ステータスの更新をしたら、カルナのランクが11になっていた!
賑やかな大広間を抜け、カルナたちはキラの自室に来ている。ここに、ギルドの面々は来ない。ハイリやキリヤの気遣いにより、コイドたちに部屋に入らないようにと言ってあるからだ。
「ミラはどうだ?」
「相変わらずですね。セントラルの様子を窺ってくれています」
ミラはキラの双子の弟であり、大胆にもセントラルに研究所を置き発明家として活躍している。どういうわけか、ミロワール族であることを隠すことが出来ていた。差別されるというわけではないが、珍しい人種であるためにセントラルの組織の者たちにその眼を利用されかねないのだ。
キラとミラは非常に仲が良く、フルールとセントラルと遠く離れているにも関わらず意思疎通が可能。
「ねぇそういえばなんだけどさ」
「どうした」
「オルフどうなったの?」
カルナたちは沈黙してしまった。確かにアルスファは無事に落とすことができた。しかし黒幕であるオルフはどさくさに紛れてかどこかに逃げてしまったのだ。
「ウルあたりが拘束してくれているのではないか?」
「あぁ、確かにそうかも」
「オルフとかいう人は、トレミーでしたっけ」
「うん。そうだよ」
「もしセントラルに戻っているならミラが見ていたりしませんかね」
「あるかも」
セントラル中に見えない監視カメラのようなものを飛ばしているミラ。その彼なら分かるのでは、と。ただ、キラとミラが話し始めると雑談が終わらない。離れたところで暮らしているため寂しいのか。
「なかなか会えないもんね」
「その代わり毎日リモートで話すんですよ」
普通に画面越しとはいえ毎日顔を合わせていたようだ。仲が良いのは良い事だと微笑ましくなるカルナたちであった。
身体中から花びらを飛ばしているように見えるほどの笑顔でミラに電話した。どんなに電話をしても楽しいものは楽しいらしい。
『はーい、キラ。おはよう』
「おはよう、ミラ」
画面に映る少年はまるで鏡写しのようにそっくりな少年だった。違いは薄氷のような色の長髪と銀色の瞳だ。服装はキラと同じく白衣だが、油がついて汚れておりヨレヨレだった。彼はキラと同じく人見知りで、キラ以上に人との関わりが薄い。ミラもカルナたちにはとても懐いている。
「えーっと、カルナさんたちがミラに聞きたいことがあるみたい」
『僕に?なんでしょう?』
「すまない。実は先日任務でトレミーの幹部に出会したのだが、ギルドを破壊する時に逃げてしまったようだ。見ていないか?」
本当ならその場でやってしまいたかったのだが、思いの外素早くその場から退いた。アルスファを落とすことには成功したが、幹部を倒すことには失敗したようなものだ。新たな組織が誕生しかねない。
キリヤはミラにオルフの写真を見せた。ミラは顎に手を置き、考えるような仕草をすると別のパソコンを起動した。
『うぅーん・・・セントラルには帰って来てないかもです』
「そっかぁ。どこかに隠れているのか、ロータスが対処したかだね」
「それにしてもミラ、相変わらずよくセントラルから隠れられているな」
ミラの情報網もかなりのものだが、セントラルが持つ情報網は巨大組織が集まっているだけあり世界中に張り巡らされていると言っても良い。しかし、そんな網から掻い潜っているのがミラだ。
『優しい紫の方の結界のおかげです』
「紫の方?」
「結界?」
ミラの口から告げられた「紫の方」そして「結界」。かなり強力な結界は、ミラの拠点を隠しているうえに種族の特徴も見えないようにされていた。
「紫の方とは?」
「僕とミラが拉致されて酷い目に遭わされている最中、助けてくれた人です」
キラとミラは珍しい眼を持つミロワール族の末裔。しかも双子となるとさらに珍しい。それぞれ違う性質の眼を持つ二人を狙う者たちがいた。それが協会。その際に両親を殺害され、泣き叫ぶなか二人は協会の幹部に誘拐され利用されかけたのだ。その際に酷い虐待を受けたことで、二人は対人恐怖症になってしまった。
その眼を抉り出されそうになった時、その人は現れた。紫色のローブを纏うその人は、協会の幹部や周りの人間を瞬殺した。
「瞬殺?」
そこにいた幹部は一人ではない。十人近い幹部と百人近い部下たちを目に見えない速さで倒した。
「そんなにも強いのか。そのローブの救済者は」
『僕は信じてもいない救いの神様に祈ってました。そんな時に来てくれたあの人。まだ小さかったから声は覚えていないけど、僕たちの手を引く手はすごく優しかった』
人の心が見えるキラとミラから見たその人は清廉で優しく慈悲深さを併せ持っていた。二人の心を温めてほぐした。救済者は、二人に優しい夫婦を紹介してくれた。子宝に恵まれず、およそ百年前であるため不妊治療というのも難しかった。そんな優しい夫婦に二人を預けた。
