傀塚家領地(991年記録)
人口:約5万人。
石高:約75万石(主産業:米、衣服、金)
内、米に限定して34万石。備蓄米30万石
(今年から水稲農林1号の運用を開始した為)
領土:主に蒲原津、沼垂、千屋郷、佐渡国(名代)
傀塚荘(阿賀野川以北や新津丘陵周辺)。
その他合わせて大体新潟県の形。
非術師家臣:いっぱいいる。
術師家臣:77名。
(内領内在住15名、
忌庫:特級呪具6個、特級呪物5個、一級呪具3個、その他いっぱい(御守りなどを含む為)
呪量/呪質:5.03/0.43
(平安京を1とした場合の呪霊の出現量/強さ。この場合平安京の五倍の速さで平均三級程の呪霊が出現している)
主な政策:九民一公、楽市楽座、式神交付、四核三重大結界、農作重視、機織重視、備蓄米、予防接種義務化(天然痘)、荘園開拓支援、環境整備、国城建設中
当主
構築術式を持つ呪術師にして戦にて新潟付近を奪って治めた先代の血を継ぐ豪族。
術師としての力量に関しては攻撃性能が3級だが、防御は1級からも防げる。
式神術、結界術を筆頭に母が編み出した供食術、風水術など様々な技術を幅白く引き継ぐ。
莫大な規模の金脈と安価な採掘手段の化身(構築物の操作による抽出)の為、金払いがいい。
朝廷や術師界隈への献金も今では他と比べて一番納めており、呪詛師の雇用や御守りの製造などで平安京の治安向上にも貢献している。
相変わらず京には顔を見せないものの、近年ではその発言は決して無視出来ない領域に突入した。
天皇「いい加減貴族になれよ原始人」
非術師家臣「さっさとお城を建てろよ原始人」
術師家臣「女は婿入りさせろよ原始人」
魔子「キッショ。なんで1人で領土管理出来てんだよ」
周辺地域の皆さん「死ね。飯は寄越せ」
住民「霊験あらたかでなんかありがたそう」
……代わりに、人間関係はあまり良くなく、外交も内向気味。
代わりに戦争には毎回勝っている。
991年。
これ迄討伐されて来た特級呪霊の爪痕、主に耕す農民が大量殺害、病の発生による田畑の放置から発展した慢性的な飢饉が続いて10年目のこと。
「藤泰平太極図」により天運から米の収穫を安定させ、周囲の悪環境と断絶した傀塚の領地は益々目覚ましい発展を遂げていた。
その勢いや破竹の如きであり、農民でも米を毎日3食たべられると言えば当時の人々は必ずや嘘だと、手紙を見た貴族でさえ鼻で笑うような眉唾物であったという。
それでもこのままで居るよりはと藁をも縋る気持ちで訪れた者には、住まうには
そうして厳しいが、飢饉の地とは違う。これは未来を広げる為の厳しさだと気付いたものだけが残り、逃げ出した者は山賊になって殺され、怠惰な者は自分の田んぼを得られず税に苦しんで死ぬのがこの領地でよく見る光景だった。
「──つまり私達の領地は普通なんです。民に優しくないし、取る物は取る。人口だって全ての土地を合わせて平安京の三分の一で、呪霊も三級程度。先ず討伐で死ぬことはありません」
「……その普通とやらが出来ない所はどれだけある」
「ほぼ全てです。酷いものですよね。中抜きに呪霊の放置、病の蔓延に荒れて見る影もない水田。水も土地も枯れている訳でもないのに、人は死んでいく」
しかし、そんな光景が楽園に見えるのが今の日本の惨状である。
呪霊を放置しての町村の全滅が各地で発生し、それによって減った収益を補うために徴税官が中抜きを行う。
そうして減った税収から貴族は自身の資産の流出を恐れ、それが転じて市場に流れず米が高騰。
金が不足し、切り詰め、放置されたあらゆる物が病がより蔓延する環境を整えていく。
「悪い流れの渦に呑まれ、それらが負の感情をより沸かせ、呪霊が増え、最初に言った町村の全滅をより加速させている」
