じゅじゅさんぽ
これまでの羂索の軌道
羂索「1億人の術師を合体させた呪霊作ってみてぇ。やろう。先ずは星漿体殺して天元呪霊化させよう!」
五条「邪魔だクソゴミ」
羂索「あちゃー失敗したかあ。五条って奴の対策はするとして、眼の前に面白そうな呪霊居る!使っちゃおう!」
花子「枯れ木に花を咲かせましょう〜」
羂索「術師は増えたけどたったの数十万人かあ。よし、息抜きに加茂家の神稚児に会おう!」
かつて、両面宿儺は平安京を焼き尽くした。
封印直前に目覚めた宿儺は体表に呪印を浮かばせ、事前に隠蔽の細工をした骨の一つに貯蓄していた呪力を用いて、呪力の宿らない火で焼き尽くした。
その威力と爆発速度は凄まじく、五条を筆頭に反応出来たもの、防げた者は一握り。
死した術師は呪霊と変わり、平安京は瞬く間に怨念渦巻く呪霊呪物の巣窟へと堕ちた。
それが22年前。
最初に起きた変化は、近くに出来た傀塚の霊地を呪霊の誰かが平安京に繋げたこと。
これにより拡散しようとしていた呪霊達は拡大した霊地の結界により封印。
同時に霊地の呪力が平安京へと流れ込み、宿儺の残穢と結合。
凶暴化した呪霊による蠱毒の本格化が始まった。
それが如何様な顛末を遂げたか。
ある日、平安京は呪霊と鏡合わせの分け御霊を排出し始めた。
花子が故郷から拉致された時に倒した呪霊もその一種。
本体は平安京に置かれたまま、鏡写しに複製された呪霊が消えただけに過ぎない。
蠱毒を生き延びた呪霊が、量産され排出されている。
術師上層部は平安京の探索を決定。最上位層を除いた、しかし錚々たる面子を押し並べ攻略に当たった。
結果は負傷者、死者0名。
全隊員が鏡写しの偽物に挿げ替えられていた。
偽物の鎮圧後、その後の調査により生存反応を平安京内部に感知。
会話可能、異常な受け答えなし、しかし……反応には平安京で死んだ筈の術師の生存反応が含まれていた。
平安京の地下1000mで。
最終的に出された結論は排出された鏡写しの、生死の摂理に叛した呪霊術師達…「叛霊」のその場凌ぎの討伐を実施。
それから内部の調査を模倣されても問題ない式神のみを用いる処置が取られ……遅々とした進歩ではあるものの、その詳細は埋められていった。
内部は結界が塔のように積み重なった全108階層。
結界内部は平安京に固定され、一層で1時間。24層を纏めて一日として変化が起こる。
下層に進む程呪霊は強力になり、24層を超えた時点で術師の叛霊が出現。
48階層からはそれらが混ざり合った存在が出現し、72階層からは囚われた術師本体を確認。
術師達は仮死状態で生命活動を続けており、如何様な攻撃も届かない状態であった。
上層部はこれを"結界に取り込まれる変わりに死なない状態が維持される"縛りと判断。
謂わば"死ぬ場面を繰り返し続けるタイプの呪霊の上位互換"。
塵屑と燃え消えた肉体を取り戻し、生き返る為の儀式。
叛霊とこの結界は結界の維持の要であると同時に、助かる事を他人任せにする事で成立させた儀式。
呪霊と変じ平安京蠱毒に勝利した術師の誰かが創り出したもの。
この推測を元に分析した結果、これは時間経過で破綻しなければ成立し得ない物であり、それまでに108階層まで攻略する事で黄泉還りを成す品物と判明した。
上層部はこれが破綻するまで放置する事に決定。
98階層以降は調査を担当していた傀式との繋がりが断絶する事もあり、余計なリスクを負う必要は無いという結論で終了した。
それから、10年後。
1022年。
「でも〜…そんなのってあんまりだと思うんですよね〜」
加茂花子が平安京に足を踏み入れた夏至の刻。
「なので来ちゃいました〜。ほな…"華楽傘"」
この領域を傀式以外が侵入した事例は2つ。
呪術師による平安京探索部隊。54階層にて全滅。
羂索による強い呪霊との契約訪問。62階層で撤退。
「──私が作った華楽傘の役割は三つあるんです」
儀式破綻まで残り27日。
終了条件:108階層に居る「両面宿儺」の叛霊討伐。
「一つは戦闘補助。事前に貯めていた血と花弁を解放して呪霊を祓う。
二つは治療補助。自作の薬弁や毒素抽出用の花弁を保管する。