「血が繋がらない僕たちを本当の子どもとして育ててくれました」
『あの人に助けてもらえなかったら、今頃僕たちはどうなっていたのかって想像するだけで怖い』
二度とそんなことにならないように、救済者は二人が信頼する人の前以外でその髪と目の色を隠す術をかけてくれた。しかし、素顔を見ることは叶わなかった。
「僕たちはずっと探してるんです。会ってあの時ありがとうって言って、あの時より強くなったよって言いたいんです」
「そりゃ会いたいよね」
「もしや先日森で見た人がその人だったのでしょうか」
『紫色の服だったんですか?』
「ああ。一瞬ドレスに見えたが、なるほどローブか」
アルスファのアジトの近くの森、そしてカエン鉱山に現れるなりその場を清めその場からすぐに消えた。
「シャカというロータスのマスター説はないだろうか?」
「有り得るのでは?シャカさんも色んな人を救ってらっしゃる方ですから」
「これで違ったらめちゃくちゃ気まずいやつじゃん」
今の所シャカ説を推しているジークフリートとキリヤだが、そうじゃなかったとき気まずくない?というのがアシュラだ。聴いてみるのは良いのかもしれないし、意外と話が弾む可能性はあるのではとキラが言った。カルナはなんとも言わなかった。
「おーい、ししょー!!」
キラの自室には入らずドア越しからカルナを呼ぶフラウ。
「ギルドの前に馬車が停まってる!」
「・・・馬車?」
もしや噂をしているその人では?とカルナたちはキラとともに退室し、外に出た。そこには
「えぇ・・・なにこれ」
「完全に馬車ですね」
三頭の白馬がひく大きな馬車。馬車を引いているのは紺色の逆だった髪が特徴的で、群青色の双眸の青年。てっきりウルだと思っていた。馬車の扉が開くと見知った顔の男が降りてきた。ウルだ。彼がおそらく主の手を取る。ゆったりと降りて来たのは
「うわぁ、こりゃまた美青年だねぇ」
「シャカさま、ようこそお越しくださいました」
「キリヤ、出迎えありがとう」
聞き心地のいい高音男声。絶世の美青年。キリヤとにこやかに軽く挨拶をすると、彼はカルナたちに視線を移した。そんな彼の一方で、カルナたちの視線は服に向いていた。
「な、なんか・・・個性的だね」
「個性が爆発してらっしゃいますね・・・」
「お前ら、俺たちの主に不躾な視線を向けんじゃねぇよ」
「オレはシャカさんの服を見ただけだよ」
恐れを知らないアシュラがはっきり言い返した。群青色の青年が訝しげにアシュラを睨む。アシュラは涼しげな顔で彼の目を流した。
「お前がシャカか」
「ああ」
「会いたいと思っていた」
「そうか。実は私も会いたいと常々思っていた」
フルールにも興味を持っていたが、特に関心を向けていたのはフレアフルールでそんななかでもカルナたちへの興味が強かった。カルナにそう言われ、シャカは嬉しそうに微笑んだ。
「少しこの街を見たいのだが良いだろうか?」
「ぜひ。見ていってください」
いつの間にか出て来たハイリが言った。ハイリはこの街の町長のような存在でもある。
「バザールとか回ってみる?」
「バザール?」
「はい。ここの名産品や作物が並ぶ屋台がずらりと並ぶエリアなんですよ」
観光客に特に人気な場所で、そこで土産を買ったり食事をする人が多い。新鮮な海鮮類も売っている。どうやらシャカの興味を惹いたらしい。
カルナたちは最初にシャカをバザールに連れて行くことにした。馬車をギルドの邪魔にならないところに停め、群青色の青年も付いてきた。シャカの友人か相棒なんだろうと察して何も言わなかった。
「これがバザール。すごいな」
カラフルな屋台がずらりと並び、見ているだけでも楽しい。さらにそこかしこで美味しそうな香りがしてつい立ち寄ってしまう。
「ここに来ると腹が減る」
「食欲はどうしてもあるからな」
「普段から修行をしている私と言えど、これは思わず惹かれてしまうな」
「お!美人さん!食ってみないか」
「いただこう」
全く警戒心もなく肉を食べた。香ばしく焼かれた鳥に自然に頬が緩む。意外と毒味しないんだ、と思うのはアシュラだ。
そのあとは、次々とすすめられフルールのグルメを楽しんでいた。
「シャカは本業がマスターなのか?」
「ん?いいや。本業は国王だ」
大声でリアクションしてくれたのはアシュラだけだった。カルナたちも驚いてはいるが、リアクションが薄いのはいつものことだ。
「ところでアシュラ」
「ん?」
「君はこの国で鍛治職人をしていると聴いた」
「うん。そうだよ」
