呪具:一族列伝   作:何処にでもある

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 前回傀塚当主がやってたこと
・拡張術式「再構築/処女受胎」
・傀塚式式神術「影法」

 事前に構築しておいた物質を別形状、ないし別の化合配分に再構築する拡張。
 仕組みとしては構築した液体金属を動かしていた万の延長線。
 そこに影から式神を創る技術と出産を絡め、"傀塚魔子を自身の式神であり構築した物体"と定義。
 赤子まで分解圧縮し、影を伝って腹に納めた魔子を子供として産むことで、後継として主張する事とした。
 態々そんな事しなくてもお家の存続程度、血縁を根拠とした資産相続で済ませられるが……白金は自分の子孫以外が傀塚を名乗るのを許せなかった為、この様な手段を取った。
 
 相伝の縛り(白金が蟷螂や蛹の代わりに新しく結び直した縛り)
 ・産まれた子供は呪具「一族列伝」を取り込み適合する素質を持つ代わりに、親は子供を肉体が16〜80歳から無作為に老化した状態で産まなければならない。
‭─‬‭─‬「死への嫌悪感は、相伝の儀に勝った時から変わらない。しかし、顔も知れない子供の事を思った瞬間から、僕は我が子へ、僕の全てを与えるのが最優先になった。それ以外の全てを捨ててでも」

 ・「余り」が第二子となった場合、対象は術式が及ぶ範囲にて無作為に産まれ、呪具「一族列伝」はそちらに譲渡される。
‭─‬‭─「分の悪い賭けは承知の上。儀式の成功確率で言えば二割(20%)にも届かない。けれど、それは儀式に挑戦しない理由にも、新たな門出に絶望する理由にもならない」

 白金が想定してる流れ
・本命を産んで知識や諸々を一族相伝で与えた後、時間差で何処かの石女から産まれた第二子が「一族列伝」を持っていき、本命には傀塚の悪習と呪いを一切継がせない。




1000年 天人五衰・中

 

 

 1000年。

 天元の肉体を交換しなければならない日まで残り2日。

 

「……そうか、僕が行かなければならなくなったか」

 

 傀塚家当主だけが住まう古びた屋敷で、白金は尋ねてきた五条の者の説明から平安京で起きた災難を知った。

 

「そ。一人は眼を無くして、もう一人は微塵切り。回復できる奴は前の両面宿儺戦で死亡。天元様もこれが初めての同化だしさ、どれくらいの損傷が後を引くか未知数なのよ。今後500年を盤石にするにはーって事で…お願い出来る? いや、妊婦さんに頼む事じゃないんだけどさ?」

 

 五条本人ですらこれ無理だろと思いながら協力を申請する。

 無理もない。目の前に居るのは今にも子供を産みそうな腹を抱えた妊婦。

 安静が必須なのはその辺の興味が薄い五条でも分かること。

 その上平安時代に、女一人で、土地持ちの、術師の当主でもあるのだ。

 必ず無事に産まなければならない責任が多すぎる。

 

(いやー…これ無理だろ。今の俺、子供に親の顔を見させないって言ってるもんだし。傀塚当主が女だったのに驚いたけど、これで天元に捧げるのは……ないだろ)

 

 初めて訪ねてみれば余りにも間の悪い状況。

 天元との同化による子供の安否を思えば、次に来る返答は余りに容易に想像出来た。

 

 しかし……傀塚家は、五条が考えるよりも「呪術師」である。

 

「‭─‬‭─僕も術師だ。その要請、やってやるさ。ただ、天元様に会うのは子供を産んでからにしてくれ。ああ、産まれるまでここに留まるって意味じゃない。道中に必ず産むから、破水したら足を止めさせてくれというだけの要件だ」

 

(‭─‬‭─マジかコイツ)

 

「……あ、それから僕の子は諸事情で老化の呪いに掛かってるから、子供が大人の姿でも驚かないように」

 

「ああ…」

 

 絶句し、承諾した傀塚当主の正気を疑う眼で凝視する。

 六眼の解析のからしても当主の身体を絶えず巡っている呪力に揺らぎはない。

 子供が産まれる直前だからだろうか。

 何故か常に呪力を巡らせている以上、負の感情が発生すれば揺らぎが出るもの。

 それがないということは……。

 

「分かった。言ったからには全力で連れてっから覚悟しろよ。後で泣いて謝っても天元の前に差し出すからな?」

 

