呪具:一族列伝   作:何処にでもある

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 伏黒恵(ふしぐろめぐみ)
「‭─‬‭─布瑠部由良由良」
 原作の人。術式に対して呪力の低さがネック。
 「十種影法術」を持つが、本体のやる気の無さもネック。
 ポテンシャルと比べたら弱い。術師としての向上心を何処かに置いてきている。
 最近自分が宿儺の器足り得ると知り、宿儺に対する警戒心がぐーんと上がった。
 そんな冷めてる風な男の子。女虎杖の距離が近いとうんざりした顔で頬を赤らめるくらいには男の子。




ある夢想・雨後

 

 

「僕さ、夢があるんだよね」

「夢…ですか」

 

「そっ虎杖の件でも分かる通り上層部は魔窟。

 保身馬鹿 世襲馬鹿 傲慢馬鹿 ただの馬鹿 腐ったみかんのバーゲンセール。

 なのに無駄に呪いの技術とか無駄に得体の知れない呪物を蓄えてるから無駄に手強い」

 

(無駄三回言った…)

 

 虎杖悠香と十勝川下が死んだ後日。

 五条は生徒が二人も殺されて気分最悪の中、一年生を上の命令に従って送り出した伊地知に当たりまくっていた。

 仕方ないだろう。虎杖だけならギリギリ合理的なやり方でも、五条への嫌がらせを兼ねた巻き込みで一人死んだのだ。

 

 将来有望な生徒達に期待を寄せる五条からしてみれば然もありなんである。

 そもそも特級が確定してる時点で潜伏用の呪具も渡されてないとか現場判断で止めろという話なのだ。なんと言おうと補助監督失格行為。上層部の処罰を恐れて送り出した訳だ。

 流石に伊地知もそれは理解しているのか、今回はかなり畏まった顔で五条の話を聞いていた……内心はこの人言い過ぎでしょとは考えていたが。

 

「知ってる? 上層部には特級呪物「東京幽界」に並ぶ物が五万とあんの。

 馬鹿どもが管理するには危険なものが天元様に預けられなくなったせいでのさばってんだよね。

 だから強引に改革すると腹いせで「大呪災」、放っておいても馬鹿やって「大呪災」な訳。

 詰みすぎててウケるー。

 

 だからクソ呪術界をリセットする。

 皆殺しは簡単だけど特級術師以外全員死ぬ。それは負けだ。

 強く聡い仲間を集めて少しずつ変える。その為に僕は教育を選んだんだ」

 

(……アレ、何もなければ上層部皆殺しにしてたって今言った?)

 

 五条が手を強く握り締める。

 そう、強く聡い仲間が居ればよかった。

 そんな人材はかつて居た墓守という男が育て、既に沢山いた筈だった。

 一度目の「大呪災」。それさえ無ければもっと早く、簡単に終わってる筈だったのだ。

 

(それと羂索……アイツは殺す。絶対殺す。

 宿儺もそうだけど、あーいう老害が足引っ張るせいで千年もズルズルぐだついてるとか馬鹿だろ。

 コイツの息が掛かった老害も殺せないとかマジもどかし〜。マジで殺してぇ)

 

 東京三年の乙骨や秤、京都の方では東堂や加茂の子が挙げられるだろうか。

 虎杖悠香と十勝川下もここに並ぶ逸材で。

 二度目の「大呪災」で判明した黒幕(羂索)のせいで死んだ大勢の術師と並び、心ある者達だった。

 

 教壇に立ってから、力も心も揃えようとしてその難しさにため息が出る。

 教育のレベルが大いに落ち、術師として才能が8割の世界に逆戻りした今の世代は、五条にとっては不甲斐なさの象徴だ。

 かつて呪術を努力と知恵の世界に押し上げた男の背中を追うたびに、その難しさに実感する。

 

(一人一人感覚が違うのに、全部合わせて的確に教えてたもんなー。

 理論上僕も六眼で同じ事ができる筈なのに……どうしても僕の主観というか、相手に合わせた説明が出来ない。てゆーかどうやったら他人の"呪力操作を操作"して手本に出来るの? アレ絶対呪力操作以外の才能いるよね)

 

