黎明の星〜施しの英雄と龍殺しは異世界で生きる〜   作:砂門

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一話目から、日常回という名のこの世界でのカルナとジークフリートの友人登場回です。
カルナとジークフリートがギルドに所属してから一気に飛んで、二年後です


第一話~日常

 カルナとジークフリートがギルドに所属してからおよそ二年が経った。二人は現在『聖なる七騎士(サークレット・セプテット)』という班の一員となっている。

 

 人間のように眠り、目覚めてカーテンを開けると太陽が顔を見せ始めていた。カルナは朝のルーティンである沐浴をするため、フレアフルールにある泉へと足を運んだ。これまで宿泊した客のなかに、毎日沐浴している者がいたのか希望すれば出来たが、正式に所属している今は予約せずとも好きに行くことが出来る。

 

 沐浴を済ませ館の大広間へ。そのカウンターには既にジークフリートとマスターハイリの秘書キリヤがいた。ジークフリートは朝食を取っていたらしい。肉体は生前よりもさらに丈夫ではあるが、人として食事や睡眠が必要だった。カルナがそろそろ来るであろうことをこの二年で察していたキリヤが、カルナ専用のモーニングセットを持ってきた。生前からもサーヴァントであった頃からも有り得ないような穏やかな環境。時に過酷な任務をすることがあるとはいえ、戦が起こったりしない国だった。

 

 ゆっくりしているうちに、セプテットの面々が次々と顔を出し、少しずつ賑やかな朝になっていった。セプテットのメンツは、しっかり者でよくツッコミ役になるリーダーコイド、牛の角のような兜をかぶる巨漢ジュール、紅一点でサポートタイプユーリン、新米の魔術師フラウとライト。そしてカルナとジークフリート。彼らが揃うと、キリヤが依頼内容が書かれているであろう紙を持って現れた。

 

 

 「珍しく比較的過酷なミッションが来ております。いかがいたしましょうか」

 

 

 「行きますよね」と言葉にせずとも目で伝えて来る。無論、彼らは行くと頷くのだ。ミッションランクはBランク。

 

 

 「場所は?」

 

 「フルールの外れにある廃坑です。ミッションっぽいですよね」

 

 

 なぜか行かないキリヤがわくわくした様子で言う。実は行きたいのかもしれないが、キリヤはこのギルドで受付のようなこともする存在でもあるためなのか、なかなか離れられないのだ。

 

 

 「よっしゃ!今日も頑張るぞ!」

 

 「うん。がんばろうね」

 

 

 誰よりも張り切っている様子のフラウとライト。彼らはそれぞれ、カルナとジークフリートの弟子である。フラウは孤児で、カルナが雨の日に助けギルドに来た明るく優しい火の魔術を使う少年。ライトは凶悪な獣に襲われかけているところをジークフリートに助けられた、少し引っ込み思案で心優しい水の魔術を使う少年だ。言葉数が少なく、トラブルも少なくはないカルナやジークフリートを慕い、突然弟子にしてくれと頼み込んでからはや一年。最近ようやくミッションに参加できるようになった。

 

 

 「私の方である程度調べ次第、詳しくお伝えいたしますのでそれまで今しばらくお待ちくださいませ」

 

 

 キリヤにそう告げられ、メンバーは準備のためそれぞれに動き出した。カルナとジークフリートは特に準備することもないため、それぞれの武器の手入れをしたり軽く素振りをしたりしていた。その様子を興奮しながら見る少年二人。

 

 二人が使っている武器はかなり特殊だった。カルナが使っているものは、この世界のこの国に来てから手に入れた『日輪の槍』。基本装備のようなもので、光の泉にある太陽に照らされて固まったという謎の物質で出来ているという。ジークフリートは『黒龍の聖剣』。黒と灰色を基調とした剣で、連射可能となる宝玉のようなものが特徴。こちらはどこかの洞窟に住む巨大な竜の鱗で出来ているという。どういう構造なのか、ジークフリート本人の硬さがそのまま反映されたような硬度を誇る。

 

 

 「む?」

 

 「どうした?」

 

 「鍛冶屋に用が出来た」

 

 「鍛冶屋?」

 

 「ああ。注文していた武器が出来たらしい」

 

 

 二週間ほど前から注文していた武器が出来たと、二人の基本装備をすべて手掛けた人物から連絡が来たのだ。

 

 

 「鍛冶屋って?」

 

 「フラウたちは知らなかったか?」

 

 「うん」

 

 

 実はカルナとジークフリート以外の戦闘要員であるギルドメンバーの武器は、キリヤが注文したものを使っていた。これらの武器もかなり精巧に造られているが、誰が造っているのかは誰も知らなかった。知っているのはカルナ、ジークフリート、ハイリ、キリヤなど一部のメンバーのみだ。

 

 カルナとジークフリートは、フラウとライトにしっかり準備しておけと言って館を出た。

 

 

 ――――

 

 

