黎明の星〜施しの英雄と龍殺しは異世界で生きる〜   作:砂門

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前回のあらすじ

フレアフルールにアシュラが加入。さらに新生チームが結成され、高難易度ランクの依頼を受けることができるようになった。


第十五話〜歌魔術VS陰陽秘術

 新たなチーム誕生とアシュラの正規加入を祝う宴をした翌日。大広間でユウガオは何を食べるのかと四苦八苦してネコが食べられる料理を作って出すキリヤと、ユウガオが食べなかったものを食べるシャオという謎の状況。ユウガオはグルメなのか、今のところ水しか飲んでくれていない。

 

 

 「あなたは何がお好きなのですか?」

 

 

 ユウガオはキリヤの言葉の意味が分かる。生き物や風や木などの自然とも話せるキリヤならではの情報収集の仕方だ。ユウガオは首を傾げたあと、一瞬発光。

 

 

 「おや、帰ってしまったのでしょうか」

 

 「地上の食べ物はダメなのだろうか」

 

 「師匠は一体、ネコに何を食べさせているんだ・・・」

 

 「あの人が何か食ってるとこ見たことねぇな」

 

 

 弟子として彼の下修練の日々を過ごしていたシャカとヴァルアも、キキョウが何かを食べているところすら見たことがない。二人が修練中に紅茶やコーヒーなどを優雅に飲みながら見られているところしかイメージにない。果物とかだろうか。

 

 

 「カルナ、師匠とのお茶会では何か食べていたか?」

 

 「・・・いや、紅茶だけだな」

 

 「そういや彼、俺たちに食べさせて自分は食べていなかった気が」

 

 

 何食べるんだ、と思っているとユウガオが帰って来た。普段キキョウがくれているものを持ってきたのか、虎の姿になって帰って来た。たくさんの荷物を持ってくるためなのだろう。そこには

 

 

 「・・・こ、これは」

 

 

 黄金のリンゴ、黄金のモモ、バナナ、ヨーグルト、ネコ用クッキー、ネコ用ドーナツ、ネコ用マカロンなどのスイーツといったものを持ってきた。神さまのネコだが、ネコ用のスイーツを食べるだけまともなのかもしれない。黄金のリンゴと黄金のモモはさずがにない

 

 すると何かの可愛らしい籠を出してきた。その籠にリンゴとモモがたくさん入っていた。この果物を使って作るスイーツが好きとのこと。

 

 

 「が、頑張りますね」

 

 

 キリヤは、シャオに果物の籠を渡した。彼の相棒になったのだ。ユウガオが好きなものを食べさせるのは相棒がする方がいいだろうという判断だ。

 

 

 「あ、そうだ。キリヤ」

 

 「はい?」

 

 「キリヤは歌魔術を使うのだろう?」

 

 「そうですよ」

 

 「僕の秘術と勝負してくれないだろうか?」

 

 「おや、構いませんよ」

 

 

 日常会話のトーンで手合わせしようと言ってくるシャオ。軽く驚くカルナたちに対し、キリヤはニコリと笑って頷いた。

 

 

 「どこでしましょうね?」

 

 「俺たちがやったところでいいんじゃねぇか?」

 

 

 アシュラとヴァルアがバトルをしたあの地。

 

 キリヤとシャオは向かい合っていた。アシュラとヴァルアがしたときはあまりにも暴力的だったが、今回は魔術と秘術の戦いだ。派手ではあるが、体術で速攻で決まることもあるアシュラとは違う。

 

 キリヤは歌で通常攻撃は風と光、シャオは呪文で通常攻撃は火と氷だ。決着が付きにくそうなマッチングとなった。

 

 

 「勝負付くのかな?」

 

 「難しそうだな」

 

 

 カルナたちも想像できていない。そんな戦いをするのかよく知っているかというとそうではない。

 

 

 「読みあい、掛け合いとなるでしょうか」

 

 「やってみればわかること」

 

 

 武器は、キリヤは扇で、シャオは札のようだ。剣と拳の戦いだったバーサーカーと騎士の戦いとは大違いの優雅さがある。迫力はオレたちの方があるでしょ、とアシュラが言った。

 

 

 「では、いきます」

 

 

 キリヤが手を掲げ扇を広げると、シャオが体勢を低くする。軽くひらりと扇を操ると、暴風を起こして見せ、その風をシャオの凍てついて炎を札から放射する。

 

 

 ――さあ、花散らさずに舞いましょう

 

 

 「わぁお、一気に二つの属性だね」

 

 

 風と光の柱がシャオに襲い掛かる。

 

 

