キリヤとシャオによる魔術と秘術の戦いは引き分けで決着した。そんな折、、カルナたちはフルールに降り立つキキョウに会う。彼はなぜか手負いの状態で!?
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インフルでした
フルールの街並みを楽しむように眺めるキキョウ。傷に障らないようにゆっくり歩くユウガオは相変わらず立派な尻尾をぶんぶん振っている。
「ユウガオの好物、後で教えておこうか」
「お願いします」
「本当に困っている」
カゴにどっさり入った金色のりんごともも。特に料理をしないシャオは、それを渡されてどうすればとなっていたのだ。それを汲み取ってくれたらしい。
しばらくすると、アシュラの店の横を通り過ぎる。その店にキキョウが釘付けになっていた。
「どうかしました?」
あのアシュラが敬語。カルナたちは目を見張る。緊張しているとかではなく、純粋な敬意。カルナたちに対してもあるが、それとは別だ。
「シュラの店に似てるなと」
「お父さんのお店を継いだので・・・え?お父さんのこと知ってるんですか?」
アシュラにそう言われて初めて気づいたかのようにハッとしていた。無意識に発していたのだろう。
「シュラは・・・親友なんだ」
「え?」
「詳しいことは後で話す」
そう言ったキキョウの顔は穏やかだった。親友の店が見られたから機嫌が良くなったのかもしれない。それはそれとして
「顔が青いぞ、キキョウ」
「出血しているからな。貧血にもなる。軽く止血しておいたんだが、不十分だったらしい」
その場がざわついた。血の匂いからして出血してるんだろうなとは思ったが、貧血になる程とは思っていなかった。
そしてまたもうしばらく進むとギルドに到着。唯一地上に来てくれる善神がフレアフルールに降臨した。
「ようこそお越しくださった」
「出迎えてくださるとは驚いた。少し休ませていただきたく思うのだが」
「どうぞどうぞ、こちらになります」
ハイリは予めギルドのメンバーを部屋に待機、もしくは任務に派遣していたらしい。入ったこともないであろうギルドをキキョウは興味深そうに見回す。
その後ろを歩くハイリは
「全然偉そうじゃないな、彼」
「二人称が君だからな」
お前と言っているところを見たことがない。しばらくすると、ギルドにミラが来た。キラが呼んだらしい。
「き、き、き、きら・・・き、き、キキョウさんが・・・」
清潔な白衣を着てきている。汚い白衣を見せたくないと思ったのだろう。もっとも、キキョウは気にしない。カルナたちはキキョウを医務室に案内する。
キキョウは椅子にゆったり座る。カルナたちには背を向ける形だ。当たり前のように背中を向けるあたり、信用してくれているのだろう。
「えっと、脱がなくても大丈夫ですからね」
緊張で声が震えるキラ。優しいトーンの「そうか」が帰ってきた。キラはその眼で服の上からでもケガの状態が分かる。
「・・・どういう攻撃を受けたんですか?」
「師匠が攻撃受けることあるのか?」
「穢れに侵されている者がいてな。浄めようとしたんだが、浸食濃度があまりにも高く激しい抵抗の末に横腹を抉られる形になってしまった」
敵の攻撃ではなく、浄化しようとしたところで至近距離から攻撃を受けた。人を汚染する物質は人や獣の形をすることが多い。今回は獣型だった。
「黒羽城にもいただろう?暗黒生命体」
「あー、あれか」
「そんな生命体がフルールにいたのか?」
「浄化しなくてはならないほどの穢れなどそうそうない。自然発生して徐々に消えることがほとんど。稀に、わざと発生させる者がいる」
黒羽城にいた生命体は、わざと穢れを発生させ汚染させて生み出したものだった。そんな生命体がフルールにいた。
「あそこまで汚染されている者に歩かれては、街ごと穢れの霧で覆い民を汚染させることになりかねない」
キリヤではなく、キキョウでなければどうしようもない濃霧。それが城下を覆いかねないほどの穢れが人から発生することがある。恐ろしいことだが、神代では当たり前のように頻繁に起きていた。
「君たちは見えたことはあるか?霧」
「アルスファの森では見たが、それ以降はないな」
「そうか。それなら良い」
「師匠にしか不可能なのですか?浄化は。例えばキリヤもいます」