 カルナとジークフリートは、二人が絶対の信頼を寄せる鍛冶師がいる店に来た。フルールのほかの基本レンガなどで出来ている建造物とは毛色が変わっており、丸い朱色の柱と黒い壁が特徴の木で出来た異質な店構えだ。誰もが気にはなっていても、その異質さからなかなかは入店できずにいた。入ったとしても店主が出てこないことがある。店として如何なものかとカルナでさえ思っている。本人曰く、来ていても集中していて相手が出来ないとのこと。

 

 ――カランコロン

 

 来客を知らせる不思議な音色を奏でるベルが鳴る。出てこない。自分が呼びつけておいてしばらく出てこないことがある。カルナたちが相手でも同じ。

 

 

 「アシュラ、いるか?」

 

 

 ここの店主にして武器職人の名はアシュラ。本名はヨミ・暁・アシュラという。カルナが呼びかけると数分後に、ほぼ使われていない受付カウンターの奥から暖簾を潜り現れた。

 

 その見た目は、後ろ髪を肩あたりで雑に切り、横髪を胸元まで伸ばした癖毛の黒髪で、毛先は赤。どういう構造なのか地毛だ。瞳は毛先と同じく血のような紅。服装は裾が燃えさかる炎を思わせる黒を基調とした法被。耳は先が尖っており、ヘリックスピアスをしている。十代後半の少年と青年の間の年頃に見える凛とした整った顔立ちをしている。彼を見れば誰もがその見た目に驚くだろう。カルナたちが信頼を寄せる鍛冶師の見た目がどう見ても少年なのだから。しかし実際の年齢は百歳を超えている。彼は、この見た目でありながら鬼族でありその最上位である鬼神。初代アシュラの子孫であり、実は王家出身だ。

 

 しかし確かにこの少年こそ、カルナとジークフリートの武器を造った張本人だ。彼が纏っている法被やピアスもただの服とアクセサリーにしか見えないが、れっきとした装備であり防御力に優れた逸品だ。

 

 

 「いらっしゃい」

 

 「気づいていたな?」

 

 「君たちの気配に気づかないわけないじゃん」

 

 

 普段は消している二人の強大な気に気づくことができるのは、かなりの強者たちだけだった。そのうちの一人がアシュラである。

 

 

 「あ、ちょっと待ってて」

 

 

 思い出したように工房に戻った。今回はさすがに早く武器を持って戻って来た。

 

 

 「はい、どーぞ」

 

 

 二人は息を飲んだ。すぐに目を奪われる美しい緋色の弓だった。白や金の波紋のような見事な彫刻で彩られていた。もちろん持つときに邪魔にならない場所だ。どれだけ眺めても飽きない。そしてアシュラはというと、ドヤ顔だった。これだけの武器を造ったのだ。自分の腕を誇っている顔だった。

 

 

 「ありがとう、アシュラ」

 

 

 一目見て、凡人やちょっとやそっとの非凡な戦士では使いこなせないものだとわかった。それをカルナの腕を信じて造り上げたのだ。カルナは顔を綻ばせた。

 

 

 「ありがたく使わせてもらおう」

 

 「武器は使ってナンボだからね。たっくさん可愛がってあげてね」

 

 「ああ。これからこれで戦うのが楽しみだ」

 

 

 これだけの武器を二週間で造ったのだ。店に来てもらっても相手にできるはずもなく。人によって発狂しかねないような集中力と技術と汗の賜物。カルナがそういうと、アシュラはニッコリ笑って頷いた。

 

 

 「それじゃあ、キリヤさんにも見せびらかして来て!びっくりすると思うもん」

 

 「そうだろうな」

 

 

 アシュラは何故かキリヤを驚かせたがる。彼は、愛情を持って造った武器たちを任せるほど信頼を寄せている。

 

 

 「これから任務だったりする?」

 

 「ああ。この国の外れの廃坑らしい」

 

 「それって・・・キリヤさん情報だよね?」

 

 

 カルナとジークフリートは沈黙した。キリヤの位置情報の正確性。それはそのうち発覚する。

 

 すぐに我に返った二人は、アシュラに礼を告げ店を出た。彼は人懐っこいが桁違いの強さを持ったことで他国で差別を受けたことがある。人を差別せず、当たり前のように受け入れてくれたフルールの懐の深さに惹かれて店を構えている。

 

 無邪気な子どものような彼だが、その心に秘めるものは尋常ではない。燃えるような、いっそ悲しくなるような怒りと憎悪の心。燃え盛る炎が消え、お人好しで明るい少年が笑顔を曇らせなくなる日が来ることを、カルナたちは願う。友として、仲間として

 

 

 ――――

 

 

 カルナとジークフリートがギルドに戻ってくると、キリヤが今回行く廃坑がどんな場所なのかの調査を完了させたのか、セプテットのメンバーが集まっていた。

 

 

 「おかえりなさい。おや、アシュラさんのところに行ってきたのですね」

 

 「ああ。これがその武器だ」

 

 

 早速アシュラが造った弓を見せた。一目見てキリヤの翡翠色の瞳がキラキラと宝石のように輝いた。興味津々な様子で観察していた。カルナが苦笑するほど真剣に。自分たちもこのような顔をしていたのであろうと容易く想像できる。キリヤは、アシュラが満足できる反応を見せてくれた。友人としてこちらも鼻が高いというものだ。