 「僕の火を甘く見るんじゃないぞ」

 

 

 キリヤが出した柱は龍のようにも見える。それをシャオは五枚の札を浮かせ氷の結界を作り出し防御した。龍ごと凍らせようと思っていたが、キリヤの光は炎のように熱いのか溶かされてしまう。

 

 

 「風よ」

 

 「っ・・・!」

 

 

 風により加速し、その勢いのまま風でできた鳳がシャオに向かって突っ込む。

 

 

 「はあぁっ!!」

 

 「おや」

 

 

 襲われるシャオは、瞬時に扇を出しそれで切り裂く。キリヤとシャオの風と火の攻防戦が繰り広げられる。

 

 

 「冬終わらぬこの地を 安らかな夢で暖めましょう 包み込む春の歌 『夢色の牧歌(レーヴ・パストラーレ)』」

 

 「世界を映す炎よ、照らすがいい 夜照らす碧炎」

 

 

 即興で新たな宝具を展開するキリヤと、軍を一掃するほどの攻撃力を誇る碧色の炎。その炎をキリヤは純白の結界陣でガード。包み込む結界のなかでキリヤは歌う。

 

 

 「声量すごいな、おい」

 

 「綺麗な声だな」

 

 「宵が来て、夜は世を染め、暁は人を照らす」

 

 

 カルナたちはゾッとするような感覚になった。それに対し

 

 

 「我が火こそ世界を照らす光となれ」

 

 

 キリヤの最高ランクの魔力とキリヤには劣るがシャオの魔力もシャカからの遺伝なのか規格外だ。一度に三つ、四つの宝具を展開したのだ。それでもさらに魔力が増大する。

 

 

 「キリヤのあれは」

 

 「攻撃力をあげる宝具だったか」

 

 「シャオのは攻撃の重ね技か」

 

 

 どちらも相当手練れだ。無茶苦茶に見えるが、それを可能にするほどの力があるのだ。ただそれだけで勝負を決める宝具と、なんでも燃やす宝具。

 

 

 「美しき 夜闇に陰らぬ 月色の翼」

 

 「時超えし曙光 照らし守るは夜光」

 

 

 歌いながらキリヤは結界を解き、展開の時を待つ。

 

 唱えながらシャオは守りを捨て、二色の炎を灯す。

 

 

 「世界はあなたを待ちわびて わたしはここでただ歌う」

 

 「陽を忘れし蒼穹は 今 朝を思い出す」

 

 

 さらに増大していく魔力。さらに上がる攻撃力。キリヤの瞳の色と同じ色の優しいオーブがキリヤの声に呼応して増えていく。鮮やかな炎が迦楼羅炎のように輝き激しく燃え盛る。呪文もなにもないアシュラとヴァルアの肉体対決と、歌ったり呪文を唱えたりする二人の戦いは純粋な魔術師としての強さで戦う。

 

 

 「夜は欠け 月は満ちる」

 

 「朝となれ 夜よ」

 

 

 無数のオーブが一つになり巨大な満月のようになり、唸る炎はさらに渦巻く

 

 

 「捧げましょう」

 

 「呼ぼうか」

 

 

 キリヤが手を掲げ広げれば満月に亀裂が入り、月から翼が生える。呼ぶ。その言葉で炎が姿を変える。

 

 

 「夜色の叙唱(ナハト・レチタティーヴォ)

 

 「夜明けの緋炎(アルバ・スカーレット)

 

 

 月から現れた鳳凰と二色の炎で燃える龍が激突した。

 

 

 「おー!すっご!」

 

 「こりゃすげぇ」

 

 

 カルナとジークフリートとシャカは静かに興奮し、アシュラとヴァルアはスポーツ観戦かのようなリアクションをする。

 

 衝撃に風が吹き荒れる。

 

 

 「宵色の讃美歌(トワイライト・ヒム)

 

 

 キリヤは宝具をさらに重ねる。さすがにシャオも舌打ちしてしまう。あまりの魔力の暴力が襲う。鳳凰と火の龍がぶつかりあうなか、キリヤが地を蹴り扇を構え距離を詰めた。

 

 

 「氷炎!」

 

 

 キリヤは夜明け色に似た光を扇に纏わせ振り上げた。それに対しシャオは十枚の札を出した。夜明け色の鳳凰と緋色と薄氷色の炎の龍が互角の状態で爆発した。

 

 その爆風はカルナたちも巻き込むほどの衝撃があった。

 

 

 「良い戦いだったね」

 

 「俺とアシュラじゃできない戦いだったな」

 

 