浄化する歌を歌うキリヤや、浄化を補助宝具として持つシャカ、そして開花しかけているシャオと浄化するための人員には事欠かない。それでも不十分なのだろうか。
「粗方浄めてくれたあとに私が残りを浄めるというこれまで通りの動き方で問題ない。流石にどこに穢れが生まれるかという予測は難しい。それをしようと思うとさらにミスリルをばら撒くことになる」
キキョウがミスリルを渡すことがあるのは、穢れが発生したときに感知できるようにするため。
「この国はラクリマとのことなので安心か」
ミスリルという超常的な物質と、ラクリマという使う前に儀式をしてやっと起動できる物質とでは影響力が違い過ぎる。
「さて、君たちが気になっていることに答えていこうと思うが、何かあるか?」
「キキョウさんって、お父さんの親友なんですか?」
「宵月国の件、あの日本気で怒っていたのは私だ」
親友と仲間を殺され、第二の故郷のように愛した国を火の海に飲み込んだ。
「あの国を襲ったのは冥界府ではない。冥界だ」
アシュラの故郷を襲ったあれは、人間ではなく悪神の仕業だった。人間を愛し、神代が終わるきっかけとなった戦争にも参加しなかった男が本気で怒った。
「冥界、どうしたんですか?」
「滅ぼした」
淡々と穏やかに告げられた事実。キキョウは、アシュラの故郷をなんとか救ったあと、シュラとマオとアシュラの祖父母にあたるシュキとアヤハの仇を討つために冥界を滅ぼした。
「その結果が今の状態だ。おそらく、冥界府はその冥界を蘇らせたいんだろう」
優しい神さまを怒らせ、神界を一つ滅ぼされた冥界の神たち。ただ、そんな神たちは地上が大嫌い。冥界府に様々なことを命じて自分たちの完全復活および、世界を神代にすることを企てているのではないかという。
「神代になったとして、今の人間は生きられるのですか?」
「人によるとしか言えん。ただ、絶対にあの時代に戻してはならん」
「それはなぜ?」
「人の命が軽過ぎた」
汚染されている世界で生きられない者は淘汰され、神の理不尽な怒りに触れただけで殺され、神の愚かにも地上を戦場にすることで一日で罪のない一億人が巻き込まれて亡くなる。それが当たり前とさえ思われた時代。
「終わらせて正解だったんだろうな。私は人間に戻りたかったがな」
地上で生まれ、あくまで地上の住人であってシュラをはじめとする仲間と離された。キキョウは人間に戻りたかった。その精神性の世界への影響力を考えて強制的に帰され、千年近く神界から出ることを許されない状況にされていた。
「自分の神界を創り、影響しない程度に動く自由を得た。冥界の件は見過ごしてもらえなかったが」
それは流石に許されなかった。人に悪影響しか及ぼさない神界であろうとも、多くの神たちは変化することを嫌がった。人間が賢くなることを快く思わなかった。
「超常的な力を得ただけの傲慢な生き物。そんな者たちの生き方を押し付けた結果が黎明期だ。戻して良いわけがないんだよ。そんな時代にな」
それまで穏やかだった声音の中に鋭さが足された。自身も含めて愚かな生き物だと思っている。
「他にはあるか?」
「わざと汚染させる者がいるとのことでしたが、そのような方がこの国にもいるのでしょうか?」
「先程までいたな。そのうちこの辺りにそいつの仲間が来るだろうが、その前に出るので安心してくれ」
やはりキキョウは手負いの状態でフルールを出るつもりでいた。カルナたちの予想通りだ。
「一人倒されたら仲間が来るってハチか何か?」
「毒持ちのな」
「最悪じゃないですか」
一般人にとっては猛毒でしかない影を引き摺りながら現れ、人や街を汚染しながら歩いてくる。悪夢そのもののような禍々しい生命体。
「悪魔に神の性質を加えた魔物。これを神魔という」
人にとって災害としか言えない魔物の類。並の魔術師では太刀打ち出来ない魔物の最上位。理性もなく感情もないものを魔物と言っていたが、悪意を持って殺したり傷付けたりする魔物もいる。
「それはオレたちでも狩れないほどのものなのか?」
「私は君たちの実力を知らないので何とも言えないな。シャカとヴァルアはあの頃から変わっているだろう。ユウガオ、君から見てどうだ?」
ユウガオはキキョウに向かって鳴く。
「なるほど。神性持ちの魔獣を倒す実力はありそうだと」
「ガウッ」
「まぁ私から見ても見込みはある」