「…と君達、もう始めるけどいつまでそこで見てるつもりか? 女の子の裸体だぞ」

 

 五条の思考が逸れてる内に解剖を始める時間が訪れ、他人の医療が出来る術師「家入硝子」が部屋に入る。

 手に白いゴム手袋を付けている光景はこれから彼女達が遺体として処理される始まり其の物であり……。

 

 その後ろで"むくりと起き上がった虎杖"が居なければ、正常な光景だっただろう。

 

「うわっ‼︎ 丸見えじゃん‼︎」

 

「ごごご五条さ五条さんいいいいい生き返生き返っててておっぱデッッ」

「クックック…伊地知うるさい。それ以上言うならガチで殴る」

 

 嘘だ、伊地知を殴ってから警告した。

 そんな男達を他所に、蘇ったのを見て家入は少し落ち込んだ。貴重な宿儺の器を解剖する機会を失ったからだ。

 

「…ちょっと残念」

「あの〜…服持ってきてくれません? 流石に先生の前でモロは色々キツい。

 で……誰すか?」

家入硝子(いえいりしょうこ)、術師のお医者さんでーす」

「ああドモ」

 

 心臓がくり抜かれているにも関わらずの蘇生。

 十中十で宿儺の干渉による物だろう。大方縛りで細工を施して解放したか。

 しかし、なんであれ蘇ったのは事実。ならばまだ機会はあるだろう。

 生きていればチャンスは巡って来るのだから。

 

「悠香、お帰り‼︎」

「オッス! ただいま‼︎」

 

 虎杖と五条がハイタッチする。

 若者が青春を取り戻したのだ。

 

 例えもう一人がそのまま死んでようと、喜ばない訳には行かなかった。

 

 

 

 ………。

 

 

 

「長生きしろって……自分が死んでりゃ世話ないわよ」

「………」

 

「恨んでないわよ。アンタが引っ張ってくれなきゃ私死んでたかもだし」

「…同級生(タメ)は初めてだった」

 

「…の割に平気そうね」

「お前もな」

 

「当たり前。こっちは会って2週間よ」

「………」

 

 高専の敷地にある張りぼての神社の階段で、伏黒と釘崎が座っていた。

 二人の死を偲んで、立ち直ろうにもキッカケが無くて燻る。

 二人とも愉快で、楽しくて、方向性は違えど善良だった。

 蝉の声が空虚に聞こえる。

 

「……十勝が死んだのは宿儺のせいだ。釘崎は悪くない」

「分かってる。ただ」

 

「おーおーいつにもまして辛気臭いじゃねーか、恵。

 お通夜かよ」

 

 そんなしみったれた空気を壊す声が二人の間に入った。

 目を向ければ眼鏡をして長物を肩に掛けたポニーテールの女性……東京呪術高専の先輩。

 

 二年生の禪院真希が立っていた。

 ぼけっとした面で反射的に名前を呟く。

 

「禪院先輩」

「私を苗字で」

「真希!真希‼︎ マジに死んでるんすよ!昨日!一年坊が二人も‼︎」

「おかか」

 

 同じく先輩が木陰の影から禪院にそう伝えると、その後はやらかした事にわちゃわちゃと言い合いを始めた。

 

「何あの人?達」

「最初に話して来たのは呪具の扱いなら学生一の禪院真希。

 おにぎりの具しか言わないのが呪言師の狗巻先輩。

 パンダ先輩」

 

 指差し順番に釘崎に教えていく。

 最後に可笑しな存在が居たが、特に珍しくもない夜蛾先生の自我持ち人形の一体だ。

 パンダが生徒なのかと釘崎が呟いたが、それは場合によりけりである。

 かつては人に成れる狼も居たらしいし偶にある事なのだろう。

 

「後一人手放しに賞賛できる乙骨先輩が居るが、今 海外」

「アンタ、パンダをパンダで済ませる気か?」

 

「いやースマんな。喪中に」

 

 そしてパンダが一言断りを入れてから京都姉妹校との交流祭の参加を申請して来た。

 礼儀正しいパンダである。

 

「三年のボンクラが停学中なんだ。人数足んねぇから出ろ」

「個人と団体勝負な。殺し以外ならなんでもやれる呪術合戦」

 

 釘崎が呪詛師は兎も角呪術師同士で闘うのかという驚きに説明が入る。

 

 本体なら二、三年が中心のイベントだが、三年が全員不参加となった。

 時期は繁盛期の初夏を過ぎた後。

 なので一年はそれまでに修行して助っ人として入れ。

 仲間死んだんなら強くなりたいよな? 良い機会だろ?