 身の毛もよだつ程の奉仕精神の持ち主か、独自の死生価値観を持っているか。

 五条は自分には理解出来ない存在だと理解を捨てようとし……。

 

「構わない……が、僕を只の善人馬鹿とは誤解しないでほしい。「当時の傀塚家当主は過去に星漿体に選ばれて、それに従った」という事実は今後呪術師の家門として続くなら必ず誇りとなり、名誉となる。五条さん、僕は単に()()()()()()()()()()()()()()()()()()だけなんだ」

 

(あ、これ武人的な名誉が行動原理だわ。そんで割と誤解されるのが嫌な性分と)

 

 合戦で1番槍の名誉を求める武人のように、死んででも名を轟かせ、褒賞を家族に与える。

 考えとしては家族思いな武将ならば納得がいくものであり‭─‬‭─それでもなお、平安京の貴族に言われて動いてきた五条にとっては、さっぱりとした考えの善人に思えてならなかった。

 

「あっそ。じゃあ早くいこーぜ。無下限術式の特急便だ」

 

 後2日の関係だが、悪い付き合いには成らなそうだ。

 五条は少しだけ気分を良くし、それから最後の瞬間を思って気分を悪くした。

 

 

 

 ▲▽

 

 

 

「‭─‬‭─っと。ここからは徒歩だ。荷物山ほど持ってきたの後悔しろよ」

「問題ない。戦闘で殆ど使うだろうから」

 

 数時間後。

 平安京郊外、呪術師本拠地周辺の原っぱにて。

 天元に渡す呪物や戦闘用の式神を持てるだけ持ってきた傀塚はそれをどさりと置き、陣地を式神に作らせ始めた。

 

「ってもなあ……確かに天元様に続く道は両面宿儺の呪霊に塞がれてる。戦うしかないのはそうだが……マジでお前もやり合う気か?」

「あの子相手に隠れても無駄だし……待った訂正、あの子は人間だ。五条、そこを履き違えると死ぬよ」

 

 生存者の証言とは違う見解を述べた傀塚当主に対し、五条の中で疑問が浮かんだ。

 何故そこまで断言出来るのか。

 

「知ってるのか?」

「二度会った事がある。術式を自覚した時と、多賀城まで呪霊討伐に行った時だ。元々僕の領土を彷徨いていたからな……あの時から強くなってるなら‭─‬‭─今の宿儺は"平安最強だ"」

 

 式神が土地に術式を刻み、呪力的な陣地の形成が終わる。

 同時に、警邏を当たっていた探索用簡易式神が一方向全滅した。

 

「来た」

 

 言うと同時に鉄砲のように五条が跳び退いて、直後に回避は無意味とばかりに無数の斬撃が辺り一帯を刻み、分割し、斬り刻み……700体の金海月によって防がれる。

 

「臭うな。何人殺してきた」

 

「さてな。興味がない事柄だ」

 

「堕ちた……いや、僕が引き揚げ続けなかったせいか」

 

 両面宿儺が訪れた。

 傀塚当主が宿儺を正道を歩かせ続けられなかった事に後悔の念を見せるも、すぐさま切り替える。

 

「女、お前は逃げ惑うと思ったのだがな」

 

「どうせ隠れても無駄だろう。お前は強くなったからな」

 

「それで用意するのが()()か? そこまでして天元とやらと同化したいか」

 

「僕が捧げられれば、今後1000年は傀塚家の存続が約束されるからね」

 

 

 沈黙。

 

 

「"(はち)"」

「"蒼"」

「"神有月"」

 

 一帯を荒らすのは対象に適切な斬撃を無尽蔵に繰り出す無数の捌き。

 

 宿儺へと迫る"空間(スケール)を無限遠点へと飛ばす"空間拡縮。

 

 そして……それら全ての余波を防ぐ"八百万の式神"が構築した月を模した防御結界。

 

(式神を優先して壊すか。一応性質を斬撃反応分裂に再構築したものだが…全て斬り殺されている。この数の呪核を適切に斬るとは成長したね)

 

(チッ…流石はあの傀塚魔子の姉。化け物の精度と操作だ。土地の霊地化、その呪力の吸い上げ、式神の自動生成機構の構築、数百万の式神の同時運用……僅か数十秒与えただけでこれだけ築くか!)

