウマもパソコンの画面をのぞき込む。アキノリは投稿の内容を読み上げ始めた。
「俺は会社員なんだが、最近は残業続きで遅くなることが多かった。一人暮らしなのもあって、夕飯を弁当にしようとコンビニに寄った。店内は普通だったんだが、店の裏路地に高校生くらいのガキどもがたむろっているように見えた。流石に夜遅いんで帰らせようと声を掛けたら……そいつら、人じゃなかったんだ。確かに体も手足もあって、シルエットだけで見たら人間だ。けれど髪の毛はなくて、手足が異様に長くて、しかも肌は黒をベースに色んな色が混じってて、口は口裂け女みたいにデカくて、目は朱く光ってたんだ!流石に恐怖で引き下がったんだが、それを合図だと思ったのか飛びかかってきたんだ!俺は買った弁当手放して、住んでいるアパートに逃げ帰ったさ。」
「私がその少年を見たのは、本当に偶然だったの。気分転換に、桜ニュータウンにあるおおもり山に来ていたわ。そしたら奥の方で、男の子の声がしたの。気になって近づいてみたら、木の幹を削って作ったような棒を握りしめて肩にはマントを巻いて、ランニング一枚に短パン一枚、おまけに仮面を頭につけた、如何にも昭和のヤンチャ坊主がいたのよ。気になって声を掛けると、誰も居ない空間を見てなにか喋っていた。何を話しているのか気になって近づいてみると、頭部に衝撃を受けて気を失ったわ……。目が覚めたらそこには誰も居なくて、地面にへたっぴな文字が彫られてた。
”無理やり眠らせてゴメン。けれど俺は少年ビートを探さなきゃなんねぇんだ。
世界は友達!みんな守るぜ!ガッツ仮面”
って。」
「なんかどっちも、変な感じ。」
ナツメがそう呟くと、トウマは異変を感じた。いつもなら悲鳴を上げて怯えるはずのケースケが、黙りこくっている。
「どうしたんだ、ケースケ?」
「トウマ?……あのさ、バケモノの方なんだけど、ケンちゃんの時に出た奴に似てない?た、確か……」
「怪魔、でウィッスね?」
ケースケの言葉に反応して出てきたのはウィスパー。悲鳴を上げることはなくなったとはいえ、急に現れたウィスパーにケースケは怯えながら返答した。
「う、うん。あの時俺、結構近くにいたじゃん?だから何となく特徴覚えてて……」
「けれどアレってフクロウの吹き矢がないとならない筈じゃ?」
トウマはそう突っ込むが、ウィスパーは淡々と返す。
「いえ、以前話した通り怪魔は人の内なる思いが現れたもの。昔は鬼まろや空亡ウイルスのように実体のある存在だったそうでウィッス。」
「まぁ優先すべきは怪魔の方だよな。じゃあ、さっそく調査するか!」
アキノリは椅子から立ち、声を掛ける。ケースケは相変わらず怯えまくりだが、周りの雰囲気にのまれかけていた。
~××side~
「いててて……。」
何もないところから飛び出してきた少年は、思いっきり頭を地面に打ち付けたのか頭を押さえながら立ち上がった。
「無事か?!」
その少年のもとに駆け寄るのは、少年と同じようにマントを羽織った宙に浮く青い猫だ。
「大丈夫だ、フユニャン。それより……ここは何処だ?」
辺りを見渡しても木ばかり。森の中に迷い込んだ形だが、何処か見覚えがあった。
「……おおもり山じゃないか?ケータと何度か来た。」
「にしては、なんか寂しくねぇか?前来たときはもっと友達がいたはずだろ?」
「確かにな……。」
見慣れた場所なのに、見慣れた光景が広がっていなかった。以前来たおおもり山は
「とにかく、街に出て探してみるか。」
「そうだな。」
小学6年生ほどの彼は、友人を連れて森を出た。顔立ちは思えばケースケにどことなく似ていて、その腕には人と妖怪を繋ぐ不思議な腕時計-彼が最初に作った妖怪ウォッチ零式が巻かれていた。