 そう言われれば断る気は無くなるものだ。

 

「「やる」」

 

 二人は交流会の参加を決めた。

 

 

 

「と言う訳で悠香はこれから映画鑑賞しながら呪力操作をして貰います。

 呪力の制御 呪術の最低限の知識だね」

「ニコニコ エヘエヘ」

「どうしたのそんな笑って」

「やっぱ修行付けて貰うなら五条先生がいいと思ってたからさ、嬉しくて」

 

 しれっと口説くじゃん。

 五条はちょっとだけ恋愛脳が刺激された。

 

「俺は弱くて誰も助けられなかった。それどころか伏黒を殺し掛けた。

 今のままじゃアイツらにも、死んだ先輩にも顔向け出来ねぇよ。

 

 強くなりたい

 先生 「最強」を教えてくれ」

 

 直後、真面目な話が投げかけられる。

 五条は前に言ったちょっとした元気付けを覚えてくれてたのに嬉しく感じ、和むのを抑えて真面目な面を整えた。

 ……訂正しよう。五条は少しにやっとしていた。

 

「フッフ、お目が高い」

「先生自分で最強って言ってたからな」

 

 それから虎杖は呪術と呪力の違いを虎杖に教えた。

 その途中、こんな質問がなされた。

 

「術式じゃない便利な技とかないの?」

「あるよ。高速移動やら転移やら色々。というか宿儺と僕がバリバリ使ってた」

「へー便利そう。じゃあ先にそれを教えてくれよ」

「いいけど、最初は基礎からね。じゃなきゃお話にならない」

 

「基礎ってどのくらいやればいい?」

「僕がいいと思うまで」

 

 そうは言っても基準は欲しい。

 

「伏黒は出来るの?」

「伏黒は先ず自分の術式を使い熟せてない。知ってると思うけど、戦いって手札が多いと逆に動けなくなっちゃうからね」

「大体術式か殴って蹴ってばっかだけど」

「……色々あるんだよ。色々ね」

 

「この人形すげー人とそっくり! ちっちゃい子供みたい!」

「というか元々人だよ。あー引かないで夜蛾センが死体を人形にしたとかじゃないから。

 これね、中身が死んだ術師の霊。

 特別に、今回の為に、記録遡って1番呪力操作が上手そうな人を連れて来たから。

 偶に喋った事はちゃんと実践していってね」

『脹相と言う。先ず負の感情を呪力にする感覚を覚えろ。話はそれからだ』

「うわマジで喋イダッ!」

 

 そんな訳で虎杖は恩着せがましく渡された人形と共に映画鑑賞をして、伏黒達は先輩にシゴかれる事となった。

 呪骸にしばかれ、先輩にしばかれ、週一で任務ついでに実践訓練をする。

 虎杖は着々と基礎を身に付け、伏黒は自分の影を倉庫にする拡張術式を覚えたりして……そんな事をしている間にこんな一幕もあった。

 

「…やっぱりそうだ」

おかか(どうした?)

「共鳴りが使い易くなってるんすよ。十勝に共鳴りぶち込んだ時からずっと」

高菜(ごめん、思い出させて)

「大丈夫っす、もう気にしてないんで。……多分、アイツの呪いと私の術式が"共鳴してる"んです。同じ呪詛返しの系譜だからかな……アイツの感覚があの日私に逆流したっていうか」

明太子(だったら戦って調整していこう)

「うす! 幾らか確かめたいんで模擬戦おなしゃす!」

しゃけ(しゃけ)!」

 

 黒閃は言わずもがなだが、その術式に適した経験を積めば似たような効果を得られる。

 最高の藁人形を打ち込んだ経験が釘崎の術式の使い勝手や威力に幾らか変化を齎して。

 