その場がざわつく。主に双子。実力は知らないが、少なくとも見込みはあると思ってくれている。アシュラに関しては親友シュラと比べられてもおかしくない。
「シュラとアシュラでは戦い方が違うのではとも思う。マオの知能も受け継いだんだろう」
「良いこと?」
「良いことだ。シュラはシュラで、君は君。それぞれの戦い方があっていい」
血が繋がっているからといって、個性も同じなはずもない。真似るのはいいが、その中で自分の戦い方を身につけ磨く、それが研鑽というもの。
「まぁ私の持論だがな。おや?神魔の集団がお出ましのようだ」
キキョウは何かを察知したようにゆっくり立ち上がる。
「治療ありがとう」
「は、はい!」
「あんなキラくん初めて見たよ」
「私もです」
「オレもだ」
キラは、憧れの人からの優しいトーンのありがとうに心が温かくなる感覚がした。普段はクールで無口なキラが、ヒーローを前にした子どものような顔を見せる。
「ではまたな」
「ちょっと待ったーーー!!」
アシュラが強引に引き止めた。引かれているかと恐る恐る顔を上げた。キキョウは穏やかに微笑みを浮かべていた。
「浄化の神の力を見てみるか?」
「はい!」
父親の親友。怒っていたなという記憶はあるし、綺麗な人という記憶もある。だがやはり朧げだ。そんな神界を一つ滅ぼした神の力
「では行こう。侵攻されては困る」
「その通りだ」
「ユウガオ、シャオを乗せて高速で走りなさい」
高速出して良いの!?と嬉しそうに言っている顔になるユウガオ。シャオは速く移動する術がない。ニコニコしているユウガオをシャオが優しく撫でる。シャオがユウガオに乗ったことを確認すると、カルナたちはキキョウの先導で神魔が現れるであろう場所に向かう。
「なにあれ、凄い数」
「粗方消しておこうか。
神魔の姿を見るなりキキョウが手を広げる。数キロの範囲に渡って
「発射」
ラトナが着弾した途端に消滅。一度の攻撃でおよそ千体に及ぶ暗黒生命体を消し飛ばす。
「この国を襲い来る敵は、私が聖なる雷光で焼き焦がしてくれる」
「ん?」
「え、焼き焦がす?」
今の所優しいところしか知らないキリヤとシャオはポカンとしている。
「ラトナ・ランビズリマ」
威厳に満ち、それでいてどこか穏やかな声音で唱える。その瞬間
──バリバリバリバリッ
この空間ごと割るかのような雷鳴が轟き、止んだ頃には全て消し飛んでいた。ラトナの着弾で消えなかった神魔がランビズリマにより根絶やしにれた。
「えぇ・・・」
「す、すご」
「凄まじいな・・・」
一同呆然となる。キキョウは降り立ち汚染された地面を浄化していた。
「こんなものか。君たちのために一体残しておこうと思ったのだが、すまない手が滑った」
残しておく気はおそらくなかったと見える。
「さて、せっかくこんな広い場所にいるんだ。このまま帰るのは気が引けるというもの。私と手合わせ・・・して見るか?」
この世界の神と戦ったことのないカルナとジークフリート、そもそも神と会うことすら滅多にないアシュラやキリヤ、命の恩人もしくは師匠だが戦ったことはないキラミラやシャカヴァルア。興味がないと言えば嘘になる。
「ぜひ、手合わせ願おう」
「そう来なくては。本気で良いぞ。宝具とやらも武器とやらもなんでも使え。私も好きに行くのでな」
満足そうな笑みを浮かべるキキョウ。カルナたちはそれぞれ顔を合わせ頷き合い、キキョウと向かい合う形に立った。
次回予告
カルナたちと、恐るべき強さを見せた浄化の神キキョウがバトル。カルナたちはキキョウに認めてもらえるのか?
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登場人物プロフィール
キキョウ
秘密の花園に住む人から神になった秩序と浄化の神。人と会う時や、地上に降りる時はローブを羽織っている。アシュラの両親の友であり、キラミラの命の恩人であり、シャカとヴァルアの師匠。神の中でも最上位クラスの強さを誇る
属性:秩序、神聖、光、雷
クラス:ルーラー
出身地:不明
種族:神
年齢:50000
誕生日:5/9
身長:176cm
体重:57kg
好きなもの:仲間、甘いもの、花、動物、弟子、人類、地上
嫌いなもの:辛いもの、父、父親の周りの神たち、人と世界に仇なす者、穢れ、戦い、戦争
趣味:食べ歩き、舞、旅、ガーデニング、楽園にいる生き物の世話
特技:浄化、戦闘、剣や槍や弓を使う舞、