カルナとジークフリートは紫色の救済者に秘密の花園に招かれる。帰って来た二人は話した内容を明かす
秘密の花園から帰還したカルナとジークフリートは、すぐに医務室に連れていかれキラに強制的に身体検査を受けさせられた。挙句の果てに脳波まで見られた。異常は何一つ見つけられなかった。持っていたケーキと木箱は早々にキリヤに回収された。
医務室から出ると、シャカが泊っている部屋にはアシュラとヴァルアがいた。シャカに呼ばれたのであろうヴァルアはわかるが、武器を造っているアシュラまでいるとは思わなかった。
「カルナさんとジークフリートさんが大変なことになったってキリヤさんが」
友達思いなアシュラが武器造りを切り上げた。確かに大変なことにはなっていた。キリヤたち曰く、二人を連れて行った光が部屋の外まで溢れていたとのこと。その光が消えたと思って部屋に入ったら二人がいない。これは異常事態だとキリヤがアシュラとヴァルアを呼びつけた。
相当心配をかけてしまったことは間違いないだろう。どれくらいあの空間にいたのかもわからないのだ。
「オレたちは何時間ほどお前たちを待たせたんだ?」
「半日ほどですね」
「どういう依頼なのか知らないけど、半日で終わる任務だったんだね」
「依頼はなんだったんだ?」
「カルナさんとジークフリートさんと『お茶会がしたい』です」
アシュラとヴァルアは二人同時に「はあ?」とちゃんとリアクションをしてくれた。お茶会がしたいという依頼のために二人を呼びつけたのかと大困惑状態だった。
「それはあれ?お茶会と言う名のバトルコロシアム的なやつに参加させられたとか?」
「しかも依頼主は匿名ですからね」
「怪しすぎる。しかもケーキが入った箱と謎の木箱を二つ持って帰って来たんだぞ、この二人」
どういう目的があるのか全くわからないアシュラたちはもはや混乱していた。客観的に見ると確かに意味が分からない奇妙な事態に巻き込まれているように感じる。
「依頼主、聞いてもよろしいのでしょうか?」
「紫色のローブを羽織るあの男だ」
「・・・救済者?」
キラとミラの命の恩人であり、シャカとヴァルアの師匠である紫色のローブを羽織る救済者だった。その人物からお茶会に招かれたのだ。
「どんな印象を受けた?」
キラやシャカには恩人もしくは師匠であるために先入観がある。
「慈愛・・・だろうか」
「悪意や攻撃性など一切感じなかった」
「二人からもそう見えたのか」
「お茶会ってどこでやったの?お店?」
「果てしなく広がっているかのような花園に佇むガゼボだ」
濃淡が違う紫色の花が広がる美しい世界だった。そこに真っ白なガゼボがあった。そこで穏やかなティータイムを過ごした。依頼主である救済者はそこで六大同盟に関するきな臭い話をしてくれた。そのあとはカルナとジークフリートの故郷についての話をした。
「まずさ」
「どうしました?」
「救済者じゃなくて名前は?」
「・・・聞いていないな」
「忘れていたな」
救済者本人がカルナとジークフリートを知っていたためか自己紹介をする時間がなかったのだ。結果、キラたちが知りたかったであろう名前を聞けていなかった。キラが拗ねてしまった。恩人の名前を知りたいのは当たり前のことだろう。
「すまない」
「いいですけど・・・」
「じゃあ、仮名を付けとこうか」
仮名は、花園にいたことと紫を基調としているところからキキョウとなった。
「そのキキョウさんが持たせてくれたお土産のケーキ、めっちゃ美味しいんじゃない?」
なにか確証があるわけではないが、せっかく持たせてくれたのだから食べようとアシュラがいうより前にカルナたちが囲んでいるテーブルに、ケーキとギルドに置いておくといいと言っていた木箱とは別の桐の箱に入っていた紅茶をキリヤが並べていた。
「え、紅茶ってこんなおいしいんだ」
実は子ども舌であるアシュラは、苦いコーヒーやストレートティーを飲めない。そのアシュラが紅茶を美味しいと言ったことに、キリヤが一番驚いていた。
先ほどまで茶会をしていたカルナとジークフリートを放置し、二回目の茶会が始まった。キキョウが見ていたら喜んでいそうだなと思った。
「こんなケーキ食べたことないんですけど・・・」
「うんま」
二人は美味いと思っていたがあまり表情に出さず、言葉にもしなかった。彼の気持ちはわかるが、アシュラたちを呼んだ方がさらに楽しめたのではないかと思うカルナとジークフリートであった。少なくとも振る舞い甲斐があるだろうに。