 お互いに疲弊し、キリヤは座り込んで息を切らし、シャオも片膝をつき行きを切らす。

 

 

 「こ、れは・・・どっちだ?」

 

 「引き分けですかね?」

 

 

 お互い疲れた笑みを浮かべる。いつかと違って比較的平和な決着だった。二人とも起きているあたり。

 

 

 「さてどうだった、ユウガオ。お前の主人とくらべて」

 

 

 今回は魔術の対決だったために参加できなかったユウガオに問う。しかしユウガオはというと、のんきにあくびをして伸びをした。もしかしてこの爆風のなか寝ていたというのか?なにか?と聞いているかのような顔で首を傾げる虎。この虎はシンプルにフィジカルでランク10に匹敵する。魔術と秘術の戦いに満足するかというと難しいかもしれない。

 

 

 「えっと・・・どうでしたか?」

 

 

 キリヤが問う。

 

 

 「悪くなかったのではないか、とのことです」

 

 

 寝ていたかのように見えたが、実際はしっかり見届けてくれたらしい。主人がシャカとヴァルアの師匠である彼だ。

 

 

 「もしかしてユウガオさん・・・自分をシャオさんの師匠だと思っているのでは?」

 

 「それはちょっとありそう」

 

 

 いつの間にかカルナたちも近くにいた。ユウガオは、シャオの成長に見込みありと感じて相棒になったのではとキリヤは言った。主人の真似なのでは

 

 ふと、ユウガオがキョロキョロと見渡し始めた。

 

 

 「キキョウがいるのか?」

 

 

 凛々しく頷くと、察知したのかキリヤとシャオを背中に乗せて走る。

 

 そして険しい顔をする。そしてうまく崖を登る。崖を登る虎など知らないが、神の虎ならそれくらいできるだろうと納得させた。カルナたちも背中を追う。その先には

 

 

 「お前は」

 

 

 鮮やかな紫色のローブを羽織る男、キキョウがいた。どうやらフルールを見ているらしい。ユウガオは嬉しそうにキリヤとシャオを乗せながら近づいた。チラリとこちらを見ると、すぐそばに寄り添ってきたユウガオを優しい笑みを浮かべて撫でた。

 

 その後、カルナたちを一瞬見ると顔を正面に向けフルールを見下ろす。誰かを探しているのだろうか。

 

 

 「いたな」

 

 

 キキョウは崖の際まで歩く。そして虚空から紫色の宝石の周りに浮く三つの円環が特徴的な杖を出した。その杖をクルクル器用に回すとフルールの城に向かって飛んで行った。あのローブは一般人には見えないようになっているらしく、上空を超スピードで移動するキキョウに気付いた者はいない。

 

 

 「師匠、どうしたんだろうか」

 

 

 カルナたちは察している。探しているなにかに関する問題が終わったらまた異世界に戻るのだろうと。今はそんな場合ではない。

 

 

 「キキョウさんのあの杖・・・マジ?」

 

 「どうした?」

 

 「アストラル光石で出来てるやつなんだけど・・・」

 

 「なんだそれ」

 

 

 アストラル光石は神代にあったとされる物質だ。神代だからこそ手に入れられたもの。それでできた杖を当たり前のように持っていた。アストラル光石は、神聖な光と神性の魔力を混ぜて作られる光の塊だ。

 

 

 「まあ、神代から生きてる人だしな」

 

 「それはそうなんだけどね。あの杖で闇が濃いところを探してるのかも」

 

 「なるほど」

 

 

 今までもそれを使って浄化するべき場所を特定して浄めてくれていたのだ。カルナたちが出会えたのは偶然なのか必然なのかも分からない。しかしどこかで確信している自分がいる。出会えたのは必然なのだと。

 

 

 「ねえ、カルナさん」

 

 「どうした?」

 

 「オレたちって高難易度の任務できるようになったんだよね?」

 

 「そうだ」

 

 「オレたちに出来ることないのかな?」

 

 

 アシュラは真剣な顔でカルナに問う。新たなチームを結成した今、キキョウの代わりに出来ることはないのかと。

 

 

 「私も思います」

 

 「師匠の悩みの種を少しでも除いてさしあげたい」

 

 「同じくだ。せっかく強くなったんだからな」

 

 

 カルナたちは、何かできることがないかと会議をするためギルドに戻った。

 

 ギルドに戻ったカルナたちは、ハイリとキラも交えた会議をすることにした。キラに関してはそもそもキキョウに逢いたいだろう。キキョウが覚えているのかとキラは不安に思っている。実際は、当たり前のように覚えている。

 

 

 「キ、キ、キ、キキョウさんに逢ったんですか!?」

 