「始まりが呪霊であるなら、呪術師は何をしていた」
傀塚魔子と子供の宿儺は、"窓"から報告を受けた呪霊を祓う為に一ヶ月間の出陣を行っていた。
白金の下に宿儺が来訪してから一年。
基本的な教育と呪術師としての心構えを一ヶ月で修めた宿儺はその後呪術衆に合流。
普段は結界術や式神術、縛りの勉強や自身の術式の研究を呪霊の除祓と並行して行っていた。
「ずっと平安京に居たんですよ。過去に起きた百鬼夜行。四体の鬼が起こした貴族狩り、
「だから多くの呪霊が野放しになったと……くだらんな」
宿儺が吐き捨てるように言った。
保身が巡り巡って自らの首を絞める行いになり、飛び火して自身に迷惑をかけている。
嗤える話だが、自身には関係ない話だ。
なにせ、宿儺の故郷が滅んだのに呪霊は一切関係無かったのだから。
「私達が祓うのは、そのくだらない事の後始末です。平安京以外の呪霊を、表の世界の領地だとか関係なく祓う。距離の都合で南は無理でも、北は全て私達の管轄です」
「はぁ……面倒だ」
「姉様の御守りや政策で三級以下を気にせずに済むだけマシです。気合いを入れなさい」
他人の為に力を使う。
呪いの道を踏み外した宿儺だが、だからと言って性根が変わった訳ではない。
直ぐに出来はするが、儀式には時間を要した方が良いと言われ、そういうものかと宿儺は待っている間に二級以上の呪霊を祓い続けて来た。一級だって何度も祓っている。
「どうせまた雑魚だろう。俺が出向くまでもない」
「術師は二人一組が原則です。もし特級呪霊と遭遇……」
「あーあー言うな言うな、式神モドキ。その話は耳にタコが出来るほど聞いた」
未だ特級呪霊は見掛けてないものの、既に宿儺にはそれすらも1人で容易に倒せる自負があった。
▲▽
今まで出会った呪霊は尽く弱かった。術式があろうと無かろうと掌印を結び"解"と言えば細切れになった。
初めこそ触れなければ斬れなかった術式も、直ぐに髪や鼻くそを飛ばして遠距離で刻める様にしたし、今ではそんな事をしなくても10m先の相手を微塵切りに出来る。
等級も何も関係ない。それ程強い俺が居るというのに、今回は式神モドキさえ引っ付いている。
癪な話だが、手合わせで俺が一度も勝てた事のない相手だ。
今回も退治も早々に終わる。
そんな事よりも考えるべきは飯の事だ。
前回は上の山々への出陣だったが、今回は平安京に続く道。
女の飯には劣るだろうが、噂によればこの先山の幸を山ほど詰めた鍋で有名な宿があるらしい。
さて、食いでのある物であれば良いのだが……。
『ふうん。ねえ、"宿儺"って"狐"肉は好き?』
「"解"」
山道の草木に挟まって座っていた単眼の呪霊を刻む。
不遜にも俺に声を掛けるとは。そのまま大人しくしていれば見逃してやったものを。
『食べるのって楽しいよね。俺は"人の記憶を食べる"のが好き』
「……ほう? 効いてない…いや、治すのが早いだけか」
再び話し出す様子を見て足を止め、振り返らずに周囲を探る。
気付けば式神モドキが居ない。風景こそ変化はないが……生得領域か。
大方名前を呼んだ相手のみ入れる縛り。
それと名前。先ほどから式神モドキは俺を宿儺と呼んでない。読心、記憶を読む術式か。
『記憶に味はないけどね、味以外が全部楽しいんだ。子供みたいに泣き喚いてさ、気まぐれに"記憶を食べたり"、適当な"記憶を吐き出してやる"と毎回面白い"壊れ"方をするの。楽しいよ』
身体を治すのに呪力を使う以上、攻撃を続けるのは続行でいい。
……しかし妙だな。呪霊の自己回復にも限界はある。
既にこの呪霊には30秒以上"解"を浴びせている。普通なら限界が来るはずだ。
……これが本体ではない?