キキョウから聞いた話は端に寄せ、アシュラたちはケーキと紅茶を楽しんでいた。そしてしばらくのんびりお茶会をしていると、夜も更けていた。
「えっと何の話だっけ、ケーキ美味しいねって話だっけ?」
「師匠が何を話したのかだ」
「なんで僕たちは呼んでくれなかったんですかね」
「キキョウは狙われているらしい」
どう考えてもお茶会よりそちらの解決を優先した方がいいと思うのだが、キキョウはその様子はなかった。
「キキョウさんってめちゃ強いんだよね?瞬殺できそうじゃん」
「それについてだが・・・キキョウは神なのだ」
「神!?オレの勘的中じゃん」
浄化の力が強すぎて神さま説を立てていたアシュラ。まさかの本当に神だったとは。神が地上の組織に干渉するのは、世界に対して影響力が強すぎるのではと思ってのことだった。力をつけないように裏で浄化して救ってと動き回ってはいるものの、直接手を出しているわけではない。よっぽどのことが起きないように対処してくれているのが今だ。
「で、そんなめっちゃ良い人を狙ってるのどこなわけ?」
六大同盟というだけでイライラしているアシュラが、人や世界のために動き回ってくれている神を狙っているなど許せるはずがなかった。
「冥界府」
「・・・ああ、冥界府か。よし、殺そう」
バーサーカーが殺気を纏う。常人ならば意識を失いかねない殺気だ。
「は~・・・で?そいつらの目的はなんなの?」
「あくまで彼の推測だが、神代を復活させるためもしくは冥界を復活させるため。そのどちらかでは、とのことだ」
「どちらにせよ、世界にとっては害でしかないということか」
「そういうことだろうな」
それをどうにかするまでキラやシャカは恩人に逢えないかもしれない。それはあまりにも切ない。カルナたちとしても再会させてあげたい。
それはそれとして、冥界府もまさか神が自分たちに牙を剥いてくるとは思わなかっただろう。
「他に何か言っていたか?」
「シャカ、お前宛だ」
「私?」
「『探している者は、黒と金の城がある国にいる』だそうだ」
シャカとヴァルアは同時に目を見開いた。アシュラの店と似た見た目の城。そこにシャカにとって大切な人がいる。
「・・・私には、生き別れとなった息子がいる」
「息子?」
子どもがいることにも驚いたが、まず妻がいることにも驚いている。しかし、一国の王なのだから王位継承者が必要だ。妻がいても不思議ではない。
「その時、ちょうど私は国際会議で国を離れていた。そのタイミングで息子を攫われてしまった。そして妻はついでの如く殺害された」
「そんな・・・」
「俺たちは六大同盟のどこかの仕業だと思った」
「当時の私は今より弱かった。失意の淵にいた私の前に現れたのが彼だった。探してくれていたんだな」
妻を亡くし、息子は攫われたことにより城から出ることもせず引きこもっていた。しかしやがて、シャカは前を向くことにした。立ち直ることはいまだに出来ているかと言えばそうではない。ずっと傷として残り、どこかにいるのか最悪のことすら頭に浮かんだ。しかし諦めなかった。強くならなければならない。そんな時、スイレンが襲われてしまう。
今より弱かったと言えども、魔術師としては開花していた。それは攻撃する魔術だ。その時のシャカに欲しかったのは守る力。
毎日倒れるほど修行しながら身に着けようとしていた。防御魔術や結界魔術などの力。それを教えてくれたのがキキョウ。無茶したところで身につくわけないだろうと厳しいことを言われたものだ。シャカの実力に対しては何も言わず、只管彼が望んだ力を得るための方法を教えたのだ。
その際、彼は息子を探すと言ってくれた。シャカがどれだけ探し回っても気配すら気づけなかったのだ。しかしついに見つけた。キキョウが連れて来るのではなく、君が迎えにいってやれというメッセージでもある。
「ありがとうカルナ。伝えてくれて」
「シャカさんがよかったら、オレも協力するよ。キキョウさんは黒と金の城って言った。多分宵月国の建物に似てるのかも」
「なるほど。それは助かるな」
その国がどれほど広いのかもわからない。人手は多い方がいい。
「オレも協力しよう」
「ありがとう。アシュラ、できるならば特定してもらえるか」
「いいよ。任せて」
アシュラは良いよと言ったらすぐに動く性格だ。カルナたちは、シャカを生き別れとなった息子と再会させるための計画を始めるのだった。
次回予告
シャカの生き別れの息子に会うため、カルナたちは動き出す。シャカは再会できるのか