そして三つめは……」
華楽傘に溜め込まれていた呪力が解放され、花子の肉体から白い彼岸花が成長し花を咲かせていく。
咲いた花はやがて枯れ、次代に繋ぐ為に進化した球根を遺して萎んでいった。
「"成長促進の加速"。赤血操術は意図的に老化を早められる。それを利用すれば私の血と呪力で育つ花を、高速で世代交代させられるんです」
それは加茂家の誰もが意味が無いと切り捨てた赤血操術の使い道の一つ。
意図的に肉体の新陳代謝を早めることで老化は早め、寿命を意図的に削る使い方。
そも、血は細胞に酸素と栄養を渡し分裂を助けるのが本分。それを加速させるのは容易に行える。
しかしてそれは"赤燐"として実用化される以上の……身体能力向上以外の使い道は誰も模索する事は無かった。
「育ち、咲いて、死んで、次に託して……そうして散って行った花々の子は、その場の環境に適応していきます。普通は自分以外の血は操れないんですけどね〜…でも、"産まれた時から自分に宿っていた花を自分と思わない方が難しいでしょう"?」
だが加茂花子は白い彼岸花と共に産まれた。
纏めて構築術式によって創られた存在はそれを己の一部だと見做した。
偶然の産物。しかし利用しない手はない。
そして眼を付けたのは一族列伝に記録されていた──遺伝と改良の知識。
「"個我弁"──あなたを助ける為の花を与えましょう」
"青紫の彼岸花"が、結界の呪力へと根付いた。
途端──距離を無視した、結界内部のあらゆる箇所から彼岸花が咲いて、結界を変質させていく。
ミシリと、結界が軋み景色が歪み始めた。
「この結界は術師が自分達が助かる為に創られたもの。
あなた方が想定した解呪方法で、術師だけが助けられる。
それじゃあダメなんです」
進化を果たした花は、存在の主体をここに来るまでの道中で祓った桜灰病の呪力ウイルスに変異した。
これにより増殖手段を球根から呪力媒介のみ、物理的実体を無視して繁殖可能となった。
故に、例え一層からでも結界を構築する呪力に感染すれば最下層まで直通で繁殖可能。
体内に発生した癌が血を巡って全身に広がるように、迅速に結界を駆け巡っていく。
「それでは非術師を助けられない。攻略に時間をかける程、外の誰かを取りこぼす。
私はそれが堪らなく嫌なんです。じっくり一人一人救うより、私は
術式開示により"個我"による侵食速度は上昇した。
頃合いと見たか、花子が侵食された結界に干渉する。
例えどれだけ変異しようと彼岸花は「一族列伝」の支配権内の存在。
その成果を奪い取り書き換えるのは造作もなく……取り込まれた術師達に手を加えるのは、もっと容易い。
「ふ〜ん… 特級呪物「霊牌金冥宮」を基底にした黄泉返りの儀式か〜……偶然にも一族列伝に記録されてるものですねぇ」
「霊牌金冥宮」とは傀塚白金が創り上げたあの世と繋がる門、その先の黄金宮殿、黄金宮殿の分だけ切り取ったあの世の三つで構成されている特級呪具。
星漿体として天元と同化する際にあの世へ繋がる門の鍵を天元と協力して制作し、薨星宮に続く忌庫へと封印した呪物。
しかし、それで地下奥深くに沈めたあの世を隔離する事は叶わず、物理的に地下を掘り進めればあの世の一部は利用出来る状態にあった。
「普通地底を進もうって人は居ないんですけどね〜…宿儺の火で魂を地下に叩き落とされて偶然……って所ですかね〜?」
それでも、普通ならばそんな事はしない。故に放って置かれたそれは、なんの因果か平安京の蠱毒に勝利した術師に発見され、利用された。
呪術においてあの世とは様々な意味を持ち、儀式に利用すれば様々な無茶を通せるようになる絶対的な品物。
何を隠そうこの結界の98階層以降はこの第二冥府の領域内に構築されている。
"入った瞬間死が確定し、輪廻しない限り出る事の叶わない領域"。
「結界とあの世を纏めて解呪する…それは確かに蘇生は叶いますね〜。
けれど
結界を構築した者の意図を理解し、その上で花子は結界を纏めて作り直し始めた。
あの世が消えればこの世へと蘇る。第二冥府は消えるが、確かに理論として間違って居ない。
