黎明の星〜施しの英雄と龍殺しは異世界で生きる〜   作:砂門

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前回のあらすじ


美味しいケーキと紅茶を堪能したあと、シャカの生き別れとなった息子を探すため、アシュラが奮迅する。


第十一話〜光が降る国

 今、アシュラとアシュラが呼んだミラが世界中からそれらしい城を探してくれている。黒と金の城という情報があるのはかなりでかい。しかし、逆に言うとそれしかない。

 

 

 「マジでもうちょっと情報くれないかな。キキョウさんさ」

 

 

 その後、アシュラとミラは世界中のあらゆる地図を広げ、しらみつぶしに探す。

 

 そして

 

 

 「見つけたーーーーーー!!!」

 

 

 ギルド内にアシュラの叫びが響く。鬼神の咆哮は思っている以上に迫力があるらしい。バタバタと忙しなく会議室へ。特定任せてと言って探していたら落ちていたはずの太陽が頂点にあった。

 

 

 「息子さんがいると思われる国は、光雪(コウセツ)国」

 

 「光雪国?」

 

 「聞いたことがないな」

 

 

 これまで任務でそれなりの国に行ったし、アシュラやミラは地図を見ることが趣味の一つであったりする。にもかかわらず、行くどころか国名を聞いたことすらない。

 

 

 「半分鎖国みたいなことになってるみたいだね」

 

 「鎖国?じゃあ入れねぇんじゃ?」

 

 「そういうわけでもないですよ。島国のようでして、船で近付こうとしても難破してしまったり、突然舵が取れなくなったり、台風が来たり。いろいろな要因から国に入ることがそもそも困難」

 

 

 あまりにも危険すぎて近づくことすら忌避されていた。そのため呪われた国とまで言われている。しかし、実際ミラからみた国の様子は幻想的で自然豊か。時に光の魔力が混じったような雪が降る。海に守られているためか国外から敵が来ない。

 

 

 「雪・・・雪?」

 

 「どうしました?」

 

 「シャカは氷魔術を使うんだよ」

 

 「え、遺伝?」

 

 

 年がら年中寒い国で、雨が降らない。その代わりに雪が降るのだ。これは息子の属性ではなく、その国が持つ特色なのではとアシュラは言った。

 

 

 「光の魔力は気になるな」

 

 「オレもそう思う。でももう一つ問題がある」

 

 「問題?」

 

 「何かアクシデントが起きた時に抵抗する力がないんだよ」

 

 

 カルナたちは目を見開いた。何かあったとき、たとえば運よくその国に上陸することに成功した何者かが陰謀を企て戦争に巻き込まれるというようなことになったとき、平和しか知らないその国には力がないために何も出来ないのだ。

 

 

 「しかし、今のところそうなっていないのだろう?」

 

 「でも問題はある。この国について調べるとき、少し歴史を辿ってみた」

 

 

 光雪国は昔、血の雨が降る国とさえ言われるような国であった。今の国の姿からは想像もつかない。そんな国がある日戦争を一切しない国になった。

 

 今は、別の観点から問題が起きていた。

 

 

 「光雪国の国民には・・・欲望っていうものがない」

 

 「それは・・・」

 

 「健全とは言えないのかもしれないな」

 

 

 裕福になり、富を手に入れたとして、それを何かに使うということはなく、食欲すらない。いわゆる三大欲求とされる食欲・睡眠欲・性欲。これらすらない。それによる少子化と、自覚のない栄養失調状態。豊かな国でありながら、栄養不足によって起こる病を発症している国民の割合は発展途上国以上だ。睡眠をとらないためにまともな日常生活を送れていない者も多い。

 

 外から見れば豊かで、裕福で、幸福に満ちている。しかし、内側から見るとその異常性が浮き彫りになる。国民は幸福なのに、体は健康から程遠く、国民の平均寿命は35歳。食べない寝ない。そんな人が個人で見るならいるのだろうが、国民全員がその状態であることが異常なのだ。

 

 

 「そんな国を治める王は何をしているんだ」

 

 「それがねぇ。多分この王さまは善性ではあるんだよ」

 

 「善性・・・善い人なだけ・・・という?」

 

 「それもちょっと難しいね。この王さまは子どもが大好きで、国民のことも愛している。そして国民も王さまを慕ってる」

 

 

 子どもが大好きなのだが、性欲がないせいかそもそも生殖行為をしないためか少子化の一途を辿っている。まず高齢者もいない。国が滅びかねないような進み方をしているのに、王は一切手を出さない。国民の苦しみに正面から向き合う面があるのだが、体の苦しみには気付かない。

 

 善性ではあるのだ。決して悪い心を持っているわけではない。だからこそ性質が悪いとも言える。

 

 

 「そんな国に私の息子がいるのか?」

 

 「多分ね。ただ、王さまの家族やその周辺は長生きしてるみたい」

 

 「魔力か?」

 

 「えぇ。神さまであるキキョウさんや世界最強の魔術師シャカさんの眼も通さず、ボクの眼でようやくですからね」

 

 

 強い結界魔術が国の周りを覆っている。

 

 

 「多分キキョウさんはそれに目を付けたのかもしれない」

 

 

 結界がかかっているのなら、その内側に潜入してしまおうと考えた可能性がある。

 

 

 「オレが思うのは、キキョウさんよく耐えられたなって」

 