「そうだ、死んでる時宿儺と話したかい?」

「話……なんか昔の…爺ちゃんのことや領域? とか、あとは縛りについて色々言われた気がするけど……」

「お、案外覚えそう」

「なーんか、詳しくは思い出せねぇんだよなぁ。なんかメシの約束はした気がするんだけど…」

「…そうか」

 

 不穏な一幕がありつつ。

 

「紹介するよ。悠香の任務に同行するナナミンでーす」

「七海建人です。程々にやって行きましょう」

「よろしくお願いします!」

 

 思い思いに月日は流れていった。

 

 

 

「"魂触の糸"が紛失した?」

 

 ある日のこと、五条が車の後部座席に座って夜間に移動していた際のこと。

 補助監督の伊地知がそんな話題を出した。

 

「いつかやると思ってましたー。で、どんな呪物?」

「平安時代のある呪霊を加工したものだそうです。魂に直接触れて改造出来るとか。

 呪術師が隠し持つ不老不死や蘇生の手法、その一つだそうで」

「もろ特級じゃん。なにしてくれてんの? 上層部の連中」

 

 五条が思わず疑問を口にする。

 分かりきってる答えだが、それでも言わずにはいられない失態だった。

 

「それだけじゃありませんよ。その後の調査で盗まれたと分かったんです。同時にその場で食べられたとも。そんな話がここ最近立て続けに起きてるんです」

「……は? 流石にないでしょ。宿儺の指もそうだけどさ、魂が宿ってる特級呪物はどれもそれ相応の器が必要だし、確かめる術が……」

 

 ふと、五条の脳裏に伏黒から聞いた話が蘇る。

 かつて宿儺は未来が分かる術師と相対した。であれば……"他にも居る可能性がある"。

 未来を知る、誰かが。

 

「……僕さ、やーな心当たりがある。伊地知はどうかな」

「私もです。伏黒君の報告に似たような話があったと」

 

 ……ぞろりと這い寄る、呪いの気配がした。

 

「止めて。

 どうやら向こうから来たみたいだ」

 

 ズドンと、ボンネットの上に誰かが着地した。

 車の横に飛び出て蹴りを入れる。

 硬い衝撃、攻撃を合わせられた。

 ……金属の感触。

 

『‭─‬‭─"鉄片鼓動(へいそうきどう)"』

 

 車を掴み共に後方に下がる。

 微かに伊地知の悲鳴が聴こえるが、気にする程でもない。

 遅れ、襲撃犯の周囲に火花と爆発が散った。

 

「随分なご挨拶じゃない。結構周囲は警戒してたんだけどな」

『普通に。空気中の呪力濃度と馴染んでただけだ』

「それが出来る……いや、する呪霊は聞いた事ないね。君、何者?」

 

 術師ならば呪力操作に熟達しなければ出来ない芸当……普通呪力を出力しなければステルスには事足りるので、態々そんな事はしないのは置いといて……呪霊にしても意味のない技を普通と宣う。

 全域が薄らと呪力が漂う環境など幽界の上にある東京か呪物の近くか。

 

『……ああ、ここは"この世"か。

 そうだな、私がどうかしていた』

 

 実力は一見五条より下に見えるが、この奇妙な技に手慣れてる時点で只者ではないのが確かな相手。

 なにより、"そんな技術"が必要な環境が思い当たらない。

 

『だが惚けるなよ。分かってんだろ?』

「昔の呪霊だよね。最近紛失してる呪物の一つ。でも君の事は知らない」

『第一次世界大戦で産まれた"地雷と毒ガスの特級呪霊"。周囲に馴染むのが大の得意なんだ』

「なるほど。こんな芸当も出来る訳だ」

 

 五条が周囲を見回してそう言う。

 この"空気中に撒かれた鉄片"は文字通りの地雷で……毒な訳だ。

 無下限の範囲を広げ、車を対象内にした。

 

『"粉塵式散布毒伏地雷(空気を地雷と毒にする)"』

「効かない。君、僕の守りを突破出来る格じゃない感じ?」

 

 爆発し、撒き散らされる毒が辺りを覆う。

 ガスが道路のある崖から降って急速に毒が森を枯らしていく中、呪霊は煙に紛れ五条の背後から不意打ちし……"呪霊の攻撃がたどり着かない"。

 