 

 

 「おっと本題を忘れるところでした。今回の任務についてです」

 

 

 今回の任務はランクBからAへと難易度が引き上げられた。場所は問題ではなく、その廃坑が問題だったのだ。

 

 

 「実はこちら、フルールのはずれではあるのですが・・・」

 

 「どうした?」

 

 「世界政府がかつて占拠していた鉱山であることが発覚いたしました」

 

 

 カルナでさえ動揺を見せた。 

 

 世界政府とは、この世界の中心国セントラルにある問題ごと例えば大きい戦争や内紛などが起こった時などに動く組織で、時に世界の方針をも決める権限を持つ。最悪の場合国家の領域にまで足を突っ込んでくるため、煩わしく思っている国もある。そんな世界政府について特筆すべき点は、所属している大臣が全員セントラルと同盟を結んでいる国の王たちであるということだ。

 

 このような組織にも闇がある。フレアフルールではハイリやキリヤ、最高戦力カルナとジークフリート、そして所属していないが事情を知っているアシュラなどのメンツのみが知っている。それが同盟国のなかには人身売買や侵略行為などを行うような国があるということ。そのうちの一つが戦争を先導したのだ。世間はあくまで噂だと思っていることだが、フレアフルールが調べるにあたり真実であることが分かってしまった。そんな組織が世界政府の傘下でもあるのだ。

 

 そして、そのうちの一つが占拠していたとされるのが、今回任務のために向かう洞窟。そこは元々炭鉱であったとされ、そこで多くの奴隷が無報酬で働かされていたという負の歴史がある。その後大きな事故が起きた際、世界政府の命令で多くの奴隷が生き埋めにされた。

 

 

 「そんな場所でなんの任務をするというんだ」

 

 「まず依頼人は誰なんだ?」

 

 「依頼主は我が国の王フォリオ陛下です」

 

 「はぁっ!?」

 

 

 フォリオ王が、フレアフルールに直接依頼した。内容は、廃坑の再調査。これから行こうとしている場所をほとんど世界政府から押し付けられるような形で、フルールの領地として貰い受けることに決まったため、改めて詳しくこの洞窟の事件や内部の状況を知っておきたいというもの。そこで白羽の矢が立ったのがフレアフルールだった。これまでの実績を見たうえで任せてくれたのだ。キリヤが行きますよね?と言葉の端に滲ませていた理由が分かった。

 

 

 「そういうことか・・・」

 

 「責任重大だな」

 

 「今回の任務は危険度が高いうえにトップシークレット。決して口外してはいけません。もう一度聞きます。行きますか?」

 

 「無論」

 

 

 カルナとジークフリートが強く頷き、それに同調するように班員たちも頷いた。キリヤは安心したように微笑み、受領印を押した。

 

 

 「行ってくる」

 

 「はい。ご武運を」

 

 

 カルナたちは頷くと、堂々とした面持ちでギルドを出た。

 

 彼らは、数時間ほどかけて廃坑に到着した。そのころには昼になっていた。見た目はかなり立派な廃坑。世界遺産候補の一つではあるのだが、なぜか登録に乗り気でないのが世界自然保安機構通称NSO。ここは世界の貴重な文化や歴史、自然を守ることを目的としたれっきとした国際機関だ。

 

 

 「あれ?おーい!」

 

 「ん?あれは」

 

 

 カルナとジークフリートに近づく少年をコイドが止めた。止められた方は首を傾げている

 

 

 「アシュラ、どうした」

 

 「え?知り合いか?」

 

 「ああ。彼はアシュラという鍛冶師なんだ」

 

 

 鍛冶師といってピンときた。ピンと来たが、この人懐っこそうな顔と店先に顔を出さない姿が一致しないのだ。かなり評価の高い鍛冶職人であり、キリヤも信頼を寄せている。そんな鍛冶師がどんな人間なのかと思っていたのだが、どこからどう見ても青年期に差し掛かかろうとする年ごろの少年の見た目だった。

 

 

 「オレ・・・たまにギルドに行くんだけどなぁ」

 

 

 まったく悲しくなさそうに大げさに肩を落とす。

 

 

 「もしかしてこれから任務?」

 

 「そうだ。この廃坑でな」

 

 「おい、守秘義務!」

 

 「この男は問題ない。部外者じゃないからな」

 

 

 フレアフルールの生命線となる武器や装具などを造ってくれている関係者。

 

 

 「んじゃ、頑張って」

 

 

 アシュラはこの近くで武器の原料となるものを採取しにきていたのだ。フレアフルールにたまにはご依頼くださいね、とキリヤが言っているのを聞いたことがある。

 

 アシュラはカルナたちに手を振り、用があるであろう森へと入っていった。その森も本来は危険区域。そんな森に何の躊躇もなく足を踏み入れていく。

 

 

 「オレたちも行くぞ」

 

 「おう!」

 

 

 今一度気を引き締め、カルナたちは炭鉱カエン洞窟に突入した。

 

 

 




次回は、ミッション遂行回です。

お楽しみに


行が長すぎるときがあるため、段落ごとに一行あけました
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