 「ボクも思いました」

 

 「地上に浄化のため、救うために降りてきたような男が手を出さず引いたのだからな。なるほど、オレとジークフリートを呼んだのはそれもあるのか」

 

 

 行動力しかなく、キラやミラを救った男が異常な国を何とかしたいと思っても不思議はない。しかし彼は神。人に手を差し伸べても国まで干渉できない。してはいけない。人の国は人がどうにかするしかない。神代が終わった世界で、あまりにも超常的な能力を見せるのはリスクが高い。そんなときに幸いというべきか、弟子の息子の姿を確認できたのだ。

 

 そしてカルナとジークフリートを呼び、伝言という形でカルナたちを動かした。少なくとも人の国の王であるシャカが動くことを確信していた。人の国は人が救う。

 

 

 「息子が見つからなかったとしても別の言い方で俺たちを行かせたかもしれないな。神が出来る最善手」

 

 「早く行くぞ。我が息子に再会し、かつその国の滅亡への道を阻止するために」

 

  

 カルナたちはシャカの強い言葉に頷き、普段はギルドにいるキリヤやキラとセントラルの研究所にいるミラも加わり動き出した。

 

 

ー2ー

 

 

 カルナたちにとっての第一の関門は、どんな方法で光雪国に上陸するかというものだ。

 

 

 「どうすんの」

 

 「オレの戦車はどうだ」

 

 「なるほど。確かにお前の空飛ぶ戦車であれば少なくとも海の脅威は避けられる」

 

 

 ということで、彼らは少し手狭ではあるが全員それに乗り込みシャカの秘術で最寄りの場所まで移動。そこから戦車で向かう。

 

 この国は基本的に国の前にある門でパスポートのようなものを見せることで入国することが出来た。入ること自体は難しいが、入国自体は簡単だった。

 

 

 「こんな簡単に入れるの心配なんだけど」

 

 「スイレンレベルの警戒心をとまでは言いませんが、危機感がなさすぎますね」

 

 

 どこの国であっても持ち物の検査はするし、凶器のようなものを持っていれば速攻で連行されかねない。この国はなにも見なかった。あまりにも無防備すぎる。王が性善説に寄り過ぎているのか。

 

 

 「うーん・・・第一印象は?」

 

 「・・・国民が瘦せすぎている」

 

 「これで空腹を感じないのは、もはや欲という問題ではないのでは?」

 

 

 空腹を知らせる脳の働きすら麻痺してしまったのか。あまりにも痩せぎすで、ここまで歩いて見ているなかで一番背が高そうな住民ですら160センチないほど。栄養失調によりまともな成長期が来なかったのだろうか。

 

 

 「これ、この感じは生殖機能が正常に働いていないからでは・・・」

 

 

 少子化になっている理由が、すべて栄養不足と睡眠不足が原因ではということだ。まともに食べず眠ることもしないのだから、自覚できるほどの不調を感じるほどに思えるが、住民からは余裕すら感じるのだ。

 

 

 「もう俺たちの認識がおかしいのではという気がしてしまう」

 

 「私もです」

 

  

 カルナたちが国民の様子を伺いながら、シャカの息子らしき人を探す。そのとき、急にシャカが一瞬立ち止まり周りをキョロキョロと見回す。

 

 そして走った。ヴァルアでさえ走ることは予想外だったが、その先にいるのが息子なのではと思うのならこの行動になるのは自然なことだろう。しばらく息を切らしながら森を走る。そしてある一点を見据えると、今度はゆっくりと歩く。

 

 そこには

 

 

 「・・・」

 

 

 シャカが目を見開いた。そしてその反応は、こちらを向いているキラとミラと変わらないであろう年の頃の少年も同じだった。

 

 カルナたちはシャカたちから離れたところで二人の様子を伺う。

 

 

 「シャオ・・・なのか・・・?」

 

  

 シャカが投げかける。

 

 その瞬間、シャオと呼ばれた少年が走り出し、ぎこちなくも腕を広げるシャカの腕のなかに飛び込んだ。

 

 

 「ちち・・・うえ?」

 

 

 今にも泣きだしそうに綺麗な目を潤ませながらシャカを見上げて聞いた。シャカは涙を隠すこともせず、五歳で攫われてしまった息子を強く抱きしめた。

 

 父の腕のなかで温もりに包まれ、一気に涙が溢れ泣き出した。シャオにはちゃんと記憶として残っている。父の温もりを。優しい声を覚えている。攫われてからもう百年は経つ。それでも鮮明に覚えている。大好きな大好きな父がくれた愛情を。

 

 しばらく父子ともに泣いていた。やがてゆっくりと涙が引き、残ったのは穏やかで優しい心の温もり。もう一度強く抱きしめたあと目を合わせた。

 

 

 「やっと逢えた」

 

 「長かった。本当に・・・」

 

 

 二人はその後、親子の時間を楽しんだ。シャオは、攫われたあとにあった楽しいことを目をキラキラと輝かせて話して聞かせた。シャカはシャオの話を穏やかに微笑みながら聞いていた。

 

 再会した二人の時間は穏やかに過ぎて行った

 




次回予告


ついに最愛の息子シャオと再会したシャカ。
親子の時間を楽しんだ後、シャオはカルナたちに光雪国の闇を語る。闇の陰謀は、カルナたちさえも巻き込んでいく。
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