しかしこれでは蘇生よりも、切り取り物とは言えあの世の消滅に比重が偏り過ぎる。
無駄に大掛かりな儀式になるし、攻略難易度も上がる。
あの世の消失を狙うなら悪くないギリギリ実現可能な線を突いた良い儀式だが、蘇生という観点で観れば遠回りが過ぎる。
「私、あの世の扱いも宿儺の火も一家言があるんです。なので〜──主導権を寄越せ。全部治してやる」
花子の細い眼が開き……金色に光る双眸が呪力の流れを汲んで結界を再構築していく。
結界の主催と花子の呪力が混ざり合い……。
刹那──呪力に宿った
▲▽
ある日突然、私は死んだ。
それはもうなんの予兆もない、不条理な死だった。
ある筈のない再びの目覚めは呪霊として。
生き残れたのは、単に傀塚の式神を人より多く持っていたから。
癪だけど、かの霊地と繋がる権利を偶然持っていたからに過ぎない。
呪詛師だった。
死ぬ直前は呪術師で、傀塚一派へ力を求めて入門した。
構築術式は呪力効率が悪く、そのヒントを求めて同じ術式を持つという傀塚の主に手紙を送った。
従う気は無かった。気に入らなければそれまで。気分転換のお試し入門で、私は出会った。
"1番単純なのは水蒸気を圧縮した状態で構築すること。油でも良い。手軽な攻撃手段だ"
"構築術式はこの世にない物質すら創れる。必要なのは想像力と練度。焦らず、先ずはこの世の物を片っ端から創りなさい"
"想像力が足りるならば真球を創りなさい。あれに必要なのは形のみ。消費する呪力も少ない。手頃な切り札には丁度いい"
"この世にない物質は私の式神を参考にするといい。あれはあの世の性質を帯びた黄金。呪力の通りが良く、式神の素材にもってこいだ。アレの能力を完全に引き出せたなら似たような物は創れる"
"鎧を創りたいか。ならば蟲か流動、無限の構造がいいだろう。以下に薦める理由を記載する"
結果は想像以上。
あの人は新人の私にも親身になって、惜しみなく構築術式の真髄を伝授した。
そして、それらを躊躇なく渡せる実力の高さに惹かれた。
同じ術式を持つ者として、嫉妬と敬意を抱いた。
いつか会ってみたい。
話しあって、全力で戦って、全てを私のものにしたい。
自由を愛し愛された私が、初めて欲しいと思った人。
考えていると胸が苦しくなって、手紙が届く度に興奮しながら何度も見返した。
美しい和歌を見て殿方に惚れる生娘のように、私は傀塚のお方に惹かれていった。
『──私の恋道を塞いでんじゃねーわよビチクソがッ!!!』
だから、これは違う。
『死んだだけで諦められるか! こっちは殺し愛前提で術式練ってんの! たかが死が──
──私の前に横たわるなッ!!」
金鈴は相互連絡以外にも、完全に力を引き出すことで精神のバックアップを取れる。
死亡をトリガーに呪霊化した、魂の自分の術式と呪力を引き出せる。
そんな通常なら敵の道連れにしか使えない効果でも、構築術式ならば話が変わる。
肉体をより強靭に創り出す。
傀塚の式神を参考に蟲鎧を創り、中に式神を解体して取り出した呪いの黄金で満たし、呪霊となった私をぶち込んで仮の肉体にする。
人の身体に執着は無かった。どんな私でもあの人なら受け入れてくれると確信してたから。
「死ねェ!!」
片っ端から呪霊を殺し、近場の霊地と平安京を繋げ、手紙の隅に書かれていた情報を信じて地下へ落ちた。
黄泉返りの儀式を始め──あの人ならば絶対に助けに来てくれると信じて、奥深くへと眠りについた。
「でも、あの人は来ないんですよね〜」
「──なに? お前」
気色悪い程朗らかな隠れ里の、青紫の彼岸花が咲いた畦道で、糸目のちんちくりんが私の前に立つ。
呪力が混ざり合う刹那、お互いの記憶が交差した空間。
しかし私はそいつの記憶は一切見ていない。術師としての力量が違うのか一方的に覗かれた。
そいつはクソ生意気な事を抜かしたが、だからといって殺しに行けば殺し返されるだけの力量差が私達の間にはあった。
「傀塚白金さん、もう死んでますよ〜。今はその息子さんが当主ですねぇ」
「……はっ?」
「結界の外と内で時間の流れが違うんでしょうねぇ…あなたにとっては22日の出来事も、外では22年経ちました。死者蘇生、あの世の削除、叛霊の排出……こんなに複雑な儀式ですから、そりゃあ