敬語など知らないアシュラだが、シャカは意に介した様子はない。寛大な王であるようだ。
「来る?」
「ぜひとも。少し私の杖にヒビが入ってしまって」
「杖にヒビ?」
杖で戦う人もいるにはいるが、ヒビが入るとは。普通剣ではと思ってしまった。
「私の腕もまだまだだ」
力の抜き方がとここで反省し始めた。それじゃ、おいでよと言ってアシュラが快く案内した。
「ここだよ」
「ほう、立派だな」
店内にずらりと並ぶ武器たち。シャカも群青色の青年も、その武器の精巧さはいやでも分かった。
「こんな複雑な形の剣、どうやって造ったんだ」
それまで無口だったが感心して口から出ていた。アシュラが嬉しそうに笑っていた。自分の腕に誇りがあるアシュラは、純粋な褒め言葉を素直に受け止める。
「ところで、ヒビがいった杖はどこに?」
「これだ」
「・・・かなり魔力を込めて撃った感じ?」
「よく分かったな。そのとおりで、私の魔力に杖が耐えられなかった」
「これ、何回修理した?」
アシュラの顔が職人の顔に変わった。カルナたちでも滅多に見ない表情だ。
「もはや分からないな」
「場所によって使われてる材料が違うのが気になる。そりゃ脆くもなるよ。シャカさんの腕の問題じゃない」
本人は一人で反省していたが、問題なのはシャカの武器捌きの腕ではなく職人の腕だ。
「杖に使われてる材料今あったと思うからすぐに修復できるよ」
「本当か?」
「うん、任せて」
アシュラは慎重にシャカの杖を手に取ると工房に籠った。アシュラが作業している間に気になっていることを聞くことにした。
「キラ、シャカは救済者の気配に似ているか?」
「うーん・・・」
「救済者?」
シャカはカルナたちの数時間前の会話を知らないため、困惑している様子だ。
「違いますね。すこーし似てる気もしますが、神聖な魔力は感じない」
「えっと・・・」
「実は数時間前ある話をしていてな」
カルナたちは、数時間前の話をシャカに聞かせた。シャカと隣に控える青年は首を傾げていたが、少しすると顔がわずかに綻んだ。
「君たちも探しているのか?」
「ああ。特にキラとミラは思い入れが大きいだろう」
「私も気になりますね。ぜひご教示をお願いしたいです」
浄化の力をもっと強くしたいキリヤも紫色の救済者が気になる。
「実は私に魔術や戦い方を教えてくれたのが彼なんだ」
「彼?男なのか」
カルナたちは性別すら知らなかった。名前すら名乗らず、顔すら晒すことなくシャカを導いた。
「私たちも彼を探しているんだ」
世界最強の魔術師と謳われるほど実力を付けたシャカも、守る力を教えてもらった青年も、探しているのに影すら見られずにいる。
「協力させて欲しい」
「ありがとうございます」
キラが言った。命の恩人なのだから当然と言えば当然だ。
「シャカさーん、お待たせー」
穏やかな空気を切りながらアシュラが登場した。はい、どうぞと嬉しそうに渡した。
「え・・・?」
シャカは持った瞬間目を見開いた。初めて持った時と同じ重さだった。
「あと強度をあげるやつ塗っといた」
「ありがとう」
修復してくれたばかりか、強い魔力に耐えられる塗布材での補強もしてくれた。
「ご贔屓に」
「ああ、そうさせてもらおう」
にっこり笑うと、アシュラは群青色の青年に目線を移した。
「なんだ」
「君のその服・・・相当良くできた鎧だよね」
見た目はどう見ても普通のコートだ。にもかかわらずアシュラはそれを鎧だと言った。
「ちょっとオレと手合わせしてくれない?」
「手合わせ?」
「君の鎧と君の実力を見たい。いいよね?」
有無を言わせなかった。青年は頷かざるを得なかった。
「俺は・・・ヴァルアだ。よろしく」
「うん!」
フレアフルールのバーサーカーが攻撃性しか感じないのに無邪気な笑顔で手を出した。
ヴァルアは、若干手を握り潰されるのではと思いながらも応じた。
次回予告
フルールのバーサーカーアシュラと、群青の鎧を纏う騎士ヴァルアのバトルが始まる
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ミラ・マオヴァ
治癒と創造の双子の弟。世界の重要機関が揃うセントラルに拠点があり、そこで日々発明開発を行っている。遠距離セキュリティー解除やハッキングもお手の物。兄と同じく人見知り
属性:金
武器:マシンガン、マスケット
クラス:アーチャー
ステータス
基礎パロメーター
筋力5
耐久6
敏捷9
魔力8
幸運5
スキル
・メンテナンス15
・命中率15
・直感12
宝具
・世界宙図《スカイ・オブ・ザ・アイ》10(対国)
・世界天眼領域《ワールド・アイ》15(対界)
・水鏡空ノ魔弾《ミラージュ・バレット》10(対軍)