 

(式神と俺が同時に攻めて捌ききれている。この斬撃は自動運用の術。そして単純に技術も能力も‭─‬‭─強い!)

 

 

(((‭─‬‭─だが!!!)))

 

 特級呪物を複数使った今後1000年続く霊地に変える陣地作成は、膨大な式神生成を実現させた。

 しかし空間には限度があり、如何に結界が広範囲に影響を与えても一度に出力出来る結界は限度がある。

 

 宿儺が殴り合っている五条の隙を見て離れ、傀塚当主の方へと向かう。

 無数の式神に対しての対処法は、出力に見合う呪力リソースを常に注ぎ均衡させること。

 今や14歳となった宿儺は、これまで自分以上の技術を持った術師を師として仰ぎ、学んできた。

 

「‭─‬‭─その技は何度も経験したものだ」

 

 "捌"の射程内に、傀塚当主が捉えられる。

 

(そして……腹の子を殺す!)

 

 宿儺にとって、傀塚当主の戦い方は過去に通り過ぎたものでしかない。

 自分以上の技術を持っていようと、戦いに明け暮れず筆を握っていた者に負ける程、宿儺は怠惰ではなかった。

 

 フッ…。

 

「ふむ、目視不可かつ飛翔中に形の変わる斬撃か。事前に決めた動きと自動的に変わるもの、二つを織り交ぜるとは器用なことだ」

 

 ……しかし。

 

「どちらも呪力の無駄だ。そも、見えてようが避けられない程早くすればいいだけのこと。不可視は呪力の流れを見れば問題なく、そもそも形状を変えるための呪力が"観て"避ける事を可能にしてしまっている」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 単純な反射的な回避能力の高さと、天性の先読み。

 

「"呪力操作による自動的な回避技術"。元は領域対策のカウンター、突破出来るならやってみろ」

 

 その上での、かつて必中効果の付与された領域内で"領域そのものに位置を誤認させて自動的に回避する"必中対策。その発展系。

 親の創り出した隠蔽の帳から独自に発展させ、黒閃に触れ続けて完成させたそれは、光、熱、呪力、予測による認識を逸らす。

 再現性のない操作精度の暴力で成立させた技術。

 

「ならばより近付いて…」

「後ろ、確認しなくていいのかね?」

 

 傀塚白金に呪力の宿った攻撃は通じない。

 

「"蒼"」

 

 五条から意識を逸らし、ただで済んだ者はいない。

 

 引き寄せる力と到達しない力を宿した拳に挟まれ、宿儺が血を吐き出す。

 しかしその程度でやられる筈もなく、直ぐに反転術式で回復し斬撃を叩き込んだ。

 斬撃が無下限により掻き消される。

 

(やはりこっちもこっちで厄介だな。どれだけ攻撃しようとそもそも到達しない。その上領域が使えなくなる隙を警戒してか領域も使わないと来た。しかしそれはこちらも同じ。俺の領域に引き込めば五条は殺せるが……)

 

「……場が均衡したな」

 

("確実に女に領域を潰される"。魔子の無彩式と同じ事をする危惧。領域展開と比べると役に立たない技だが、警戒を解けないのは面倒だな。術式を使える有利を捨てるか、賭けに出るか‭─‬‭─選ぶならば)

 

 

 掌印が結ばれる。

 

 

 

領域展開

 

領域展開

 

 

 

 両面宿儺、及び五条。

 

(‭─‬‭─この勝負)

 

(‭─‬‭─領域の展開速度で決まる!)

 

 イチかバチかの"0.2秒の領域展開"。

 術後の焼き切れを抑え、尚且つ相手を殺し切るに必要だと判断した時間。

 両者の考えが一致した以上、観点すべきは如何に素早く押し切り術式効果を押し付けるか。

 

「‭─‬‭─子供が、出そうだ」

 

 ‭─‬‭─よりも早く、訪れる。

 "傀塚白金の、産気(さんけ)"。

 

(‭─‬‭─は?)

(‭─‬‭─は?)

 

 無限回に繰り返される、終わりのない情報処理。

 戦闘に対する圧倒的なノイズは、両者に対し致命的な思考停止を齎した。

 

 条件が満たされた。

 

「"相伝の儀 邂逅"

 "一族列伝 展開"」

 

((‭─‬‭─!?))