「"無限"だよ。永遠に到達しない空間防御。悪いけど、君じゃ役不足だ」

 

 回し蹴りで呪霊を森の中に吹き飛ばし、伊地知に車を走らせ逃した。

 絶妙に他の術師が来るには時間の掛かる場所。

 タイマンの為に襲撃する場所を選んだという所か。

 投げ飛ばした方へ飛び、ガチャガチャと身体の構造を変えてる最中の呪霊の前に降り立つ。

 

「で、誰にけしかけられた。白状するまで痛め付けるつもりだから、早めに言った方が楽だよ」

『私は争いから産まれた呪霊だ。誰に言われるまでも無く、勢力を見極め"最も泥沼になる"よう暴れるのが大義なのさ』

「ふーん、"弱い奴の味方"って言いたいんだ」

『"戦争の英雄"らしいだろ。愛と勇気の戦士(アンパンマン)って呼んでもいいぜ』

「あの世でたかしに謝っとけ」

 

 幾つもの銃口の形に変化した腕が五条に向けられた。

 戦争から産まれた呪霊らしい攻撃(乱射)が繰り出され、全て五条の前で停止する。

 呪霊が更なる変化を望み、五条向けに改良していく。

 これが兵器の進歩(人類の進化)とばかりにニタリと嗤った。

 

『"彼岸呪詛式特殊弾(誰か死ぬまで追い続ける)"』

 

 "停止した弾丸が再加速する"。

 敵性存在を解析し、これまで採取してきた資源(じゅりょく)から最も適した特性を宿した物を武器に変える。

 行使したのはかつて相対した呪詛師の一人のもの、相手を追い続ける呪力特性をあの世の呪力で再現した逸品。

 無限の空間があろうとも、"無限の執着"は止まらない。

 

「や、呪いっぽく言ってるけどこれ"磁石"だよね。

 ふーん、"鉄を取り込む術式"を拡張して磁力の性質を弄り回せるようにしてるんだ。

 相手をNとしたS極の呪力を産み出す技。術式名も開示と嘘を混ぜてるし、かなり殺し慣れてるよね」

 

『……カカ! 流石。

 そうだ、全て嘘だよホントの事言う訳ねーだろバァーカ!!』

 

「うん、嘘8割かな? 第一次世界大戦産まれ、封印されてる間あの世に居たのはマジだね」

 

『…キッショ。なんで分かるんだよ』

 

「殺し慣れてるから」

 

 "などというのは大体嘘である"。

 この呪霊の正体は"鉄火器(当時の武器に対する恐怖)の呪霊"。

 "鉄を霊体に組み込む"術式を持ち、毒ガスも地雷もこの拡張に過ぎない。

 五条を襲ったのは封印を解いた対価として縛りを結んでいるから。

 

「うん、大体分かった。もう死んでいいよ君」

 

 全ての弾丸をすり潰し、"蒼"で手元に集める。

 会話して底は知れた。虎杖の相手に丁度いいかと考えたが、半端に小賢しく弱い相手に会わせても意味はないだほう。

 こういうのはさっさとすり潰す方がいい。

 

「"蒼"」

 

 どうせ相手にとっても使い捨てだ。大した情報は持ってない。

 五条はそう判断し、弾丸から作った鉄球を呪霊に放った。

 呪霊も対抗して角度を持たせた壁を作ったが、滑る事なく本体を貫通する。

 すぐさま損傷を治し森の中に隠れるも、五条の眼からは逃れられない。

 

「……あー やっと"それ"の使い方分かった。僕みたいな眼のいい奴用なんだ」

 

 後を追いかけた筈なのに五条の前に呪霊が居ない。

 逃げられないが、誤魔化す技なら最初に見せていた。空気中の呪力と同化する技は、こういうある程度戦った後に役に立つ。

 

 つまり、逃亡に向いた高度な腰抜け専用技。

 

「負け犬の技って訳だ」

 

 "蒼"は五条の方に対象を引き寄せる技。

 それを全方位に散らばる呪力に向ければ空気中の呪力を纏める事も可能。

 そうすれば自然と同化する呪力は集い……"同化する程内部の呪力を薄めると、抵抗出来なくなる"。

 