『例えばね──"俺が動いた記憶を食べ続けば、ソイツの頭の中ではずっと動く前の止まってる俺しか居ない"んだよ。ずっと頓珍漢な事考えてて面白いんだ』
──真横に殴り込む様に踏み出す。
何かを殴ったような感触と共に自身の内側で巡る呪力を強め、何処に干渉されたか探り、髪に混ざっていた呪力の糸屑を払い取る。
同時に蹴られた様な衝撃。視界が揺さぶれる中、気付けば俺は、式神モドキの腹に顔を
ふむ、二人同時に術中に嵌められてたか。
直ぐ様お互いに背を合わせるようにし、周囲に警戒を払う。
先程まで攻撃していた場所には、俺が斬り刻んだ跡だけがあった。
化かされたか。
「──…がこん。無事ですか」
「問題ない。分かった事を言え」
「殴るか菌糸を取れば術から抜け出せます。世界が停滞してたら殴りましょう」
「同じ見解だな。気を付けろよ、俺達を見て仕掛けてくるだけはありそうだ」
開示された術式は記憶を食べる、吐き出すの2通り。
食べると言い回した以上、接触はしてくる筈。
記憶を喰われた感じとしては感覚として分かる物ではない。
領域内に居ないにも関わらず生得領域と思考した所からして、現状が変わらない不自然さを脳が勝手に補完している……といった所か。
つまり、何をしても正体を暴くのは必須。
「"山陵の間 風溜まり" 醒曙」
「術式順転 "解"」
ならば全て斬り刻めばいい。
術式に更に呪力を流し、斬撃を格子状にして全体を斬り刻む……手応えがない。地上や木の上には居ないか。
式神モドキも何やら結界を展開したが……記憶への無効化する結界か?
「結界効果は」
「内部の者に幻覚、錯覚を見させない結界、結界術と縛りの応用です」
「そうか、ならば多少
は──っ!?」
視界が一瞬して切り替わる。
山道は空に。空は山に。
「──ッハハ! 思い切りが良い!」
特級呪霊。
察するに吐き出した記憶を再現する領域、展開されたのは地に堕ちる鳥の記憶!
俺の技と式神モドキの結界から存外やるのを見て、早々に切り札を切ったか。
「"龍鱗 無譚藍 要石" 追従六面」
しかし、空から落とすだけならば幾らでも対策はある。
腕の一つで結んだ掌印に自在に動かせる結界の"面"が展開され、その内一つを広げて足場にした。
相手が次々と攻撃を繰り出す手合いなら選ばぬ技だが、記憶の再現を行うような悠長な手合いはこれでいい。そこそこの威力で砕けるような脆い結界だが、飛び石に使うには便利なものだ。
「さあ防いだぞ、次はどうで」
フッ…。
"足場にした結界をすり抜け、俺は再び落ち始めた"。
強制力! なるほど、領域展開が必殺必中と言われるだけはある!
だが甘い。その程度なら速度を殺しながら堕ちれば良いだけの──イヤ待て、地面に着いたが最後、再び堕ち始めた様に、墜落死した鳥の最後も押し付けられるのではないか?
ならば──。
「進むべきは、上!」
ダッ ダッ! ダッ!!
結界を先々に予め設置し、それを駆け上がる。
使った面は再び追従し、再び俺の足場となる。
これで堕鳥は無力化した。
だが……これで終わりではあるまい?
『食記堕鳥 吐想溺魚』
「ゴポ……!?」
▲▽
深海870m。
宿儺を閉じ込めた領域が再現したのは、地震の予兆として扱われる事で有名なリュウグウノツカイの、死ぬ直前の記憶である。
人間の潜水限界は60mであり、それ以上は気圧差によって気絶する。
それは息を必要とするならば決して避けられぬ弱点。
「────っっ!!」
宿儺を襲ったのは単純明快な
上空1000mから墜落した渡り鳥の記憶を克服しようと、それは歪な肉体構造と呪力強化で耐えられていたに過ぎない。
生物として優秀な構造であろうとも、未だ幼体である以上限度はある。寧ろ数秒間持っている事の方が奇跡とさえ言える極限空間は、宿儺を迅速に死の淵へと追い込んだ。
(解は圧力で消える。海水の圧力は呪力で抑えてるが限度がある。空気が足りない。どれだ、現状を打破する方法は──!)