 

 痛みなら蹲った傀塚白金から、白い彼岸花が咲いた。

 花は次々と芽吹き、刹那の攻防を瞬く間に塗り替え、領域を押し潰す。

 

 

 刹那が無限大に延びていく。

 

 

 

 ▲▽

 

 

 

 そも、呪物には元々術師の魂が宿るケースが多い。

 それは実質的な術師の記録であり、「一族列伝」の「所有者の記録」よりも詳細な情報を……そもそも本物を携えている。

 

 その上で「一族列伝」の利点とか何か。

 それは魂を捕まえないこと。

 あくまでも記録媒体としての役割のみに準じ、取り込んでも肉体乗っ取りや不適合による昏迷を起こさずに情報を与えられる点にある。

 取り込んだ者の自我が薄弱な場合なら初回の強制閲覧で人格が変わる事はあれど、あくまでも本人に変わりはない。

 

 謂わば、持ち手に自身の振り方を授ける妖刀の同類。

 

 「一族列伝」とはそういった点により、呪物ではなく呪具(呪いの宿った武器)として定義された。

 あくまでも記録しては、呪力量に応じて記録の再現を……場合によっては生得領域すらも展開(再現)する。

 

 では、その記録媒体とは何か?

 

「……なんだ、これは」

 

「術式が使えない……いや、俺がそもそも持っていない…?」

 

 "初代傀塚の死体から生えた白い彼岸花"

 

 植物の遺伝子情報としてそれらを保管し、人体に咲くことで情報の閲覧権限を与える。

 呪具化し、呪力を糧にして成長するように突然変異した花はその様な種へと進化した。

 呪力を与えなければ、無差別に宿主を探さんと増える種へと。

 

「……理解した。俺は夢を見ているのか」

 

「六眼は使える……嘘だろ? こんなのが有っていいのかよ」

 

 花は宿主を選ばない。

 "既に宿儺と五条の記録は終了した"。

 それは全ての「一族列伝」へと共有され、技術と経験を宿主へと還元する。

 

 即ち、"宿儺、五条、白金、全員で一斉に行われる経験共有"。

 最も閲覧する情報の少ない者が真っ先に復活する長寿有利。

 

「……無下限術式と六眼の方が望ましいか。

 一族列伝、"父役として五条の遺伝子を再現しろ"

 縛り追加、"再構築時に藤原の血を引き、代わりに五条の血を足す"」

 

 当然、既に一族の記録を見ている白金が最も早い。

 閲覧は一年分に対し一分観る事が強制される。

 これにより戦場は約2時間の沈黙が齎された。

 

「おぎゃ…オギャア!!」

 

「ふぅ……不意を突かれたが、出産自体は「魂触の糸」を使えば数秒で終わる。しかし問題はその後……何歳の身体で産まれるか、どんな子かは完全に未知数だということ」

 

 陣痛と共に呪力が切れたことで展開された彼岸花から呪力を奪って枯らし、出産に注力する。

 測らずも良い術師の遺伝を手にしたとはいえ、ここまでが前座。

 両親のように精神の厳選を行っていない以上、どんなボンクラが産まれても不思議なことではない。

 

「ほら、乳だ。飲め」

「ぎゃ…たう…あう…ん…んく…」

「……よし、良い子だ…縛りが反映されてかどんどん大きくなってるな…ふむ、男の子か」

 

 場合によっては魂を丸ごと改造する。

 白金はその様な気概を込めて腹から子供を引き摺り出した。

 様子を伺う。

 

 赤子は乳を飲む程に忽ち背が伸び、歳を重ねた。

 乳歯が生えては直ぐに抜け、柔肌は硬くなり、銀髪の美少年を瞬く間に通り過ぎ、髪は女子のように長く伸びて、爪先が長くなり歪に歪む。

 傀塚、五条、未来の式神(未来の禪院の誰か)……基底となった藤原の血を引き代わりに足された血のせいか、五条家の顔立ちになっていく。

 

「止まった…21歳くらいか。構築精度を下げて成功率を上げる要領では有ったが、上手くいったようでなにより」

「あう…」

「ただ瞬く間に大きくなったせいか、これでは大きな赤子だな。待ってなさい、いま相伝された知恵を授けよう」

「あー」

「ふふ、良い返事だ」

 