「嘘だ」
「残念ながら〜…蘇ってもあの人は何処にも…」
「嘘だ!!」
否定して、疑って、反論を考えて……目の前の術師が仕方ないとばかりに困り顔をすると、差していた傘を閉じ──そいつの記憶が開示された。
▲▽
平安京が死んで、私が産まれた。
冗談です。私は母の血を喰らって産まれました。
傀塚白金の理想の子供の構築、その余りとして。
他人の胎に押し込まれたんです。
全てを燃やす宿儺の火が訪れる直前。
胎に宿った私を、母がどう感知したのかは分かりません。
私に遺された事実は、全ての血を盾にして宿儺の火から母が自分を守ってくれた事だけです。
このままでは焼け枯れ果てた母の内側で死ぬだけ。
私は本能のままに焼けた母の肉を喰らって、赤血操術で意図的に老化しました。
そして母と同じくらいの年齢まで老いた代わりに、私はこの世に産まれる事が出来た。
「悪いが、加茂家は産めずの女を連れて行く気はない」
「な…なんで…」
「相続の問題だ。術式が使えようと、その一点でお前の価値は何一つない。この京と共に死ぬがいい」
そのせいか、私は母とそっくりなんです。
加茂の叔父さんが私を母と勘違いして、そのまま捨てたくらいには。
だから私は、その内呪霊が沸くだろう平安京から逃げて、この花に遺された記録を頼りに近くの山村を頼るしか有りませんでした。
「……あの〜…これは…?」
「今日からお前の家だ。屋根があるだけありがたいと思え」
「…そうですかぁ」
三つの壊れた木の板と、ボロボロの子供服。それが村が私に与えた全財産でした。
殆ど野晒しみたいなもので……知ってますか?
雨で心臓の奥まで冷やしながら眠る夜、積もる雪と共に横たわった凍える夜、自分一人の世界で…未来の不安に押し潰されそうになる嵐の夜を。
私は全部知っています。呪力と術式に人生の全てを賭けて、ここまで実力を高めました。
その過程で背が縮んで…最近までいずれ赤子になって死ぬと思ってた、若返り治療まで昇りつめたんです。
すると不思議なことに、私は若返る前の私が産んだ子供という事になってたんですよね〜。
さも今まで冷遇してなかったみたいに役立つ若い私を褒め称えて…………話が長引きましたね。
「つまり、私が居ることが傀塚白金の死と、あなたを助けに来る様な人じゃないって証明ですね〜。あなたが思う様な人だったから、私は産まれてませんので〜…勝手に死ぬか、勝手に生きててください」
「ッ! させ──」
「邪魔なので何処か行ってください。大丈夫、目覚めた時には蘇ってますから〜」
結界を操作し、万さんの意識を元の場所に返しました。
まあ…なんでこの話をしたかと言えば、あれをよく言ってるのが癪に触ったからですね〜。
よくないですね〜…あれが外道じゃなければ私は居なかった。
それを否定したら自己否定になっちゃいますからねぇ…反面教師〜反面教師〜。
せめて私くらいは善き人じゃないと……世の中に
私みたいに。
「勝手に救うので、後はお好きにどうぞ〜。どうせ私のことなんて忘れるでしょうから〜」
相手が悪人でも、嫌いな人でも。
助けた果てに何かが壊れようと。
「"儀式再構築完了" "薬効抽出" "蘇生弁"」
私が
誰も助けてくれないよりマシなんですから。
「──やあ、君を救い来たよ」
額に縫い目のある男が、
……外の方が時間が早いならば、会話している内に他の勢力が訪れるのは順当であり、その際四国と東京ならば、平安京には四国からの方が早く着く。
「提案がある。
"僕と恋をしてみないか?"」
記憶の開示を横から覗いた羂索による、口説きが始まった。
呪言
原作では狗巻や宇佐美が扱う相伝術式。
身体の何処かに「蛇の目」と「牙」の模様が刻まれており、それを媒介にして発動させる。
言葉だけで多種多様な効果を発揮するが、代わりにどんな言葉にも効果が乗ってしまう不便な一面も。
命令の無茶さや対象との呪力量に対比し、喉に負荷が掛かる。
今回の羂索が使う術式と肉体。呪霊を狩っていた狗巻家の4男坊を殺して手に入れた。フツメン。