『ガッ…!』

「お帰り、じゃあね」

 

 一緒くたに引き寄せられた呪霊の頭を五条が掴む。

 最初は警戒したが、単なる特殊環境で生きてきただけの雑魚に過ぎなかった。

 領域も展開出来ない相手に用は無いと、五条はそのまま呪霊を祓う。

 

「……コイツは弱かったけど、都市部で暴れられたら万は死んでたかも……暫く残業かな」

 

 霧散していく残穢を眺め呟く。

 狡猾に蠢く誰かの気配に、かつての災害を思い馳せて。

 

 ピピピ ピッ

 

「なんかあったの七海」

[先生今すぐ来てくれ! "ナナミンが!"]

「分かった。場所は」

 

 ピピ ピッ

 

「夜蛾先生今忙しいんだけど?」

["やっと出たな"。伏黒が拐われた。今すぐ来い]

「…直で向かうから簡潔に教えて」

 

 ピピピピ ピッ

 

「今度は誰⁉︎」

[伊地知です! 先ほど"窓"から東京各地で呪霊が暴れてると"急に連絡が"!]

「……やられた」

 

 絶えず鳴り響く携帯に、五条は自身の失策を理解した。

 

 "足止め"。

 

 何故あの呪霊が五条にけしかけられたか悟った。

 着歴からして其々の電話は最高で20分前から掛けられている。

 ずっと後ろから着いて、電波妨害をしていたのだろう。バレたから誤魔化しも兼ねて襲ったが、本命は既に果たされている。この戦いがどうなろうと仕掛け人には関係無かったのだ。

 

「はぁ……─‬‭─舐めるな

 

 その場で五条の姿が掻き消える。蒼と神隠を併せた移動術だ。

 相手は択一の選択を迫ったのだろうが関係ない。五条は全てを助ける道を選んだ。

 2018年7月28日、五条にとって最も長い一日が始まる……。

 

 

 

 結果として民間人に犠牲者を出しながらも五条は七海と伏黒を助けたが、これにより東京幽界には80万の術師の魂が堕とされた。

 仕込みは今より二ヶ月前から。助かる余地のない者を助ける事は叶わなかったのだ。

 

 自然死ならば術師として目覚める事はなくとも、理不尽な終わりは死に際に人を術師に変える。

 肥えたあの世は虎杖が吉野順平を助けられず、交流会を終えた頃には溶けた魂は混ざり再び大いなる災いを呼び覚ます爆弾へと変化を遂げた。

 

「や、久しぶり」

 

「……なんでテメェが夏油の身体使ってんだよ‭─‬‭─羂索‼︎」

 

 その過程で虎杖は黒閃を放ち成長し、人の呪霊である真人と因縁が出来……その後の犠牲者はどうあれ、事態は9月中旬。

 

 姉妹交流会の中盤へと視点は飛ぶ事となる。

 

 






 Q.あれ、交流会や順平は?
 A. 虎杖が女子になって一部の反応は変わったが、そもそも性別を気にする人が少ない環境だとあまりにも変化しないと痛感した。順平ぇ…恋愛より友情を感じると流れ変わらないんだよもう少しだらしなくなれ。
  書いててびっくりするくらい原作と大体同じかそれ以下の流れになったから大体同じ所は以下のダイジェストで。

 大まかな流れ。
 自然呪霊組は元から居ない。秘境に籠ったまま。
 羂索の策の影響で七海が死に掛けた。
 80万の贄で死滅の覚醒組が巻き込まれて死んだ。
 来栖華(天使の器)死んだ。氷見の娘(裏梅の器)も死んだ。
 順平が死んだ勢いで虎杖が真人に対し黒閃を2連続で放つ。

 交流会・前編。
 襲撃者は特級呪霊8体と真人と羂索。
 襲撃で三輪がメカ丸の呪骸と一緒くたに死んだ。
 パンダの呪核2つ破損、再起不能。特級呪霊一体と相打ち。
 楽厳寺の下半身が吹き飛び、気まぐれに見学に来ていた直毘人死亡。
 団体戦中断。総員協力し除祓へ移行。
 羂索、五条 相対。

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