特級呪霊の術式は記憶の抜き取りと差し込み。
生存死亡問わず対象の記憶を奪い、それを別の対象に差し込む事で記憶の矛盾を起こし脳を混乱させる術式。
攻撃手段も多岐に渡り、脳が起こす記憶の補完と合わせて様々な幻覚を引き出すのも可能。
相手が混乱する程エピソード記憶だけでなく意味記憶、潜在記憶、未来記憶とより奪える範囲は拡大し、死体ならば問答無用で抜き取り、それらの過程で読心すら可能とする。
領域内では記憶された環境の再現も可能とし、呪霊の中でも破格の拡張性能を誇っていた。
『まだ死なない。まだ死なない?……もっともっと早く死ね! 昨日は今日だろ!? 狐肉美味しい? 宿儺はねえ』
その正体は、白痴の呪霊。
今がいつかも分からなくなっていく事。
自己の消失に対する恐怖に、そうなった者と接した者達の澱みから産まれた呪霊。
自らも白痴とする縛りを結ぶ事で特級呪霊へと至った、元準一級相当の呪霊である。
(──ある。俺が領域を展開すれば、全てに勝てる)
そうして大きな弱点と共に手にした力で襲い…完全に殺し切るには、彼らに時間を与え過ぎた。
宿儺による領域展開。
「………
────加えて、傀塚魔子による対策。
二通りの解法が、示される。
「█魔██子」
"解れた界 残遺の傀 無の偕楽 色界滓洸"────「無彩式」
一つ、それは不完全ながらも死の淵に立ち、確かに領域へと至ったもの。
未だ拡げ足りず、ただ内居る全てを斬り刻む斬撃が宿るのみの世界。
一つ、それは彌虚葛籠と簡易領域の狭間に合って道を外れた新たな領域対策。
術式を持った結界術の使い手のみ扱える、生得領域が持つ領域の押し合い性能のみ抽出し特化させた──閉じない領域を更に押し合い特化に先鋭化したもの。
決着は程なくして着いた。
本体である狐にも似た呪霊の領域は二つの領域に瞬く間に潰され、術式の焼き切れた呪霊は無数の斬撃によって細切りの粉へと変わった。
「ゴハッ! こはっ…は……中々、骨のある奴だったな」
「ええ…搦手ですが……確かにコチラを殺し得る相手でした」
2人が久しく呼吸を味わい、それから呪霊の遺した残穢を確認して先に進んだ。
始まって早々な出会いであったが、呪霊討伐は始まったばかり。
『"刀を取れ"』
『"弓を待て"』
『"馬を掴め"』
「……俺はここを通りたいだけだ」
「この地の戦場の呪いが集った特級呪霊……
「何をすれば3体も特級呪霊が産まれる…?」
『『『領域展開』』』
例えそれが三身一体の特級呪霊と遭遇したとしても。
『『『戦賭禍柄罸』』』
出陣した以上、必ず20日は巡回を続けなければならないのだ。
術式「冠狐想妻」
白痴の呪霊の術式。記憶の抜き差しが出来る。
幻術的なのが元々の運用だが、一番強いのは領域展開して死亡1秒前から記憶を再現し続けること。
白痴化の縛りのおかげでここまで強い呪霊になったが、代わりに術式運用が最適化されてない。
呪霊「毀武」
三体の一級呪霊が命を共有する縛りで特級になった。元々は三兄弟の術師。
1人は剣を操る「付喪操術」、1人は撃った矢を増やす「付喪操術」、1人は死体を操る「付喪操術」。三つの付喪操術が合わさり最強に見える。
実際軍団で襲うので強い。が、領域が焼き切れたら落ち武者だった。