 

 案の定、キラは見たこともないほど興奮していた。憧れで、命の恩人。彼の役に立てたら嬉しいと思っている。少しでもお返しはしたいのだ。

 

 

 「父上の師匠なのに、なにも話せなかった・・・」

 

 「自分の師匠なのに何も言えなかった」

 

 

 本当はその場で色々言いたかったのだが、言いたいことが多すぎたのか出てこなかったうえにキキョウは少し微笑んだ後フルールの城の方に飛んで行ってしまった。

 

 緊張していたのか、神聖な魔力に圧倒されたのかは分からない。しかし、役に立ちたいと思っているのにこんなことを考えてはいけない。

 

 

 「そのキキョウさんと言う方は誰だ?」

 

 

 ハイリは当然知るわけもない。カルナたちは彼について話した。ハイリは感心しながら笑って聞いていた。

 

 

 「神さまだったか。この世界の神も捨てたもんじゃないのかもしれないな」

 

 「キキョウさんだけかもよ?」

 

 「そうかもしれないな。でも、そんな神までほかのと一緒にしていいのかと儂は思う」

 

 

 地上の生き物に対して呆れたのか離れて二度と降りてこなくなった神と、今懸命に生きている者と世界を愛している神を同じ括りで見ていいのか。それが甚だ疑問だとハイリは穏やかに笑った。

 

 

 「その人は、自分が狙われているから君たちと会わないようにしている」

 

 「うん」

 

 「それも本心だろうが、浄化してくれる彼がその花園で濃い穢れが湧くまで待っているのを想像してみてくれ」

 

 

 行動力の塊が、地上に出来るだけ下りないように考えて毎日紅茶を飲みながら待っている。三十世紀近くそんな生活をしているということになる。神代が終わってからも仲良くしている相手がいたとしても、自由に降りるというのはあまり良くないと本人が思っている。今生きている者を愛しているのに、まともに触れ合うこともできない。

 

 

 「強引にでも誰かとお茶くらいしたいよね、そりゃ」

 

 「もはや何かの罰だろ」

 

 

 普通なら発狂するほど退屈な時間があったかもしれない。ときに見ていられない光雪国のような国に手を出すことはある。余計に見ていられない状況になってしまったが。

 

 

 「そのローブはある程度のランクの者しか見えないようになるとのことだが」

 

 「そのようだな」

 

 「このギルドに呼べないか?」

 

 

 これまで相当気を遣ってきてくれた彼を、ついにこのギルドに呼ぶ。

 

 

 「どうした?」

 

 

 ユウガオは朝逢ったはずなのにそわそわしている。シャオには師匠ぶりたいのに、主人相手だと甘えたモードに入ってしまうらしい。

 

 

 「ガウッ」

 

 

 ユウガオがキリヤに向かって吠える。

 

 

 「キキョウさんがフルールから離れてる?早すぎませんか?」

 

 「ユウガオ、移動できるか?」

 

  

 嬉しそうに頷くとすぐに光で包んだ。キキョウはアシュラがたまに素材採取のために入る山にいた。キキョウに構わず駆け寄るユウガオ。

 

 

 「ユウガオ・・・!」

 

 

 目深にフードを被っているため見えないはずの表情。しかし、その顔に動揺が見えた。彼の顔がキラに向いた。キラは目を輝かせる。

 

 

 「キラか」

 

 「は、はい・・・!あの!助けてもらった、キラです!」

 

 

 必死で語り掛けるキラに、キキョウは微笑んで近づいた。しかし、歩き方に違和感を覚えた。鬼と虎の嗅覚は鋭い。

 

 

 「ケガしてます?」

 

 

 ユウガオはケガをしているであろうところに近づき、なめようとする。それをすぐにキラが止める。

 

 

 「待ってください、ユウガオさん。えっと、怪我の状態を見たいので、えっと・・・ギ、ギルドに・・・その」

 

 「・・・そうだな。少し休ませてもらおうか」

 

 

 勇気を出してギルドに来ないかと言ったキラに、キキョウは優しく頷いた。健気な勇気を無碍にする性格ではなかった。

 

 

 「ユウガオ、乗っても?」

 

 

 飛び跳ねて喜ぶ。キキョウはそっとユウガオの逞しい背中に乗り、優しく背中を撫でた。ユウガオはゆっくり歩き始めた。

 

 カルナたちは、尻尾をブンブン振るユウガオの後ろを付いていった。




次回予告

キキョウがフルールに降臨。彼は一体どうしてフルールに来たのか。そしてカルナたちは彼に認めてもらえるのか?
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