 神秘と言うには悍ましい、老化の呪い。

 赤子から子供で居られる全ての時間を奪う残酷な所業も、白金にとっては愛の一文字で済ませられる。側からみれば悍ましくても、本人にとっては家族団欒の一時でしかない。

 子供の紅く光る宝眼を見てにこやかに笑い、愛おしそうにその頭を撫でていた。

 

 自身の身体から生やした彼岸花の球根を千切り、引っ付き滴る血肉も構わずに口に押し込んだ。

 

「おえ…オ…!」

「食べなさい。君のために拵えた特別な「一族列伝」だ。ほら、頑張れ、頑張れ」

 

 始めは拒絶していた子供に、無理やり放り込み口を閉ざし、顎を上げて反射で丸呑みにさせる。

 すると僅かばかり苦し気に子供が叫び悶えた後、眼を開いたまま気絶する様に眠りについてしまった。

 

 それに満足してか、未だ眠る宿儺達に生えた白い彼岸花を抜き取って、先へと進む。

 

「じゃあね、愛しい我が子。蟷螂も蛹も相伝の儀も……出来る限りの呪いは僕が持っていくから……術師の才能があろうと無かろうと、しゃんとして生きるのだよ」

 

 宙一面を覆う金色色(こんじき)の式神が、花道を彩るかのように煌びやかに光る。

 その様子は黄金で造られた桜道のようであり、白金は進む中で産みの痕跡を消して、反転術式で元通りに治していき……天元の下へと消えていった。

 

 

 

 ‭─‬‭─世界を祝うように、一陣の風が黄金桜を吹き上げた。

 その瞬間日本に居る全ての者は空を見上げ、春の訪れを予感したという。

 

 

 

 ▲▽

 

 

 

「……天元の同化終わったの!?」

「左様でございます」

「……不完全燃焼なんだけど?」

「無事に終わったなら良いではないですか」

 

 次に五条が目覚めた時、天元の問題は全て終わっていた。

 やけに自分に似た、傀塚の子供らしき者と宿儺を抱え、両面宿儺が眠っている内に指を切り呪力を封印しと、最大限の封印と弱体化を行っている頃に知らされたことであった。

 

「兎も角、護衛のお勤めご苦労様です。両面宿儺は以後こちらで預からせて貰いますので、しばしの間はお休みください」

 

「……あっそ。で、傀塚の奴は?」

 

 白金が後処理をした影響で、五条と宿儺に傀塚家を閲覧した記憶はない。

 しかしただ漠然とした呪力の動かし方、その極意の一つは残り、気付けば五条は反転術式が使えるようになった。

 

 何かあった。

 

 漠然とした確信。傀塚家の秘法か何かのお零れを授かった縁。

 五条は余り他者に興味はない。しかし便利なものを貰えた相手に悪くするほど人でなしでもない。

 顔が似てるのもあるだろう。親近感から五条は傀塚次代当主を気に掛けていた。

 

「本人が目覚め次第となりますが、あなた様……五条家の推薦に星漿体、普段の献金、朝廷に奉じられた数多の呪物に傀塚派閥の反発懸念……それら諸々で傀塚家は正式に呪術界を仕切る一門として認められるそうです」

 

「ふーん、んじゃいいや」

 

 だからといって五条家にとって変わった事はない。

 精々偉そうな顔で命令する上の奴が一人増えただけ。

 

 大半の呪術師の日々も変わらないだろう。

 上で指揮する者が一人増えた所で、下への影響大差ない。

 

「……ま、少しは任務に気合い入れて挑んでもいいかな」

 

 変わるとすれば、ほんの少し五条の中で上への反発が弱くなったこと位なもの。

 例えポンな命令だったとして、あの式神使いの極地の息子だと思えば多少は溜飲が下がる程度の変化。

 

 傀塚家とは、その程度の存在なのだ。

 

「‭─‬‭─そうか」

 

 仮に変わる者が居るとすれば。

 

「クカカ……俺は取りこぼしたか」

 

 その者を好いていた者くらいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伏魔御廚子

 

 






 じゅじゅさんぽ
子供「頭痛い(詰め込み教育反対)
白金「今日からお前の名前は傀塚淦掬(あかす)だ。精々長く生きるんだな」
子供→淦掬「へー……ん? 下の子の名前は?」
白金「そっちは呪いを押し付けた側だからどうでもいい」
淦掬「オラこんな一族イヤだ(血は争えないにしても限度があるだろ)

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